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今月、西日本広域を襲った西日本豪雨による被害(13日現在、警察庁まとめ)は、14府県で死者204人、安否不明者60人以上で、6,000人以上が避難生活を余儀なくされています。ここに、亡くなられた方々とご遺族には心より哀悼の意を表します。また、被災された皆様にはお見舞いを申し上げるとともに、1日も早い復旧を祈念いたします。

7月5日頃から西日本を中心に雨が降り始めると、次第に雨足を強め広範囲に集中豪雨をもたらした。当時、西日本の北と南には強い高気圧があり、その狭間で身動きがとれなくなった低気圧(梅雨前線)に、南西から暖かく湿った空気が大量に吹き込み続けたことが原因で、折しも、昨年7月の九州北部豪雨からちょうど1年後の出来事だった。

気象庁は大雨特別警報を11府県に発令したが、被害は拡大を続けた。テレビではアナウンサーが「数10年に1度の降水量が予想され、対象地域の住民には生命の危険が差し迫っています。一刻も早く避難指示に従って下さい!」と身の危険を訴えたが、「この地に何10年も住んでいるが、これまで災害は起きたことがないから今回も大丈夫だと思った」と話す住民の声も多く聞かれた。

豪雨被害は、降り続く雨で緩んだ山の斜面が土砂崩れ(地滑り)を起こし、土石流被害も発生、平地では川の水かさが増して限界水位を超えた堤防が決壊し洪水となった。さらに、川上のダムからの緊急放流や貯水池氾濫なども加わり被害が拡大。今回、特に被害甚大だった広島、岡山、愛媛各県は、穏やかな瀬戸内気候にあり、平年ならば比較的雨が少ない地域。

日本は本来、四季があり、美しい自然の恵みを享受できる穏やかな気候の国だった。しかし、平成になってからは、これ迄にない自然災害が頻発している。阪神・淡路大震災、東日本大震災のほか、中部(長野、新潟)、熊本などで発生した大地震、洪水などの水害(津波被害を除く)も茨城、北陸、西日本でなど起き、火山噴火も御嶽、白根、箱根、阿蘇、雲仙普賢岳、霧島新燃岳など多発。台風の勢力は大型化傾向にあり、以前あまりなかった竜巻や突風による被害も頻発する。

これは、地球温暖化による気候変動と無関係ではないだろう。今や日本でも自然災害対策を自分事として準備する必要がある。人間の活動(エネルギー消費、資源消費、環境汚染)が次第に地球の許容を超えている可能性があり、最早各国が自国ファーストの身勝手な振る舞いを行なっている場合ではない。

災害被害を最小化するためには、環境変化や自然現象の過激化に対応して、人々の意識や社会インフラの安全性基準など変える必要があるだろう。過去に災害があった地域はその経験と教訓を遺産として次代に伝承していくことも重要だ。今回、各自治体のハザードマップと実際の被害状況が重なる地域も多かったが、被害が拡大してしまったことは、幾らシミュレーションを作成しても実際に活かしきれていない実情が明らかとなった。

気象予測にスーパーコンピューターが導入されているが、災害対策にも最大限ITの利用を図りたい。例えば、AIを活用して降水量予想データを採り入れた放水を含むダムの貯水計画を組めば、今回の緊急放水による二次的被害は避けられたかもしれない。

一方、医薬品、医療品のメーカー、卸、小売り各社は、災害時の物資調達と供給に尽力し高く評価される。しかし、災害被害の甚大化、広域化から、これまでの各社の危機管理計画(RMP)、事業継続計画(BCP)に加えて、平時からの業界団体や地域産業団体などとの広域協力体制構築や自治体との連携対応など事前に準備しておくことも重要になる。

政府は、米国の圧力を受けて防衛費予算を増額するが、その分を毎年多くの人々が亡くなり、被災者を産む災害の対策に活用する方がより国民の意に添うのではないか。

3月5日付武田コンシューマーヘルスケア鰍フニュースリリースで杉本雅史プレジデントが退職のため3月31日をもって同社代表取締役を辞任する事が伝えられた。杉本氏は日本OTC医薬品協会(OTC薬協)会長でもあったため、同協会は杉本氏の任期満了を待たずに後任会長人事に追われたが、4月20日付で佐藤誠一佐藤製薬且ミ長が就任し一件落着。5月開催の第54回定時総会と同日に行なう定例会長記者会見の日程に間に合わせることができた。

そして、5月29日にそれは起きた。日本一般用医薬品連合会(一般薬連)から本町記者会加盟各社に、翌30日午前11時に本町記者会で記者会見を開催する旨の案内が送られてきたが、数時間後には同会見キャンセルの案内が届いた。その後、間もなくその裏側で展開されていた騒動が発覚する。三輪会長兼理事長名義で「報道ご担当各位」と記された文書が届いたためだ。

翌30日には一般薬連名義で「会長の異動に関するお知らせ」が出され、前日29日に理事会を開催し柴田氏を新会長に選出した事が伝えられた。

一方で同30日、前日に続き三輪会長兼理事長名義の文書が報道各社に届き、前日開催した理事会は無効であるとした。(その後の経緯は3面に詳報)

6月14日現在、一般薬連は2つの組織に分裂し、それぞれ独自の会長を立て、2つの事務所があり、別々のホームページが開設されるなど混迷状態。外部から見ても極めて不自然な異常事態で、どちらが正当か結論が出ない現状では業界団体として機能不全に陥っていると言える。また、両者とも、一般薬連が分裂状態であることを否定するとともに正当性を主張している状況は、日本大学アメリカンフットボール部の混乱ともダブって見える。どちらにせよ、かわいそうなのは学生と会員企業である。

今回騒動の発端たる原因は、連合会内幹部同士の根回し不足、意思疎通不足のまま時間が経過しタイムリミットを迎えてしまったことによるボタンの掛け違いと言えるだろう。

当紙は、一般薬連設立当時の社説で、業界内ポストと天下りの席を設けるための新団体は要らないと主張した。その後、一般薬連はOTC薬協と役割分担を図ることで、その意義を示してきてはいた。しかし、今回のような事態を表面化させてしまっては、一般薬業界のイメージを棄損し、国家政策であるセルフメディケーション推進にも影を落としかねない。奇しくも、昨年からセルフメディケーション税制が施行、7月24日には第1回セルフメディケーションの日の記念行事を予定し、セルフメディケーションが超高齢社会において健康寿命延伸と医療費抑制に役割を果たすことを国民に啓発する矢先である。これ以上問題を拡大することは、すべての関係者にとり「百害あって一利なし」だから、一刻も早い収束を願うばかりだ。

連合会組織は、会員すべてがメリットを享受でき、気持ちを1つに同じ方向に向かい共に努力することが必要だ。この際もう1度、一般薬連のあり方についての再考も必要だろう。必然であるための意義、役割、メリットなどだ。それを洗い出して、再び会員および外部に対しても明確な説明を行ない、皆のコンセンサスを得ることが求められる。

一般薬連を構成する5団体はすべて日本製薬団体連合会(日薬連)傘下にある。もし、一般薬連が全ての会員から賛同を得られないならば、日薬連には新薬価値の適正評価に向け活動を行なう保険薬価研究委員会があり政府との折衝も含め重要な役割を果たしているのだから、同様に日薬連内にセルフメディケーション推進を図るための政策検討、立案、提言機能を持つ「セルフメディケーション推進研究委員会」を設ける方法もあるだろう。

武田薬品工業(クリストフ・ウェバー社長CEO)によるアイルランドの製薬企業であるシャイアー社の買収がほぼ決まった。買収額は約6兆8,000億円で日本企業によるM&Aとしては過去最大規模の案件。今後両社株主総会を経て正式に決定するが、買収が成立すれば売上高は3兆4,000億円規模、世界ランク10位内の日本発メガファーマが遂に誕生する。

昨年度の世界製薬企業売上高ランクをみると、

第1位  ロシュ(スイス) 5兆9,600億円
第2位  ファイザー(アメリカ) 5兆6,300億円
第3位  ノバルティスファーマ(スイス) 5兆3,000億円

と続き、武田薬品は第17位で1兆7,300億円(2017年3月期)と何とか20位内に位置する状況。今回、17位の武田薬品18位のシャイアー社を統合すれば、昨年の勢力図に照らすと、一気にギリアド・サイエンシズ(アメリカ、2兆7,000億円)を抜いて世界第9位に浮上する。

買収手法は、銀行団の融資約3兆円と武田薬品の新株発行により賄う予定。しかし、武田薬品の株式時価総額に相当する新株発行を必要とするため、株主価値希薄化懸念から投資家の間で動揺が広がり、株価は買収が明らかになる以前の水準より1,000円以上急落した。そのため、ウェバー社長は@一時的に負債が急増するが1株当たり利益(EPS)も大幅に増加し、潤沢なキャッシュフローが実現、中期的に負債水準も改善するA投資適格格付けを維持するB現在の配当方針を維持する、など説明し投資家の不安払拭に動いた。

確かに、大型M&Aは仕掛ける企業にとっても常に大きなリスクを伴う劇薬的手法である。しかし、超高齢化が進む人口減少社会の日本にあって、海外展開拡大とM&Aは東恵美子同社社外取締役も話すように戦略的に不可避だろう。日本は、研究開発型新薬企業もジェネリック企業も数が多く、それが社会や産業効率化の阻害要因の一つと言われる。右肩上がりの時代はそれも許されていたが、社会保障費が逼迫する時代となり、長期収載品に加え、普及推進する後発薬でさえ厳しい薬価改定を迫られ、各企業は新たな生き残り策を求められている。

武田薬品は江戸時代中期の天明元年(1781年)に近江屋長兵衛が大阪・道修町で薬種問屋を開いたのが始まりで、237年の歴史を持つ。一方のシャイアー社は1986年に設立された新興製薬企業で、2016年にはバクスターから分社したバクスアルタを約3兆4,000億円で買収するなど、M&Aを通じて武田薬品と肩を並べる規模となった。この両社統合は、年齢がかけ離れた男女の結婚とは違うだろうが、果たして企業文化の違いを克服してタケダイズムを全世界に浸透させられるのか? 武田薬品に劇的な化学変化を惹起して両社単純合算以上のシナジーを生むことができるのか? そして売上高や利益などでどこまで世界のトップ企業に迫ることができるのか? など、現時点では大きな期待とともに未知数部分も多い。 21世紀には、日本を代表する産業として電気、機械、自動車などの各分野から、多数の世界を席巻する企業が生まれた。21世紀になり、日本政府は新時代の日本経済をリードする産業として、ITならびに医療・ライフサイエンスを指名するが、両産業とも日本勢は、まだ規模や存在感において世界トップとの間に大きな開きがある。その中で、今後の武田薬品の飛躍的成長を期待するとともに、武田に続く企業の出現にも期待したい。もちろん、その手法はM&Aだけでなく、ギリアド社のような既存治療法に革新をもたらす成功例もある。

日本の医薬品市場規模は、国別では今のところ世界第2位だが、今後中国に逆転されるのは時間の問題だ。しかし、スイスのように複数のグローバルリーダーを輩出できる国になることができれば、日本は世界有数の創薬国であり続けられるだろう。

安倍内閣の支持率が再び急落している。昨年10月22日投開票された第48回衆議院議員選挙結果は、希望の党、民進党など野党の自滅により自公連立与党の圧勝に終わり、安倍政権が信任された形で、一旦は森友学園、加計学園の「もりかけ問題」も沈静化に向かうはずだった。その後、籠池泰典森友学園元理事長は補助金不正受給容疑で逮捕され、加計学園獣医学部は今月、無事に186人の新入学生を迎えた。目算に狂いが生じたのは、昨年の国会で当時財務省理財局長だった佐川宣寿氏(その後昨年7月国税庁長官就任、今年3月9日付で依願退官)が「破棄した」「存在しない」と繰り返していた、籠池元知事長夫妻との森友学園用地売却交渉記録が実際は存在することが明らかになったこと。また、安倍首相も、同学園の名誉校長だった安倍昭恵氏の国会証人喚問を拒否し続けるなど、疑惑は一向に解消されないばかりか、むしろ深まっている。

さらには、防衛省陸上自衛隊のイラク日報問題、働き方改革審議において出されたデータが不備で今回の法案から裁量労働制が削除されたことなども政府不信に拍車をかけ、内閣支持率急落を招いた。

一方、今年また新たな年金不祥事が発覚した。日本年金機構は昨年8月、情報処理企業のSAY企画(切田精一社長)に年金受給者に関する申告書データ入力業務を委託したが、同社はそのうち500万人分のデータ入力について、契約上禁止されている再委託を中国の業者に行なっていた。SAY企画は受注業務をコストの安い中国企業に丸投げして利ざやを稼いでいた形だが、相次ぎ入力ミスなどが指摘され違反の実態が発覚した。同社委託分の入力ミスは31万8千件にもおよび、支給額に影響があった人は10万4千人というから、あまりのいい加減さに呆れる。その後、別の委託先である恵和ビジネス(渡辺淳也社長)でも53万人分のデータ入力を国内企業に再委託していたことが発覚。SAY企画は業務入札にあたり日本年金機構に対し800人体制で業務を行なうとしていたが、実際の雇用者は百数十人しかおらず、複数人でデータの照合チェックを行なうとしていたのに、機械で読み取りを行なっていたなど、公的機関相手に詐欺行為を行なっていたことになる。日本年金機構はじめ政府には、違反事業者に対して一般競争入札への指名停止処分だけでなく、国民個人情報の不正外部流出と同等の事件の重大性を鑑みて、訴訟や賠償請求も含め厳重な処分を行なってもらいたい。

違反業者が悪いことは言うまでもないが、その根本には日本年金機構の体質の甘さ、管理のずさんさがある。かつて、国民の年金事務は社会保険庁が行なったが、平成19年に年金記録問題(基礎年金番号に統合整理されない年金記録が約5千万件あることが判明)を受けて、当時の第一次安倍内閣において社会保険庁の廃止を決定し(同庁解体方針は小泉純一郎元首相が平成16年に表明)、平成22年1月1日に日本年金機構が発足した。しかし、機構は、業務委託先の実態を把握せずに業務を委託し、納品検査も行き届かないなど、ずさんな業務管理と年金運営を行なっていたことが露呈。日本年金機構は「組織名称と器を変えただけで体質や実態は元のまま」と思われても仕方ない。ただでさえ、支給開始時期の後送りや支給額の目減りなど「将来幾らもらえるか分からない」年金である。さらに、国民年金は未納問題も抱える。

本紙は、これまでも国民皆保険制度、年金制度、介護保険制度、薬価制度を含む診療報酬制度など社会保障制度の抜本改革を行なうには、まず国民の理解を得ることが最重要であると主張してきた。しかし、それ以前に政府や関係機関が国民に不信を抱かれるようでは、国民も聞く耳を持たないだろう。

平成23年3月11日午後2時46分、激震が東日本全域を突如襲った。本紙3月15日号は恒例の2大特集として「日本薬学会年会特集」「Japanドラッグストアショー特集」を掲載しているが、奇しくも地震発生時は西島正弘日本薬学会新会頭(当時)インタビュー取材の最中で、またJAPANドラッグストアショーは開催初日だった。その結果、日本薬学会第131年会(静岡大会)ならびに第11回JAPANドラッグストアショーは開催中止を余儀なくされた。

東日本大震災による被害は、死者15,895人、行方不明者2,539人、建物全半壊約402,700戸など未曽有の大災害となったが、被害をこれほど拡大させた要因は大地震に伴う巨大津波による被害で、実に死亡者数の90%が津波により生命を奪われた。

震災から7年経ち道路や鉄道、住居や施設など地域のインフラは復興再整備が徐々に進み漁港や商店街なども以前の姿を取り戻しつつある。日本は周囲を海に囲まれた島国で、複雑な地盤構成から地震が多く、過去にも幾度となく津波被害を経験してきた。しかし、今回の大震災は以前とは違い新たな副災害を産んだ。地震と津波による東京電力福島第一原子力発電所事故による放射能汚染である。その結果、福島県は沿岸部地域を中心に放射能汚染により12市町村に避難指示が出され、福島第一原子力発電所のある双葉町や大熊町、浪江町など放射線量の高い地域は、帰宅困難地域指定解除の目途も立たず、現在も立ち入りが制限されるなどゴーストタウン化。7年経った今でも約73,000人もの人々が故郷を失い、つらい避難生活を送っている。避難者は幾ら政府や企業が補償したとしても、失ってしまった生活や想い描いた人生設計が狂ってしまったことは取り戻しようもない。

最近の世界の動きを見ると核戦力増強競争がエスカレート。北朝鮮は経済制裁効果もあってか、平昌オリンピック開催を好機と軟化の態度を見せ韓国に接近し、掌を返すようにアメリカ・トランプ大統領へも対話意向を示した。尤も、金正恩北朝鮮委員長が幾ら弾道核ミサイル(ICBM)開発に成功したと虚勢を上げても、アメリカとは戦力の質、量ともに雲泥の差が歴然だから、どちらかの指導者が正気を失わない限り結果は見えていた。一方で、ロシアとアメリカは対立色を強めながら、さらに核戦力の近代化を推進するなど、再び戦力強化を競っている。チェルノブイリ、スリーマイル島事故のように、核の平和利用でも一歩間違えれば国民に甚大な被害を及ぼすことを経験した国々が核戦力を強化している。

現在、核兵器の破壊力は広島、長崎レベルをはるかに超え、一斉に使われると地球を破壊し尽くす力がある。それ故、核兵器は「使われざる兵器」と言われる。アメリカの銃社会と同じ構図である。しかし、使用しないものを蓄え、そのために莫大な投資をし、その原資は税金で賄われる。日本もトランプ米大統領による自国主義(アメリカファースト)政策の圧力を受け、北朝鮮の核ミサイル開発による脅威などに対抗する口実のもと、PAC-3やイージス艦搭載防衛ミサイルなど高い買い物を強いられている。

すでに、地球は開発と交通の発展により充分小さくなった。その小さい空間の中で互いに争う時代はもう終わりにしたい。地球こそが一つの「国家」で、国々は「自治体」に過ぎず、自治体同士は互助関係にあるから戦力は要らない。これまで「使わないもの」に使ってきた原資(税金、資源、労力)は、今後は人と環境のために使いたい。唯一の被爆国で、今も福島原発事故の後処理を担う日本はそのリーダーシップを発揮するのに最も相応しい国だろう。

今年も2月3日の節分に豆まきをした人は多いだろう。しかし、近年の節分風景は、その主役が「福豆と鬼の面」から「恵方巻き」に取って替わった感がある。スーパーやコンビニの店頭やチラシで大々的にPR合戦が展開され、元々大阪の風習だった恵方巻きが、今や全国区の年中行事となっている。

その恵方巻きが手を付けられないまま大量に廃棄用破砕機に投じられる光景が報道された。クリスマスケーキなどと同じ事情だが、充分食べられる食品を廃棄することはもったいないし、心が痛む。今年、兵庫県のスーパーが「もうやめにしよう」と宣伝チラシに大書きして、恵方巻きを前年実績以上販売しないと告知し、賞賛を浴びた。

食品廃棄ロスを生む要因は、本部が前年実績以上の販売ノルマを各店に課すことや、欠品を避けるため必要以上に仕入れるため、さらには大量に作り廃棄した方が経済的に有利だからとのこと。しかし最早、企業活動も従来の効率第一の考え方を改める時がきている。世界を展望すると環境問題、資源問題、食糧問題、人口問題、貧困問題などの克服すべき命題が山積し、人類、国家、企業にはサスティナビリティ(持続性)が求められている。

日本が高度成長を続けた時代は、人口が増加し、所得も増え、消費拡大により経済が成長した。当時の日本人ビジネスマンは、エコノミックアニマルと言われるほど、売上げアップと利益最大化の目標に向け猛進した。

しかし、時代は変わった。人口が減少に転じ、高齢化進展で平均年齢も上昇し大人が増えている。生活水準が上がり、欲しいものが減り、消費が減少する時代だ。その中で今後の消費トレンドは、環境性や倫理性に優れる商品や企業を選択する「エシカル消費」、身の丈に合わせて少しの贅沢と安価で高品質なものを組み合わせた「メリハリ消費」、量より質を重視する「適量消費」などが想定され、当然、小売業にも変化への対応が求められる。

2015年9月の国連サミットでは「2030年までに達成すべき17の目標(SDGs=持続可能な開発目標)」が採択され、その中の目標Kでは「持続可能な生産消費形態を確保する」として、「世界の食糧廃棄量半減と生産サプライチェーンにおける食品ロス減少」「廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用」「企業に対し持続可能な取組み導入と関連情報の定期報告奨励」が盛り込まれた。今後、企業の評価や選別には、業績や知名度よりCSR(企業の社会的貢献)や環境対応度の比重が増しそうだ。

先月、東京医療用品卸商協同組合新春賀詞交歓会の席上、流通正常化運動に著しく貢献した企業としてエステー(鈴木貴子社長)が表彰された。鈴木社長は「私が入社した8年前は、返品を減らしましょうなどとは決して言えないタブーのような雰囲気があり、外部から来た私には何かおかしい、納得がいかない、もったいないし誰にとっても無駄なのに、と思ったが、この8年で変化を感じる」と話した。

日本は資源の少ない島国であることから、物や食糧を大切にする精神・文化が「もったいない」という言葉とともに根付いている。その日本人が利益や効率を優先するあまり、美徳と言えるこの精神・文化を失うとしたら真に「もったいない」。

現在、寒い韓国・平昌では熱い戦いの真最中だが、2年後には遂に東京でオリンピック・パラリンピックが開催される。世界の人々が日本をめざし、世界中の視線が日本に注がれる。近年、日本の魅力が世界に発信され、日本を訪れる外国人観光客が急増している。外国の人々には是非、お土産に日本製商品以上に「おもてなし」「もったいない」などの精神・文化を持ち帰ってほしい。そのためには、今こそ日本人が自分たちの心に再度磨きをかける時だろう。食品廃棄ロス削減や返品削減もその指標の一つかもしれない。

これまで、日本は戦後復興期を乗り越え、現在の世界最長寿国の地位を確立するまでに至ったが、その主要因として昭和36年(1961年)施行された国民皆保険制度が果たしてきた功績を否定する余地はないだろう。厚生労働省統計によると、平成28年(2016年)日本人平均寿命は、男性80.98歳、女性87.14歳だが、昭和23年(1948年)は男性55.6歳、女性59.4歳で、この68年間で男性25.38歳、女性27.4歳と男女ともに25歳以上寿命が延伸した。

日本の国民皆保険制度の功績は世界中から注目され、同様な公的医療保険制度導入に向けた研究が各国で行なわれている。我が国では世界最長寿国達成の立役者として「世界に冠たる国民皆保険制度」と自画自賛しながら、政官産ならびに医療関係者は国民皆保険制度に対して「堅持すべき」で一致する。

だが現在、この世界に誇る皆保険制度の存続が根底から揺らいでいる。超高齢社会の進展で医療費が膨張を続け財源確保が年々難しくなっているからだ。今年4月に予定される6年ぶりの診療報酬、介護報酬同時改定は、昨年末に診療報酬本体部分と介護報酬のプラス改定ならびに薬価部分の大幅に引き下げで決着した。しかしながら、今回の薬価制度改革は本来の「抜本改革」とはかけ離れた内容で、財源を薬剤費圧縮で捻出した単なる「帳尻合わせ」策である。

今後、日本の人口がさらに減少することは決定的事実であり、一方で高齢者比率は着実に増加することが分かっているのだから、皆保険制度を堅持するために、今回の様な一時しのぎの対策で済まないことは小学生でも理解できるだろう。今回の改革案は痛みを伴う改革を避け、ツケを先送りしたに過ぎない。また、これ以上の薬剤費圧縮策は医薬品関連産業を疲弊させ、日本から革新的新薬を出にくくし、国民も最新医療を受けられなくなる恐れがある。その結果、日本人の平均寿命が世界の平均以下へ凋落してからでは手遅れだ。

もう一つの問題は、国民の健康を合理的に守るための国民皆保険や医療制度改革についての議論は公開されているものの、監督官庁、医療関係者、保険支払い側、産業代表者など関係者による利害調整の場となっていること。これでは各参加者は、各々自分達の利益を最大化し負担を最小化するためだけの駆け引きに終始しても当然だろう。そして、国民も自分の負担が大きく増えることなく、今まで通りの医療を受け続けられれば、問題に関心を持たないか、見て見ぬふりをするだけだ。しかし、その間も社会保障費は増え続ける。

今後、国民皆保険制度維持を目的とした医療制度抜本改革を行なうためには、正しい情報と達成可能な計画を示して、国民全体の理解を得て、痛み(負担)を分かち合う努力が不可欠だろう。ある調査によると消費増税(税率アップ)も約半数の人々は「日本の将来のためには止むを得ない」と考えており、国民皆保険も制度存続のためなら、ある程度の痛みは許容できよう。これ以上現世代が痛みを避け、次世代にツケを回すことは、日本の医療と産業にとってマイナスであるばかりか、却って国民皆保険制度の破たんを早めることにならないだろうか?

