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「勝ち組」経営幹部が読む広角業界情報紙

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神戸製鋼所(川崎博也会長兼社長)とグループ企業によるアルミ・鉄鋼製品・銅製品などの製品検査データ不正改ざん問題の拡大が収まらない。不正製品は自動車、新幹線の台車、航空機、自衛隊(航空機、魚雷、ミサイル)、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のロケット、東京電力福島第2原子力発電所(冷却用熱交換器部品)など重機械産業中心に国内外500社以上にまで影響が広がっており、ドラッグストアや薬局で取り扱う使い捨てカイロの鉄粉にも神戸製鋼製が使われているとか。

近年はグローバル大企業と言えども屋台骨が吹き飛ぶ不祥事が相次いでいる。国内企業は、日産自動車(無資格者による新車完成検査実施)、東芝(東芝本体および米国原子力施設関連子会社ウエスティングハウス粉飾決算)、タカタ(エアバッグ不具合による死亡事故発生と大規模リコールと賠償)、三菱自動車工業(リコール隠しや燃費計測データ改ざん)などは記憶に新しい。このうち、タカタは経営破綻したほか、三菱自動車も三菱グループ企業の支援で一度再建の道を歩むも、その後日産自動車の傘下となった。東芝は巨額損失による債務超過解消のため稼ぎ頭の半導体事業売却に到った。日産自動車は主力の38車種160万台についてリコールを届け出ており、費用は約250億円かかる見通し。

神戸製鋼所も今後、リコールや賠償、訴訟対応などの事後対応が不可避で、海外企業からは巨額賠償を求められる可能性があり、成り行きによっては歴史ある企業の命運を左右するかもしれない。2年後には日本でラグビーワールドカップが開催予定だが、社会人ラグビーの伝統チームに影響が及ばないことを願いたい。今から10年ほど前、船場吉兆や伊勢の赤福餅など食品偽装事件(消費期限の書き換えなど)、ミートホープなど食肉偽装事件、米穀卸企業による事故米不正転売事件などが相次ぎ、国産食品の品質や安全に対する信頼が大きく揺らいだ。医薬品は、化血研のワクチン不正製造問題のほか、今年6月には大手原薬メーカー山本化学工業が解熱鎮痛剤「アセトアミノフェン」、抗てんかん薬「ゾニサミド」の製造原薬に無届けで中国製などの原料を使用した事件が発覚。医薬品は生命や健康に影響する製品であり、高い倫理観とコンプライアンス意識が不可欠であることは言うまでもない。

これら数々の不祥事の根底には、「利益至上主義」と「慢心」があるだろう。現在、庶民に実感が伴わないながらも景気回復期間が平成24年11月から58か月続き、いざなぎ景気を抜き戦後2番目の長さになったそうだ。そこで好業績を続ける企業も多いが、経営者や組織、従業員に無理や慢心はないだろうか? 今の内に再点検しておきたい。遅きに失すると今まで積み上げてきたものが全て水泡に帰す。商品品質と経営品質とは相互関係にあり、目に見えない経営品質で世界一を目指す企業は長く存続できるだろう。神戸製鋼所製品への信頼が揺らぐなか、幸い訪日外国人の日本製品への評価は非常に高いようだ。その理由は、品質の高さに加えて、過当競争で培われた商品改善、顧客主義に立ったクールなパッケージと温かいおもてなしの心など、不断の努力が結実したものだ。今後もさらに訪日観光客の増加が予想され、インバウンド需要の国内経済貢献も期待できる。インバウンド需要の腰を折らないためには、これまで行なってきた努力を当たり前に継続することが基本だ。テレビ番組などで訪日観光客のインタビューや日本大好き外国人の話を聞くと、皆一様に日本礼賛の言葉が躍っている。それらはバイアスがかかっているから勘違いしてはいけないが、訪日観光客の日本礼賛がバブルでないことを信じたい。

市区町村など地方自治体による子供の医療費無料化を推進する動きが止まらない。制度の狙いは安心して子供を生みやすい環境を提供することにより少子化進展に歯止めをかけ出生数増加を図ることが建前だが、本音は人口減少社会に突入し手をこまねいていると自治体の人口が減少し地域経済やコミュニティが衰退してしまう状況が確実視される中で、住民の流入増加、流出歯止めの政策を実施し、税収を確保したいと言ったところ。

厚生労働省が発表した統計調査によると、昨年4月1日現在で国内1741自治体全てが子供医療費の援助を行なっている。

その内訳を実施内容別にみると、「所得制限なし」1402自治体(80.5%)、「所得制限あり」339自治体(19.5%)で、自治体の8割は所得に関係なく子供の医療費を支出。また、「全額負担(子供の医療費無料)」が1030自治体(59.2%)、「一部自己負担あり」は711自治体(40.8%)と、約6割の自治体が子供の医療費を無料(ただ)にしている。

さらに、通院医療費援助の対象年齢は、「中学生(十五歳年度末)まで」996自治体(57.2%)が最も多く全体の六割弱を占め、「高校生(18歳年度末)まで」269自治体(15.5%)が次ぐ。「大学生(22歳年度末)まで」という大盤振る舞いの自治体も一自治体(北海道南富良野町)ある。

近年、各自治体間の子供医療費援助制度の充実化はまるで人気アイドルグループのメンバー総選挙のように人気獲得競争化している。近隣自治体が子供医療費を優遇すると、自分の自治体も対抗上、同じかそれ以上にするというチキンレース(無意味な競争)に陥っている。しかも、競争が進み、結局どこに住んでもあまり変わらない状況になりつつある。これは、寄付金獲得合戦が過熱する「ふるさと納税」にも似た構図である。

その結果、住民は「子供が病気と思ったらすぐ病院に行かせれば良い」という安易な意識を持つ。政府は医療費や医療資源を節約するために健康管理の自己責任化、セルフメディケーション推進、医療費を抑制した自治体へ交付金を厚くするなどの政策を打ち出しているが、子供医療費無料化は政府方針に逆行し、「お任せ医療」を推奨しているのと同じことだ。無料になると薬局、ドラッグストアは小児用の薬が売れなくなり、商品を置かない店が増えるかもしれない。

また、安易な受診は医療費を増大させ、その多くは税金が投入されることも忘れてはならない。医療費がさらに膨張を続けると、消費税率アップなど税収増加で補うか、医療費自己負担分の拡大、もしくは公的保険でカバーする医療の制限など、最終的にそのツケは国民に跳ね返ってくる。

それでも、「少子化対策は我が国存亡にかかわる最重要課題で、子供を産みやすくする環境作りこそが急務」と反論する向きもあるだろう。しかし、医療費無料化以外にも、待機児童の解消、女性が働きやすい職場環境整備、教育・文化の充実、地域での子育て支援などほかにもすべきことはある。どうしても医療費を支援したいならば、いったん自己負担分を窓口で支払ってもらい、一定の基準に適合した分を後日還付するなどの方がまだマシで、受診者に医療費を意識させる方法をとるべきだろう。

地方議会選挙では、与野党を問わず「子供医療費の無料化」を公約に掲げる候補者が多い。しかし、地方財政も厳しい中でばらまき政策ばかり行なうと自治体であっても破たんする。賢い有権者たるには、選挙公約に「飴」が多いほど、公約に記されない「鞭」(住民サービスのダウン)が潜んでいることを見抜く目を持つことである。

フレイル予防に産官学が連携して全力で取組むことが急務だ。フレイルとは「虚弱」の意味で、高齢者が健康な状態から要介護になる中間の時期に心身の機能が次第に衰えること。フレイルを放置して心身機能が徐々に衰えていくと、認知症やロコモティブシンドロームの原因となり、最終的には寝たきりになる。フレイルを予防することは健康寿命延伸にも医療費抑制にもつながる。

人は誰しも加齢により次第に身体機能が低下する。体力がなくなり足腰が弱くなると外出を控えるようになる。すると、運動量が減り体力も減退する悪循環に陥る。また、家にこもりがちになると、人と会ったり、買い物したり、他人と接触する機会が減り、脳を使わなくなる。家でテレビやインターネットなどから情報は得られるが、受動的情報に対して脳は刺激を受けにくく、脳の働きは鈍くなる。

体力の衰えを「齢だから仕方ない」と諦めたら健康寿命は伸びない。従来のアンチエイジングは顔や肌などの外面的ビューティケア(見た目年齢の維持、若返り)が多かった。一方、高齢者に対するフレイル予防アンチエイジングは、基礎体力と脳機能の維持が重要で、まさに若さの秘訣は「気力」「体力」から。

身体機能のアンチエイジングは様々な運動や予防が必要で、筋肉の強化やストレッチなど筋力と柔軟性の維持強化、ウォーキングや水泳などによる心肺機能の維持強化、そのほか5感(視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚)トレーニングから身体ケア、栄養バランスのとれた食事(ポリフェノール類など抗酸化物質摂取も推奨)、充分な休息、清潔な生活環境の維持、疾病予防まで幅広い。

一方、脳のアンチエイジングの基本は、脳機能活性化トレーニング(脳トレ)も良いが、最もシンプルな方法は社会やコミュニティ活動に参加して人との交流を続けること。他人の話を聞き理解する、自分の考えをまとめて他人に伝えるなどのコミュニケーションは脳の活性化に最適。また、質の高い睡眠、ストレス解消や楽しみ、笑い、感動などメンタルヘルスも重要だ。

国立長寿医療研究センターが認知症予防・改善目的で開発した身体と脳を同時に使うエクササイズプログラム「コグニサイズ」は、運動しながら計算するなどフレイル予防にも最適と認められ、利用者に採用する高齢者施設が増えている。

定年後も仕事を継続することは身体機能、脳機能の維持には効果的だろう。こう考えると、人間は非常に社会的な動物ということになる。人間は年をとるほど家族や友人が減り孤独の度合が増しがちだが、孤独になり自分のすべきこと(義務、役割)がなくなることは、人間としての社会的存在意義を喪失して、生きる意味を見出せなくなる。

したがって、加齢による孤独化傾向に対して、自ら抗うことが重要だ。友人を作り、他人と交流するため外出し、趣味や会話などコミュニケーションを図る。それが会社や作業所、施設、コミュニティ活動など何でも良い。要は「他人と交流して対人関係を絶やさないこと」。そのためには、高齢者を孤独にさせない生活環境整備が必要かもしれない。それは、田舎の村社会、都市部でもかつての長屋のように近隣生活者の顔が見える濃密なコミュニティづくりで、これまで進行してきた核家族化や個人優先の生活文化とは真逆の方向に再び舵を切ること。現在若者の間で流行りつつあるシェアハウスのような住居環境は、高齢者にとっても案外良いかも知れない。しかし、そのようなコミュニティの全国的普及は一朝一夕には難しい。

今、すべきことは地域の医師、薬剤師、登録販売者、看護師、介護士、ケアマネージャー、自治体の福祉担当者などが連携し、一人でも多くのフレイル予防を実現することだ。

7月2日投開票された東京都議会議員選挙ではそれまで第一党だった自民党が惨敗、改選前の57議席から34議席減の23議席となり下野した。これは都政の出来事だが、その衝撃は国政レベルに匹敵し、今後の自民党安倍内閣の政権運営にも大きく影響することは必至。事実、選挙後の一般紙各社調査によると安倍内閣の支持率は急落し、不支持率が支持率を上回っている。

都議選は、小池百合子東京都知事率いる都民ファーストの会が単独で49議席を獲得し第一党に躍進したほか、同会に同調した都議会公明党などを加えた与党勢力は過半数の64議席を大きく上回る79議席となった。

選挙結果は、都民ファーストの会の圧勝というよりも自民党の自滅によるところが大きい。今年になり、安倍総理自身の森友学園、加計学園への口利き疑惑、側近の稲田朋美防衛大臣の非常識な失言問題のほか、度重なる自民党二回生議員の不祥事問題も重なり、政権イメージダウンにつながった。特に、選挙期間中に豊田真由子衆院議員が運転中の秘書に対し「このハゲー! 違うだろうー!」と絶叫しながら暴言暴行を行なう音声がテレビのワイドショーなどで繰り返し放送され、同議員の二面性が暴露されたことは衝撃的だった。また、安倍一強体制の中での強引な議会運営姿勢に対し、今後自衛隊を明記するための憲法九条改正計画なども相俟って不安視する人も多かった。これらの例から、自民党安倍内閣には慢心とおごりがまん延していたと指摘する向きが多い。

しかし、自民党の敗因はもっと別にあるのではないか? これまで安倍内閣支持率は安定高位を維持し、今年4月時点で「アベノミクス景気」の期間は「バブル景気」を抜き戦後3番目の長さになるなどアピールできる点はあった。しかし、好況なのは一部大企業の業績にとどまり、好況の恩恵が一般生活者レベルまで届かないことが問題だった。

アベノミクスの目標の一つに、2%台のインフレを達成して国民の所得向上を図ることが掲げられている。所得が増えれば消費に回るお金も増え、経済の車輪が好循環を作るトリクルダウンが実現する……はずだった。しかし、企業は幾ら利益を上げてもベースアップには及び腰で所得はほとんど増えていない。一方で企業の内部留保は増えている。

生活者側からすると、収入は増えないのに、食品、郵便はがき・宅配便、電気・ガスなど値上げラッシュで年金掛け金も毎年上がると、消費に回すお金は増やせない。個人は高齢者中心に1,500兆円以上の貯蓄を持つが、使われないままその額は年々増えている。

また、一般国民の生活は苦しいのに、お上(議員、公務員)は公約だったはずの議員定数や公務員数の削減努力が見られない。議員定数削減は違憲状態(概ね2倍以上)を脱するための微調整でしか行なわれない。一千兆円超の累積債務(国の借金)返済も課題で、議員や公務員から率先し、自らが身を切る姿勢を示して痛みを伴う改革を行なわなければ、国民の不満はますます高まるだろう。

正しい情報と達成可能な計画を示して、国民全体でさらなる痛み(負担)を分かち合うことも必要だ。国民皆保険制度を維持するためには、受益者負担の増加やサービスの一部縮小もやむを得まい。選挙対策の増税延期のように、これ以上現世代が痛みを避けて次世代にツケを回すことは、責任逃れであり国民への裏切り行為とも言えるだろう。

企業も個人も将来に対して漠然とした不安を持ち、使われないお金が増えている。日本経済を活性化させるためにも社会保障を含む大胆な制度改革を断行、将来にわたり安心できる持続可能な制度を構築して「漠然とした将来不安」を払拭することが何よりも必要だ。今こそ、既得権益の利害調整よりも「国民ファーストの改革」にまい進する時である。

前号社説で超高齢人口減少社会における企業定年制度見直しの必要性について述べた。総務省によると、わが国の人口動態予測は2050年(平成62年)には人口が1億人を割り、65歳以上の高齢化率は40%に近づくとしている。同年の総人口は9,708万人で、内訳は高齢者3,768万人(全体の38.8%)、15歳〜64歳5,001人(同51.5%)、14歳以下939万人(同9.7%)。15歳〜64歳以下の人口から学生を差し引くと、64歳以下の社会人1人が高齢者1人を支える構図。そうなると、現行社会保障制度が破たんするのは確実な状況であり、人口減少社会進展に伴う労働力不足対策としては、働く意欲がある高齢者と女性の活用が急務である。

一方で、政府は同時に景気回復策も推進している。安倍内閣の経済戦略「アベノミクス」は日銀金融政策と共に経済成長(約2%インフレ率実現)を目指して各種政策を展開する。しかし、今後の人口減少社会の中で経済成長を単純に追うことには無理がある。インフレ目標も、同時に年金支給水準の増額調整と従業員給与のベースアップが不可欠で、非常に難しい。

戦後の日本経済は、バブル崩壊まで景気の波はあったもののほぼ右肩上がりに成長したが、その源泉は欧米に比べて低い国民生活水準の是正と人口増加に依存してきた。したがって、社会が成熟し人口が減少する日本にとり、従来同様の経済成長を求めることは幻想と言える。

さらに、バブル崩壊後に長期景気が低迷した要因は、不良債権処理などバブルの後始末で国民所得が増えずデフレスパイラルに陥ったことだけではない。1番の変化は、国民にとって3種の神器(テレビ、冷蔵庫、洗濯機)や新3種の神器(3C=カラーテレビ、クーラー、カー)など憧れの商品を競って購入した「モノの時代」から、既にスマホ普及率も8割を超え、欲しい物もあまりなく、むしろ豊かな環境や時間、文化、経験を楽しむ「ココロの時代」へとシフトしたこと。所得が増えなくなった人々は、立ち止まって足もとを見つめ直し、今の生活や将来目標、幸福感、生き甲斐などを考えた。その結果、高度成長期のようにただ闇雲に頑張る人は減り、「リア充」(家族、恋人、友人、仕事、趣味などにより現在のリアル生活の充実を求める)志向や、将来目標実現のために逆算して計画的に努力する人々などが増えている。

今後の日本はどのような方向性を志向すべきか? 答えは簡単だ。量から質への目標転換を図り、高付加価値、多様化ニーズ、ニッチ市場、心の満足などに応えることが重要だ。

今後、日本が目指すべき姿はかつての経済大国でも高度成長社会でもない。自動車やIT機器、医薬品でさえ、今や世界のどこででも作ることができる。今後、経済大国の座は人口が多い中国、インドが席捲する可能性が高い。日本は今後、世界が真似できないコアコンピタンス(競争優位性)をさらに磨き世界で圧倒的地位を確立すれば良い。それは、イノベーションを伴う高付加価値ビジネスやソフトパワー(おもてなしの心、アニメなどのサブカルチャー、ミシュランで最も星を獲得するグルメ、芸術など)であろう。

世界で最も幸せな国と言われるブータン王国は経済的には貧しくても国民は幸せを感じている。また、国連が今年3月20日「世界幸福デー」に発表した国別幸福度ランクは上位ノルウェイ、デンマーク、アイスランドの北欧勢が占めるが、日本は51位に甘んじている。「数字(量)」でアメリカ、中国に勝てないなら、日本は数字では表わせない心の豊かさや幸福度などプライスレスな「質」で世界一を目指すべきだろう。そのためにも、社会保障制度改革を成し遂げ、「漠然とした将来不安」を解消することが先決だ。

先頃、大和証券はこれまで上限70歳としていた営業担当社員の定年後再雇用の年齢制限を廃止するというニュースが報道された。経験と能力ある人材の活用がその目的。厚生労働省によると大企業で再雇用の年齢制限を撤廃するケースはまだ珍しいとのこと。

自民党安倍内閣は、我が国が今後超高齢化人口減少社会を迎えるなかで「一億総活躍社会」「生涯現役社会」の実現を打ち出しており、生産年齢人口減少による国民総生産(GDP)など経済力と生産性の維持を図るためにも、労働意欲のある高齢者と女性の活用を推進したいとしている。