昨年10月の衆院選では与党連合が圧勝し、安倍内閣継続が支持された形だが、小泉進次郎筆頭副幹事長も言うように、選挙結果は野党の自滅による棚ボタ的勝利に過ぎない。その安倍内閣は、2020年を目途にした憲法九条改正に向けて国民投票を行なう意欲を見せているが、国民にとっては自衛隊の定義よりも自分の生命や健康に直結する皆保険制度をどうするかの方がはるかに重要だろう。国民皆保険制度維持に向けては、医療給付と負担比率について、複数のメニューを示し、国民理解と議論を尽くした上で、国民投票で制度改革の方向性を決定すべきだろう。そうすれば国民も納得できるはずだ。

日本を世界一の長寿国にした功績を誇る国民皆保険制度の存続が根底から揺らいでいる。超高齢社会の進展で医療費が年々膨張し財源確保が年々難しくなっているからだ。

来年4月には6年ぶりに診療報酬、介護報酬の同時改定が控えており、診療報酬本体部分と介護報酬のプラス改定が予定される中で薬価部分のみ大幅に引き下げられることがほぼ決まった。政府は来年度社会保障費の自然増分6,300億円を5,000億円まで圧縮する方針で、薬価を約1,600億円引き下げ、差額を本体部分と介護報酬に充てる目途を付けた。

しかし、今回の薬価制度改革は本来目指していた「抜本改革」とはかけ離れた内容であり、薬価引き下げにより財源を捻出する「帳尻合わせ」に過ぎない。今後、日本の人口が右肩下がりとなり、一方で高齢者比率が一層高まるため、制度持続のための抜本改革が単なる帳尻合わせで済むはずがないことは「自明の理」だ。人口動態予測では2040年に65才以上の高齢者1人を1.4人の成人が支える「肩車型社会」が到来する。その時代にも制度を堅持していくためには給付(保険カバー範囲)を減らし、負担(保険料負担、窓口負担)を増やすしかない。加えて、混合診療やセルフメディケーション範囲の拡大などあらゆる知恵を尽くすべきだろう。今回の改革案は、痛みを伴う真の「抜本改革」を避け、痛みを先送りするだけのものだ。

一方、今回の制度改革が医薬品産業に及ぼす影響は非常に大きい。新薬の高薬価品対策と新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度の縮小、長期収載品の追加引き下げ、ジェネリック薬を主ターゲットとする薬価頻回(毎年)改定などで、医薬品産業全体に大きく影響が及ぶ。

さらに、この改革は同時に製薬企業から研究開発へのインセンティブを奪うため、将来の日本の医療や経済、科学技術に負の影響が懸念される。負の影響とは@日本市場の魅力低下A革新的医薬品開発拠点の海外流出B日本の優先順位が下がり革新的医薬品の日本発売が遅れドラッグラグの再拡大を招くC国内における製薬産業の衰退と国際的地位の低下D製薬産業従事者数が減り、医薬品産業の経済貢献と納税額も激減E日本の患者が最先端医療を受けられなくなるF研究者の海外流出と日本のライフサイエンス水準が低下─―等々。

また、この改革は自民党安倍内閣が生命科学立国を政策の柱に掲げ創薬イノベーション推進を謳っている点にも矛盾する。革新的新薬開発促進のために新薬創出加算制度を位置付け、そのトレードオフとして製薬業界は長期収載品薬価引下げと後発品普及促進を容認してきたのであり、新薬創出加算制度を大幅縮小することは政府の裏切りとも言える行為だ。もしも、政府がイノベーション促進を阻害する制度を導入し、その方針を継続するとしたら、自ら掲げた生命科学立国の旗を自ら降ろしてしまうことにほかならない。

イノベーション指向産業はハイリスクハイリターンであり、ハイレベルかつ継続的な研究開発投資が必要だ。新薬創出加算制度の趣旨は先端科学産業たる研究開発型製薬企業を育成し、日本がこの分野で世界のリーダーを目指すためのリスク投資ではなかったか?

特に、最大の不利益を受けるのは国民、患者であることを忘れてはいけない。日本で最先端の医薬品を生み出せなくなると、折角解消しかけたドラッグラグが再び拡大し、国民、患者も最先端医療の恩恵に与れなくなる。新薬を待ち望む難病やアンメットメディカルニーズ(決定的な治療薬がない疾病)の患者にとっては、希望を剥奪され、裕福な患者のみ海外に行き治療を受けることになるかもしれない。

世界長寿国ランクで常にトップに立つ日本が、政策のミスリードでランク下位に転落する事態となってからでは遅い。今必要なことは、政府がイノベーション促進政策において「臥竜点睛」を成し遂げることに尽きる。

10月22日投開票された第48回衆議院議員選挙結果は、安倍晋三首相が設定した勝敗ライン「自民党単独で過半数の230議席」を大幅に上回る284議席を獲得し、連立与党で憲法改正の国会決議に必要な3分の2(310議席)を上回る313議席を確保、圧勝に終わった。

安倍首相は、選挙前に自身が関与して森友学園や加計学園に便宜を図ったと疑惑視された「もりかけ問題」などにより内閣支持率が急落し、今春に各報道機関が実施した調査では不支持率が支持率を上回った。しかし、その後の北朝鮮問題や米国との関係強化などが評価され、支持率はやや回復。一方、最大野党である民進党の支持率低迷と7月2日投開票された東京都議会議員選挙の惨敗(都民ファーストの会が圧勝)により蓮訪代表が引責辞任に追い込まれるなど混迷状態だったこと、また都議会選圧勝の勢いから自民党の最大脅威となった日本ファーストの会(後に希望の党に改称)も党体制が出来てなかった。そこで、安倍首相は衆議院任期満了(来年12月)までに伝家の宝刀である解散権を行使するタイミングは「今しかない」と判断、9月28日召集の第194回臨時国会冒頭で解散を宣言し、選挙戦に突入した。

衆院選結果は連立与党圧勝に終わったが、選挙期間中は与野党ともに誤算続きだった。

自民党の誤算は、蓮訪代表辞任を受けて9月1日に民進党党首に選ばれた前原誠司新代表が希望の党への合流を決断したこと。狙いは、安倍首相と小池百合子代表との二者択一に持ち込めば都議会選圧勝の流れで勝てると読んだこと。また、民進党から細野豪志氏はじめ有力議員の離党が相次いだ離党ドミノ現象や、党幹事長への起用を内定した山尾志桜里元政調会長が不倫疑惑から離党に追い込まれたことなども背景にあった。

一方、小池代表は民進党員全てを受け入れたら数合わせと批判され、さらに理念や政策が異なる民進党員もいることから「民進党候補者全員を受け入れることは、さらさらない」「排除する」と述べると、この発言をきっかけに雲行きが急変した。都議選では自民党中心の既存枠組みを打破するため民衆を蜂起して改革を起こすジャンヌダルクのように見えた小池氏だが、発言後は一転して中国・清時代の西太后のように残忍な独裁者の印象を与えてしまった。これは、希望の党への合流に賭けた前原民進党前代表にとっても大きな誤算で、選挙戦は再び与党優勢に傾いた。

この結果、さらに対極のリベラルを掲げる旧民進党組が旗揚げした立憲民主党(枝野幸男代表)にオウンゴールの大きな得点を与えたことも希望の党と前原氏にとり大きな痛手となった。

こうして、11月1日には第4次安倍内閣が組閣、厚生労働大臣に加藤勝信氏が再任(全閣僚再任)された。しかし、衆院選を振り返ると全ての動きは政局にあり、国民不在と言わざるを得ない。安倍首相と政府連立与党は、今後の国会運営では決して圧倒的多数の議席による力ずくの決着は許されず、徹底した政策論争を通じて国民が納得できるものにしなくてはならない。北朝鮮やTPPなど外交問題、国内は人口減少超高齢社会進展への対策、財政均衡(プライマリーバランス)の道筋作りなど、解決すべき問題課題は山積しており、政局で紛糾している時ではないとして今回の強行解散も多くの国民は疑問視した。

また、今回の衆院選は国政選挙として初めて18歳の若者にも選挙権が与えられた。しかし、全体の投票率は53.68%と戦後2番目の低さの中で、18歳は50.74%、19歳は32.34%と若者の投票率は全体を下回った。

若者は「政治に無関心」と言われることが多いが、明日の日本を決する重要な時に、政局やスキャンダル追及に終始する国会ばかり見せられては、国民の政治離れの原因が政治家自身にあると言われても仕方ないだろう。

神戸製鋼所(川崎博也会長兼社長)とグループ企業によるアルミ・鉄鋼製品・銅製品などの製品検査データ不正改ざん問題の拡大が収まらない。不正製品は自動車、新幹線の台車、航空機、自衛隊(航空機、魚雷、ミサイル)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のロケット、東京電力福島第2原子力発電所(冷却用熱交換器部品)など重機械産業中心に国内外500社以上にまで影響が広がっており、ドラッグストアや薬局で取り扱う使い捨てカイロの鉄粉にも神戸製鋼製が使われているとか。

近年はグローバル大企業と言えども屋台骨が吹き飛ぶ不祥事が相次いでいる。国内企業は、日産自動車(無資格者による新車完成検査実施)、東芝(東芝本体および米国原子力施設関連子会社ウエスティングハウス粉飾決算)、タカタ(エアバッグ不具合による死亡事故発生と大規模リコールと賠償)、三菱自動車工業(リコール隠しや燃費計測データ改ざん)などは記憶に新しい。このうち、タカタは経営破綻したほか、三菱自動車も三菱グループ企業の支援で一度再建の道を歩むも、その後日産自動車の傘下となった。東芝は巨額損失による債務超過解消のため稼ぎ頭の半導体事業売却に到った。日産自動車は主力の38車種160万台についてリコールを届け出ており、費用は約250億円かかる見通し。

神戸製鋼所も今後、リコールや賠償、訴訟対応などの事後対応が不可避で、海外企業からは巨額賠償を求められる可能性があり、成り行きによっては歴史ある企業の命運を左右するかもしれない。2年後には日本でラグビーワールドカップが開催予定だが、社会人ラグビーの伝統チームに影響が及ばないことを願いたい。今から10年ほど前、船場吉兆や伊勢の赤福餅など食品偽装事件(消費期限の書き換えなど)、ミートホープなど食肉偽装事件、米穀卸企業による事故米不正転売事件などが相次ぎ、国産食品の品質や安全に対する信頼が大きく揺らいだ。医薬品は、化血研のワクチン不正製造問題のほか、今年6月には大手原薬メーカー山本化学工業が解熱鎮痛剤「アセトアミノフェン」、抗てんかん薬「ゾニサミド」の製造原薬に無届けで中国製などの原料を使用した事件が発覚。医薬品は生命や健康に影響する製品であり、高い倫理観とコンプライアンス意識が不可欠であることは言うまでもない。

これら数々の不祥事の根底には、「利益至上主義」と「慢心」があるだろう。現在、庶民に実感が伴わないながらも景気回復期間が平成24年11月から58か月続き、いざなぎ景気を抜き戦後2番目の長さになったそうだ。そこで好業績を続ける企業も多いが、経営者や組織、従業員に無理や慢心はないだろうか? 今の内に再点検しておきたい。遅きに失すると今まで積み上げてきたものが全て水泡に帰す。商品品質と経営品質とは相互関係にあり、目に見えない経営品質で世界一を目指す企業は長く存続できるだろう。神戸製鋼所製品への信頼が揺らぐなか、幸い訪日外国人の日本製品への評価は非常に高いようだ。その理由は、品質の高さに加えて、過当競争で培われた商品改善、顧客主義に立ったクールなパッケージと温かいおもてなしの心など、不断の努力が結実したものだ。今後もさらに訪日観光客の増加が予想され、インバウンド需要の国内経済貢献も期待できる。インバウンド需要の腰を折らないためには、これまで行なってきた努力を当たり前に継続することが基本だ。テレビ番組などで訪日観光客のインタビューや日本大好き外国人の話を聞くと、皆一様に日本礼賛の言葉が躍っている。それらはバイアスがかかっているから勘違いしてはいけないが、訪日観光客の日本礼賛がバブルでないことを信じたい。

市区町村など地方自治体による子供の医療費無料化を推進する動きが止まらない。制度の狙いは安心して子供を生みやすい環境を提供することにより少子化進展に歯止めをかけ出生数増加を図ることが建前だが、本音は人口減少社会に突入し手をこまねいていると自治体の人口が減少し地域経済やコミュニティが衰退してしまう状況が確実視される中で、住民の流入増加、流出歯止めの政策を実施し、税収を確保したいと言ったところ。

厚生労働省が発表した統計調査によると、昨年4月1日現在で国内1741自治体全てが子供医療費の援助を行なっている。

その内訳を実施内容別にみると、「所得制限なし」1402自治体(80.5%)、「所得制限あり」339自治体(19.5%)で、自治体の8割は所得に関係なく子供の医療費を支出。また、「全額負担(子供の医療費無料)」が1030自治体(59.2%)、「一部自己負担あり」は711自治体(40.8%)と、約6割の自治体が子供の医療費を無料(ただ)にしている。

さらに、通院医療費援助の対象年齢は、「中学生(十五歳年度末)まで」996自治体(57.2%)が最も多く全体の六割弱を占め、「高校生(18歳年度末)まで」269自治体(15.5%)が次ぐ。「大学生(22歳年度末)まで」という大盤振る舞いの自治体も一自治体(北海道南富良野町)ある。

近年、各自治体間の子供医療費援助制度の充実化はまるで人気アイドルグループのメンバー総選挙のように人気獲得競争化している。近隣自治体が子供医療費を優遇すると、自分の自治体も対抗上、同じかそれ以上にするというチキンレース(無意味な競争)に陥っている。しかも、競争が進み、結局どこに住んでもあまり変わらない状況になりつつある。これは、寄付金獲得合戦が過熱する「ふるさと納税」にも似た構図である。

その結果、住民は「子供が病気と思ったらすぐ病院に行かせれば良い」という安易な意識を持つ。政府は医療費や医療資源を節約するために健康管理の自己責任化、セルフメディケーション推進、医療費を抑制した自治体へ交付金を厚くするなどの政策を打ち出しているが、子供医療費無料化は政府方針に逆行し、「お任せ医療」を推奨しているのと同じことだ。無料になると薬局、ドラッグストアは小児用の薬が売れなくなり、商品を置かない店が増えるかもしれない。

また、安易な受診は医療費を増大させ、その多くは税金が投入されることも忘れてはならない。医療費がさらに膨張を続けると、消費税率アップなど税収増加で補うか、医療費自己負担分の拡大、もしくは公的保険でカバーする医療の制限など、最終的にそのツケは国民に跳ね返ってくる。

それでも、「少子化対策は我が国存亡にかかわる最重要課題で、子供を産みやすくする環境作りこそが急務」と反論する向きもあるだろう。しかし、医療費無料化以外にも、待機児童の解消、女性が働きやすい職場環境整備、教育・文化の充実、地域での子育て支援などほかにもすべきことはある。どうしても医療費を支援したいならば、いったん自己負担分を窓口で支払ってもらい、一定の基準に適合した分を後日還付するなどの方がまだマシで、受診者に医療費を意識させる方法をとるべきだろう。

地方議会選挙では、与野党を問わず「子供医療費の無料化」を公約に掲げる候補者が多い。しかし、地方財政も厳しい中でばらまき政策ばかり行なうと自治体であっても破たんする。賢い有権者たるには、選挙公約に「飴」が多いほど、公約に記されない「鞭」(住民サービスのダウン)が潜んでいることを見抜く目を持つことである。

フレイル予防に産官学が連携して全力で取組むことが急務だ。フレイルとは「虚弱」の意味で、高齢者が健康な状態から要介護になる中間の時期に心身の機能が次第に衰えること。フレイルを放置して心身機能が徐々に衰えていくと、認知症やロコモティブシンドロームの原因となり、最終的には寝たきりになる。フレイルを予防することは健康寿命延伸にも医療費抑制にもつながる。

人は誰しも加齢により次第に身体機能が低下する。体力がなくなり足腰が弱くなると外出を控えるようになる。すると、運動量が減り体力も減退する悪循環に陥る。また、家にこもりがちになると、人と会ったり、買い物したり、他人と接触する機会が減り、脳を使わなくなる。家でテレビやインターネットなどから情報は得られるが、受動的情報に対して脳は刺激を受けにくく、脳の働きは鈍くなる。

体力の衰えを「齢だから仕方ない」と諦めたら健康寿命は伸びない。従来のアンチエイジングは顔や肌などの外面的ビューティケア(見た目年齢の維持、若返り)が多かった。一方、高齢者に対するフレイル予防アンチエイジングは、基礎体力と脳機能の維持が重要で、まさに若さの秘訣は「気力」「体力」から。

身体機能のアンチエイジングは様々な運動や予防が必要で、筋肉の強化やストレッチなど筋力と柔軟性の維持強化、ウォーキングや水泳などによる心肺機能の維持強化、そのほか5感(視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚)トレーニングから身体ケア、栄養バランスのとれた食事(ポリフェノール類など抗酸化物質摂取も推奨)、充分な休息、清潔な生活環境の維持、疾病予防まで幅広い。

一方、脳のアンチエイジングの基本は、脳機能活性化トレーニング(脳トレ)も良いが、最もシンプルな方法は社会やコミュニティ活動に参加して人との交流を続けること。他人の話を聞き理解する、自分の考えをまとめて他人に伝えるなどのコミュニケーションは脳の活性化に最適。また、質の高い睡眠、ストレス解消や楽しみ、笑い、感動などメンタルヘルスも重要だ。

国立長寿医療研究センターが認知症予防・改善目的で開発した身体と脳を同時に使うエクササイズプログラム「コグニサイズ」は、運動しながら計算するなどフレイル予防にも最適と認められ、利用者に採用する高齢者施設が増えている。

定年後も仕事を継続することは身体機能、脳機能の維持には効果的だろう。こう考えると、人間は非常に社会的な動物ということになる。人間は年をとるほど家族や友人が減り孤独の度合が増しがちだが、孤独になり自分のすべきこと(義務、役割)がなくなることは、人間としての社会的存在意義を喪失して、生きる意味を見出せなくなる。

したがって、加齢による孤独化傾向に対して、自ら抗うことが重要だ。友人を作り、他人と交流するため外出し、趣味や会話などコミュニケーションを図る。それが会社や作業所、施設、コミュニティ活動など何でも良い。要は「他人と交流して対人関係を絶やさないこと」。そのためには、高齢者を孤独にさせない生活環境整備が必要かもしれない。それは、田舎の村社会、都市部でもかつての長屋のように近隣生活者の顔が見える濃密なコミュニティづくりで、これまで進行してきた核家族化や個人優先の生活文化とは真逆の方向に再び舵を切ること。現在若者の間で流行りつつあるシェアハウスのような住居環境は、高齢者にとっても案外良いかも知れない。しかし、そのようなコミュニティの全国的普及は一朝一夕には難しい。

今、すべきことは地域の医師、薬剤師、登録販売者、看護師、介護士、ケアマネージャー、自治体の福祉担当者などが連携し、一人でも多くのフレイル予防を実現することだ。

7月2日投開票された東京都議会議員選挙ではそれまで第一党だった自民党が惨敗、改選前の57議席から34議席減の23議席となり下野した。これは都政の出来事だが、その衝撃は国政レベルに匹敵し、今後の自民党安倍内閣の政権運営にも大きく影響することは必至。事実、選挙後の一般紙各社調査によると安倍内閣の支持率は急落し、不支持率が支持率を上回っている。