ところで、この2月〜3月にも医薬医療業界関係者の知人数人から60歳定年による退職の挨拶状をいただいた。しかし、彼らの顔を思い浮かべたら、皆さんリタイアする年齢とは思えないほど若く、そんな年齢とは気付かなかった人もいた。

時代に合わない旧来の定年制度はもはや見直す時期にきている。これからは年金受給開始年齢も65歳となるが、未だに定年を60歳とする企業が多く、これらの企業は定年年齢を早急に65歳に引き上げるべきだ。

定年制度の意義を考えると、従来の人口増加が前提の高度成長社会においては、社会システムや人生設計上、次のようなものがあった。

@国民皆保険施行時(昭和36年)の日本人男性の平均寿命は66歳だったため、平均10年に満たない余生(第二の人生)をゆっくり過ごしたい(過ごして欲しい)という願いの実現A社会においては職業と所得の機会を若い人に再配分する効果B企業においては役員や幹部ポストを適切なタイミングで後進にバトンを引き継ぐことにより、若手社員のモチベーションを高める効果C企業経営面からは給与水準の低い若手社員に入れ替わることで労働力コストに一定のキャップがかかる効果─などである。さらに、平均寿命が今より約15歳短い時代には、人々は還暦を迎える頃には体力・気力の衰えが感じられたかもしれない。

しかし、状況は変わり人生80年時代になると、これまでの定年制度は日本の社会保障制度(国民皆保険・皆年金制度)と同様、最早時代に適合せず矛盾が感じられる点が多い。さらに、今でも、50歳、55歳を対象に早期退職制度(緊急リストラでなく正規の人事規定)を持つ企業があるが、これに至っては時代錯誤も甚だしいと言える。

これからは、65歳定年制度と併せて年齢上限を設けない再雇用制度を導入すべきだろう。年金受給開始年齢到達の時期に第2の人生をスタートさせる仕組みを設けることだ。まず、今後も働き続けるか、リタイアするかを選ぶ。働き続けたい人は、同じ職場で経験や知識を活かすか、もしくは起業も含め新しい仕事に挑戦するかを判断し選択する。仕事より家族や地域とのつながりや趣味などの時間を持ちたい人はそうすれば良い。

資源の少ない日本において、労働需要と供給のアンマッチから資源(労働余力)を活用しきれていないとしたら、貴重な資源をドブに捨てているのと同じで、本人・家族、企業や社会、国家のどの観点からみても大変「もったいない」。さらに、政府は健康寿命延伸を図っており、働く意欲がある元気な高齢者は今後益々増加するはず。

天然化石資源が少ないと言われた日本にも近年、領海領土内に天然ガスやメタンハイドレートなどの埋蔵が確認されつつあるが、その活用と商業化にはまだ高いハードルが残る。一方、これまで活用できていない労働力資源(高齢者と女性)は目の前にある。その潜在力の掘り起こしこそ急務であり、日本が世界に先駆けて迎える少子高齢人口減少社会に対する処方箋として、諸問題解決の糸口となるはずだ。

日本チェーンドラッグストア協会(JACDS、青木桂生会長)は今年2月23日開催の常任理事会で次世代ドラッグストアビジョン「ドラッグストアが求める健康サポート機能」を策定、3月3日に東京虎ノ門の協会東京事務所で開催した記者意見交換会で公表し、3月24日にJAPANドラッグストアショーでも宗像守事務総長が緊急会見の場を設けてビジョン実現への思いを熱く語った(本号12面および本紙平成29年3月15日付第466号19面に関連記事掲載)。ビジョン内容はすばらしいもので、ドラッグストアが生活者から求められるべきニーズや理想が網羅されており、ぜひ実現を期待したい。

次世代ビジョン策定の背景は、これまで低価格販売をメイン戦略として右肩上がりで成長してきたドラッグストアの業績が鈍化傾向(正確には二極化)にあること、また飽和状態にあるコンビニエンスストア(CVS)が再成長のために「健康」「介護」「美容」などドラッグストアのメイン市場に侵食する動きがあることなど。また、ネット販売業者やCVS以外の異業種も今後の成長期待から「健康・長寿・美容」市場への参入も予想され、ドラッグストアは現状に甘んじて進化を止めようものなら現在のパイを異業種に奪われてしまう可能性が高く、その将来不安から策定されたものとも言える。

最大のライバルをCVSとした場合、ビジネスモデルにおける両者間の違い(差別点)は何か? CVSの最大特徴「効率性」に対してドラッグストアは「専門性」である。従業員もCVSは単純作業が主なためアルバイト、パート中心で、外国人も多く雇用するが、ドラッグストアは各店に社員のほか薬剤師、登録販売者、様々なアドバイザーなど資格者や専門家が必要で、会話接客に不安がある外国人従業員は少ない。そのため必然的にドラッグストアの人件費は高くなる。

この両者の違いから、ビジョンの狙いはCVS的利便性を確保しつつ、ドラッグストアが最大の差別的特徴である専門性を徹底的に追及して、他の追随を許さない地位確立を図ること。しかし、それを追求すればするほど、これまでドラッグストア成長の原動力となった低価格大量販売による「安い、早い」のファーストフード的ビジネスモデルから脱却し、「納得価格、必要に応じ丁寧に時間をかけ対応」と、従来の正反対に近いレストラン的ビジネスモデルを志向することになる。

そのために必要なのは人材・教育への投資拡大と、「売上げ、効率主義」から「顧客満足第一主義」へのマインドセットの転換。ドラッグストアが地域密着ビジネスを展開し圧倒的信頼を得るためには、従来の小売業(物販業)のままでは難しい。

ドラッグストアが真の「健康ハブステーション」を実現する日には、ドラッグストアは産業分類(大分類)が「小売業」から「サービス業」に指定が替わっているかもしれない。その日が一日も早く来る事を願う次第だが、規制緩和などの制度変更や薬剤師の意識改革以前に、まず必要なことは、経営者がこれまでの成功体験に固執せずゼロベースで事業革新を断行する覚悟を持つなどの意識改革だろう。

公共放送NHK(日本放送協会)までもが誤りを犯してしまった。NHK総合テレビ2月28日放送の人気バラエティ番組「ガッテン!」(旧番組名「ためしてガッテン」)の特集「最新報告!血糖値を下げるデルタパワーの謎」のなかで、「医療用睡眠薬を服用すると血糖値が下がるため、糖尿病の治療や予防ができる」と結論づけて放送されたことだ。

もとより、医療用睡眠薬には「血糖値を抑える」効能効果が認められていないため、それだけでも適用外使用となるほか患者にとっても副作用による健康被害を受ける可能性がある。こんな無法行為をNHKが公然と行なうとはお驚きで、番組内容チェック機能すら働かないお粗末ぶり。

さすがにこれほど非常識な内容だったため、日本神経精神薬理学会などの医療関係団体が即刻抗議、厚生労働省も厳重注意した。これを受けて、3月1日放送の同番組冒頭、小野文恵アナウンサーは「説明が不充分だったり、行き過ぎた表現があったりしたため混乱を招いてしまいました」と陳謝。しかし、「説明不充分」「行き過ぎた表現」などと、表現手法の誤りとしてこの問題を済ませようとするのであれば、HNKは事の本質を理解していないし、再び同じ誤ちを犯しかねない。

医療用医薬品は、医師が疾病治療のため、その効能効果に従い適切に処方するとともに、薬剤師がきちんと説明を行ない、患者はその薬の働きや用法用量を理解して適正使用に努めなければいけない。NHKはこの医療用医薬品の基本中の基本すら理解していなかった。さらに、医療用医薬品は健康保険や税金で賄う国民全体の財産であり、適応外使用や薬物乱用を助長するような発言は公共機関として決して許されない。

もし、NHKが特定の睡眠薬に他の血糖降下薬以上の優れた作用を見出し、同剤の糖尿病への適用拡大を図ることが社会利益に資するという高い志を持つのであれば、製薬企業や研究機関と組み、正式な臨床試験を行なうのが筋である。

これはNHKに限ったことではない。超高齢社会の中で一般視聴者や読者を対象とした番組や記事は、視聴率や部数に直結するキラーコンテンツとして健康情報を採り上げることが多いが、新たなトピックスは当然、学会論文や企業発表レベルの情報が大半を占める。新たな知見や新しい学説は長期間の使用経験や、統計学的に有意な大規模臨床試験を経ておらず、動物レベル、細胞(試験管)レベルの場合が多い。最近、医師が実名入りで登場する番組や記事も、学会で定まっていない事柄は、医師によって見方や考え方も様々であり、1人又は数人の医師の話を聞いてそのすべてを盲信すべきではない。さらに多いのは健康食品の宣伝で、違反すれすれの際どい表現や、信用度の低い「個人的感想」を連発する広告も見苦しい。

テレビ番組や新聞雑誌記事に踊らされないためには情報の受け手である視聴者や読者が賢くなるしかない。薬機法第1条の6において、「国民は医薬品等を適正に使用するとともに、有効性安全性に関する知識と理解を深めるよう努めなければならない」と規定されたことを契機に、国、業界、医療関係者が啓発活動を行なうことが重要だ。

先日、地方の知人宅(高齢者)を訪問した際、電話機近くの壁に「その電話、詐欺かも!」と注意を促す札が貼られていた。生活者1人ひとりが自覚をして情報を選別評価できるようになる必要がある。それとも、テレビの前に注意札「その情報、ウソかも!」を貼りますか?

2017年02月15日

「やはり現金問屋だ!」。

厚生労働省は2月1日付けで、C型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」(以下「ハーボニー」、ギリアド・サイエンシズ)の偽造品が流通したことについての調査報告書を公表した。「ハーボニー」の偽造薬は今年1月以降に奈良県と東京都で相次ぎ発見された。1月6日に奈良県を中心に調剤薬局チェーンを展開する滑ヨ西メディコの「サン薬局」で同剤処方を受けた患者が錠剤の異変に気付き、1月10日ギリアド社に照会して発覚。関西メディコは昨年5月から正規の医薬品卸であるスズケン以外に、一般に現金問屋と呼ばれる東京と大阪の医薬品卸売業者4社から「ハーボニー」を仕入れていた。日本国内の医薬品流通で、偽造薬の混入リスクがあるとしたら現金問屋経由だろうという懸念が現実となってしまった。

厚労省がギリアド社ほかに依頼して中身を調査したところ、正体は「ハーボニー」とは外見の異なるビタミン剤や漢方薬で、偽造薬というにも非常にお粗末なものであり、これはむしろ不幸中の幸いだった。もしも、外見もそっくり似せて巧妙に作られた偽造薬だったら発見が遅れ、患者も服用効果がないばかりか、健康被害を受けていた可能性がある。

現金問屋は医薬品メーカーや医薬品卸企業から仕入れるほか、薬局などの医療機関から余剰在庫となった医薬品が持ち込まれるケースがある。一般用医薬品を換金目的で個人が持ち込む場合もあり、ドラッグストアなどでは発毛薬「リアップ」(大正製薬)など高額品の万引き被害が後を絶たないが、その遠因ともなっている。

これまで、日本では偽造薬が問題化することはほとんどなかった。背景は、日本の医薬品流通は厳格な管理のもと、メーカーから卸企業を経て薬局に納入され、偽造薬が混入する余地がなかったため。個人輸入された「バイアグラ」などED薬を調査したら約40%が偽造薬だったとの報告があるが、ED薬も国内において正規の病院で処方される薬に偽造薬はあり得ないとされた。しかし、「ハーボニー」事件の発生により、このままでは日本の正規ルートで流通する医薬品の信頼も揺らぎかねない事態となっている。

「ハーボニー」の薬価は現在1錠54,796円90銭。反社会的組織が危険を冒して偽造防止対策が施された偽札を刷るよりも、医薬品の錠剤や容器を本物に似せて作る方が簡単だろう。しかも、1万円札よりも1錠薬価が高い薬が多数ある。今後、バイオなど最先端技術を用いた高額薬が増加する見込みで、偽造薬ビジネスの魅力も高くなる。

偽造薬混入防止のためには医薬品流通システムのさらなる厳格化が重要。現在は現金問屋が流通上の弱点であり、買い入れ時の商品と持ち込み者の厳格なチェックが必要だ。また、医薬品の単品レベルでのトレーサビリティ強化も不可欠。一方、正規ルートといえども内部犯行が起こる可能性も排除できないため、性悪説に基づき全ての混入機会を疑いチェックする仕組みも必要だろう。現金を厳重に管理している銀行でさえ、行員による横領などの不祥事は後を絶たないのだから。

医療用医薬品は国民皆保険で償還される社会的財産であり、医薬品産業に携わる全ての人は、公職とも言える社会的責任を自覚しなくてはならない。仮に、従業員が反社会的組織と通じて正規品と偽造薬をすり替えるような事件が起きたら大混乱が生じ、医薬品産業の信頼は失墜するだろう。医薬品流通は、銀行の金銭同様に一錠たりとも間違わない厳格な管理が求められる。

現在、卸企業はMS1人が軽自動車やハイブリッドカーで担当地域の医療機関を巡回するが、今後は警備会社の現金輸送車レベルのセキュリティーが必要になるかもしれない。

昨年(平成28年)は申年(丙申、ひのえざる)で「形が明らかになり発展する」の意味があった。「形が明らかになる」はこれまで見えなかったものが見えてくること。また、相場の世界で申酉は「騒ぐ」年とされ、大きな出来事が起こり荒れることも多い。

昨年は、6月24日にイギリスで国民投票が行なわれEU(欧州連合)からの離脱を決定した「ブレグジット」、11月8日に行なわれたアメリカ大統領選挙ではドナルド・トランプ候補がヒラリー・クリントン候補に勝利し次期大統領就任が決定。両選挙とも各陣営の支持勢力は拮抗するも大方の事前予想を覆す結果となり、従来見えていなかった既存体制に不満を持つ人々の声とポピュリズムにより煽動されたパワーが一気に噴出、予想外の結果を生み出した。

これら事例も含めて昨年はマンガ的出来事が多かった。IS(イスラム国)が宗教的イデオロギーを核に、現実社会に不満を持つ世界の若者を戦士として集め、戦争を通じて領土を拡大して一大国家を形成しようとするストーリーもマンガ的だ。スポーツの世界でも、プロ野球日本ハムファイターズの大谷翔平選手は7月3日のソフトバンクホークス戦で先発投手兼一番打者をつとめるとプレイボール直後の初球をホームラン、その1点を守り勝利投手となったこと、セ・リーグで優勝した広島東洋カープの「神ってる」大進撃、リオ五輪陸上100b×4リレーで10秒台の記録しか持たない日本の4選手(桐生祥秀、飯塚翔太、山縣亮太、ケンブリッジ飛鳥)が37.60秒のアジア新記録を樹立してアメリカやカナダチームに競り勝ち銀メダルを獲得したこと、12月18日に横浜国際総合競技場で行われたサッカー・クラブワールドカップ決勝戦でも日本の鹿島アントラーズが総年棒で10倍もあるスター軍団レアルマドリード(スペイン)と対戦、柴崎岳選手が2ゴールしてレアル選手を茫然とさせたプレーもマンガ「キャプテン翼」を彷彿させた。

ひるがえって、医薬産業でも夢のような革新的治療薬が生まれた。C型慢性肝炎治療薬「ソバルディ」「ハーボニー」(ギリアド・サイエンシズ)や抗がん薬「オプジーボ」(小野薬品工業)が患者の症状を劇的に寛快や治癒する報告がある。しかし、これらの薬はその高額薬価から財政面で敵視され、「ソバルディ」「ハーボニー」は31.7%(昨年4月1日付)、「オプジーボ」は50%(今年2月1日付)の大幅薬価引き下げを決定。特に、「オプジーボ」は政府が一刻も早く薬価を引き下げるため、通常改定時ではなく例外かつ臨時で引き下げられることになった。さらに、政府は今後も「臨時」「例外」的対応を取らなくてもすむよう、毎年薬価改定ルール導入を年末ぎりぎりで決定した。

このように、昨年はマンガ的、例外的、奇跡的なことが政治、経済、社会、スポーツなど各界で頻発したが、新年は昨年の成果や結果、新ルールが既成事実となり、これをベースに再スタートが切られる。マンガ的世界から現実(リアル)世界にシフトし、各社は競争を展開することになる。新たな時代において各企業が生き残る道は、環境変化をいち早くとらえる「変化対応型」とオンリーワンの伝統的技術や差別的優位点(ニッチビジネスも含む)で勝負する「頑固職人型」の二つに大別できるかもしれない。

今年の干支(十干十二支)は丁酉(ひのととり)。新たなものが生れ、競争も激しくなると言われる。大幅躍進は難しい半面、今後の成長のための画期的なことが生まれる可能性がある。昨年の大きな変化(世界の構造、政治、制度など)を受けて、その中でいかに自らの産業や企業を今後の成長に導くか? そのための勝負の年が始まった。

プロ野球チーム「横浜DeNAベイスターズ」を傘下に持つDeNA(ディー・エヌ・エー、守安功社長)は12月7日に記者会見を開き、同社のヘルスケア情報キュレーション(まとめ)サイト「WELQ」(ウエルク)で他メディアからの転載やコピーペースト(切り張り)記事掲載による著作権侵害疑惑、「がんに効く」などの効能効果をうたい健康食品販売サイトに誘導する薬機法違反疑惑、クラウドソーシングを通じ募集した素人ライターへの記事発注(1文字50銭とか?)など不公正な事業運営について、守安社長が同社創業者の南場智子会長とともに謝罪した。

10年前の平成18年(2006年)に起きたライブドア(堀江貴文当時社長=ホリエモン)粉飾決算事件と同じく、生き馬の目を抜くほど急速に発展した新興IT企業の不祥事で、両企業ともプロ野球球団経営に興味を示すなど共通点も多い(ライブドアは当時の大阪近鉄バファローズ買収を試みたが頓挫、その後楽天とともに新球団設立に名乗り出るも失敗に終わった)。両社とも新興IT企業として投資家からの高い業績向上期待を受け事業拡大に焦ったことが不祥事の原因となった。

DeNAは元々インターネットオークションサイト(モバオク)やゲーム配信サイト(モバゲー)を中心にM&Aや事業買収を通じ事業を拡大、発展してきた。昨年度連結売上高は1,424億1,900百万円、連結営業利益247億6400万円と日本を代表するIT企業に成長していただけに、不祥事発覚による同社企業イメージ失墜はもとより業界全体の信頼低下など派及する影響も大きい。

問題が発覚したのは昨年10月開設した「WELQ」掲載情報について、今年の秋以降「記事内容が不正確」「不適切な引用がある」「薬機法違反では?」「患者不安を煽る」「健康被害が出る」などの指摘や批判が一斉に起きたこと。掲載記事の中には、肩こりの項に「肩が重いと感じるのは霊が憑き肩におぶさっているからで、霊的なトラブルを抱えた人に起こりやすい」など科学的根拠が一切ない出鱈目な記述さえあった。また、「当社は記事を掲載するだけで、内容についての責任は一切負わない」とする無責任な企業姿勢も批判に拍車を掛けた。これを受け、同社は11月24日から専門家に監修を依頼して不適切な記事を削除すると発表。しかし、対応は遅きに失し、同問題がテレビニュースなどでも扱われ「WELQ」は閉鎖せざるを得なくなった。さらに問題はこれに止まらず、ファッション、インテリア、旅行など同社のキュレーション全9サイトとも同様疑惑から閉鎖に追い込まれた。