都議選は、小池百合子東京都知事率いる都民ファーストの会が単独で49議席を獲得し第一党に躍進したほか、同会に同調した都議会公明党などを加えた与党勢力は過半数の64議席を大きく上回る79議席となった。

選挙結果は、都民ファーストの会の圧勝というよりも自民党の自滅によるところが大きい。今年になり、安倍総理自身の森友学園、加計学園への口利き疑惑、側近の稲田朋美防衛大臣の非常識な失言問題のほか、度重なる自民党二回生議員の不祥事問題も重なり、政権イメージダウンにつながった。特に、選挙期間中に豊田真由子衆院議員が運転中の秘書に対し「このハゲー! 違うだろうー!」と絶叫しながら暴言暴行を行なう音声がテレビのワイドショーなどで繰り返し放送され、同議員の二面性が暴露されたことは衝撃的だった。また、安倍一強体制の中での強引な議会運営姿勢に対し、今後自衛隊を明記するための憲法九条改正計画なども相俟って不安視する人も多かった。これらの例から、自民党安倍内閣には慢心とおごりがまん延していたと指摘する向きが多い。

しかし、自民党の敗因はもっと別にあるのではないか? これまで安倍内閣支持率は安定高位を維持し、今年4月時点で「アベノミクス景気」の期間は「バブル景気」を抜き戦後3番目の長さになるなどアピールできる点はあった。しかし、好況なのは一部大企業の業績にとどまり、好況の恩恵が一般生活者レベルまで届かないことが問題だった。

アベノミクスの目標の一つに、2%台のインフレを達成して国民の所得向上を図ることが掲げられている。所得が増えれば消費に回るお金も増え、経済の車輪が好循環を作るトリクルダウンが実現する……はずだった。しかし、企業は幾ら利益を上げてもベースアップには及び腰で所得はほとんど増えていない。一方で企業の内部留保は増えている。

生活者側からすると、収入は増えないのに、食品、郵便はがき・宅配便、電気・ガスなど値上げラッシュで年金掛け金も毎年上がると、消費に回すお金は増やせない。個人は高齢者中心に1,500兆円以上の貯蓄を持つが、使われないままその額は年々増えている。

また、一般国民の生活は苦しいのに、お上(議員、公務員)は公約だったはずの議員定数や公務員数の削減努力が見られない。議員定数削減は違憲状態(概ね2倍以上)を脱するための微調整でしか行なわれない。一千兆円超の累積債務(国の借金)返済も課題で、議員や公務員から率先し、自らが身を切る姿勢を示して痛みを伴う改革を行なわなければ、国民の不満はますます高まるだろう。

正しい情報と達成可能な計画を示して、国民全体でさらなる痛み(負担)を分かち合うことも必要だ。国民皆保険制度を維持するためには、受益者負担の増加やサービスの一部縮小もやむを得まい。選挙対策の増税延期のように、これ以上現世代が痛みを避けて次世代にツケを回すことは、責任逃れであり国民への裏切り行為とも言えるだろう。

企業も個人も将来に対して漠然とした不安を持ち、使われないお金が増えている。日本経済を活性化させるためにも社会保障を含む大胆な制度改革を断行、将来にわたり安心できる持続可能な制度を構築して「漠然とした将来不安」を払拭することが何よりも必要だ。今こそ、既得権益の利害調整よりも「国民ファーストの改革」にまい進する時である。

前号社説で超高齢人口減少社会における企業定年制度見直しの必要性について述べた。総務省によると、わが国の人口動態予測は2050年(平成62年)には人口が1億人を割り、65歳以上の高齢化率は40%に近づくとしている。同年の総人口は9,708万人で、内訳は高齢者3,768万人(全体の38.8%)、15歳〜64歳5,001人(同51.5%)、14歳以下939万人(同9.7%)。15歳〜64歳以下の人口から学生を差し引くと、64歳以下の社会人1人が高齢者1人を支える構図。そうなると、現行社会保障制度が破たんするのは確実な状況であり、人口減少社会進展に伴う労働力不足対策としては、働く意欲がある高齢者と女性の活用が急務である。

一方で、政府は同時に景気回復策も推進している。安倍内閣の経済戦略「アベノミクス」は日銀金融政策と共に経済成長(約2%インフレ率実現)を目指して各種政策を展開する。しかし、今後の人口減少社会の中で経済成長を単純に追うことには無理がある。インフレ目標も、同時に年金支給水準の増額調整と従業員給与のベースアップが不可欠で、非常に難しい。

戦後の日本経済は、バブル崩壊まで景気の波はあったもののほぼ右肩上がりに成長したが、その源泉は欧米に比べて低い国民生活水準の是正と人口増加に依存してきた。したがって、社会が成熟し人口が減少する日本にとり、従来同様の経済成長を求めることは幻想と言える。

さらに、バブル崩壊後に長期景気が低迷した要因は、不良債権処理などバブルの後始末で国民所得が増えずデフレスパイラルに陥ったことだけではない。1番の変化は、国民にとって3種の神器(テレビ、冷蔵庫、洗濯機)や新3種の神器(3C=カラーテレビ、クーラー、カー)など憧れの商品を競って購入した「モノの時代」から、既にスマホ普及率も8割を超え、欲しい物もあまりなく、むしろ豊かな環境や時間、文化、経験を楽しむ「ココロの時代」へとシフトしたこと。所得が増えなくなった人々は、立ち止まって足もとを見つめ直し、今の生活や将来目標、幸福感、生き甲斐などを考えた。その結果、高度成長期のようにただ闇雲に頑張る人は減り、「リア充」(家族、恋人、友人、仕事、趣味などにより現在のリアル生活の充実を求める)志向や、将来目標実現のために逆算して計画的に努力する人々などが増えている。

今後の日本はどのような方向性を志向すべきか? 答えは簡単だ。量から質への目標転換を図り、高付加価値、多様化ニーズ、ニッチ市場、心の満足などに応えることが重要だ。

今後、日本が目指すべき姿はかつての経済大国でも高度成長社会でもない。自動車やIT機器、医薬品でさえ、今や世界のどこででも作ることができる。今後、経済大国の座は人口が多い中国、インドが席捲する可能性が高い。日本は今後、世界が真似できないコアコンピタンス(競争優位性)をさらに磨き世界で圧倒的地位を確立すれば良い。それは、イノベーションを伴う高付加価値ビジネスやソフトパワー(おもてなしの心、アニメなどのサブカルチャー、ミシュランで最も星を獲得するグルメ、芸術など)であろう。

世界で最も幸せな国と言われるブータン王国は経済的には貧しくても国民は幸せを感じている。また、国連が今年3月20日「世界幸福デー」に発表した国別幸福度ランクは上位ノルウェイ、デンマーク、アイスランドの北欧勢が占めるが、日本は51位に甘んじている。「数字(量)」でアメリカ、中国に勝てないなら、日本は数字では表わせない心の豊かさや幸福度などプライスレスな「質」で世界一を目指すべきだろう。そのためにも、社会保障制度改革を成し遂げ、「漠然とした将来不安」を解消することが先決だ。

先頃、大和証券はこれまで上限70歳としていた営業担当社員の定年後再雇用の年齢制限を廃止するというニュースが報道された。経験と能力ある人材の活用がその目的。厚生労働省によると大企業で再雇用の年齢制限を撤廃するケースはまだ珍しいとのこと。

自民党安倍内閣は、我が国が今後超高齢化人口減少社会を迎えるなかで「一億総活躍社会」「生涯現役社会」の実現を打ち出しており、生産年齢人口減少による国民総生産(GDP)など経済力と生産性の維持を図るためにも、労働意欲のある高齢者と女性の活用を推進したいとしている。

ところで、この2月〜3月にも医薬医療業界関係者の知人数人から60歳定年による退職の挨拶状をいただいた。しかし、彼らの顔を思い浮かべたら、皆さんリタイアする年齢とは思えないほど若く、そんな年齢とは気付かなかった人もいた。

時代に合わない旧来の定年制度はもはや見直す時期にきている。これからは年金受給開始年齢も65歳となるが、未だに定年を60歳とする企業が多く、これらの企業は定年年齢を早急に65歳に引き上げるべきだ。

定年制度の意義を考えると、従来の人口増加が前提の高度成長社会においては、社会システムや人生設計上、次のようなものがあった。

@国民皆保険施行時(昭和36年)の日本人男性の平均寿命は66歳だったため、平均10年に満たない余生(第二の人生)をゆっくり過ごしたい(過ごして欲しい)という願いの実現A社会においては職業と所得の機会を若い人に再配分する効果B企業においては役員や幹部ポストを適切なタイミングで後進にバトンを引き継ぐことにより、若手社員のモチベーションを高める効果C企業経営面からは給与水準の低い若手社員に入れ替わることで労働力コストに一定のキャップがかかる効果─などである。さらに、平均寿命が今より約15歳短い時代には、人々は還暦を迎える頃には体力・気力の衰えが感じられたかもしれない。

しかし、状況は変わり人生80年時代になると、これまでの定年制度は日本の社会保障制度(国民皆保険・皆年金制度)と同様、最早時代に適合せず矛盾が感じられる点が多い。さらに、今でも、50歳、55歳を対象に早期退職制度(緊急リストラでなく正規の人事規定)を持つ企業があるが、これに至っては時代錯誤も甚だしいと言える。

これからは、65歳定年制度と併せて年齢上限を設けない再雇用制度を導入すべきだろう。年金受給開始年齢到達の時期に第2の人生をスタートさせる仕組みを設けることだ。まず、今後も働き続けるか、リタイアするかを選ぶ。働き続けたい人は、同じ職場で経験や知識を活かすか、もしくは起業も含め新しい仕事に挑戦するかを判断し選択する。仕事より家族や地域とのつながりや趣味などの時間を持ちたい人はそうすれば良い。

資源の少ない日本において、労働需要と供給のアンマッチから資源(労働余力)を活用しきれていないとしたら、貴重な資源をドブに捨てているのと同じで、本人・家族、企業や社会、国家のどの観点からみても大変「もったいない」。さらに、政府は健康寿命延伸を図っており、働く意欲がある元気な高齢者は今後益々増加するはず。

天然化石資源が少ないと言われた日本にも近年、領海領土内に天然ガスやメタンハイドレートなどの埋蔵が確認されつつあるが、その活用と商業化にはまだ高いハードルが残る。一方、これまで活用できていない労働力資源(高齢者と女性)は目の前にある。その潜在力の掘り起こしこそ急務であり、日本が世界に先駆けて迎える少子高齢人口減少社会に対する処方箋として、諸問題解決の糸口となるはずだ。

日本チェーンドラッグストア協会(JACDS、青木桂生会長)は今年2月23日開催の常任理事会で次世代ドラッグストアビジョン「ドラッグストアが求める健康サポート機能」を策定、3月3日に東京虎ノ門の協会東京事務所で開催した記者意見交換会で公表し、3月24日にJAPANドラッグストアショーでも宗像守事務総長が緊急会見の場を設けてビジョン実現への思いを熱く語った(本号12面および本紙平成29年3月15日付第466号19面に関連記事掲載)。ビジョン内容はすばらしいもので、ドラッグストアが生活者から求められるべきニーズや理想が網羅されており、ぜひ実現を期待したい。

次世代ビジョン策定の背景は、これまで低価格販売をメイン戦略として右肩上がりで成長してきたドラッグストアの業績が鈍化傾向(正確には二極化)にあること、また飽和状態にあるコンビニエンスストア(CVS)が再成長のために「健康」「介護」「美容」などドラッグストアのメイン市場に侵食する動きがあることなど。また、ネット販売業者やCVS以外の異業種も今後の成長期待から「健康・長寿・美容」市場への参入も予想され、ドラッグストアは現状に甘んじて進化を止めようものなら現在のパイを異業種に奪われてしまう可能性が高く、その将来不安から策定されたものとも言える。

最大のライバルをCVSとした場合、ビジネスモデルにおける両者間の違い(差別点)は何か? CVSの最大特徴「効率性」に対してドラッグストアは「専門性」である。従業員もCVSは単純作業が主なためアルバイト、パート中心で、外国人も多く雇用するが、ドラッグストアは各店に社員のほか薬剤師、登録販売者、様々なアドバイザーなど資格者や専門家が必要で、会話接客に不安がある外国人従業員は少ない。そのため必然的にドラッグストアの人件費は高くなる。

この両者の違いから、ビジョンの狙いはCVS的利便性を確保しつつ、ドラッグストアが最大の差別的特徴である専門性を徹底的に追及して、他の追随を許さない地位確立を図ること。しかし、それを追求すればするほど、これまでドラッグストア成長の原動力となった低価格大量販売による「安い、早い」のファーストフード的ビジネスモデルから脱却し、「納得価格、必要に応じ丁寧に時間をかけ対応」と、従来の正反対に近いレストラン的ビジネスモデルを志向することになる。

そのために必要なのは人材・教育への投資拡大と、「売上げ、効率主義」から「顧客満足第一主義」へのマインドセットの転換。ドラッグストアが地域密着ビジネスを展開し圧倒的信頼を得るためには、従来の小売業(物販業)のままでは難しい。

ドラッグストアが真の「健康ハブステーション」を実現する日には、ドラッグストアは産業分類(大分類)が「小売業」から「サービス業」に指定が替わっているかもしれない。その日が一日も早く来る事を願う次第だが、規制緩和などの制度変更や薬剤師の意識改革以前に、まず必要なことは、経営者がこれまでの成功体験に固執せずゼロベースで事業革新を断行する覚悟を持つなどの意識改革だろう。

公共放送NHK(日本放送協会)までもが誤りを犯してしまった。NHK総合テレビ2月28日放送の人気バラエティ番組「ガッテン!」(旧番組名「ためしてガッテン」)の特集「最新報告!血糖値を下げるデルタパワーの謎」のなかで、「医療用睡眠薬を服用すると血糖値が下がるため、糖尿病の治療や予防ができる」と結論づけて放送されたことだ。

もとより、医療用睡眠薬には「血糖値を抑える」効能効果が認められていないため、それだけでも適用外使用となるほか患者にとっても副作用による健康被害を受ける可能性がある。こんな無法行為をNHKが公然と行なうとはお驚きで、番組内容チェック機能すら働かないお粗末ぶり。

さすがにこれほど非常識な内容だったため、日本神経精神薬理学会などの医療関係団体が即刻抗議、厚生労働省も厳重注意した。これを受けて、3月1日放送の同番組冒頭、小野文恵アナウンサーは「説明が不充分だったり、行き過ぎた表現があったりしたため混乱を招いてしまいました」と陳謝。しかし、「説明不充分」「行き過ぎた表現」などと、表現手法の誤りとしてこの問題を済ませようとするのであれば、HNKは事の本質を理解していないし、再び同じ誤ちを犯しかねない。

医療用医薬品は、医師が疾病治療のため、その効能効果に従い適切に処方するとともに、薬剤師がきちんと説明を行ない、患者はその薬の働きや用法用量を理解して適正使用に努めなければいけない。NHKはこの医療用医薬品の基本中の基本すら理解していなかった。さらに、医療用医薬品は健康保険や税金で賄う国民全体の財産であり、適応外使用や薬物乱用を助長するような発言は公共機関として決して許されない。

もし、NHKが特定の睡眠薬に他の血糖降下薬以上の優れた作用を見出し、同剤の糖尿病への適用拡大を図ることが社会利益に資するという高い志を持つのであれば、製薬企業や研究機関と組み、正式な臨床試験を行なうのが筋である。

これはNHKに限ったことではない。超高齢社会の中で一般視聴者や読者を対象とした番組や記事は、視聴率や部数に直結するキラーコンテンツとして健康情報を採り上げることが多いが、新たなトピックスは当然、学会論文や企業発表レベルの情報が大半を占める。新たな知見や新しい学説は長期間の使用経験や、統計学的に有意な大規模臨床試験を経ておらず、動物レベル、細胞(試験管)レベルの場合が多い。最近、医師が実名入りで登場する番組や記事も、学会で定まっていない事柄は、医師によって見方や考え方も様々であり、1人又は数人の医師の話を聞いてそのすべてを盲信すべきではない。さらに多いのは健康食品の宣伝で、違反すれすれの際どい表現や、信用度の低い「個人的感想」を連発する広告も見苦しい。

テレビ番組や新聞雑誌記事に踊らされないためには情報の受け手である視聴者や読者が賢くなるしかない。薬機法第1条の6において、「国民は医薬品等を適正に使用するとともに、有効性安全性に関する知識と理解を深めるよう努めなければならない」と規定されたことを契機に、国、業界、医療関係者が啓発活動を行なうことが重要だ。

先日、地方の知人宅(高齢者)を訪問した際、電話機近くの壁に「その電話、詐欺かも!」と注意を促す札が貼られていた。生活者1人ひとりが自覚をして情報を選別評価できるようになる必要がある。それとも、テレビの前に注意札「その情報、ウソかも!」を貼りますか?

2017年02月15日

「やはり現金問屋だ!」。

厚生労働省は2月1日付けで、C型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」(以下「ハーボニー」、ギリアド・サイエンシズ)の偽造品が流通したことについての調査報告書を公表した。「ハーボニー」の偽造薬は今年1月以降に奈良県と東京都で相次ぎ発見された。1月6日に奈良県を中心に調剤薬局チェーンを展開する滑ヨ西メディコの「サン薬局」で同剤処方を受けた患者が錠剤の異変に気付き、1月10日ギリアド社に照会して発覚。関西メディコは昨年5月から正規の医薬品卸であるスズケン以外に、一般に現金問屋と呼ばれる東京と大阪の医薬品卸売業者4社から「ハーボニー」を仕入れていた。日本国内の医薬品流通で、偽造薬の混入リスクがあるとしたら現金問屋経由だろうという懸念が現実となってしまった。

厚労省がギリアド社ほかに依頼して中身を調査したところ、正体は「ハーボニー」とは外見の異なるビタミン剤や漢方薬で、偽造薬というにも非常にお粗末なものであり、これはむしろ不幸中の幸いだった。もしも、外見もそっくり似せて巧妙に作られた偽造薬だったら発見が遅れ、患者も服用効果がないばかりか、健康被害を受けていた可能性がある。

現金問屋は医薬品メーカーや医薬品卸企業から仕入れるほか、薬局などの医療機関から余剰在庫となった医薬品が持ち込まれるケースがある。一般用医薬品を換金目的で個人が持ち込む場合もあり、ドラッグストアなどでは発毛薬「リアップ」(大正製薬)など高額品の万引き被害が後を絶たないが、その遠因ともなっている。

これまで、日本では偽造薬が問題化することはほとんどなかった。背景は、日本の医薬品流通は厳格な管理のもと、メーカーから卸企業を経て薬局に納入され、偽造薬が混入する余地がなかったため。個人輸入された「バイアグラ」などED薬を調査したら約40%が偽造薬だったとの報告があるが、ED薬も国内において正規の病院で処方される薬に偽造薬はあり得ないとされた。しかし、「ハーボニー」事件の発生により、このままでは日本の正規ルートで流通する医薬品の信頼も揺らぎかねない事態となっている。

「ハーボニー」の薬価は現在1錠54,796円90銭。反社会的組織が危険を冒して偽造防止対策が施された偽札を刷るよりも、医薬品の錠剤や容器を本物に似せて作る方が簡単だろう。しかも、1万円札よりも1錠薬価が高い薬が多数ある。今後、バイオなど最先端技術を用いた高額薬が増加する見込みで、偽造薬ビジネスの魅力も高くなる。

偽造薬混入防止のためには医薬品流通システムのさらなる厳格化が重要。現在は現金問屋が流通上の弱点であり、買い入れ時の商品と持ち込み者の厳格なチェックが必要だ。また、医薬品の単品レベルでのトレーサビリティ強化も不可欠。一方、正規ルートといえども内部犯行が起こる可能性も排除できないため、性悪説に基づき全ての混入機会を疑いチェックする仕組みも必要だろう。現金を厳重に管理している銀行でさえ、行員による横領などの不祥事は後を絶たないのだから。

医療用医薬品は国民皆保険で償還される社会的財産であり、医薬品産業に携わる全ての人は、公職とも言える社会的責任を自覚しなくてはならない。仮に、従業員が反社会的組織と通じて正規品と偽造薬をすり替えるような事件が起きたら大混乱が生じ、医薬品産業の信頼は失墜するだろう。医薬品流通は、銀行の金銭同様に一錠たりとも間違わない厳格な管理が求められる。

現在、卸企業はMS1人が軽自動車やハイブリッドカーで担当地域の医療機関を巡回するが、今後は警備会社の現金輸送車レベルのセキュリティーが必要になるかもしれない。

昨年(平成28年)は申年(丙申、ひのえざる)で「形が明らかになり発展する」の意味があった。「形が明らかになる」はこれまで見えなかったものが見えてくること。また、相場の世界で申酉は「騒ぐ」年とされ、大きな出来事が起こり荒れることも多い。

昨年は、6月24日にイギリスで国民投票が行なわれEU(欧州連合)からの離脱を決定した「ブレグジット」、11月8日に行なわれたアメリカ大統領選挙ではドナルド・トランプ候補がヒラリー・クリントン候補に勝利し次期大統領就任が決定。両選挙とも各陣営の支持勢力は拮抗するも大方の事前予想を覆す結果となり、従来見えていなかった既存体制に不満を持つ人々の声とポピュリズムにより煽動されたパワーが一気に噴出、予想外の結果を生み出した。

これら事例も含めて昨年はマンガ的出来事が多かった。IS(イスラム国)が宗教的イデオロギーを核に、現実社会に不満を持つ世界の若者を戦士として集め、戦争を通じて領土を拡大して一大国家を形成しようとするストーリーもマンガ的だ。スポーツの世界でも、プロ野球日本ハムファイターズの大谷翔平選手は7月3日のソフトバンクホークス戦で先発投手兼一番打者をつとめるとプレイボール直後の初球をホームラン、その1点を守り勝利投手となったこと、セ・リーグで優勝した広島東洋カープの「神ってる」大進撃、リオ五輪陸上100b×4リレーで10秒台の記録しか持たない日本の4選手(桐生祥秀、飯塚翔太、山縣亮太、ケンブリッジ飛鳥)が37.60秒のアジア新記録を樹立してアメリカやカナダチームに競り勝ち銀メダルを獲得したこと、12月18日に横浜国際総合競技場で行われたサッカー・クラブワールドカップ決勝戦でも日本の鹿島アントラーズが総年棒で10倍もあるスター軍団レアルマドリード(スペイン)と対戦、柴崎岳選手が2ゴールしてレアル選手を茫然とさせたプレーもマンガ「キャプテン翼」を彷彿させた。