現在、テレビの深夜枠やBS(衛星)放送では健康・美容食品や同関連機器の通販広告や通販番組が花盛りだが、薬機法により効能効果をうたえないため真偽の判らない体験談や法律抵触ぎりぎりの表現で効能効果を匂わせる事例が多発。一方、需要者は「藁にもすがる思い」で健康や美容の悩み解決を願っている。その中で、健康・生命関連企業は高い倫理性を持ち、真に需要者が満足できるエビデンスに基づいた商品のみ販売すべきだ。

商いは三方一両得(買い手良し、売り手良し、作り手良し)でなければ長続きしない。目先の利潤を追求してなりふり構わないビジネスは早晩淘汰される。医薬医療品業界でも最近百周年を迎えた森川産業、イワキ、佐藤製薬など老舗企業各社には目先の利益に捉われない顧客第一志向、高品質高付加価値(商品・サービス)提供など共通点が多く、各社とも地に足をつけたビジネスを展開している。

平成29年正月を目前に、子供が新年に興じる「いろはかるた」などの諺がビジネスの基本にも通じることを再発見した。()「急いては事を仕損じる」 ()「念には念を入れよ」()「急がば回れ」(故事、いろはかるたは「犬も歩けば棒に当たる」)など。

皆様、どうか良い年をお迎えください。

自由民主党の「財政再建に関する特命委員会」(茂木敏充委員長)に設けられた「2020年以降の経済財政構想小委員会」(小泉進次郎小委員長代理)は、10月26日に提言「人生100年時代の社会保障へ(メッセージ)」を発表、その中で「健康ゴールド免許」構想を打ち出した。同提言は、従来の社会保障制度が戦後の高度成長期に策定されたもので「20年学び、40年働き、その後20年老後を過ごす」という画一的な生涯設計モデルに基づくものとして、少子超高齢人口減少社会においても将来にわたり社会保障制度を持続可能とするための方策を提示した。提言は@勤労者皆社会保険制度の創設A年金受給開始年齢の柔軟化B健康ゴールド免許の3本柱で構成されている。

提言の中では「健康ゴールド免許」が非常に大胆な提案であり検討に値する。その考え方は、自動車運転免許制度に無事故無違反運転者へのインセンティブ(簡素な更新手続き、有効期限が長期など)があるように、健康保険制度にも健康増進や疾病予防に努める人々にはメリットを付与するというもの。健康診断の定期的受診による病気の早期発見や禁煙をはじめ健康増進を心がけて自助努力する人には、病気になった時の医療費自己負担額割合を低くする。加えて、スイッチOTC薬など薬局等で購入できる薬は全額自己負担するように公的保険の範囲を見直すべきとしている。

国民皆保険制度はこれまで世界に誇る素晴らしい医療保険制度とされたが、このまま医療費が高騰し続けると現在の形での持続は不可能となり、これまでの薬価引下げ中心の診療報酬見直しに加え、高齢者や高所得者に対する医療費自己負担分の上限引上げ、かかりつけ医以外を受診したときの追加負担等を導入したところで「焼け石に水」の状況。現行制度維持のためには消費税率の20%以上への引上げが必要との試算もある。

問題の根底にあるのは、これまで日本人が「自分の健康は国が守ってくれる」という公助感覚に浸っていたことであり、もはやこれを脱して「自分の健康は自分で守る」という自助意識を国民全てが持つ必要がある。良い先例は、我が国の金融界においてペイオフ制度が導入され、平成14年4月から一金融機関当たり預金1千万円とその利息分しか払い戻しが保証されなくなったこと。それまでは政府が預金全額を保証したが、同制度の導入により、預金については全面的に自己責任が問われることとなった。同制度がスムーズに定着したのは、「自分の財産を失いたくない」という一心で自己防衛を余儀なくされたため。それならば、自分の健康についても同様な意識改革は可能ではないだろうか?

また、「予防」「健康増進」へのインセンティブが働けばセルフメディケーションも自ずと進むはず。その結果、国民の健康リテラシーが向上し、結果として医療費抑制と医療の効率化が進むだろう。医療関係者からは「受診抑制につながる」との反対意見が出るだろうが、現在はむしろ過剰受診や過剰投薬の方が社会問題となっている。また、新制度導入に当たっては試行期間と検証作業は不可欠である。

同提言の意義は社会保障制度の抜本改革を行なおうとすること。これが今後議論されていく中で、総論賛成各論反対の状況は目に見える。しかし、関係者間で利害調整を図りながら現行制度のつぎはぎをさらに重ねるようでは問題の先伸ばしに過ぎない。そうならないためにも、国民に丁寧に説明し理解を求めながら世論構築を図る必要がある。

同提言の結びでも、超高齢人口減少社会が進展する我が国の現状を悲観するのではなく、システムを抜本的に見直すことでチャンスを見出し、日本の強みに変えることが必要である、と述べられている。我々は苦境にあってこそ顔を上げ、新たな切り口の打開策を考え、チャレンジしないことには、状況は好転するどころか悪化の一途を辿るだけだろう。

天皇陛下は8月8日、ご自身の生前退位を示唆する個人としてのお考えを公表された。現在82歳の陛下はご自身の高齢に伴う体力低下により、多忙かつ重要な公務に支障が生じることをご心配されたようだ。

生前退位問題は、国会では特例法での対応を検討するとともに、皇室典範を含む法律改正なども含めた今後の天皇制のあり方などについても議論する予定。しかし、医療技術の進展とともに超高齢化が進む中で、一生天皇であり続ける現行法制下では今後代々の天皇陛下の年齢も益々高齢化することが予想される。そうなると、次の天皇が即位する時の年齢も上がっていく。皇太子殿下も現在56歳であり、今後即位する新天皇は皆60歳以上になる可能性すらある。

一方、超高齢社会の進展にともない国民医療費増加が社会問題となっている。厚生労働省が発表した平成27年度概算医療費は前年比3.8%増加して約41兆5,000億円となり過去5年間で最大の伸び率となった。医療費が大幅に伸びた要因は調剤が7兆9,000億円で9.4%増と突出しており、相次ぐ高薬価医薬品、特に昨年度は慢性C型肝炎治療薬「ソバルディ」「ハーボニー」(共にギリアド・サイエンシズ)の使用増加によると思われる。今年の薬価改定で両剤は特例再算定を受け薬価を大幅に下げられた。その後、抗がん剤「オプジーボ」(小野薬品)が非小細胞肺がんへの適応拡大とともに薬剤費の大幅拡大が問題となり、同剤は来年にも臨時特例再算定を受ける見通し。しかし、このような「モグラ叩き」的な対応は一時しのぎで、抜本的対策なしには問題解決とならないことは明白で、革新的新薬に対する薬価叩きが続くようでは、日本は革新的創薬開発のグローバル競争から取り残されることになりかねない。

国民皆保険制度を維持するためには、歳出抑制と歳入増加の二つしか手はない。歳出抑制は薬剤費を含む診療報酬全体の中で医療の効率化と適正化の検討が進められている。収入拡大は現在高齢者医療費の見直しが議論されている。医療アクセス維持と分配の公平性を担保する中で、一定以上の収入のある高齢者に対しては相応の負担要請と高齢者に限らず高額医療費給付制度を見直すことにより、支払い能力のある人々にはこれまで以上に負担を求める内容。

国民皆保険制度を導入した昭和36年の日本人平均寿命は男性66.03歳、女性70.79歳だった。それが昨年は男性80.79歳、女性86.83歳となり、男女とも約15歳寿命が延びた。当時は60歳の還暦になると立派な高齢者だったが、それが現代では75歳の後期高齢者年齢に到達することが同様な意味合いを持つと思われる。

皇室典範などの天皇に関わる法制度も国民皆保険制度も制定された時期が古く、現在は社会的経済的状況が全く異なるのだから、国民皆保険制度維持を図るためには時代に合わせた見直しが急務だ。総論賛成各論反対の状況で利害調整に時間を費やしていると、日本もギリシャやアルゼンチンのように経済的破たんを招きかねない。小説のように「日本沈没」が自然の力によるものなら抗いようもないが、日本の社会経済がタイタニック号のように沈没していくのを手をこまねいて見ているようでは愚の骨頂だろう。

国民皆保険制度(皆保険制度)は我が国が世界に誇る社会保障制度であり、同制度は日本が世界最高の長寿国であることと、世界最先端医療の実現に大きく貢献している。同制度の特長は@国民全員を保障する公的医療保険A医療機関や医療内容を自由に選べる(フリーアクセス)B一部自己負担で高度医療を受けられるC保険料と自己負担のほか税金で補てんされる─など。

しかし、この誇るべき皆保険制度の今後の持続性に暗雲が漂っている。日本が高度成長期だった昭和36年に施行された同制度は日本の人口と労働者賃金の継続的上昇を前提とする制度であり、賃金が伸び悩み、人口も減少に転じた現在はその持続条件を満たせなくなっているから。また、超高齢社会の進展による医療ニーズ増大と慢性疾患増加など疾病構造変化は医療費高騰を招いている。