ひるがえって、医薬産業でも夢のような革新的治療薬が生まれた。C型慢性肝炎治療薬「ソバルディ」「ハーボニー」(ギリアド・サイエンシズ)や抗がん薬「オプジーボ」(小野薬品工業)が患者の症状を劇的に寛快や治癒する報告がある。しかし、これらの薬はその高額薬価から財政面で敵視され、「ソバルディ」「ハーボニー」は31.7%(昨年4月1日付)、「オプジーボ」は50%(今年2月1日付)の大幅薬価引き下げを決定。特に、「オプジーボ」は政府が一刻も早く薬価を引き下げるため、通常改定時ではなく例外かつ臨時で引き下げられることになった。さらに、政府は今後も「臨時」「例外」的対応を取らなくてもすむよう、毎年薬価改定ルール導入を年末ぎりぎりで決定した。

このように、昨年はマンガ的、例外的、奇跡的なことが政治、経済、社会、スポーツなど各界で頻発したが、新年は昨年の成果や結果、新ルールが既成事実となり、これをベースに再スタートが切られる。マンガ的世界から現実(リアル)世界にシフトし、各社は競争を展開することになる。新たな時代において各企業が生き残る道は、環境変化をいち早くとらえる「変化対応型」とオンリーワンの伝統的技術や差別的優位点(ニッチビジネスも含む)で勝負する「頑固職人型」の二つに大別できるかもしれない。

今年の干支(十干十二支)は丁酉(ひのととり)。新たなものが生れ、競争も激しくなると言われる。大幅躍進は難しい半面、今後の成長のための画期的なことが生まれる可能性がある。昨年の大きな変化(世界の構造、政治、制度など)を受けて、その中でいかに自らの産業や企業を今後の成長に導くか? そのための勝負の年が始まった。

プロ野球チーム「横浜DeNAベイスターズ」を傘下に持つDeNA(ディー・エヌ・エー、守安功社長)は12月7日に記者会見を開き、同社のヘルスケア情報キュレーション(まとめ)サイト「WELQ」(ウエルク)で他メディアからの転載やコピーペースト(切り張り)記事掲載による著作権侵害疑惑、「がんに効く」などの効能効果をうたい健康食品販売サイトに誘導する薬機法違反疑惑、クラウドソーシングを通じ募集した素人ライターへの記事発注(1文字50銭とか?)など不公正な事業運営について、守安社長が同社創業者の南場智子会長とともに謝罪した。

10年前の平成18年(2006年)に起きたライブドア(堀江貴文当時社長=ホリエモン)粉飾決算事件と同じく、生き馬の目を抜くほど急速に発展した新興IT企業の不祥事で、両企業ともプロ野球球団経営に興味を示すなど共通点も多い(ライブドアは当時の大阪近鉄バファローズ買収を試みたが頓挫、その後楽天とともに新球団設立に名乗り出るも失敗に終わった)。両社とも新興IT企業として投資家からの高い業績向上期待を受け事業拡大に焦ったことが不祥事の原因となった。

DeNAは元々インターネットオークションサイト(モバオク)やゲーム配信サイト(モバゲー)を中心にM&Aや事業買収を通じ事業を拡大、発展してきた。昨年度連結売上高は1,424億1,900百万円、連結営業利益247億6400万円と日本を代表するIT企業に成長していただけに、不祥事発覚による同社企業イメージ失墜はもとより業界全体の信頼低下など派及する影響も大きい。

問題が発覚したのは昨年10月開設した「WELQ」掲載情報について、今年の秋以降「記事内容が不正確」「不適切な引用がある」「薬機法違反では?」「患者不安を煽る」「健康被害が出る」などの指摘や批判が一斉に起きたこと。掲載記事の中には、肩こりの項に「肩が重いと感じるのは霊が憑き肩におぶさっているからで、霊的なトラブルを抱えた人に起こりやすい」など科学的根拠が一切ない出鱈目な記述さえあった。また、「当社は記事を掲載するだけで、内容についての責任は一切負わない」とする無責任な企業姿勢も批判に拍車を掛けた。これを受け、同社は11月24日から専門家に監修を依頼して不適切な記事を削除すると発表。しかし、対応は遅きに失し、同問題がテレビニュースなどでも扱われ「WELQ」は閉鎖せざるを得なくなった。さらに問題はこれに止まらず、ファッション、インテリア、旅行など同社のキュレーション全9サイトとも同様疑惑から閉鎖に追い込まれた。

現在、テレビの深夜枠やBS(衛星)放送では健康・美容食品や同関連機器の通販広告や通販番組が花盛りだが、薬機法により効能効果をうたえないため真偽の判らない体験談や法律抵触ぎりぎりの表現で効能効果を匂わせる事例が多発。一方、需要者は「藁にもすがる思い」で健康や美容の悩み解決を願っている。その中で、健康・生命関連企業は高い倫理性を持ち、真に需要者が満足できるエビデンスに基づいた商品のみ販売すべきだ。

商いは三方一両得(買い手良し、売り手良し、作り手良し)でなければ長続きしない。目先の利潤を追求してなりふり構わないビジネスは早晩淘汰される。医薬医療品業界でも最近百周年を迎えた森川産業、イワキ、佐藤製薬など老舗企業各社には目先の利益に捉われない顧客第一志向、高品質高付加価値(商品・サービス)提供など共通点が多く、各社とも地に足をつけたビジネスを展開している。

平成29年正月を目前に、子供が新年に興じる「いろはかるた」などの諺がビジネスの基本にも通じることを再発見した。()「急いては事を仕損じる」 ()「念には念を入れよ」()「急がば回れ」(故事、いろはかるたは「犬も歩けば棒に当たる」)など。

皆様、どうか良い年をお迎えください。

自由民主党の「財政再建に関する特命委員会」(茂木敏充委員長)に設けられた「2020年以降の経済財政構想小委員会」(小泉進次郎小委員長代理)は、10月26日に提言「人生100年時代の社会保障へ(メッセージ)」を発表、その中で「健康ゴールド免許」構想を打ち出した。同提言は、従来の社会保障制度が戦後の高度成長期に策定されたもので「20年学び、40年働き、その後20年老後を過ごす」という画一的な生涯設計モデルに基づくものとして、少子超高齢人口減少社会においても将来にわたり社会保障制度を持続可能とするための方策を提示した。提言は@勤労者皆社会保険制度の創設A年金受給開始年齢の柔軟化B健康ゴールド免許の3本柱で構成されている。

提言の中では「健康ゴールド免許」が非常に大胆な提案であり検討に値する。その考え方は、自動車運転免許制度に無事故無違反運転者へのインセンティブ(簡素な更新手続き、有効期限が長期など)があるように、健康保険制度にも健康増進や疾病予防に努める人々にはメリットを付与するというもの。健康診断の定期的受診による病気の早期発見や禁煙をはじめ健康増進を心がけて自助努力する人には、病気になった時の医療費自己負担額割合を低くする。加えて、スイッチOTC薬など薬局等で購入できる薬は全額自己負担するように公的保険の範囲を見直すべきとしている。

国民皆保険制度はこれまで世界に誇る素晴らしい医療保険制度とされたが、このまま医療費が高騰し続けると現在の形での持続は不可能となり、これまでの薬価引下げ中心の診療報酬見直しに加え、高齢者や高所得者に対する医療費自己負担分の上限引上げ、かかりつけ医以外を受診したときの追加負担等を導入したところで「焼け石に水」の状況。現行制度維持のためには消費税率の20%以上への引上げが必要との試算もある。

問題の根底にあるのは、これまで日本人が「自分の健康は国が守ってくれる」という公助感覚に浸っていたことであり、もはやこれを脱して「自分の健康は自分で守る」という自助意識を国民全てが持つ必要がある。良い先例は、我が国の金融界においてペイオフ制度が導入され、平成14年4月から一金融機関当たり預金1千万円とその利息分しか払い戻しが保証されなくなったこと。それまでは政府が預金全額を保証したが、同制度の導入により、預金については全面的に自己責任が問われることとなった。同制度がスムーズに定着したのは、「自分の財産を失いたくない」という一心で自己防衛を余儀なくされたため。それならば、自分の健康についても同様な意識改革は可能ではないだろうか?

また、「予防」「健康増進」へのインセンティブが働けばセルフメディケーションも自ずと進むはず。その結果、国民の健康リテラシーが向上し、結果として医療費抑制と医療の効率化が進むだろう。医療関係者からは「受診抑制につながる」との反対意見が出るだろうが、現在はむしろ過剰受診や過剰投薬の方が社会問題となっている。また、新制度導入に当たっては試行期間と検証作業は不可欠である。

同提言の意義は社会保障制度の抜本改革を行なおうとすること。これが今後議論されていく中で、総論賛成各論反対の状況は目に見える。しかし、関係者間で利害調整を図りながら現行制度のつぎはぎをさらに重ねるようでは問題の先伸ばしに過ぎない。そうならないためにも、国民に丁寧に説明し理解を求めながら世論構築を図る必要がある。

同提言の結びでも、超高齢人口減少社会が進展する我が国の現状を悲観するのではなく、システムを抜本的に見直すことでチャンスを見出し、日本の強みに変えることが必要である、と述べられている。我々は苦境にあってこそ顔を上げ、新たな切り口の打開策を考え、チャレンジしないことには、状況は好転するどころか悪化の一途を辿るだけだろう。

天皇陛下は8月8日、ご自身の生前退位を示唆する個人としてのお考えを公表された。現在82歳の陛下はご自身の高齢に伴う体力低下により、多忙かつ重要な公務に支障が生じることをご心配されたようだ。

生前退位問題は、国会では特例法での対応を検討するとともに、皇室典範を含む法律改正なども含めた今後の天皇制のあり方などについても議論する予定。しかし、医療技術の進展とともに超高齢化が進む中で、一生天皇であり続ける現行法制下では今後代々の天皇陛下の年齢も益々高齢化することが予想される。そうなると、次の天皇が即位する時の年齢も上がっていく。皇太子殿下も現在56歳であり、今後即位する新天皇は皆60歳以上になる可能性すらある。

一方、超高齢社会の進展にともない国民医療費増加が社会問題となっている。厚生労働省が発表した平成27年度概算医療費は前年比3.8%増加して約41兆5,000億円となり過去5年間で最大の伸び率となった。医療費が大幅に伸びた要因は調剤が7兆9,000億円で9.4%増と突出しており、相次ぐ高薬価医薬品、特に昨年度は慢性C型肝炎治療薬「ソバルディ」「ハーボニー」(共にギリアド・サイエンシズ)の使用増加によると思われる。今年の薬価改定で両剤は特例再算定を受け薬価を大幅に下げられた。その後、抗がん剤「オプジーボ」(小野薬品)が非小細胞肺がんへの適応拡大とともに薬剤費の大幅拡大が問題となり、同剤は来年にも臨時特例再算定を受ける見通し。しかし、このような「モグラ叩き」的な対応は一時しのぎで、抜本的対策なしには問題解決とならないことは明白で、革新的新薬に対する薬価叩きが続くようでは、日本は革新的創薬開発のグローバル競争から取り残されることになりかねない。

国民皆保険制度を維持するためには、歳出抑制と歳入増加の二つしか手はない。歳出抑制は薬剤費を含む診療報酬全体の中で医療の効率化と適正化の検討が進められている。収入拡大は現在高齢者医療費の見直しが議論されている。医療アクセス維持と分配の公平性を担保する中で、一定以上の収入のある高齢者に対しては相応の負担要請と高齢者に限らず高額医療費給付制度を見直すことにより、支払い能力のある人々にはこれまで以上に負担を求める内容。

国民皆保険制度を導入した昭和36年の日本人平均寿命は男性66.03歳、女性70.79歳だった。それが昨年は男性80.79歳、女性86.83歳となり、男女とも約15歳寿命が延びた。当時は60歳の還暦になると立派な高齢者だったが、それが現代では75歳の後期高齢者年齢に到達することが同様な意味合いを持つと思われる。

皇室典範などの天皇に関わる法制度も国民皆保険制度も制定された時期が古く、現在は社会的経済的状況が全く異なるのだから、国民皆保険制度維持を図るためには時代に合わせた見直しが急務だ。総論賛成各論反対の状況で利害調整に時間を費やしていると、日本もギリシャやアルゼンチンのように経済的破たんを招きかねない。小説のように「日本沈没」が自然の力によるものなら抗いようもないが、日本の社会経済がタイタニック号のように沈没していくのを手をこまねいて見ているようでは愚の骨頂だろう。

国民皆保険制度(皆保険制度)は我が国が世界に誇る社会保障制度であり、同制度は日本が世界最高の長寿国であることと、世界最先端医療の実現に大きく貢献している。同制度の特長は@国民全員を保障する公的医療保険A医療機関や医療内容を自由に選べる(フリーアクセス)B一部自己負担で高度医療を受けられるC保険料と自己負担のほか税金で補てんされる─など。

しかし、この誇るべき皆保険制度の今後の持続性に暗雲が漂っている。日本が高度成長期だった昭和36年に施行された同制度は日本の人口と労働者賃金の継続的上昇を前提とする制度であり、賃金が伸び悩み、人口も減少に転じた現在はその持続条件を満たせなくなっているから。また、超高齢社会の進展による医療ニーズ増大と慢性疾患増加など疾病構造変化は医療費高騰を招いている。

昨年来、さらに医療費の大幅増加要因として高薬価新薬問題がクローズアップされた。発端となったのは、ギリアドサイエンシズが昨年5月発売したジェノタイプ2型C型慢性肝炎治療剤「ソバルディ」と7月発売のジェノタイプ1型C型慢性肝炎治療配合剤「ハーボニー」。また、小野薬品工業が平成26年7月発売したヒト型抗ヒトPD-1(免疫チェックポイント阻害剤)モノクローナル抗体抗がん剤「オプジーボ」(当初取得適応は悪性黒色腫)は昨年12月に非小細胞肺がんの追加適応が承認され、それにより対象患者数も大幅に増加したため「保険財政の破たん危機!」と週刊誌などで大きく報道された。

薬価は「ソバルディ錠400r」が昨年発売時1錠67,799円30銭、「ハーボニー配合錠」同80,171円30銭が、今年4月の薬価改定で特例拡大再算定を受け「ソバルディ」42,239円60銭、「ハーボニー」54,796円90銭と31.7%もの大幅引き下げとなった。「オプジーボ点滴静注100r10ml」薬価は729,849円。各々の年間薬剤費をみると「ソバルディ」355万円、「ハーボニー」460万円、両剤は12週間投与でほぼ完治する。一方、「オプジーボ」は年間約3,500万円となり継続的治療も必要。「保険財政破たん」と報じられたのは、「オプジーボ」を5万人とされる非小細胞肺がん患者に使用すると年間1兆7,500億円もの薬剤費が必要と試算されるため。さらに、今後の新薬開発は高薬価となるバイオ医薬品が主流になる見通しで、高額薬対策のルール作りは急務である。

しかし、「ソバルディ」「ハーボニー」登場により、これまで不治の病として一生薬物治療を要し、肝硬変、肝がんに進むと死亡リスクが高まる慢性C型肝炎は一転して治る病となった。医療イノベーションの実現は、患者QOL向上のほか総医療費軽減、延命による社会経済的効果も莫大で、一時的な高額医療費支出と比べる事が出来ないほどの恩恵がある。がん治療も「延命のための治療」から「完治可能」へと進歩すればそのベネフィットは計り知れない。「オプジーボ」は今後の薬価改定で再算定が適用される見込みだが、それは適応拡大により対象患者数が急増した結果への措置であり、高額薬価そのものを目の敵とした議論は不毛だ。

製薬企業が難治疾病患者の救命とQOL改善のために行なう研究開発活動は「人類と病との戦い」への果敢な挑戦であり、それを支援するためには現在の皆保険制度をはじめ社会保障制度の枠組みを変えることも厭わない決意が必要だろう。

現在、ブラジルではリオデジャネイロオリンピック・パラリンピックが開催中。地球の裏側の日本でも連日衛星中継放送でテレビの向こうの熱戦にエールを送りながらメダルの行方に一喜一憂し、毎日人々の話題を独占している。そして、リオ大会が終わると4年後の2020年は東京の番となり、これから競技場をはじめ施設の建設整備が本格化するなど、いよいよ開催へのカウントダウンが始まる。

一方、日本政府は近年、観光立国を目指して訪日観光客数拡大のために様々な取組みを展開。その結果、昨年の訪日観光客数は前年比約50%増の1974万人を記録、それまで2020年目標だった年間千万人を4年前倒しでほぼ達成した。政府は今後も訪日観光客数のさらなる拡大を図る方針で、4年後の東京オリンピック・パラリンピック開催年に4千万人以上、さらにその10年後の2030年には6千万人の目標を掲げている。

また、昨年の訪日外国人によるインバウンド消費額は約3兆4700億円にのぼり、これはGDP伸び率(0.4%)のうち半分の0.2%をインバウンド需要が押し上げた格好。政府推計による今後のインバウンド消費金額は2020年8兆円、2030年15兆円と更に増加し、昨年の日本人の国内旅行消費額約20兆円に迫る見通し。今後の人口減少社会進展を考えると、訪日外国人のインバウンド消費は日本経済を下支えする大きな力となりそうだ。

昨年来、中国人訪日観光客によるインバウンド消費(爆買い)が注目された。テレビ画面に映ったその様子は、店舗のショピングカートに入りきれないほど同一商品を大量に購入したり、商品をダンボールケースごと買い占めたり、凄まじい光景だった。医薬品、医療品関連の爆買い対象商品は、12神薬と呼ばれる一般薬(雑貨含む)、「雪肌精」(コーセー)に代表される化粧品、ベビー用品(紙おむつ、粉ミルク等)など。

訪日外国人に日本製品の人気が高い理由は、第一は品質が高く安全安心なこと。第二は効果が高い、使い勝手が良いなど製品自体の性能(機能性や付加価値の高さ)。第三はおしゃれ、かわいい、かっこいい、クールなど優れたデザインや製品イメージ。

さらに、第四の魅力が製品の内側に隠されている。それは、東京オリンピック誘致活動プレゼンテーションでも有名になった、滝川クリステルの決め台詞「お・も・て・な・し」の心(ホスピタリティ)である。日本市場は様々なカテゴリーで熾烈な企業間競争が展開され、その結果、新製品開発や製品改良が頻繁に行われている。発売されるニューモデルは単に目新しいだけでは売れず、よりユーザーに感動や満足感を与えなければリピートしてもらえない。したがって、新製品の成否の鍵は「お・も・て・な・し」の心が如何にユーザーに届くかで、そこにメーカーの製品開発競争のつぼがある。「ものづくり」の技(クラフトマンシップ)と通じるものもあるだろう。

一方、日本製品の品質の高さは世界的に定評があるが世界で実力通りの評価(シェア)を獲得できていないものも多い。日本を直接体験する訪日外国人には日本製品の良さを理解されると思うが、その人数が増えているとはいえ世界全体から見れば微々たるもの。日本製品の真価を世界に伝えきれていないとしたら本当に「もったいない」。優れた国内メーカーには様々な手段を駆使して「お・も・て・な・し」の心を世界に発信してもらいたい。

(一財)日本ヘルスケア協会(JAHI。大西隆会長)は6月30日に活動方針発表会を開催。同協会発起人である宗像守同協会事務総長は基調講演の中で「政府が超高齢社会の中で国策として様々なヘルスケア推進策を立案、産業側もこれに対応してヘルスケア推進を試みるが、ことごとく抵抗勢力の反対で実現に到っていない。国民の健康寿命延伸、産業育成による経済貢献、医療費高騰抑制のために関係者が一致団結して活動推進する。世界最速で超高齢社会を迎える日本は、世界にその解決策を示す必要がある」と同協会設立の狙いを述べ、使命遂行への意気込みを力強く宣言。また、当日の活動方針発表会を通じて、遂に同協会の全貌が明らかになった。

日本ヘルスケア協会は、我が国におけるヘルスケア振興を産業側(日本ヘルスケア産業協議会)と学術側(日本ヘルスケア学会)両方の視点を取り入れ、第三者的立場を担保して公平公正、科学的に方策を模索、研究する組織とし、当局との折衝および政治力強化のために政治連盟やヘルスケア議員懇談会を組み込むなど万全の体制で強力に事業を推進する方針。幹部役員も超大物揃いで、会長は大西隆日本学術会議会長(豊橋技術科学大学学長)、理事長は松本南海雄日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)名誉会長(マツモトキヨシHD会長)、副会長は今西伸幸日本ヘルスケア学会会長(東京薬科大学理事長)、上原征彦日本ヘルスケア学会会長(昭和女子大学現代ビジネス研究所特命教授)、池野隆光日本ヘルスケア産業協議会会長(ウエルシアHD会長)を配し、発起人の宗像守JACDS事務総長は同協会でも事務総長として全体を監視し指揮を振るう。まさに、オールヘルスケア関係者が不退転の決意で業界改革、制度改革に望む姿勢を強く示した。

日本ヘルスケア協会の目的は「将来にわたる、元気な日本をつくる」、活動方針は「民間、国民主導のヘルスケアを実現する」である。元気な日本をつくるには、子供から高齢者までが健康で、未来に希望が持てる社会でなくてはならない。健康不安、経済的不安、少子超高齢社会や社会制度への不安など、安心して将来を描けない不安要素は多い。しかし、だからと言って貯蓄や生活防衛にばかり走っていては気持ちが滅入る。日本中に暗い気分が蔓延すると免疫力が低下して国民の健康レベルが低下、すると景気も悪化し更に不安が増すから、悪循環をどこかで断ち切らなくてはいけない。

7月10日投開票された第24回参議院議員通常選挙結果は、自民党安倍内閣が信任され経済政策アベノミクス継続が決定。そのため「健康寿命延伸」「一億総活躍社会」「安心して子育てが出来る社会」など国民が明るい希望を持ち日々努力できる社会を実現する目標は変わらない。しかし、その過程において痛みを伴う改革、変革は避けられないだろう。

是非、日本ヘルスケア協会は活動を通じて健康寿命延伸や医療費抑制、セルフメディケーション推進など山積する課題に対して確かな成果を連発してほしい。何より、明るい気持ちが持てる社会を取り戻すことが重要だ。経済活動が活発化し、安心して子供を産める社会が実現すれば、人口超高齢化、社会保障費高騰、一千兆円台の国家債務など多くの難問解決への糸口が見えてくるかもしれない。

安倍晋三首相は6月1日、消費税率10%への引き上げを平成31年10月に2年6か月延期する事を決定。これを受けて来年4月に予定されていた消費税率アップに伴う薬価改定は不要となり、3年連続薬価改定はなくなり医薬品業界関係者は一息ついた格好。しかし、平成31年10月の消費税率改定と翌年4月の通常薬価改定への対応など新たな問題も発生した。一方、消費増税延期で予定していた社会保障財源に不足が生じ、その補填も含め今後の薬価議論と次回診療報酬改定の先行きはさらに厳しくなりそうだ。

現在、国民皆保険制度を現状のまま維持することは年々難しくなりつつある。皆保険制度は、策定時の時代背景がそうであったように、国民総人口と労働者賃金の継続的上昇を前提とした制度だったため。また、国の税金による医療費支出は高齢者増加による患者数増化と疾病構造変化による慢性疾患増加により拡大の一途を辿っている。

さらに、追い打ちをかけるように超高薬価新薬の問題がクローズアップされた。近年発売されたC型肝炎治療剤、免疫療法抗がん剤などの革新的新薬は一人当たりの年間薬剤費が1千万円規模にのぼる。さらに今後、バイオ医薬品が次々登場しテーラーメード医療が発達すれば、少数患者を対象とした高い治療効率との引き換えに、新薬の価格は益々高くなるだろう。しかし、革新的新薬開発に対して巨額特例再算定のような制度で無理に薬剤費削減を図ると、今後、日本から革新的新薬は生み出されなくなるかもしれない。

皆保険制度を現状のまま維持することが不可能であるなら、我々は医療費効率化努力を継続する一方、皆保険制度など抜本改革が必要となる。それでは、どのような改革が必要か?