昨年来、さらに医療費の大幅増加要因として高薬価新薬問題がクローズアップされた。発端となったのは、ギリアドサイエンシズが昨年5月発売したジェノタイプ2型C型慢性肝炎治療剤「ソバルディ」と7月発売のジェノタイプ1型C型慢性肝炎治療配合剤「ハーボニー」。また、小野薬品工業が平成26年7月発売したヒト型抗ヒトPD-1(免疫チェックポイント阻害剤)モノクローナル抗体抗がん剤「オプジーボ」(当初取得適応は悪性黒色腫)は昨年12月に非小細胞肺がんの追加適応が承認され、それにより対象患者数も大幅に増加したため「保険財政の破たん危機!」と週刊誌などで大きく報道された。

薬価は「ソバルディ錠400r」が昨年発売時1錠67,799円30銭、「ハーボニー配合錠」同80,171円30銭が、今年4月の薬価改定で特例拡大再算定を受け「ソバルディ」42,239円60銭、「ハーボニー」54,796円90銭と31.7%もの大幅引き下げとなった。「オプジーボ点滴静注100r10ml」薬価は729,849円。各々の年間薬剤費をみると「ソバルディ」355万円、「ハーボニー」460万円、両剤は12週間投与でほぼ完治する。一方、「オプジーボ」は年間約3,500万円となり継続的治療も必要。「保険財政破たん」と報じられたのは、「オプジーボ」を5万人とされる非小細胞肺がん患者に使用すると年間1兆7,500億円もの薬剤費が必要と試算されるため。さらに、今後の新薬開発は高薬価となるバイオ医薬品が主流になる見通しで、高額薬対策のルール作りは急務である。

しかし、「ソバルディ」「ハーボニー」登場により、これまで不治の病として一生薬物治療を要し、肝硬変、肝がんに進むと死亡リスクが高まる慢性C型肝炎は一転して治る病となった。医療イノベーションの実現は、患者QOL向上のほか総医療費軽減、延命による社会経済的効果も莫大で、一時的な高額医療費支出と比べる事が出来ないほどの恩恵がある。がん治療も「延命のための治療」から「完治可能」へと進歩すればそのベネフィットは計り知れない。「オプジーボ」は今後の薬価改定で再算定が適用される見込みだが、それは適応拡大により対象患者数が急増した結果への措置であり、高額薬価そのものを目の敵とした議論は不毛だ。

製薬企業が難治疾病患者の救命とQOL改善のために行なう研究開発活動は「人類と病との戦い」への果敢な挑戦であり、それを支援するためには現在の皆保険制度をはじめ社会保障制度の枠組みを変えることも厭わない決意が必要だろう。

現在、ブラジルではリオデジャネイロオリンピック・パラリンピックが開催中。地球の裏側の日本でも連日衛星中継放送でテレビの向こうの熱戦にエールを送りながらメダルの行方に一喜一憂し、毎日人々の話題を独占している。そして、リオ大会が終わると4年後の2020年は東京の番となり、これから競技場をはじめ施設の建設整備が本格化するなど、いよいよ開催へのカウントダウンが始まる。

一方、日本政府は近年、観光立国を目指して訪日観光客数拡大のために様々な取組みを展開。その結果、昨年の訪日観光客数は前年比約50%増の1974万人を記録、それまで2020年目標だった年間千万人を4年前倒しでほぼ達成した。政府は今後も訪日観光客数のさらなる拡大を図る方針で、4年後の東京オリンピック・パラリンピック開催年に4千万人以上、さらにその10年後の2030年には6千万人の目標を掲げている。

また、昨年の訪日外国人によるインバウンド消費額は約3兆4700億円にのぼり、これはGDP伸び率(0.4%)のうち半分の0.2%をインバウンド需要が押し上げた格好。政府推計による今後のインバウンド消費金額は2020年8兆円、2030年15兆円と更に増加し、昨年の日本人の国内旅行消費額約20兆円に迫る見通し。今後の人口減少社会進展を考えると、訪日外国人のインバウンド消費は日本経済を下支えする大きな力となりそうだ。

昨年来、中国人訪日観光客によるインバウンド消費(爆買い)が注目された。テレビ画面に映ったその様子は、店舗のショピングカートに入りきれないほど同一商品を大量に購入したり、商品をダンボールケースごと買い占めたり、凄まじい光景だった。医薬品、医療品関連の爆買い対象商品は、12神薬と呼ばれる一般薬(雑貨含む)、「雪肌精」(コーセー)に代表される化粧品、ベビー用品(紙おむつ、粉ミルク等)など。

訪日外国人に日本製品の人気が高い理由は、第一は品質が高く安全安心なこと。第二は効果が高い、使い勝手が良いなど製品自体の性能(機能性や付加価値の高さ)。第三はおしゃれ、かわいい、かっこいい、クールなど優れたデザインや製品イメージ。

さらに、第四の魅力が製品の内側に隠されている。それは、東京オリンピック誘致活動プレゼンテーションでも有名になった、滝川クリステルの決め台詞「お・も・て・な・し」の心(ホスピタリティ)である。日本市場は様々なカテゴリーで熾烈な企業間競争が展開され、その結果、新製品開発や製品改良が頻繁に行われている。発売されるニューモデルは単に目新しいだけでは売れず、よりユーザーに感動や満足感を与えなければリピートしてもらえない。したがって、新製品の成否の鍵は「お・も・て・な・し」の心が如何にユーザーに届くかで、そこにメーカーの製品開発競争のつぼがある。「ものづくり」の技(クラフトマンシップ)と通じるものもあるだろう。

一方、日本製品の品質の高さは世界的に定評があるが世界で実力通りの評価(シェア)を獲得できていないものも多い。日本を直接体験する訪日外国人には日本製品の良さを理解されると思うが、その人数が増えているとはいえ世界全体から見れば微々たるもの。日本製品の真価を世界に伝えきれていないとしたら本当に「もったいない」。優れた国内メーカーには様々な手段を駆使して「お・も・て・な・し」の心を世界に発信してもらいたい。

(一財)日本ヘルスケア協会(JAHI。大西隆会長)は6月30日に活動方針発表会を開催。同協会発起人である宗像守同協会事務総長は基調講演の中で「政府が超高齢社会の中で国策として様々なヘルスケア推進策を立案、産業側もこれに対応してヘルスケア推進を試みるが、ことごとく抵抗勢力の反対で実現に到っていない。国民の健康寿命延伸、産業育成による経済貢献、医療費高騰抑制のために関係者が一致団結して活動推進する。世界最速で超高齢社会を迎える日本は、世界にその解決策を示す必要がある」と同協会設立の狙いを述べ、使命遂行への意気込みを力強く宣言。また、当日の活動方針発表会を通じて、遂に同協会の全貌が明らかになった。

日本ヘルスケア協会は、我が国におけるヘルスケア振興を産業側(日本ヘルスケア産業協議会)と学術側(日本ヘルスケア学会)両方の視点を取り入れ、第三者的立場を担保して公平公正、科学的に方策を模索、研究する組織とし、当局との折衝および政治力強化のために政治連盟やヘルスケア議員懇談会を組み込むなど万全の体制で強力に事業を推進する方針。幹部役員も超大物揃いで、会長は大西隆日本学術会議会長(豊橋技術科学大学学長)、理事長は松本南海雄日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)名誉会長(マツモトキヨシHD会長)、副会長は今西伸幸日本ヘルスケア学会会長(東京薬科大学理事長)、上原征彦日本ヘルスケア学会会長(昭和女子大学現代ビジネス研究所特命教授)、池野隆光日本ヘルスケア産業協議会会長(ウエルシアHD会長)を配し、発起人の宗像守JACDS事務総長は同協会でも事務総長として全体を監視し指揮を振るう。まさに、オールヘルスケア関係者が不退転の決意で業界改革、制度改革に望む姿勢を強く示した。

日本ヘルスケア協会の目的は「将来にわたる、元気な日本をつくる」、活動方針は「民間、国民主導のヘルスケアを実現する」である。元気な日本をつくるには、子供から高齢者までが健康で、未来に希望が持てる社会でなくてはならない。健康不安、経済的不安、少子超高齢社会や社会制度への不安など、安心して将来を描けない不安要素は多い。しかし、だからと言って貯蓄や生活防衛にばかり走っていては気持ちが滅入る。日本中に暗い気分が蔓延すると免疫力が低下して国民の健康レベルが低下、すると景気も悪化し更に不安が増すから、悪循環をどこかで断ち切らなくてはいけない。

7月10日投開票された第24回参議院議員通常選挙結果は、自民党安倍内閣が信任され経済政策アベノミクス継続が決定。そのため「健康寿命延伸」「一億総活躍社会」「安心して子育てが出来る社会」など国民が明るい希望を持ち日々努力できる社会を実現する目標は変わらない。しかし、その過程において痛みを伴う改革、変革は避けられないだろう。

是非、日本ヘルスケア協会は活動を通じて健康寿命延伸や医療費抑制、セルフメディケーション推進など山積する課題に対して確かな成果を連発してほしい。何より、明るい気持ちが持てる社会を取り戻すことが重要だ。経済活動が活発化し、安心して子供を産める社会が実現すれば、人口超高齢化、社会保障費高騰、一千兆円台の国家債務など多くの難問解決への糸口が見えてくるかもしれない。

安倍晋三首相は6月1日、消費税率10%への引き上げを平成31年10月に2年6か月延期する事を決定。これを受けて来年4月に予定されていた消費税率アップに伴う薬価改定は不要となり、3年連続薬価改定はなくなり医薬品業界関係者は一息ついた格好。しかし、平成31年10月の消費税率改定と翌年4月の通常薬価改定への対応など新たな問題も発生した。一方、消費増税延期で予定していた社会保障財源に不足が生じ、その補填も含め今後の薬価議論と次回診療報酬改定の先行きはさらに厳しくなりそうだ。

現在、国民皆保険制度を現状のまま維持することは年々難しくなりつつある。皆保険制度は、策定時の時代背景がそうであったように、国民総人口と労働者賃金の継続的上昇を前提とした制度だったため。また、国の税金による医療費支出は高齢者増加による患者数増化と疾病構造変化による慢性疾患増加により拡大の一途を辿っている。

さらに、追い打ちをかけるように超高薬価新薬の問題がクローズアップされた。近年発売されたC型肝炎治療剤、免疫療法抗がん剤などの革新的新薬は一人当たりの年間薬剤費が1千万円規模にのぼる。さらに今後、バイオ医薬品が次々登場しテーラーメード医療が発達すれば、少数患者を対象とした高い治療効率との引き換えに、新薬の価格は益々高くなるだろう。しかし、革新的新薬開発に対して巨額特例再算定のような制度で無理に薬剤費削減を図ると、今後、日本から革新的新薬は生み出されなくなるかもしれない。

皆保険制度を現状のまま維持することが不可能であるなら、我々は医療費効率化努力を継続する一方、皆保険制度など抜本改革が必要となる。それでは、どのような改革が必要か?

第1は、国民の意識改革。

「国民の健康は国任せ」は昔の話で、自分の健康は自分で守ることが原則。そのためには、国民が適正な情報にアクセスでき、きちんと自己管理できる環境整備が必要。野木森雅郁前日薬連会長の発言にあったように、地方自治体が子供の医療費を全額負担しているようでは健康の自己責任意識は芽生えないだろう。

第2は、高額医療費給付制度の見直し。

革新的新薬登場により治療期間を劇的に短縮したとき、例えば1か月の治療で病気が治っても患者自己負担上限が約10万円だとしたら、従来の治療法と比べてメリットは大幅に増えるが患者負担額が極端に低くなる。短期間の医療費が従来治療法による全期間の費用の何倍にのぼっても、である。対応策は、自己負担額徴収を医療費総額に応じて徴収期間を延長する(高額医療費分割払い)方式や、消費した医療費に応じて月々の健康保険料自己負担額を翌年増減する(自動車任意保険型料率改定)方式、またこれらの組み合わせなどが考えられる。

第3は、医療費自己負担割合の見直し。

自己負担3割で制度維持が困難であればさらに上げることも不可避。または、1律3割でなくケースに応じて増減する。例えば、セルフメディケーションで代替できる診療内容のとき、追加負担を求めるなど。この場合は、OTC薬類似品の薬剤費だけではなく、当該医療費全体の中で相応の負担を受益者(患者)に求めるべきだ。

従来の延長線上の施策で国民皆保険を維持するためには、健康保険料(自己負担、事業者負担)、医療費自己負担割合、国家負担分(財源は税金か国債発行)の全てに追加負担を迫り、制度破たんの危機を招く。そうなる前に患者・国民、医療関係者、産業側それぞれが納得して負担を分かち合う三方一両損の解決策を見出す努力が急務だろう。時間稼ぎした挙句、後世にさらなるツケを回すことだけは絶対に避けるべきだ。

2016年05月20日

小売業は多くの業種や業態で市場成熟化とともに競争も激化、企業業績も低迷している。特に厳しい小売業界はGMS(総合スーパー)、家電販売店、書籍・CD販売店などで、これら業種業態はネット販売やカテゴリーキラーと呼ばれる新規販売チャネルに顧客を奪われ市場縮小を余儀なくされている。

ドラッグストア業界も過去30年以上にわたり右肩上がりの高成長を続けてきたが、近年は成長が鈍化、業界関係者は「踊り場」という表現を使い高成長路線への復活を期待している。ドラッグストアはこれまで一般用医薬品や医療衛生用品以外に日用雑貨品、化粧品、食品などの商品販売を異業種、異業態から奪取しながら低価格販売とともに業績拡大を図ってきたが、現在はホームカテゴリーである医薬品、医療衛生用品などの販売もネット販売企業や家電販売企業などの異業種、異業態に脅かされる状況。

日本チェーンドラッグストア協会(JACDS。青木桂生会長)がこのほど発表した「平成27年度ドラッグストア実態調査」を見ると、昨年度売上高は6兆1千325億円(前年比1.0%増)、総店舗数1万8479店(同2.9%増)と増加率は共に近年縮小傾向にある。

一方、最近発表された上場チェーンドラッグストア企業(ウエルシアホールディングス(ホールディングス=以下HD)、キリン堂HD、サッポロドラッグストアー、CFSコーポレーション、スギHD、薬王堂)の平成28年2月期決算内容をみると各社業績好調で、特にウエルシアHD、サッポロドラッグストアー、薬王堂は二桁の増収増益を達成した。各社業績好調の要因は@新規出店効果Aインバウンド需要獲得B調剤事業の好調(高薬価品増加も寄与)など。したがって、当紙平成28年4月15日付第453号および本号8面〜9面で2号連載した「全国有力ドラッグストア企業トップ座談会」出席者の温度感覚も「業績は好調だから踊り場という感じはない」(池野隆光ウエルシアHD会長)の意見に代表されるように、「踊り場」という言葉は業績面よりも消費者ニーズ変化に対応するための転換期であることが出席者の共通認識のようだ。

しかし、上場各社業績は好調でも、今後ドラッグストアマーケットはさらに市場成熟化が進展する見込み。その中で有力各社は全国制覇を掲げてM&Aや大量出店を継続するため市場寡占化も進むだろう。将来的には医療用医薬品卸業界のように売上高1兆円を超すメガドラッグストア企業が複数出現しそうだ。有力候補は、マツモトキヨシHD、ツルハHD、ウエルシアHD、サンドラッグ、スギHD、コスモス薬品などだが、現在の市場規模からするとこれら全てが一兆円以上を達成することは不可能。コンビニエンスストア業界のように、ドラッグストアも最終的に3社〜4社のグループに集約されると見る向きもある。

JACDSはドラッグストア10兆円産業の目標を掲げて実現を目指している。市場拡大への期待要素は、@機能性表示食品や検体検査を始めとする予防カテゴリーAスマイルケア食品や在宅介護用品などによる在宅ケアカテゴリーB調剤事業など。これらを拡大強化して地域の健康ハブステーションモデルを確立する方針だが、規制マターも多く日本ヘルスケア協会やドラッグストア政治連盟など総力を結集して岩盤規制打破を実現しなくてはならない。各企業レベルでも生活者ニーズに対応した新規商品カテゴリーや新規サービスなどビジネスイノベーション(革新)に果敢に挑戦していくことが必要だろう。

一般用医薬品関連業界団体(メーカー、卸業、小売業、薬剤師・登録販売者など職能団体)は、必ず活動ビジョンや年間事業計画の最重要課題として「セルフメディケーション推進」をうたっている。では、逆に現状の日本の医療の中でセルフメディケーションの実践度はどれ位不充分なのだろうか?

第一は、「セルフメディケーション」という言葉の認知度が低く、5人に1人位しかその意味を答えられない事。日本語に訳すと「自己治療」「自己医療」などとなり、やはり解りにくいため役人や業界が「セルフメディケーション」という言葉を国民に押し付けている。しかし、特に高齢者は横文字専門用語にアレルギーを持つから「そんな言葉は知らない」となる。短く「セルメ」と若者調の略語に言い換える向きもあるが「スルメ」のようであまり使いたくない。その中で実態は、ほとんどの生活者が一般用の感冒薬やうがい薬、胃腸薬、外用消炎鎮痛薬を使っているから程度の差はあっても「セルフメディケーションを実践」している。同様に一般用医薬品を「OTC医薬品」と言わせるのも、薬がネットで購入出来る事、店頭でもカウンター越しに渡される薬が少ない事から少し無理がある。

第二は、一般用医薬品市場が近年縮小続きだったため、それがセルフメディケーションの後退と捉えられる。しかし、市場縮小の流れはドリンク剤や整腸剤の医薬部外品への指定替えによる市場定義の変更、医薬品と類似の効能をうたう特定保健用食品、機能性表示食品などの増加、法改正による第一類医薬品と要指導医薬品の販売ルート縮小などが主要因であって、生活者の健康志向は高齢化社会の進展に伴いますます高まっている。今や、セルフメディケーション市場のプレイヤーは一般薬メーカーだけではなく、一般薬メーカーが言う市場縮小はセルフメディケーション市場の一部に過ぎない。

それでは、日本のセルフメディケーションに欠けているものは何か? それは、生活者の「知識」と「意識」、それをサポートする「制度」の3つだろう。

「知識」は、近年の学校教育に「薬の授業」が採り入れられたが、先月くすりの適正使用協議会が公表した生活者調査結果をみると、「同様の効能効果をうたう医薬品と健康食品に違いがあると思うか?」の問いに対して、43.3%が「同じ」か「わからない」との回答で、正しく理解していなかった。薬や健康食品について正しい知識を身につけ、必要に応じて専門家のアドバイスも受けながら軽医療や疾病予防を行なうことが重要だ。

「意識」は、昭和36年国民皆保険が導入されたことで国民のセルフメディケーション意識が後退したと言われる。毎月健康保険料を支払っているのだから医療は国任せで良いという意識から脱却する必要がある。今年度から紹介状なしの大病院受診に追加自己負担金が科せられるようになったのもその流れだ。それだけに、セルフメディケーションの受け皿を担う薬局・ドラッグストアのかかりつけ薬局機能と受診勧奨を含む薬剤師のトリアージ能力強化が求められている。