第1は、国民の意識改革。

「国民の健康は国任せ」は昔の話で、自分の健康は自分で守ることが原則。そのためには、国民が適正な情報にアクセスでき、きちんと自己管理できる環境整備が必要。野木森雅郁前日薬連会長の発言にあったように、地方自治体が子供の医療費を全額負担しているようでは健康の自己責任意識は芽生えないだろう。

第2は、高額医療費給付制度の見直し。

革新的新薬登場により治療期間を劇的に短縮したとき、例えば1か月の治療で病気が治っても患者自己負担上限が約10万円だとしたら、従来の治療法と比べてメリットは大幅に増えるが患者負担額が極端に低くなる。短期間の医療費が従来治療法による全期間の費用の何倍にのぼっても、である。対応策は、自己負担額徴収を医療費総額に応じて徴収期間を延長する(高額医療費分割払い)方式や、消費した医療費に応じて月々の健康保険料自己負担額を翌年増減する(自動車任意保険型料率改定)方式、またこれらの組み合わせなどが考えられる。

第3は、医療費自己負担割合の見直し。

自己負担3割で制度維持が困難であればさらに上げることも不可避。または、1律3割でなくケースに応じて増減する。例えば、セルフメディケーションで代替できる診療内容のとき、追加負担を求めるなど。この場合は、OTC薬類似品の薬剤費だけではなく、当該医療費全体の中で相応の負担を受益者(患者)に求めるべきだ。

従来の延長線上の施策で国民皆保険を維持するためには、健康保険料(自己負担、事業者負担)、医療費自己負担割合、国家負担分(財源は税金か国債発行)の全てに追加負担を迫り、制度破たんの危機を招く。そうなる前に患者・国民、医療関係者、産業側それぞれが納得して負担を分かち合う三方一両損の解決策を見出す努力が急務だろう。時間稼ぎした挙句、後世にさらなるツケを回すことだけは絶対に避けるべきだ。

2016年05月20日

小売業は多くの業種や業態で市場成熟化とともに競争も激化、企業業績も低迷している。特に厳しい小売業界はGMS(総合スーパー)、家電販売店、書籍・CD販売店などで、これら業種業態はネット販売やカテゴリーキラーと呼ばれる新規販売チャネルに顧客を奪われ市場縮小を余儀なくされている。

ドラッグストア業界も過去30年以上にわたり右肩上がりの高成長を続けてきたが、近年は成長が鈍化、業界関係者は「踊り場」という表現を使い高成長路線への復活を期待している。ドラッグストアはこれまで一般用医薬品や医療衛生用品以外に日用雑貨品、化粧品、食品などの商品販売を異業種、異業態から奪取しながら低価格販売とともに業績拡大を図ってきたが、現在はホームカテゴリーである医薬品、医療衛生用品などの販売もネット販売企業や家電販売企業などの異業種、異業態に脅かされる状況。

日本チェーンドラッグストア協会(JACDS。青木桂生会長)がこのほど発表した「平成27年度ドラッグストア実態調査」を見ると、昨年度売上高は6兆1千325億円(前年比1.0%増)、総店舗数1万8479店(同2.9%増)と増加率は共に近年縮小傾向にある。

一方、最近発表された上場チェーンドラッグストア企業(ウエルシアホールディングス(ホールディングス=以下HD)、キリン堂HD、サッポロドラッグストアー、CFSコーポレーション、スギHD、薬王堂)の平成28年2月期決算内容をみると各社業績好調で、特にウエルシアHD、サッポロドラッグストアー、薬王堂は二桁の増収増益を達成した。各社業績好調の要因は@新規出店効果Aインバウンド需要獲得B調剤事業の好調(高薬価品増加も寄与)など。したがって、当紙平成28年4月15日付第453号および本号8面〜9面で2号連載した「全国有力ドラッグストア企業トップ座談会」出席者の温度感覚も「業績は好調だから踊り場という感じはない」(池野隆光ウエルシアHD会長)の意見に代表されるように、「踊り場」という言葉は業績面よりも消費者ニーズ変化に対応するための転換期であることが出席者の共通認識のようだ。

しかし、上場各社業績は好調でも、今後ドラッグストアマーケットはさらに市場成熟化が進展する見込み。その中で有力各社は全国制覇を掲げてM&Aや大量出店を継続するため市場寡占化も進むだろう。将来的には医療用医薬品卸業界のように売上高1兆円を超すメガドラッグストア企業が複数出現しそうだ。有力候補は、マツモトキヨシHD、ツルハHD、ウエルシアHD、サンドラッグ、スギHD、コスモス薬品などだが、現在の市場規模からするとこれら全てが一兆円以上を達成することは不可能。コンビニエンスストア業界のように、ドラッグストアも最終的に3社〜4社のグループに集約されると見る向きもある。

JACDSはドラッグストア10兆円産業の目標を掲げて実現を目指している。市場拡大への期待要素は、@機能性表示食品や検体検査を始めとする予防カテゴリーAスマイルケア食品や在宅介護用品などによる在宅ケアカテゴリーB調剤事業など。これらを拡大強化して地域の健康ハブステーションモデルを確立する方針だが、規制マターも多く日本ヘルスケア協会やドラッグストア政治連盟など総力を結集して岩盤規制打破を実現しなくてはならない。各企業レベルでも生活者ニーズに対応した新規商品カテゴリーや新規サービスなどビジネスイノベーション(革新)に果敢に挑戦していくことが必要だろう。

一般用医薬品関連業界団体(メーカー、卸業、小売業、薬剤師・登録販売者など職能団体)は、必ず活動ビジョンや年間事業計画の最重要課題として「セルフメディケーション推進」をうたっている。では、逆に現状の日本の医療の中でセルフメディケーションの実践度はどれ位不充分なのだろうか?

第一は、「セルフメディケーション」という言葉の認知度が低く、5人に1人位しかその意味を答えられない事。日本語に訳すと「自己治療」「自己医療」などとなり、やはり解りにくいため役人や業界が「セルフメディケーション」という言葉を国民に押し付けている。しかし、特に高齢者は横文字専門用語にアレルギーを持つから「そんな言葉は知らない」となる。短く「セルメ」と若者調の略語に言い換える向きもあるが「スルメ」のようであまり使いたくない。その中で実態は、ほとんどの生活者が一般用の感冒薬やうがい薬、胃腸薬、外用消炎鎮痛薬を使っているから程度の差はあっても「セルフメディケーションを実践」している。同様に一般用医薬品を「OTC医薬品」と言わせるのも、薬がネットで購入出来る事、店頭でもカウンター越しに渡される薬が少ない事から少し無理がある。

第二は、一般用医薬品市場が近年縮小続きだったため、それがセルフメディケーションの後退と捉えられる。しかし、市場縮小の流れはドリンク剤や整腸剤の医薬部外品への指定替えによる市場定義の変更、医薬品と類似の効能をうたう特定保健用食品、機能性表示食品などの増加、法改正による第一類医薬品と要指導医薬品の販売ルート縮小などが主要因であって、生活者の健康志向は高齢化社会の進展に伴いますます高まっている。今や、セルフメディケーション市場のプレイヤーは一般薬メーカーだけではなく、一般薬メーカーが言う市場縮小はセルフメディケーション市場の一部に過ぎない。

それでは、日本のセルフメディケーションに欠けているものは何か? それは、生活者の「知識」と「意識」、それをサポートする「制度」の3つだろう。

「知識」は、近年の学校教育に「薬の授業」が採り入れられたが、先月くすりの適正使用協議会が公表した生活者調査結果をみると、「同様の効能効果をうたう医薬品と健康食品に違いがあると思うか?」の問いに対して、43.3%が「同じ」か「わからない」との回答で、正しく理解していなかった。薬や健康食品について正しい知識を身につけ、必要に応じて専門家のアドバイスも受けながら軽医療や疾病予防を行なうことが重要だ。

「意識」は、昭和36年国民皆保険が導入されたことで国民のセルフメディケーション意識が後退したと言われる。毎月健康保険料を支払っているのだから医療は国任せで良いという意識から脱却する必要がある。今年度から紹介状なしの大病院受診に追加自己負担金が科せられるようになったのもその流れだ。それだけに、セルフメディケーションの受け皿を担う薬局・ドラッグストアのかかりつけ薬局機能と受診勧奨を含む薬剤師のトリアージ能力強化が求められている。

「制度」は、税制面で一般薬の所得税控除制度が来年から施行されるが、それだけでは力不足であり、控除対象品目拡大と最低対象金額の引下げ、軽減税率導入の検討、一般用類似薬の扱い、保険医療範囲の縮小など様々な制度再設計の検討が必要となる。

この「知識」「意識」「制度」の変革が三位一体となることで、はじめて日本は真のセルフメディケーション社会実現に向けて進むことだろう。

2016年03月24日

厚生労働省は、すべての薬局を「かかりつけ薬局」にするため、今回の調剤報酬改定で「かかりつけ機能点数」の算定回数が年に10回未満の薬局についての調剤基本料を50/100にする措置を導入した。1年間の実績を見て来年4月に実施する。だが、かかりつけ機能とされた点数項目の1つである「調剤料夜間・休日等加算」はその時間に開局していて調剤すれば算定できるため、すでにかなり行なわれている。しかし、果たしてその程度の対応で「かかりつけ薬局」と呼べるものだろうか。

「かかりつけ機能」として厚労省は15項目の点数をあげている。その中心となるのは「かかりつけ薬剤師指導料70点(1回につき)」であり「かかりつけ薬剤師包括管理料270点(1回につき)」である。いずれも来局する患者が受診しているすべての保険医療機関と服用薬の情報を把握し、患者に対する24時間相談体制を取るなどの算定要件が定められている。ほかにも、薬局全体として取組みがにぶいとされる在宅患者訪問薬剤管理指導料など在宅業務、また、薬剤服用歴管理指導料の麻薬管理指導加算、重複投薬・相互作用等防止加算など1部でしか取組まれていない業務が並ぶ。

しかし、それら15項目の第1に挙げられているのは「調剤料の時間外加算等、夜間・休日等加算」である。時間外加算等は、開局時間以外の時間(深夜・休日を除く)、休日(深夜を除く)または深夜(午後10時〜午前6時)に調剤を行なった場合、所定点数の100分の100、100分の140、100分の200に相当する点数を加算するもので、算定回数は多くない。

一方、「夜間・休日等加算」は、午後7時(土曜日は午後1時)から午前8時までの間(深夜・休日を除く)、休日または深夜、当該薬局が表示する開局時間内の時間に調剤を行なった場合、40点を加算するもので、算定回数は多い。かかりつけ機能とされた15項目の点数で調剤基本料に対して1%を超える算定回数があるのは「調剤料夜間・休日等加算」のみである。

これだけ普及しているのは、薬局として対応しやすい点数であるためと考えられる。この数字は算定回数であり、薬局数でみた場合にどの程度普及しているかは不明だが普及していること自体は事実で、調剤基本料が50/100となるのを避けるために、「かかりつけ機能」とされた15項目のどれに対応すべきかと考えたときに飛びつきやすい点数でもある。

だが、この点数だけで年間10回の要件を満たす薬局が「かかりつけ機能」を本当に果たしたと言えるだろうか。他の項目で求められる内容からして大きな疑問だ。この項目を厚労省が組み入れたのは、すべての薬局を「かかりつけ薬局」へとする将来構想を見据えたアメと見るべきかもしれない。

しかし、アメであるにしても次回改定時にはより努力をしなければ届かないものになる可能性が十分に予想され、今回の措置を抜け道と捉えている薬局は次回改定時にあわてることになるだろう。

昨年12月16日、自由民主党と公明党による与党税制改正大綱が決定された。一般用医薬品業界団体の日本OTC医薬品協会(OTC薬協)が要望し厚生労働省から素案が提出された「セルフメディケーション推進のためのスイッチOTC薬控除(医療費控除の特例)」という新たな所得税控除制度創設は、財務省側に抑え込まれた結果、規模を大幅に制限されての導入が決まった。

平成29年から施行される制度内容は、一般用医薬品(昭和58年以降のスイッチOTC薬のみ対象)の年間購入金額が12,000円を超えた場合、超えた金額(最大88,000円)を総所得金額から控除するというもの。さらに、申請要件として検診または予防接種(特定健康診査、予防接種、定期健康診断、健康診査、がん検診)受診が必要とのこと。当然の事ながら、同控除を受ける場合、現行の医療費控除制度(年間10万円以上の医療費に対する所得税控除)は受けられない。厚労省原案は年間購入額1万円以上で、対象もスイッチOTC薬に限定しない一般用医薬品全般とされていた。

しかし、新制度を施行しても、その効果としてセルフメディケーション推進および一般薬市場活性化に結びつくとは到底考えられない。スイッチOTC薬だけで年間12,000円以上購入する人が一体どれだけいるだろうか?さらに12,000円を超えた分のみ控除対象となるため、同制度のメリットを受けられ、そのためにわざわざ確定申告する人はごく少数に限られる見通し。さらに、ダメ押し条件として検診受診、予防接種実施が必要とされるなど、財務省要望の税収を減らさない工夫が随所に盛り込まれている。

さらに、新制度施行のためには印刷物を作り、周知普及活動を行ない、担当者をトレーニングし、対象品選別のためのシステム改修等、投じられる公的コスト(国民の税金)や新制度に対応するための民間負担コストなど総コストは少なくないはず。その結果、制度が殆ど利用されなければこれらの投じたコストは単なる無駄となる。OTC薬協は、新制度導入は大きな成果であり、これを突破口に対象品目をスイッチOTC以外の一般用医薬品に拡大させたい、対象金額もさらに引き下げたい、と意欲的だが、利用されない制度のままでは特例が廃止される可能性も高い。

むしろ、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS。青木桂生会長)が要望してきた一般用医薬品に軽減税率を適用する案の方がはるかに実効性が期待できる。一万二千円以上という制限がなく購入時に軽減税率を実感できる制度の方が、よりセルフメディケーション促進のインセンティブに働くはずだ。軽減税率であれば通常の医療費控除制度との併用も可能。軽減税率は消費税減収分の原資確保が課題となるが、セルフメディケーションが進めばその分保険医療費の国庫負担分軽減が期待できるため、制度設計においてバランスが取れるよう工夫すればよいだろう。

現在の消費税率8%は来年4月以降消費税率10%時の差は2%で、軽減税率の恩恵はあまり実感できないかもしれない。例えば、本体価格1,000円商品購入時の消費税差は僅か20円だ。しかし、日本の社会保障制度を維持して、プライマリーバランス(財政収支健全化)実現を図るためには将来的に15%〜20%程度の消費税率が必要と推計されている。そうなった時、1,000円商品の軽減税率メリットは70円〜120円になり、消費者心理にも大きく影響するはずだ。本気で一般用医薬品市場の活性化を図りたいと考えるならば、関係業界が一丸となり軽減税率適用を主張すべきだろう。

阿由葉孝夫氏(当社代表取締役編集局長)は昨年12月22日に前立腺がんのため逝去。享年80歳。なお、火葬は昨年12月23日に東京・西原の代々幡斎場で近親者のみにより執り行なわれた。

告別式(喪主=阿由葉修子(妻)、葬儀委員長=相川和彦竃粧流通タイムズ社編集局部長)は1月14日午前11時から東京・南青山の梅窓院観音堂で行なわれ、親族のほか医薬品医療品業界(メーカー、卸、小売店、報道など)関係者約150名が参列し故人との別れを惜しんだ。

葬儀は真言宗安養寺・熊田信行住職による読経・引導後、業界関係者代表として藤井基之参議院議員、山本信夫(公社)日本薬剤師会会長、友人代表として根津孝一鰍マぱす会長が故人へ想いを込めて弔辞を述べた。

▽藤井基之氏=初めてお会いしたのは阿由葉さんがドラッグマガジン社編集部長の頃と思います。当時、私は厚生省の行政官でしたが、阿由葉さんは薬業界の情報を踏まえての「歯に衣を着せぬ」取材ぶりだったと覚えています。昭和57年に創立した薬粧流通タイムズ社でも舌鋒鋭く、時に業界を激励し、時に耳の痛い遠慮ない記事を送り続けてこられました。「過去の慣習に一切とらわれず、いかなる圧力にも屈せず、是々非々を貫く」、まさにその編集方針通りの記事、論説を展開してこられましたね。業界のオピニオンリーダーとして活躍してきた論説を拝読できなくなってしまい、また業界の会合で常に自説を強く述べてこられた貴兄の声をお聞きできなくなったこと、本当に寂しい限りです。

▽山本信夫氏=阿由葉さんに初めてお目に掛かったのは30年ほど前、私が東京都薬剤師会役員になった頃ですが、駆け出しだった私から見ると、阿由葉さんは会合の場で常に上席におり近寄りがたい存在でした。しかし、お付き合いが始まると、見た目や噂とは全くかけ離れた心優しい人柄だと気づきました。発言はとても厳しいものでしたが、その一つ一つに込められた思いを理解できるようになるにつれ、阿由葉さんの薬業界、薬剤師、薬局に対する深い愛情が感じられるようになりました。私が日本薬剤師会会長に選任された際、「君は何を目指して会長職を務めるか?」と問われ、「薬剤師の行く末をしっかり見据え、心してその職を全うしなさい。大いに期待しているよ」と諭されました。未だ十分な結果は出せていませんが、阿由葉さんから頂いたお言葉を糧に、精一杯努力して社会にその必要性を明確に示せる薬剤師を育てて参りたいと思います。

▽根津孝一氏=阿由葉さん、ついにお別れの時が来てしまいましたね。年末に「退院するよ」とメールをいただいた時は期待していたのですが・・・残念です。
あなたの記事はいつもサプライズでした。思ったことをズバリと書き、皆を驚かせていました。私もよく座談会に招かれましたが、その記事を見るのにいつもドキドキ感と妙な期待感を持ったのも今では懐かしく思い出されます。私が見出しについて注文をつけると、にやにやといたずら顔で笑っていましたね。真っ赤な顔で怒って議論したり、飲みに行った時は私の冗談に笑い転げたり、昭和の頑固な、そして人間臭い編集長でした。
私は阿由葉さんの意思を継ぎもう少しこちらで頑張ります。いずれ報告しにそちらに伺いますので、また議論しましょう。それまで、もう少しごゆっくりお休みください。

そのあと、弔電紹介、葬儀委員長と喪主の挨拶後、参列者全員が焼香して故人の冥福を祈った。

【阿由葉孝夫氏略歴】▽昭和10年11月23日生まれ。栃木県出身。▽同33年3月 明治大学法学部卒業▽同35年 日本粧業会出版部編集長▽同40年 衛材新報社主幹兼編集長▽同45年 潟hラッグマガジン編集部長▽同57年10月1日 竃粧流通タイムズ社創立。代表取締役編集局長。

なお、故・阿由葉孝夫告別式に際しましては多くの方々にご参列賜りましたほか、多数のご献花、弔電をいただきましたこと、ここに厚く御礼申し上げます。どうも有り難うございました。

平成28年度薬価制度改革で製薬業界が最大の課題とした「新薬創出加算」の「現行要件のままでの継続」が中医協で了承された。業界要望がまさにそのまま何の修正もなしに受け入れられたのである。現行要件で業界が最も重要とするのは「加重平均かい離率以内のすべての新薬」を対象とする点で、これが受け入れられたことの意味は大きい。これがあるからこそ、現在、各企業は幅広い分野で新薬開発を積極的に進めている。

平成22年度改革での試行的導入以来、今回を含めて4回の議論が中医協で重ねられてきたが、導入から3回目まではこの対象の絞り込みが行なわれ、その結果決定された薬価算定基準の中で次回改定では「加算の対象品目のあり方等現行方式の見直しについても検討する」と規定された。前回の議論では、「小児やオーファン領域薬」「既存薬では充分な効果が得られない疾患への医薬品(難病、アンメットニーズへの対応)」に限定する考え方まで出されていた。それではあまりに対象領域が狭くなり、加算の適用を受けられる医薬品はごく一部に限定されて現在の新薬開発への活発な取組みがしぼむことにもなりかねない。

今回業界が要望した「現行要件のままでの継続」が受け入れられたことにより、薬価算定基準の規定から「加算の対象品目のあり方等現行方式の見直し」についての検討という記載は消えることとなった。

新たに記載されるのは「新薬創出のための研究開発についても確認し、制度の在り方について検討する」というもの。これは平成30年度の薬価制度改革へ向けた記載だが、そこで新薬創出を目指す姿勢を明確にし、その上で「制度の在り方」を検討するというのだ。制度の在り方とはまさに「制度化」そのものを意味する。

次回の制度改革時には、新薬創出の観点から「制度化」を検討することが薬価算定基準に記載される。今回の議論を通じて、業界側はそこまで勝ち取ったと言える。新薬創出加算の制度化実現が見えてきた。政府の新成長戦略に沿うイノベーション促進策の確立へ向け、業界としては改めて気を引き締めた取組みが必要になる。一方、次回は費用対効果評価の試行を踏まえた制度化議論が並行することになる。新薬創出のための体制整備と国民皆保険維持のための財政的要請への対応となるが、国民の有用な新薬へのアクセスを確保していくことが業界の大義であり、かつ最大の武器でもある。

現自民党安倍政権は生命科学立国を政策の柱に掲げ創薬イノベーション推進を謳っている。革新的新薬開発促進のために新薬創出加算制度は存在するものであり、その分長期収載品薬価引下げと後発品普及促進策を強力に推進しているのだから、新薬創出加算の制度化は当然のことだ。ましてや、市場拡大再算定、特例拡大再算定はイノベーション推進に急ブレーキを掛けかねない政策であり、成長戦略との整合性や外資製薬企業の日本市場からの撤退につながらないような対応が必要だ。

製薬業界および医療関係者にはイノベーションを促進し、我が国を科学技術立国、先進医療大国にして国民に世界最高の医療を提供できるよう一丸となって政策提案に努力してほしい。イノベーションを否定する政策はドラッグラグを再び拡大して我が国を後発品大国にし、その結果、国民にとっては先端医療へのアクセスが妨げられ、ひいては世界最長寿国の名誉も他国に譲り渡すことになりかねない。かつて外資製薬企業が次々と研究所を日本から撤退、国内メーカーも新薬開発を海外先行せざるを得なかった状況がある。時計の針を逆戻りさせてしまったら熾烈な新薬開発の国家間競争で後塵を拝すばかりか、我が国ライフサイエンスの研究発展にとって取り返しがつかないことになるだろう。

昨年6月、安倍内閣は「骨太方針二〇一五」を閣議決定、我が国の経済成長戦略の柱として創薬イノベーション推進がうたわれた。これを受けて9月厚生労働省は「医薬品産業強化総合戦略」を公表。政府は@革新的新薬創出の推進A長期収載品市場シェア縮小とジェネリック薬普及促進B地域医療体制の拡充など、のメッセージを打ち出している。

これを受けて医薬品業界各社は敏感に反応、その結果、様々な動きが出てきた。新薬メーカーは長期収載品依存度の軽減、選択と集中による得意領域強化、新たな収益源創出など。ジェネリックメーカーは政府新目標(平成29年央70%、その後早期に80%)達成のための製造力増強、価格競争に対応する低コスト化推進など。調剤薬局はジェネリック薬対応強化、かかりつけ薬局機能強化、脱門前薬局化推進など。

ところが、政府内には矛盾も見られ、特にイノベーション推進に関しては首をかしげざるを得ない政策も多い。創薬イノベーションを高く評価する薬価制度「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」(新薬創出加算)も今年度は製薬業界が要望した現行方式のままの継続が認められたが、制度化(恒久化)されない「試行的導入」状態のまま七年目を迎える。新薬創出加算導入に伴い、長期収載品とジェネリック薬の価格が低く誘導されているが、政府は新薬メーカーに対して長期収載品薬価を下げる代わりに新薬価格維持を決めたのだから、業界にとってのマイナス措置のみ先行しプラス措置が継続される保証のない「仮の姿」のままでは不平等だ。

しかし、最大の矛盾点は「市場拡大再算定」にある。医療上評価が高い優れた新薬が「想定よりも売れすぎた」結果を理由として薬価を大幅に(最大25%)引き下げる訳のわからない制度が医療財源確保の名目で堂々と行なわれている。さらに、昨年12月の中医協薬価専門部会では年間売上高が一千億円を超えるいわゆる「巨額品目」に対して最大50%薬価を引き下げる「特例再算定」の導入方針まで固めた。

このような薬価措置はイノベーション促進政策の趣旨に合致しないばかりか、イノベーションを阻害する懸念が大きい。既存薬に較べて優れた効果や安全性、利便性など製品価値が高いため非常に良く売れた製品に対して、ペナルティを加える事はイノベーション促進を否定するものだ。その結果、日本の医薬品市場の相対的評価が下がれば、再びドラッグラグ拡大につながりかねない。

本号掲載新春インタビューの中で永山治中外製薬会長(元製薬協会長)は、日本に産業の国際競技場を作ることが重要であると述べているが、正にその通りだろう。世界のトッププレイヤーが集う国際競技場に最高の技術と英知が結集し凌ぎを削ることでイノベーションは生まれる。多少の予算帳尻合わせでライフサイエンス立国の看板に傷をつけてはならず、長期を見据えた大所高所からの政治的判断が必要だろう。政府はライフサイエンス立国実現に向け、揺るぎない決意を示す時だ。

一般財団法人化学及血清療法研究所(化血研。宮本誠二理事長・所長=12月2日付で辞任)は、今年5月28日と29日に行われた独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)による立入検査の結果、国内献血由来の血液製剤全てにおいて承認書と異なる方法で製造していたことが判明。その後の第三者委員会による調査結果が12月2日報告され、化血研は昭和49年(1974年)から実に40年以上にわたって国が承認していない方法で血液製剤を製造していた。今年9月にはワクチンも承認内容と異なる製造方法が用いられていたことも発覚し厚生労働省が出荷停止としたため、需要期にインフルエンザワクチンが不足する事態も発生し国民及び医療関係者に多大な迷惑をかけた。さらに、12月8日には農林水産省の調査で動物用ワクチンも同様の不正が行なわれていたことが判った。これら一連の不正が発覚したきっかけは従業員による内部告発だった。腐敗した組織の中に正義感と良心を持つ従業員がいたことが唯一の救いだが、内部告発がなければ不正が発覚せず、今後も不正製品の流通が続いていたと思うと心底ぞっとする。

第三者調査報告書によると、化血研は製品の多くを承認要件とは異なる方法で製造し、製造記録を2通作成して記録を古く見せるために紫外線を照射して紙を劣化させるなど「常軌を逸した隠蔽工作」を組織ぐるみで行なっていたと指摘、生命関連産業としてあり得ない体たらくで倫理観が微塵も感じられない組織実態が浮き彫りとなった。

化血研は昭和20年(1945年)12月26日に大田原豊一熊本医科大学教授の指導により同大学にあった実験医学研究所を母体に設立された。戦後混乱期の中で、ワクチン、抗血清、診断抗原等の開発、製造、提供により日本人の健康増進に資するという崇高な理念が原点だった。しかし、化血研は昭和41年(1966)年から血液製剤(血漿分画製剤)製造を開始、平成元年(1989年)5月に非加熱製剤使用により起きた薬害エイズ事件では当該製剤の製造販売において潟~ドリ十字と共に提訴された。その後、ミドリ十字は解体され吉富製薬に吸収された(さらに三菱ウェルファーマ梶A田辺三菱製薬鰍ヨ引き継がれた)が化血研はその後も財団法人(平成22年からは一般財団法人)のまま現在まで存続し事業活動も継続してきた。

化血研は第三者委員会調査報告書が提出された12月2日付けで宮本理事長はじめ全役員が辞任するとともに再発防止策を発表。厚労省は医薬品医療機器等法に基づき業務改善命令を下す方針だが、このような一般財団法人としての組織を今後も存続させる必要があるのか、甚だ疑問だ。倫理観が欠如し信頼失墜した組織は即刻解体して意識の高い有力企業に事業譲渡すべきではないか? 化血研が発足した当時とは異なり、現在はワクチンも血液製剤も動物薬も先駆的研究開発型製薬企業が高付加価値収益事業として積極的に取組んでいるのだからもはや財団法人が手掛ける必要性はない。化血研は既に信頼を失い、存在意義もなく、市場から即刻撤退のレッドカードが突きつけられている。政府が主導して一刻も早く各事業の継承企業を探すべきだろう。

政府が推進する国民の健康寿命延伸実現のため、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)中心に民間の健康関連企業が大同団結して「一般社団法人日本ヘルスケア協会」を11月2日付けで設立、初代代表理事に松本南海雄マツモトキヨシホールディングス渇長が就任した。同協会は我が国のヘルスケア業界各分野の垣根を越えて発足した新組織として今後どのような活動を展開していくのか、政財官各方面から異常なほど熱い注目を集めている。

政府は平成25年6月に発表した日本再興戦略の中でヘルスケア関連産業を我が国の成長産業と位置づけてその育成を国策として推進する方針を表明。一方、少子超高齢社会進展により増え続ける社会保障費対策として薬剤費を含む医療費削減が急務であり健康寿命延伸が求められている。その一環として安倍内閣は新「三本の矢」政策の中にこれまで以上に高齢者や女性を活用する「一億総活躍社会の実現」を掲げた。

しかし、安倍政権の真の狙いは半世紀近くも官民一体となり啓蒙活動に取組んだにも関わらず、一向に進展しないセルメディケーションを何が何でも国民に普及徹底させる事だ。日本ヘルスケア協会は、安倍政権の強い要望に応える唯一の民間団体として発足した。今後安倍政権と二人三脚でセルフメディケーションの普及徹底に国策として取組む事を強く期待する。

同協会を発案し設立したのは宗像守日本チェーンドラッグストア協会事務総長と言われている。ドラッグストア業界はこれまで急速に成長してきたが、現在成熟産業化に伴い勢いも止まった。危機感を抱いた戦略家・宗像氏は錦の御旗「セルフメディケーション」を掲げ、受け皿のヘルスケア団体設立に動いた。さすが「ドラッグストア業界唯一の切れ者」と評価されるだけの才能を見せた。

日本ヘルスケア協会は推薦議員による国会議員連盟を立ち上げたが、半端な推薦議員を応援するよりも協会自前の国会議員を擁立した方がよい。その場合の適任者は宗像氏以外に考えられない。宗像氏はヘルスケア業界製配販をはじめ政財界や厚労省、経産省など各方面に交友が広い有力者であり、ドラッグストア業界発展の陰の功労者でもある。さらには東日本大震災発生時には宗像氏が陣頭指揮を執り医薬品、医療品メーカーに働きかけいち早く被災地に支援物資を届けるなど、卓越した判断力と行動力を発揮してヘルスケア業界全体の社会的評価向上につなげた。したがって、4年後の参議院選に向けて宗像氏を業界代表として国政の場に送り出すために全力を尽くすべきだ。

次期薬価制度改革では後発品の薬価算定方式見直しが焦点の一つとなる。政府の新数量シェア目標「平成29年(2017年)に70%以上、同30年(2018年)から同32年(2020年)までの早い時期に80%以上」の達成という大きな目標に向かわなければならない。中央社会保険医療協議会(中医協)としても、前回改定から引き続き課題とされているのが、後発品の初収載時薬価0.6掛け(10品目超は0.5掛け)の0.5掛けへの引き下げ、既収載品の3価格帯方式のさらなる縮小だ。その方向で見直しとなれば、新目標達成にも大きく作用する。

その中で、日本ジェネリック製薬協会(GE薬協)は中医協薬価専門部会のヒアリングで、初収載時薬価は現行を維持、一方既収載品の3価格帯方式は現行の先発品を基準としたものから、新たに「後発品のみの加重平均値に基づく3価格帯方式」とするよう要望した。

中医協では後発品目標60%達成に向けた問題意識のなかでも0.6掛けの引き下げや三価格帯縮小の考え方が提起された。今後もそうした方向で議論は展開されるだろう。

しかし、GE薬協の要望にはよく吟味すべき内容が含まれている。後発品の薬価の先発品に対する割合は、かつては80%程度と高い水準のものもあり、患者が後発品を選ぶ際に安価というインセンティブが働きにくい面があった。しかし、前回の薬価制度改革で導入された3価格帯方式が先発品に対して「50%以上」「50%未満30%以上」「30%未満」のそれぞれ加重平均値で算定するとされたことから、最高価格帯の「50%以上」で算定された薬価はほぼ60%以下となっている。80%程度の高い水準の製品があっても市場の大勢が50%以上60%までの水準にあるため加重平均で統一されると、高くても60%程度にとどまっているのが実態。

現行算定方式により、後発品薬価は、初の後発品が60%または50%、既収載の後発品もほぼ60%以下となっているのである。

初の後発品薬価を0.5掛けを基本とする必要があるのかという問題もそうした実態を踏まえた検討が必要になる。GE薬協は、そうなった場合、採算が合わず後発品が出ないケースも考えられるとする。

既収載後発品の3価格帯方式も、現行方式を続けた場合、市場競争により実勢価格は低下する流れのため、「50%以上」の価格帯がなくなり、「50%未満30%以上」さらには「30%未満」の価格帯が大勢を占めるようになる。30%未満でもさらに低下が続くようになると後発医薬品と言えども安定供給上の問題が出てくるだろう。

GE薬協が要望した後発品のみの加重平均値を基本にその上下に価格帯を設定するという3価格帯方式は、実勢価の水準が低下し続けるという状態に歯止めがかかる方式と考えられる。その過程で価格帯も1価格帯に収斂していく可能性が高い。後発品の安定供給の観点からも重要な提案であると考える。

後発医薬品数量シェアの拡大は、診療報酬や調剤報酬面からの対策も高い効果を発揮しており、その強化も課題である。薬価算定方式の見直しは、そうした全体の流れも見ながら考えていく必要があるだろう。

今世紀に入ってから日本の製薬市場で外資(グローバル)製薬企業が急速に業績を伸ばし市場存在感を拡大してきた。本紙平成12年(2000年)9月15日付(第231号)「日本の優良外資企業特集」を見ると、現在も社名が変わっていない主な外資製薬企業はファイザー、ノバルティスファーマ、アストラゼネカ、日本イーライリリー、バイエル薬品、日本ベーリンガーインゲルハイムくらい。この6社の現在(昨年度)売上高を当時(15年前)と比べると平均3.2倍に規模を拡大し、この15年間で目覚ましい急成長を遂げた事がわかる。業績急成長要因は、当時の日本は欧米より約10年遅れで新薬が発売されるドラッグラグが存在したこと。つまり、当時の外資製薬企業は日本未承認の大型新薬を多数保有し、その後日本政府による新薬承認審査早期化などが行なわれた結果、外資製薬企業による新薬発売ラッシュと売上高急拡大につながった。

しかし、近年は外資製薬企業の勢いにも陰りが見える。昨年度の国内市場売上高上位20社中で外資企業は9社あるが、増収4社、減収5社と業績は各社まちまち。外資製薬企業の成長ドライバーだった新薬発売ラッシュ一段落と特許切れを迎える製品が増えていることに加えて、世界的に当局の新薬承認審査厳格化(効能と安全性評価)、低分子シーズとニーズの減少(生活習慣病関連薬などほぼ出尽くし感)、抗体・ゲノム創薬拡大による新薬開発難易度アップなどにより新製品が従来に比べ格段に出にくくなっている背景もある。

このように世界的に医薬品市場の停滞感が蔓延する中で、その打開策として近年グローバルレベルの製薬企業再編機運が再び高まっている。大型合併やM&Aは製薬企業規模自体が大きくなり巨額資金が必要なため合意に至らない例も目立つが、事業譲渡、事業交換、提携、オープンイノベーションなど自社の強みを更に強化し、同時に非効率的事業を切り離す「選択と集中」戦略は益々活発化している。

一方、国内製薬企業は平成14年(2002年)に厚生労働省が示した「医薬品産業ビジョン」により「メガファーマ」「スペシャリティファーマ」「ジェネリックファーマ」「OTCファーマ」の4分類から各社が希望する企業像を「選択」して得意分野に「集中」し、競争力向上と生き残りを図ってきた。その過程でアステラス製薬、第一三共、大日本住友製薬(以上平成17年誕生)、田辺三菱製薬(平成19年誕生)などの企業合併により業界再編が進んだ。しかし、その後国内製薬企業は大きな伸びを期待できない日本市場よりも大きな可能性がある海外市場に軸足をシフトするための海外中小製薬企業買収や、主力品の特許切れ対策などに追われ、近年国内市場は企業再編など大きな動きが見られない状況。その中で国内企業より格段規模が大きい外資企業で再編の動きが加速している。

今後の外資製薬企業動向が国内の新薬、一般薬、後発薬、ワクチンなど各市場に大きな影響を与えることは必至だが、国内製薬企業も受け身になっていては後塵を拝するだけとなる。国内製薬企業はホームマーケットの日本市場でも現状に満足せず機先を制する大胆な行動が必要だろう。医療用薬は長期収載品維持や過剰投薬による需要押し上げ、ジェネリック薬は政府の推進策、一般薬は税額控除採用やインバウンド特需など、「ぬるま湯状況」に甘んじていては「緩やかな死」を待つだけであり、今こそ「勝負に出る時」ではないだろうか?

安倍首相は「経済財政運営と改革の基本方針2015」を6月30日に閣議決定した。同方針は骨太方針2015として、平成32年度(2020年度)の財政健全化を目指し、税収増のための経済成長戦略と歳出抑制両面から対策を進める。歳出抑制の最大課題が予算全体の33%を占める社会保障費である。平成27年度予算で見ると、一般歳出総額96.3兆円のうち社会保障費は31.5兆円で最大。国債費を除いた72.8兆円を国債以外、税収などで賄うことを目指すが、現状では55.4兆円にとどまり、17.4兆円不足する。

社会保障費は国債費を除いた一般歳出に対して43.3%も占めており、社会保障費の伸びを抑制することが最大課題。一方、税収面で不足している17兆円余の増収対策として成長戦略も進めなければならない。このため骨太方針2015は「経済再生なくして財政健全化なし」としている。

社会保障改革項目は盛り沢山だ。その中で「薬価・調剤等の診療報酬及び医薬品等に係る改革」が位置づけられ、ジェネリック薬の数量シェア目標値を「平成29年(2017年)内に70%以上とするとともに、平成30年度から平成32年度末までの早い時期に80%以上とする」と記載。しかし、ジェネリック薬大手企業や医薬品大手卸企業からも「時期尚早!」の声が出るほど実現困難。かかりつけ薬局の推進を基本とする薬局改革も位置づけ、患者本位の医薬分業実現を図る考え。

医療全体についても、都道府県別の医療提供体制や医療費の差をデータ分析して「見える化」を行ない、入院受療率の地域差縮小、外来医療費は重複受診・重複投与・重複検査の適正化などにより地域差是を図る。また、セルフメディケーション推進などの観点も含め市販品類似薬の保険給付も検討し見直す。

こうした多数の項目の改革実現を図るため、骨太方針をまとめた経済財政諮問会議の下に「経済財政一体改革推進委員会(専門調査会)」を設置、8月10日に第1回会議を開催、改革工程表を12月にまとめることに決めた。

社会保障費の伸び抑制は、財政健全化に向けて避けて通れないが、財政制度審議会や経済財政諮問会議の直近議論は「抑制」自体が目的であるかのような印象を受ける。

「社会保障制度の持続可能性の確保」「次世代に社会保障制度を引き継ぐ改革」と言うが、どのような姿、形で持続させ、次世代に引き継ごうとするのか、肝心なのはその内容だ。日本のGDPに占める医療費割合は先進7か国中で最も低いレベルにある一方、世界一の平均寿命を維持し続けるなど良好なパフォーマンスを示している。

現行制度の下でより良いパフォーマンスを得ている優良事例の全国展開は積極的に進めるべきだ。しかし、外来受診率が諸外国に比べて高いからとする受診時負担拡大や、市販品類似薬の保険除外で医療費削減を図る考え方は、早期受診・早期治療並びにセルフメディケーションで重症化を防ぎ、結果的に医療費抑制につながる好循環を断ち切ることになりかねない。医療制度改革検討の中で医療費抑制を急ぐ余り、国民の健康保持という本題から外れることは絶対許されない。

(公財)日本健康・栄養食品協会(日健栄協。下田智久理事長)発表によると、平成26年の特定保健用食品(特保)市場規模は6135億円で前年比2.2%減とわずかに前年を下回った。特定保健用食品制度は平成3年に発足してから既に23年が経過し国民生活にも定着している。商品品目数は現在も年々増加中で、今年2月末現在1144品目が承認済み。

特保市場は平成9年(日健栄協第1回調査時)の1315億円から17年間で約5倍に拡大した。同市場規模は平成19年にピーク(6798億円)を記録後、一旦ブームの陰りとともに平成23年には5175億円まで減少。しかし、その後「からだすこやか茶W」(日本コカ・コーラ)、「食事と一緒に十六茶W」(アサヒ飲料)、「賢者の食卓ダブルサポート」(大塚製薬)など複数の効能効果を表示するダブル特保製品がヒット、また安倍政権経済成長戦略アベノミクス中核政策「日本再興戦略」における健康寿命延伸政策による国民の健康への関心の高まりを受けた事、更には景気回復効果も追い風となり同市場は平成25年に6275億円とX字回復を果たした。翌平成26年に同市場規模が微減となった要因は消費税率アップに伴う消費冷え込みの影響が大きいとみられる。

特保市場の今後の動向予測は不透明である。今年4月から機能性表示食品制度が施行され、6月中旬以降新ジャンル製品が各社から発売されている。この機能性表示食品で使用されている有効成分(機能性関与成分)には「難消化性デキストリン」(脂肪、糖質吸収を抑制)、「ビフィズス菌」(おなかの調子を整える)、「イワシペプチド」(血圧が高めの人に)など特保で汎用されている成分が多い。こうした商品が機能性表示食品として多数市場に出ると店頭での販売競争が激化して価格競争に陥る可能性が高い。特保は商品化までに多額のコストを投入しており上市後に回収する必要性があるため、これまでほとんど値崩れを起こさず販売価格を維持してきた。一方、機能性表示食品開発は基本的に臨床試験不要で特保と比較すると格段に低コストで商品化できる。そのため、特保と同一成分で同様な機能性を表示する機能性表示食品商品が特保より格安に販売されると、高価格の特保商品売上げが一気に落ち込むことは避けられない。そうなると、特保市場規模は今後急速に萎んでしまうことが危惧される。

問題は医薬品に準じるレベルで臨床試験を行なう特保が機能性表示食品と同等レベルの効能効果表示しかできない点にあるだろう。今後も特保を国民の健康維持に役立てながら制度存続を目指すのであれば、特保について医薬品と機能性表示食品の中間的役割としての位置づけを明確化することが急務となる。

そのためには、特保の効能効果表示を現在より一歩踏み込み、疾病名表記の許可や、慢性病で比較的軽度な患者が薬物治療に移行するのを防ぐ手段(検査値グレーゾーンの人が生活習慣改善や食事療法に追加して摂取する)を認めるなどの対策が必要だろう。

一般用医療品の総本山である日本OTC医薬品協会が設立30周年記念を迎えた事は大変喜ばしい。国民皆保険の中で冷遇された一般用医薬品市場は10数年にわたり縮小を続けている。医療用医薬品が90%余を占める日本の医薬品業界における一般用医薬品は取るに足りない存在であり、医薬品業界の付け足しに過ぎなかった。

例えば大手製薬企業に採用された新社員は、成績のよい者が医療用医薬品事業部に配属され、残った者は当時「薬粧」とか「薬専」の名称が付いた一般用医薬品事業部担当に回された。当時から医療用医薬品事業部の業績が一般用医薬品事業部より遥に多いから仕方なかった。

また、大手製薬企業の決算報告会見で一般用医薬品事業に関する質問をすると、担当役員が「そんなものどうでもいいだろう」といわんばかりの不機嫌な表情を露骨に示した。この傾向は今も続き、一般用医薬品事業部を持つ大手製薬企業の決算報告会見では一般用医薬品事業の内容説明や質問もほとんどない。

要するに医療用医薬品主体の医薬品産業では、一般用医薬品は「その他」の扱いに過ぎなかった。どんなに国民の需要に応え売上高が大きくても一般用医薬品専門メーカーの評価は業界内で極端に低く、「あれは医薬品メーカーではない」と否定されたほど。

当時、肩身の狭い一般用医薬品企業を勇気付けてくれたのが現協会の前身である日本大衆薬工業協会だった。事務所には新井誠専務理事と熊谷弘事務局長と会員メーカー各社からの出向社員数人が常勤していた。新井専務は産経新聞社政治部次長、熊谷事務局長も英語に強い近畿ツーリスト社員で2人とも医薬品とは何の関係もない世界から一般用医薬品の総本山である日本大衆薬工業協会事務局に飛び込み、素人ながらもセルフメディケーション推進活動に努力し、会員企業発展にも寄与した実績は立派だった。両氏共通の趣味は麻雀で、会員企業社員や業界専門紙記者相手に真剣勝負を楽しみながら情報収集に務めていた。

その後、同会初の天下り理事長・新田進治氏(厚生大臣官房審議官)が就任、本格的な業界団体に整備された。日陰の存在だった一般用医薬品業界がセルフメディケーション提唱を通じ社会的認知度も高まり、業界内での評価も一段と向上した。

そして日本OTC医薬品協会に名称変更して設立30周年記念を迎えた現在、待望のエース杉本雅史氏(武田薬品)が会長に就任、平成37年(2025年)に向け一般用医薬品産業グランドデザイン実現を掲げ見通し明るい活性化ビジョンを表明した。

しかし、10年後に一般用医薬品売上高約2兆円余の夢を達成するためには業界団結が急務である。また、日本薬剤師会、日本チェーンドラッグストア協会との密接な提携も不可欠と思う。

消費者庁が4月8日、一般用医薬品の副作用報告件数を発表した。それによると平成21年度から同25年度までの5年間に独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に報告された一般用医薬品副作用報告数は合計1225件。そのうち死亡症例15件、後遺症が残った症例15件と衝撃的内容だった。

従来、一般用医薬品は医療用医薬品に比べ薬理作用が緩和で効果も弱いが、副作用も少なく安全と思い込まれており、説明書も読まず乱暴な服用をする消費者が多い。

しかし、今回の消費者庁発表により一般用医薬品でも死亡などの重篤な副作用が発生する事を多くの消費者や一般用医薬品製造・販売業者が認識して一般用医薬品への対応に慎重な変化が見られる事を期待したい。

特に重篤な副作用発症例の多い一般用医薬品薬効群は

  1. 総合感冒薬(風邪薬)=症例数400件
  2. 解熱鎮痛消炎剤=同279件
  3. 漢方製剤=同134件

など。

ドラッグストア、薬局薬店の薬剤師や登録販売者は、これらの一般用医薬品薬効群製品を販売する時、購入者に正しい服用法や副作用説明を充分に行ない、さらに消費者の体調などについても相談して慎重に販売する事が肝要である。

さらに、これら薬効群製品の多くは第2類、第3類の医薬品だから登録販売者の取扱い商品となり、登録販売者の資質が改めて問われる事になる。医薬品購入者が来店すると逃げ回るような自信のない登録販売者では消費者が迷惑する。場合によっては死亡など重篤な副作用が発症する医薬品を販売している専門家として消費者と向き合い、副作用の説明・相談に対応し、副作用が発症しないための適正使用を指導する知識修得が不可欠である。

また、登録販売者は試験で資格を取得しただけで満足しているが、生命関連品を取り扱っている責任と使命感も身に付けて欲しい。その志があれば消費者も登録販売者を信頼し尊敬するから必然的に登録販売者の存在感は高まり、社会的地位向上にもつながるだろう。その結果、薬剤師は調剤、登録販売者が一般用医薬品販売との役割分担を確立できれば、全国十万人余の登録販売者の明るい未来が保障される。

一方、一般用医薬品メーカー各社も副作用報告を真摯な姿勢で受け止め消費者に対し副作用情報や、その対応について広く伝達すると共に、説明書などをよく読み医薬品適正使用の思想啓発活動に本格的に取組む必要がある。

しかし、個々の一般用医薬品メーカー企業の啓発活動は消費者から我田引水≠フ宣伝活動と誤解される可能性もあるから、「日本OTC医薬品協会」の看板で国民向け啓発キャンペーンを展開すれば効果的と思う。

また、「医薬品業界の良識団体」と評価されている「くすりの適正使用協議会」(黒川達夫理事長)と提携して一般用医薬品のリスクとベネフィットを国民に啓蒙し、医薬品の適正使用推進に努力すべきだ。出来る事なら一般用医薬品メーカー企業も同団体に加盟する事を勧めたい。「一般用医薬品連合会」などという幽霊団体≠ノ高い会費を払うよりも遙かに有意義だと確信する。

医薬分業で薬局から薬をもらうとサービス料金が1000円円高い。それは薬局で薬剤師が処方せん内容をチェックし、患者に薬剤の内容や服用方法について説明することに対する報酬が上乗せされるためだ。しかし、国民の約60%はこれを「高すぎる」と感じている。また、医薬分業のメリットについて質問すると「特にない、わからない」の答えが最も多く35%。「待ち時間が短くて便利」の28%に続いて三番目に「薬局で薬について説明してくれる、相談に乗ってくれる」24%の答えがある。これは医薬分業規制見直しをテーマとした政府諮問機関規制改革会議の公開討論にあたり内閣府が行なったアンケート調査結果だ。

厚生労働省の長年にわたる医薬分業推進策により、分業率は今や70%を超えると推測される。その医薬分業の内容と質が、今問われている。だが、問題は医薬分業そのものの適否ではない。公開討論会でも医薬分業を否定的にとらえる発言は全くなかった。要は国民、患者が薬局で受けているサービスが、その料金、コストと照らし合わせて適切と思えるかどうかの問題である。

これらの観点から医薬分業のあり方が議論されたことは従来なかった。当時は分業率10%にも満たない状況だけに当然のことかもしれない。政府は医師に薬離れを促し、薬剤師には調剤への取組み意欲を高めるようにすすめた。

現在、分業率70%時代となり、国民の間にも病医院から院外処方せんをもらい街の薬局で調剤する事が普通になった。

医師の診療に関するインフォームドコンセントも今や普通のことである。患者は医師から病状と治療方針の説明を詳しく受け、それに対して患者自身の考えを述べながら治療方法を医師と共に決める。しかし、かつての患者は医師に意見を言える立場でなかった。現在のインフォームドコンセント時代に至るまでには医師自身の取組み、行政の対策、患者の活動などが行なわれ何年もの時間が必要だった。医薬分業も同じで長い時間をかけ国民の理解を得なければ制度として定着しない。

そのためには調剤の現場で患者の治療、症状の改善につながるようなアドバイスや副作用の説明を患者の立場からわかりやすく行ない理解を求める事である。添付文書の内容を画一的に説明するのでなく、「あなたの場合はこうですよ」と患者の状況に応じたアドバイスが必要である。医師は患者の病気を治すのが使命であり必然的に患者個人と向き合うが、薬剤師は処方せんにとらわれ、患者個人と向き合う意識が薄い。医薬分業のメリットを理解出来ない国民は患者と向き合おうとしない薬剤師を見て医薬分業に不満を示したのかもしれない。ドラッグストア調剤の薬歴不記載事件などで、なおさら薬剤師への不信感が高まり、「調剤技術料が高過ぎる」など医薬分業への疑惑も生じてくる。

薬剤師はもっと患者と向き合う必要がある。同時にコンプライアンス意識の徹底を図り国民の信頼を得る事が急務だ。

大手チェーンドラッグストア企業各社の調剤併設店出店が全国的に急増している。セルフメディケーション普及進展が大幅に遅れ主力の一般用医薬品需要は伸び悩み日用品雑貨や食品も大手スーパー、コンビニとの競争で低迷を続け、かつて「小売業界一人勝ち」と言われた大手チェーンドラッグストアの勢いに陰りが見えてきた事から、安定した診療報酬収入が見込める保険調剤事業強化に一斉に踏み出した。その結果、出店数は激増し極度の薬剤師不足が生じて調剤併設店出店計画を変更または中止する大手チェーンドラッグストア企業も多い。

そんな矢先に2月、ツルハホールディングス子会社「くすりの福太郎」(小川久哉社長)経営48店舗で処方箋の薬剤服用歴(薬歴)未記載が発覚、マスコミに大々的に報道されて業界内外に衝撃を与えた。

続いて同月22日には潟Cオンホールディングス子会社「CFSコーポレーション」(宮下雄二社長)経営「ハックドラッグ」20店舗で78,140件の処方箋薬歴未記載が明らかになった。

相次ぐ大手チェーンドラッグストア企業の薬歴未記載事件に対し業界内外から厳しい批判が起こった。日本薬剤師会(日薬)は「薬剤師並びに保険調剤の信頼を貶める行為で許せない。調剤報酬改定議論前で悪影響を危惧する。医薬分業批判に油を注ぐ事になりかねない」と、不快感を露骨に示した。医薬分業推進に長年取組んできた日薬としては当然の事だろう。

また、日本保険薬局協会も「国民皆保険制度に携わる一員としての認識不足。薬歴は患者に医療提供した記録であり、未記載で薬剤服用歴管理指導料(1件41点410円)を請求するなど考えられない行為」と非難の嵐。

確かに薬歴未記載で薬剤服用歴管理指導料の診療報酬請求は不適切請求で不正行為に当たる。厚生労働省も実態を調査し不適切請求の場合は両社が受取った薬歴管理指導料の返還を求め厳重に処分する意向を表明している。だが、当該ドラッグストア両社が不正に受取った薬歴管理指導料を返せば済む問題とは思えない底の深さを感じる。

今回問題が発覚した時、当該ドラッグストア責任者は薬剤師不足を理由に上げた。確かに僅かな薬剤師数で1人当たり1日40枚の適正処方箋枚数を超える処方箋処理作業に追われて薬歴記載が後回しとなった状況は理解出来ても、薬歴未記載を正当化する理由にはならない。薬剤師が1日40枚以内の処方箋処理で職能を充分に発揮できる人数を確保し体制整備を図る事が営業的出店計画よりも重要なはず。

また、今回の事件は企業だけでなく現場の薬剤師にも責任がある。両者の倫理観とコンプライアンス意識欠如から発生した事件だからお互いに深く反省し、医療の一端を担う者として高い志を持つ事が肝要だろう。

一方、日本チェーンドラッグストア協会は加盟社の違反行為を厳しく処分して「同じ穴の狢」と国民から思われないようにすべきだ。

全国主要ドラッグスストア業界団体の日本チェーンドラッグストア協会(JACDS。関口信行会長)は来たる月3月13日〜15日の3日間、千葉・中瀬の幕張メッセで恒例の第15回JAPANドラッグストアショーを開催する。前回はメーカー・卸340社が出展、開催期間中の来場者数は延べ13万815人とアジア最大のドラッグストア祭典に発展した。その経緯は本年で発足16年目(平成11年6月16日設立)を迎えるJACDSの歴史と重なる。

特に今回はドラッグストア業界育ての親である松本南海雄氏(潟}ツモトキヨシホールディングス会長)の長男・松本清雄同社長が同ショー実行委員長に就任、どんな異才ぶりを発揮するか各方面から注目されている。

ドラッグストア業界は一般用医薬品中心に化粧品、日用雑貨、医療衛生用品、健康食品・サプリメントなど地域住民の健康・衛生・美容に関連する商品を販売し全国津々浦々に存在、その利便性が国民から高く評価されている。さらに近年は調剤併設店の大幅増加に伴い勤務薬剤師を多数雇用して地域医療の一端を担う大手企業も多く重要な医療機関に定着しつつある。

昨年度の全国ドラッグストア企業数は501社(17,563店舗)総売上高約6兆97億円。この実績から安倍政権の日本再興戦略に掲げられたセルフメディケーション・セルフケア推進策の先陣を担う最適な業界として最も期待されている。

しかし、期待に応えるドラッグストア業界の代表団体であるJACDSには大きな問題点がある。それは一部大手企業加盟社トップのJACDSに対する帰属意識が希薄で団結心と協調性に欠ける事だ。JACDSのために何も働かず、活動資金提供も渋り、極安会費で同協会が得た果実のみ貧る寄生虫のような加盟社が多い。

発足以来約16年間でJACDS組織は正会員157社(小売業)、賛助会員(メーカー・卸)約226社。正会員中には上場企業16社。そのうち潟}ツモトキヨシHD、潟EエルシアHDなど年商約5千億円企業ほか年商1千億円以上企業が10社余も存在。さらに年商300億円〜500億円企業多数の有力小売企業集団に成長した。

それにもかかわらず、JACDSは自前ビルどころか事務局組織も持てない火の車″熕ュに悩んでいる。原因は年商500億円以上の有力正会員企業が目白押しなのに年会費一律12万円の極安会費で甘んじている事。しかも賛助会員年会費が正会員より2倍の24万円とは本末転倒も甚だしい。こんな団体は他に例がない。JACDSは他団体同様に正会員年会費徴収に売上高比例制を導入すべきだ。例えば基本年会費120万円の他に売上高ランク別会費(年商100億円以下、100億円余〜500億円、500億円余〜1,000億円、1,000億円余〜3,000億円、3,000千億円余以上)を定め加算する方式で、多くの業界団体が採用し順調な運営を行なっている。

日本再興戦略で地域医療チームの一員に指名されたJACDS加盟社が国民や政府の期待に応えるためにもJACDSの財政強化を早急に図る事が不可欠である。

医薬品産業界は新年早々、来年の薬価改定問題の話題で持ちきりとなった。平成28年度から消費税率引き上げ対応分の改定も含め3年連続で行なわれる薬価改定への大きな懸念である。一方では医薬品産業界として「言うべきことは言わなければならない」と緊張感が漂う年明けであった。

ところが、1月29日、日本医薬品卸業連合会の政治団体「薬業政治連盟」の新年賀詞交歓会に訪れた衆議院議員の伊吹文明氏が挨拶で「薬価毎年改定は卸が価格交渉に追われることになり対応できない事情を財務省もよく理解した。みなさん、安心してください」と語ったのである。旧大蔵省出身で財務大臣や衆議院議長を務めた有力議員の伊吹氏が「薬価毎年改定は消えた」と明言したのだから会場内はどよめき拍手の嵐。その直後に登壇した野木森雅郁・日本製薬団体連合会(日薬連)会長(アステラス製薬会長)も「思いがけないお年玉をもらった」と驚きと喜びの複雑な表情を見せた。製薬業界の薬価問題対応機関である保険薬価研究委員会(薬価研)を擁する日薬連会長が初めて知ったという極秘情報であった。

しかし、伊吹議員の発言に対し、財務省主計局の担当官は本紙の確認取材に対し「そんな事実はない」と答えた。

「薬価調査・薬価改定の在り方について、その頻度を含めて検討する事は、政府の骨太方針2014に明示し閣議決定されたものであり、それに対して何らかの能動的な動きがない限り並行移動するものであって、引き続き検討事項として時期がくれば議論されることになる」と言うのだ。

だが、その口ぶりからは、財務省として2年越しで取組み閣議決定にまで持ち込んだこの問題に今後も積極的に取組むという意気込みは感じられなかった。

財務省は1月23日に開いた財政制度分科会に、昨年末に財政制度審議会から提出された「平成27年度予算編成に関する建議」で指摘された事項が27年度予算にどのように反映されたかを表にまとめて示している。そこでも、昨年の建議には「診療報酬・薬価」との項目が立てられ、「骨太方針2014」を踏まえ薬価調査・改定の在り方の見直しを具体的に進めていく必要があると記載されていながら、この項目自体が取り上げられていない。

「27年度予算に直接かかわることではないから」というのだが、一方で後発医薬品の目標再設定については予算に盛り込まれなかったにも関わらず「引き続き検討課題」として「予算への反映状況」の中に記載している。これは「内閣府の行政レビューで提言され議論もあったから」というが、薬価改定の在り方の見直しとは扱い方が全く違う。

また、骨太方針そのものを議論する場であり安倍首相を議長とする経済財政諮問会議でも、「骨太方針2015」のとりまとめに向けた議論が1月30日にスタートし、その議論をリードする民間有識者議員がたたき台となる課題を提示したが、地方行政サービス改革とともに2大テーマとされた「社会保障サービス改革」の課題の中に「薬価改定の頻度」は入らなかった。少なくとも諮問会議の四月までの議題には乗らない。

諮問会議事務局は本紙取材に対し、「この問題の取り扱いは明確になっていない」と応えた。諮問会議は昨年、民間議員が「取引の実態を2015年の年央までに調査し適切な市場価格形成を阻む要因の特定化と除外を図るべき」と提案、安倍首相が塩崎厚労相に調査への取り組みを指示した。その後、議論のきっかけとなった消費税率引き上げ先送りを決定したが首相の指示は残っている。

今後について諮問会議事務局は、「実態の把握を厚労省がどのように行なうかを含め厚労省と相談しながら対応していく」と、あいまいな姿勢だ。厚労省と相談した結果、実態把握調査を行なうのか、行なわないのかも見えない状況である。

薬価毎年改定の議論はこのまま立ち消えになるのか? そうなれば、薬業界関係者は胸をなでおろせるが、まだ手放しで喜ぶのは早い状況である。

今年も昨年正月と同様に第三次安倍政権の経済政策「アベノミクス」論議で幕を開けた。年初から円安・株高で大手企業中心に景気回復ムードが強くデフレ脱却への軌道に乗った感もある。大手企業トップの多くは「景気回復」と見ており、「アベノミクス」第三の矢である成長戦略強化に期待している。

一方、中小企業は「アベノミクス」効果の恩恵に浴さず、むしろ消費税率アップ後の消費低迷に悩み、更に円安影響で原材料高騰の追い打ちを受け「アベノミクス」に強い不信感を抱いている。

しかし、「アベノミクス」継続の是非を問う昨年末の衆議院選で自公連立政権が326議席を獲得して圧勝、「アベノミクス」成果が信任された。今後第三の矢(成長戦略)でデフレ脱却に成功するか注目されている。

国民の圧倒的支持を得た安倍首相は、いよいよ岩盤規制打破に乗り出す事だろう。成長戦略の中核として医療費削減に照準を合わせた社会保障制度改革に取組む方針。その先鋒は留任した塩崎恭久厚労大臣で、毎年薬価改定実施、医療用漢方薬の見直し、調剤報酬・技術料引き下げ、更なるジェネリック使用推進など年々膨張する医療費削減に色々な手段で攻略する計画。製薬業界側も主要団体が一丸となって立ち向かわないと厳しい状況に追い込まれる。

だが、製薬業界側には一昨年から継続中のノバルティスファーマ降圧薬「ディオバン」臨床研究データ改ざん・ねつ造事件ほか有力製薬企業の不祥事連発による後遺症があり、国民の製薬業界に対する不信感も強く厚労省と戦う意思も喪失気味で盛り上がらない。

そこで頼りにしているのが医薬品産業の用心棒″痩議員諸氏。だが人気絶頂の安倍政権に楯突く議員は見当たらない。最後の手段は日本製薬工業協会や日本製薬団体連合会など業界主要団体に理事長として天下っている元高級官僚の皆さんに一肌脱いでもらうしかないと天の声@鰍ン。塩崎厚労大臣と製薬業界のバトルは目を離せない真剣勝負になりそうだ。

今年は戦後70年。「団塊の世代」と言われた人達が全て65歳以上の高齢者になった。その中で5人に1人は認知症の可能性がある。本格的な少子高齢化社会が到来して色々な問題も発生している。元気な男女高齢者が労働資源となり、現役並の医療保険料を負担して医療費抑制に寄与する例もある。一方では介護退職、介護離婚、老々介護などによる家庭崩壊が続出して介護難民増大により介護保険制度も破綻しかねない。超高齢社会の医療・介護問題は一層深刻化して国民生活を脅かす事になろう。

医薬品業界や医療衛生用品業界関係者は、超高齢社会の医療・介護問題への取組みを真剣に考えて欲しい。

「薬粧流通タイムズ社」ご案内

    編集方針

  1. 社会正義に基づく厳正中立な報道姿勢を堅持し、医薬品(一般用・医療用)を中心とするヘルスケア製品関連業界の健全な発展・育成に尽力することで、社会的貢献を果たす。
  2. 薬局薬店およびドラッグストアの“経営”に役立つ情報を正確に、かつ客観的に報道する編集を行う。
  3. 価値観の変動で多様化した生活者ニーズに対応する医薬品およびH&B(ヘルス&ビューティ)商品メーカー、薬局薬店・ドラッグストア、卸各企業の活動指針として先取りホンネ情報を提供する。
  4. 「健康・衛生・美容」の生活提案をメインテーマとするドラッグストアおよび薬局薬店・コンビニエンスストアに対し、医薬品、医療衛生雑貨、健康食品、健康機器、化粧品など幅広い取り扱い商品群の市場情報と、それに関連する各業界のメーカー、卸、団体および官公庁の最新重要ニュースを“横割り広角編集”で総合的に提供する。
  5. 医薬品およびH&B商品メーカー、卸、小売などの各企業、団体、学会、官公庁などの広報活動に協力、その目的達成に寄与する。
  6. 過去の慣習や価値観に一切とらわれず、また、いかなる圧力にも屈しないで是々非々主義を貫き、時代の流れを的確に把握し21世紀型の新感覚編集を行う。
  7. 「読まれる新聞」「おもしろい新聞」「役に立つ新聞」を目標に、ユニークで感性豊かな紙面作りを展開し、他社新聞との読み比べに勝ち抜く内容の編集を推進。

全国有力ドラッグストア企業トップ座談会 第2部

2014年6月9日

全国有力ドラッグストア企業トップを招き4月9日午後6時から東京・大手町のKKRホテル東京で恒例の座談会を開催。第1部は4月1日からの消費税率アップに伴う駆け込み需要と、その後の買い控え予想、アベノミクス効果による景気回復、登録販売者団体一本化問題と樋口俊一日本医薬品登録販売者協会会長の政界出馬動向などについて熱心に議論、その内容を本紙平成26年4月15日付第425号に掲載し大きな反響を呼んだ。今回の第部は調剤併設事業と深刻な薬剤師不足、ドラッグストア勤務薬剤師会の日本薬剤師会併合問題と山本信夫次期日薬会長対応、オール薬剤師会結集で政治力強化構想、ボランタリーグループの今後、全国展開型大規模小売企業と地域密着型中小小売企業の生き残り策、ドラッグストアの返品改善問題について白熱の激論を展開。

日薬に全薬剤師会結集(根津氏)

根津氏

根津氏

──  JACDSのドラッグストア勤務薬剤師会は最近影が薄くなってしまったけど、現在どうなっているのですか?

根津氏  やはりドラッグストア勤務薬剤師会の自立は難しいですね。むしろ、日本薬剤師会(日薬)の中にドラッグストア勤務薬剤師会を作ってほしいと思いますね。日本薬剤師会新会長に就任する山本信夫氏(現東京都薬剤師会長)とは面識がないので、山本会長と親しい阿由葉さんに調整役をお願いしたいですね(笑い)。開局薬剤師とドラッグストア勤務薬剤師が別々の団体で対立してもお互い何もプラスになる事はないですからね。また、ドラッグストア勤務薬剤師会の会費はほとんど会社が負担していますから、個々の薬剤師はドラッグストア勤務薬剤師会への所属意識も低いですよ。一方、日本薬剤師会会員はほとんどが個人加入だから所属意識も高く組織的に団結できるのですよ。だから、私は日本薬剤師会組織中にドラッグストア勤務薬剤師会を設置する方が賢明だと思いますよ。登録販売者組織化も個人会員から会費を徴収し、その中から政治資金を捻出すると言っても、今は誰も賛成しないでしょう。同様に自前でドラッグストア勤務薬剤師会を設立しても、会員薬剤師が勤務する会社が会費を納入しているようではドラッグストア勤務薬剤師会の組織化や政治資金徴収など出来るわけないと思いますよ。

──  確かにドラッグストア勤務薬剤師の団結意識が低い現状では自立も難しそうですね。杉山社長はどう考えますか?

杉山氏  当社の薬剤師はノンポリが多いから、政治活動に関わっている社員はいないと思います。しかし、ドラッグストア勤務薬剤師会には加入しています。ドラッグストア勤務薬剤師会は個人ではなく店舗単位で入会するので、会費も余り高くないから会社が全額負担しています。最近よく当社の薬剤師が学校薬剤師の仕事を依頼されます。学校薬剤師は会社でなく薬剤師個人に依頼がくるので、会社側は業務に支障が出ない範囲で引き受ける事を条件に就業規則を見直すなど協力的に対応しています。その背景には個人営業薬局が少なくなり、依頼先がなくなってしまった訳ですね。地域によっては当社薬剤師が引受けないと学校薬剤師不在になってしまうこともあります。

根津氏  日本薬剤師会も同様な悩みを抱えていると思いますよ。だから、JACDSと一緒に日本薬剤師会組織をオール薬剤師組織に組み直すのが一番ですよ。

杉山氏  そうですよ。日本薬剤師会組織を合理的に整理してベクトルを一つの方向に集中した方が良いと思いますよ。

──  日本薬剤師会の実態は開局薬剤師集団ですから、その他の病院薬剤師会、卸勤務薬剤師会、学校薬剤師会、ドラッグストア勤務薬剤師会などを加えて職能別薬剤師団体の連合体に再編成すれば日本医師会以上の強力な政治的圧力団体になりますね。オール薬剤師の業権拡大、資質向上にも役立つと思うので実現を目指してください。

石田氏

石田氏

石田氏  JACDS勤務薬剤師と日本保険薬局協会(NPhA)薬剤師を合計すると相当な数になり、それだけでも大きな薬剤師団体になり政治力も発揮できますよ。

根津氏  そういう薬剤師団体にならないといけませんよ。日本薬剤師会執行部も社会の趨勢が変わっているのだから「チェーンドラッグストアは嫌い」なんて言っている場合ではありませんよ。開局薬剤師の意見をオール薬剤師全体の意見と錯覚されては困る場合もあるからね。JACDSは日薬と対決を望んでいるわけではないし、ドラッグストア側の意見も日薬の中に取り入れて欲しいと要望しているだけですよ。だから阿由葉さんにひと肌脱いでもらい、山本新日薬会長との間に友好的なパイプを設けて相互理解を深めたいと考えております。頼みますよ(笑い)。

──  私で役に立つことなら両団体のために協力しますよ。でもJACDSの関口会長が東京薬科大学で山本日薬新会長の先輩に当たり親交が厚いから、今後の両団体関係は良好になると思いますね。特に、山本新会長は前任者と異なりグローバル薬剤師だから見識も広く、理解度も高いので期待できそうです。ところで、石田副社長の会社の薬剤師社員は日本薬剤師会に加入していますか?

石田氏  それは会社として管理していないからわかりませんね。個人的事項は報告義務もないし、会社も特に報告を求めていません。

根津氏  要するに薬剤師会などの団体に対する意識が薄いのですよ。

江黒氏  意識の高い薬剤師は休日に自分で実費を払って講習会やセミナーに出席していますよ。しかし、全体的に見るとノンポリ派が多いですね。意識の高い薬剤師社員が日薬に参加すると役員になることが多いです。日薬はオーナー開局者が多いから会社勤務薬剤師を使いやすいようですね。学校薬剤師も個人経営者は平日昼間から店を出られないのでスギヤマ薬品のように薬剤師が充実しているチェーンドラッグストアの勤務薬剤師が頼られるのですよ(笑い)。

──  なるほど、ドラッグストア勤務薬剤師が日薬会員の開局薬剤師に協力している訳ですね。

研修は調剤実務を優先(杉山氏)

杉山氏

杉山氏

杉山氏  当社の地元地域は最近薬科大学が2校増えたので大分助かっています。6年制薬剤師不足はドラッグストアだけでなく、病医院も公務員も皆同様ですよ。私は調剤が当社の生命線と思っているので薬剤師採用には直接係わっています。愛知県の麻薬取締官も薬剤師6年制教育移行前に採用しなかったため薬剤師不足状態です。そのため薬剤師資格者は公務員試験が免除され面接だけと便宜を図っていますよ。薬学教育6年制になって良かったと思うのは実務実習に一般薬が取り入れられたことです。薬学生の実務実習は薬剤師会が主導していますが、薬剤師会会員薬局は調剤専門薬局で一般薬を取扱わない店舖が増えているため、一般薬の実務実習は当社が依頼されて学生を受け入れており一般薬に興味を持つ学生も増えていますよ。また、当社も新人研修として約3か月間実務研修を実施しています。当社は調剤過誤の未然防止を最大目的として一般薬販売より調剤実務を優先的に研修しています。

──  一般薬の店頭研修は行なわないのですか?

杉山氏  一般薬教育は大学の実務実習で行なわれているから助かりますよ。当社は調剤併設店勤務を希望する新入社員も多く、併設店勤務薬剤師の半分位は店頭に立って一般薬販売も行ないます。調剤併設店増加のデメリットは、薬剤師が少ない状況で併設調剤を行なうと調剤作業中に第一類薬購入のお客様が来た時に待たせてしまうので、薬剤師2人以上の常駐が必要です。そのため当社は、ある程度処方箋枚数がまとまる店舗でなければ調剤併設にしない方針です。薬剤師を3人位常駐させるためには1日当たり最低100枚の処方箋取扱いを見込めることが条件で、それをクリアしないと調剤併設店にはしません。逆に1日当たり処方箋取扱い枚数が100枚を割り込む店舗は、今後処方箋取扱い枚数が100枚以上に増える見込みがないと判断すれば調剤併設店舗でも調剤室を撤去します。

──  調剤室を撤去した店舗は登録販売者だけ配置するのですか?

杉山氏  そうなりますね。最近社内で少し困った事がありました。当社は社内恋愛カップルが多いのですが、社内結婚して離婚したら薬剤師の方が先に会社を辞めてしまうのですよ。薬剤師は転職しやすいですからね(笑い)。この問題は対策の講じようがなく大変困っていますよ(笑い)。

──  離婚を阻止することも出来ないし困りますね(笑い)。根津会長の会社はどうですか?

根津氏  当社も薬剤師は足りないですね。薬剤師数に合わせて出店計画や調剤併設店にするか決めている状況です。

──  薬剤師確保対策はどうしていますか?

根津氏  採用担当者が薬科大学の就職課回りなど当たり前の事を地道に行なっています。マツモトキヨシも同じですよ。

──  ドラッグストアは今後、調剤併設店が基本モデルになりますか?

根津氏  そうなるでしょうね。アメリカの例を見てもそうなりますよ。調剤事業が儲かるかどうかは別にして、ドラッグストアの役割は調剤業務とセルフメディケーションの一般薬販売事業の両方を担うことが社会的使命と思います。今後、更に面分業が進む事が前提条件になりますがね。でも、薬剤師不足を解消しないと調剤事業は難しいですね。

製配販で返品削減に努力を(根津氏)

根津氏  返品を減らさないといけないですよ。メーカーや卸各企業が困るだけでなく国家的にも資源の無駄遣いですからね。返品問題については製配販で検討して、返品をなくす仕組みを早急に作る必要がありますよ。

──  小売業として返品削減に協力する考え方は珍しくないですか?

根津氏  もちろん本気ですよ。小売業がその気にならなければ解決しない問題ですからね。

江黒氏

江黒氏

江黒氏  返品は製配販の全てが得しない問題ですからね。医薬品業界が一番ひどいようだから早急に改善が必要ですね。

──  これは驚きですね。小売業は季節商品など欠品防止のために大量に仕入れて売れ残れば全て返品する考えではないのですか?

根津氏  そういう考え方が無駄の元凶なのですよ。大量返品は廃棄ロスになるから原価も高くなるのですよ。

──  メーカーや卸の団体から根津会長に感謝状が出ますよ(笑い)。JACDSも返品問題に取組む考えですか?

根津氏  返品は企業個別の問題だと思いますが、JACDSも返品問題について研究を行なっていますよ。

石田氏  AJDのPB商品も返品なしですよ。

──  返品問題は卸やメーカーが非常に悩んでいる問題なので小売企業が全面的に協力すれば解決策を見出だすのも難しくないと思います。本日は貴重なご意見を有難うございました。(おわり)

全国有力ドラッグストア企業トップ座談会

2014年05月8日

左から阿由葉と石田、江黒、根津、杉山各氏

出席者

いまドラッグストア業界は大きな転換期を迎え今後の進路選択に迷い悩んでいる。かつて右肩上がりの急伸長を続けた勢いは陰り、食品、日用品雑貨のほか新たに医薬品を加えた三本の矢≠ナ攻勢なコンビニやスーパーの圧力を受け業績も停滞傾向。流通業界で「ドラッグストア一人勝ち」と言われた時代は終わった。更に消費税率引き上げ、一般用薬ネット販売解禁など市場環境も著しく悪化し、ドラッグストアは厳しい試練に直面した。その中でドラッグストアが生き残るためにはどうすべきか?本紙恒例の「全国有力ドラッグストア企業トップ座談会」を4月9日午後6時から東京・大手町のKKRホテル東京で開催、杉山貞之潟Xギヤマ薬品社長、石田岳彦鰍bFSコーポレーション副社長、江黒純一潟Nスリのマルエ会長、根津孝一鰍マぱす会長など辛口論客がドラッグストア業界の生き残り策について激論を展開した。行司役は阿由葉孝夫本紙編集局長。

――4月1日から消費税率が8%にアップしました。3月は駆け込み需要で大きな仮需があったようですが、4月以降はその反動が出るのではないかと心配されています。皆様の会社では実際にどんな影響があったか順番に伺いたいと思います。最初に鰍マぱすの根津会長からお願いします。どんな状況ですか?

根津氏 確かに駆け込み需要はかなりありました。トイレットペーパーなども買い溜めされて棚が空になりましたね。予想より早く3週間位前から買い溜めが始まりました。東京の下町は特にそういう傾向が強いのかもしれませんね。群集心理的なムードですよ。店に行き棚の商品が少なくなっているのを見ると不安になるんでしょう。その反動で4月に入ってからの売上高は昨年より30%位落ち込んでいるんじゃないですかね。

──3月の売上高伸長率は大きかったですか?

根津氏 売上高数字を確認していないですが、特にマツモトキヨシは単価の高い化粧品がよく売れたようだから売上高の伸びも大きいですよ。

──4月以降の買い控え期間が終わり販売が通常に回復するのはいつ頃になると思いますか?

根津氏 前回の消費税率アップの時は6月頃に回復したから、今回も数か月かかるでしょうね。何しろ生活必需品を買い溜めしちゃっているわけですから(笑い)それを使い切るまでは買わないと思いますよ。

――確かにそうですね。杉山社長の会社はいかがですか?

杉山氏 私も新幹線の回数券を買い溜めしましたよ(笑い)。当社店舗は単価の安いトイレットペーパー、洗剤などは意外に早く3月中旬頃から、化粧品、サプリメントなど比較的高額商品は4月1日の1週間前頃から買い溜めが増加しました。しかし、OTC医薬品の売上高は普段と変わらなかったですね。消費税率アップの影響とは関係ありませんが、花粉症防止商品は今年あまり売れなかったですね。

4月に入ってからは、やはり買い控えで売上げは落ちました。3月31日と4月1日だけを比べると、4月1日売上高は前日の6分の1位に落ち込みましたよ(笑い)。後略

有力医療品メーカー卸トップ座談会

「欠品ペナルティがあるのだから返品ペナルティも設定せよ!!」

2013年08月23日

後列左から  五嶋、今川、天田、岡本
前列左から  玉川、小川、阿由葉、大越

出席者

  • 天田泰正 氏(白十字代表取締役副社長)
  • 今川拓一 氏(イチジク製薬代表取締役社長)
  • 大越昭夫 氏(ピジョン代表取締役会長)
  • 岡本昌大 氏(不二ラテックス代表取締役専務執行役員経営統括本部医療機器事業部事業部長)
  • 小川 實 氏(中央物産常務理事営業本部広域一部管掌)
  • 五嶋啓伸 氏(コンビ取締役常務執行役員ベビー事業本部長)
  • 玉川幸彦 氏(玉川衛材代表取締役社長)

  • 阿由葉孝夫(司会 社長兼編集局長)

本紙恒例企画の「第19回有力医療品メーカー・卸トップ座談会」は8月1日午後5時30分から東京・大手町のKKRホテル東京で開催。

  1. 先月の参院選で圧勝した自民党安倍内閣の景気回復政策「アベノミクス」評価
  2. 古くて新しい返品問題の解消策
  3. 「第93回東京医療衛生用品フェア」の改良点
  4. 消費税率アップの影響
など
タイムリーな話題について医療品業界の論客各氏が率直な意見を述べ白熱の論戦を展開した。
「欠品ペナルティがあるのに返品ペナルティなしはおかしいよ」
「東京医療衛生用品フェアは業界のお祭りだから、展示販売を止め提案型にした方が良いとか悪いとか言わないで、景品を楽しめばよい」
などユニークな意見が続出。

──本日は本紙主催の人気企画である有力医療品メーカー・卸企業トップ座談会にご出席いただきまして有難うございます。当座談会は皆様のご協力を得て第19回目を迎えることができました。その間、当座談会のレギュラーメンバーとして毎回ご出席いただき、有意義なご発言で座談会を盛り上げた岡本良彦不二ラテックス会長が平成23年12月にご逝去、さらに今年5月2日には天田忠正白十字会長も亡くなられ、僅か一年半の短期間に医療品業界の功労者2人が相次いでご逝去されました。そこで故岡本良彦様、故天田忠正様ご両人への感謝と哀悼の意を込めて本日ご出席の皆様と共に黙とうを捧げたいと思います。一同黙とう。ご協力有難うございました。今回は岡本、天田両故人の長男である岡本昌大氏と天田泰正氏が出席しておりますので、立派な成長ぶりを亡き父親達に見せて欲しいと思います。

それでは本題に入ります。最初のテーマは、7月21日の参議院議員選挙で自公与党が圧勝、念願の衆参ねじれ国会が解消、自民党安倍政権は最短でも3年間の長期政権となりそうです。安倍政権の人気は経済成長戦略「アベノミクス」効果で円安、株高となり大企業中心に景気回復の兆しが見えています。しかし、まだ医療品業界には影響が出ていないようですが白十字の天田副社長はどう思いますか?

天田氏 当社はまだ現実的にアベノミクス効果を感じておりませんね。ただ、企業としては財務部が資金運用上デリバティブを行なっているため、現在の円安が当社財務にプラス効果となっているメリットは感じています。また、「アベノミクス」とは関係ありませんが、東日本大震災以降、全国自治体などが防災用品として医療衛生用品備蓄を強化していることは当社の衛材事業にプラスになっています。一方、最近の原材料価格高騰は業績のマイナス要因なのでいかに吸収するかが課題となっています。

──「アベノミクス」による景気回復の実感はないが、円安効果のメリットはあると評価しているわけですね。イチジク製薬の今川社長はどのように感じていますか?

今川氏 当社は本日出席者の中で唯一医薬品専門メーカーだから、医療品メーカーの皆さんとは若干立場が違うかもしれません。アベノミクスということで安倍内閣が経済成長政策を次々に打ち出している事には期待しています。その結果、経済環境が円安株高に変わりましたから、ムード的には大手企業中心に良い雰囲気になっていると思います。実際に輸出企業は円安効果で業績が大幅に伸長しています。しかし、医療品や医薬品業界は景気が良くなったという実感が全くありません。例えばOTC薬はドラッグストア中心に販売していますが、ドラッグストア企業の業績は好調でも、OTC薬売上高は低迷を続けて前年割れ状況です。当社の主力商品である浣腸も同様で市場は低迷続きです。日本経済の景気動向は良い方向へ進んでいると思いますが、一般消費財市場は国民所得が増えて可処分所得も増加する状況にならないと景気回復を実感できないと思いますね。したがって、「アベノミクス」経済成長戦略施策実施が進行して、日本全体の景気が底上げされないと、医療品や医薬品など消費財市場まで「アベノミクス」効果の恩恵が回って来ないのではないかと思っています。

──業界側の努力で「アベノミクス」効果による上げ潮ムードを取り込む方法はないですか?

今川氏 それは余程の大型商品か画期的新機能を持つ商品を開発するしかないと思いますね。

──簡単に開発出来ませんね。ピジョンの大越会長は「アベノミクス」効果よりも中国の経済状況が気になりますか?

大越氏 そうですね。当社は現在中国ありきの経営状況ですからね(笑い)。でも、そんな事はありませんよ。国内事業と海外事業のバランスは半々くらいですからね。しかし、お陰様で中国の経済成長率が多少鈍っても、中国では毎年2700万人以上の赤ちゃんが生まれていますから非常に大きい市場です。経済成長率がダウンしても日本と比べたら3倍も4倍も高いですから、将来の見通しは非常に明るいですね。ところでアベノミクスの恩恵を受けている点は、為替が円安になったことです。当社売上高の海外比率が年々上がっているから連結決算で円安になると利益が増大します。株価についても、安倍政権になってから当社株価が大幅に上がったので、その点は大変恩恵を受けていると思います。あとは、金融緩和効果で銀行から資金を借りやすくなったこともメリットですね。しかし、日本市場は毎年新生児数が約2万人ずつ減少しているので、当社にとってはマイナス現象です。少子化問題は民間で何とか解決しようと考えても難しいです。企業が赤ちゃん手当てを支給するぐらいでは出生数は増えませんね。赤ちゃんを作らないと損する位の制度を作って欲しいです(笑い)。日本政府は少子化問題対策をもっと真剣に考えないと、日本経済の先行きは不安ですよ。そこで女性を活用する考え方が出てきて、女性管理職を増やせとか啓蒙していますね。専業主婦が社会に出ると6兆円位の経済効果が生まれるそうですから期待しましょう。

会社沿革    
1982年10月 1日医薬品業界専門新聞出版社「薬粧流通タイムズ社」創立
1982年10月15日新聞「薬粧流通タイムズ」創刊号発行
1983年12月 9日「株式会社 薬粧流通タイムズ社」に改組。資本金1,000万円
            代表取締役編集局長 阿由葉孝夫
1984年 4月13日第三種郵便物認可 発行人 阿由葉孝夫
1985年 4月 1日大阪支局開設(現在閉鎖中)

◇本町記者会(医薬品業界専門紙記者クラブ)会員
◇日本医学ジャーナリスト協会会員
◇流通記者会(日本チェーンドラッグストア協会主催)会員


株式会社 薬粧流通タイムズ社

〒103-0023 東京都中央区日本橋本町4-14-7 石金日本橋ビル8F
TEL. (03)6674-5532 FAX. (03)6679-5952
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代表取締役編集局長 相川 和彦