「制度」は、税制面で一般薬の所得税控除制度が来年から施行されるが、それだけでは力不足であり、控除対象品目拡大と最低対象金額の引下げ、軽減税率導入の検討、一般用類似薬の扱い、保険医療範囲の縮小など様々な制度再設計の検討が必要となる。

この「知識」「意識」「制度」の変革が三位一体となることで、はじめて日本は真のセルフメディケーション社会実現に向けて進むことだろう。

2016年03月24日

厚生労働省は、すべての薬局を「かかりつけ薬局」にするため、今回の調剤報酬改定で「かかりつけ機能点数」の算定回数が年に10回未満の薬局についての調剤基本料を50/100にする措置を導入した。1年間の実績を見て来年4月に実施する。だが、かかりつけ機能とされた点数項目の1つである「調剤料夜間・休日等加算」はその時間に開局していて調剤すれば算定できるため、すでにかなり行なわれている。しかし、果たしてその程度の対応で「かかりつけ薬局」と呼べるものだろうか。

「かかりつけ機能」として厚労省は15項目の点数をあげている。その中心となるのは「かかりつけ薬剤師指導料70点(1回につき)」であり「かかりつけ薬剤師包括管理料270点(1回につき)」である。いずれも来局する患者が受診しているすべての保険医療機関と服用薬の情報を把握し、患者に対する24時間相談体制を取るなどの算定要件が定められている。ほかにも、薬局全体として取組みがにぶいとされる在宅患者訪問薬剤管理指導料など在宅業務、また、薬剤服用歴管理指導料の麻薬管理指導加算、重複投薬・相互作用等防止加算など1部でしか取組まれていない業務が並ぶ。

しかし、それら15項目の第1に挙げられているのは「調剤料の時間外加算等、夜間・休日等加算」である。時間外加算等は、開局時間以外の時間(深夜・休日を除く)、休日(深夜を除く)または深夜(午後10時〜午前6時)に調剤を行なった場合、所定点数の100分の100、100分の140、100分の200に相当する点数を加算するもので、算定回数は多くない。

一方、「夜間・休日等加算」は、午後7時(土曜日は午後1時)から午前8時までの間(深夜・休日を除く)、休日または深夜、当該薬局が表示する開局時間内の時間に調剤を行なった場合、40点を加算するもので、算定回数は多い。かかりつけ機能とされた15項目の点数で調剤基本料に対して1%を超える算定回数があるのは「調剤料夜間・休日等加算」のみである。

これだけ普及しているのは、薬局として対応しやすい点数であるためと考えられる。この数字は算定回数であり、薬局数でみた場合にどの程度普及しているかは不明だが普及していること自体は事実で、調剤基本料が50/100となるのを避けるために、「かかりつけ機能」とされた15項目のどれに対応すべきかと考えたときに飛びつきやすい点数でもある。

だが、この点数だけで年間10回の要件を満たす薬局が「かかりつけ機能」を本当に果たしたと言えるだろうか。他の項目で求められる内容からして大きな疑問だ。この項目を厚労省が組み入れたのは、すべての薬局を「かかりつけ薬局」へとする将来構想を見据えたアメと見るべきかもしれない。

しかし、アメであるにしても次回改定時にはより努力をしなければ届かないものになる可能性が十分に予想され、今回の措置を抜け道と捉えている薬局は次回改定時にあわてることになるだろう。

昨年12月16日、自由民主党と公明党による与党税制改正大綱が決定された。一般用医薬品業界団体の日本OTC医薬品協会(OTC薬協)が要望し厚生労働省から素案が提出された「セルフメディケーション推進のためのスイッチOTC薬控除(医療費控除の特例)」という新たな所得税控除制度創設は、財務省側に抑え込まれた結果、規模を大幅に制限されての導入が決まった。

平成29年から施行される制度内容は、一般用医薬品(昭和58年以降のスイッチOTC薬のみ対象)の年間購入金額が12,000円を超えた場合、超えた金額(最大88,000円)を総所得金額から控除するというもの。さらに、申請要件として検診または予防接種(特定健康診査、予防接種、定期健康診断、健康診査、がん検診)受診が必要とのこと。当然の事ながら、同控除を受ける場合、現行の医療費控除制度(年間10万円以上の医療費に対する所得税控除)は受けられない。厚労省原案は年間購入額1万円以上で、対象もスイッチOTC薬に限定しない一般用医薬品全般とされていた。

しかし、新制度を施行しても、その効果としてセルフメディケーション推進および一般薬市場活性化に結びつくとは到底考えられない。スイッチOTC薬だけで年間12,000円以上購入する人が一体どれだけいるだろうか?さらに12,000円を超えた分のみ控除対象となるため、同制度のメリットを受けられ、そのためにわざわざ確定申告する人はごく少数に限られる見通し。さらに、ダメ押し条件として検診受診、予防接種実施が必要とされるなど、財務省要望の税収を減らさない工夫が随所に盛り込まれている。

さらに、新制度施行のためには印刷物を作り、周知普及活動を行ない、担当者をトレーニングし、対象品選別のためのシステム改修等、投じられる公的コスト(国民の税金)や新制度に対応するための民間負担コストなど総コストは少なくないはず。その結果、制度が殆ど利用されなければこれらの投じたコストは単なる無駄となる。OTC薬協は、新制度導入は大きな成果であり、これを突破口に対象品目をスイッチOTC以外の一般用医薬品に拡大させたい、対象金額もさらに引き下げたい、と意欲的だが、利用されない制度のままでは特例が廃止される可能性も高い。

むしろ、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS。青木桂生会長)が要望してきた一般用医薬品に軽減税率を適用する案の方がはるかに実効性が期待できる。一万二千円以上という制限がなく購入時に軽減税率を実感できる制度の方が、よりセルフメディケーション促進のインセンティブに働くはずだ。軽減税率であれば通常の医療費控除制度との併用も可能。軽減税率は消費税減収分の原資確保が課題となるが、セルフメディケーションが進めばその分保険医療費の国庫負担分軽減が期待できるため、制度設計においてバランスが取れるよう工夫すればよいだろう。

現在の消費税率8%は来年4月以降消費税率10%時の差は2%で、軽減税率の恩恵はあまり実感できないかもしれない。例えば、本体価格1,000円商品購入時の消費税差は僅か20円だ。しかし、日本の社会保障制度を維持して、プライマリーバランス(財政収支健全化)実現を図るためには将来的に15%〜20%程度の消費税率が必要と推計されている。そうなった時、1,000円商品の軽減税率メリットは70円〜120円になり、消費者心理にも大きく影響するはずだ。本気で一般用医薬品市場の活性化を図りたいと考えるならば、関係業界が一丸となり軽減税率適用を主張すべきだろう。

阿由葉孝夫氏(当社代表取締役編集局長)は昨年12月22日に前立腺がんのため逝去。享年80歳。なお、火葬は昨年12月23日に東京・西原の代々幡斎場で近親者のみにより執り行なわれた。

告別式(喪主=阿由葉修子(妻)、葬儀委員長=相川和彦竃粧流通タイムズ社編集局部長)は1月14日午前11時から東京・南青山の梅窓院観音堂で行なわれ、親族のほか医薬品医療品業界(メーカー、卸、小売店、報道など)関係者約150名が参列し故人との別れを惜しんだ。

葬儀は真言宗安養寺・熊田信行住職による読経・引導後、業界関係者代表として藤井基之参議院議員、山本信夫(公社)日本薬剤師会会長、友人代表として根津孝一鰍マぱす会長が故人へ想いを込めて弔辞を述べた。

▽藤井基之氏=初めてお会いしたのは阿由葉さんがドラッグマガジン社編集部長の頃と思います。当時、私は厚生省の行政官でしたが、阿由葉さんは薬業界の情報を踏まえての「歯に衣を着せぬ」取材ぶりだったと覚えています。昭和57年に創立した薬粧流通タイムズ社でも舌鋒鋭く、時に業界を激励し、時に耳の痛い遠慮ない記事を送り続けてこられました。「過去の慣習に一切とらわれず、いかなる圧力にも屈せず、是々非々を貫く」、まさにその編集方針通りの記事、論説を展開してこられましたね。業界のオピニオンリーダーとして活躍してきた論説を拝読できなくなってしまい、また業界の会合で常に自説を強く述べてこられた貴兄の声をお聞きできなくなったこと、本当に寂しい限りです。

▽山本信夫氏=阿由葉さんに初めてお目に掛かったのは30年ほど前、私が東京都薬剤師会役員になった頃ですが、駆け出しだった私から見ると、阿由葉さんは会合の場で常に上席におり近寄りがたい存在でした。しかし、お付き合いが始まると、見た目や噂とは全くかけ離れた心優しい人柄だと気づきました。発言はとても厳しいものでしたが、その一つ一つに込められた思いを理解できるようになるにつれ、阿由葉さんの薬業界、薬剤師、薬局に対する深い愛情が感じられるようになりました。私が日本薬剤師会会長に選任された際、「君は何を目指して会長職を務めるか?」と問われ、「薬剤師の行く末をしっかり見据え、心してその職を全うしなさい。大いに期待しているよ」と諭されました。未だ十分な結果は出せていませんが、阿由葉さんから頂いたお言葉を糧に、精一杯努力して社会にその必要性を明確に示せる薬剤師を育てて参りたいと思います。

▽根津孝一氏=阿由葉さん、ついにお別れの時が来てしまいましたね。年末に「退院するよ」とメールをいただいた時は期待していたのですが・・・残念です。
あなたの記事はいつもサプライズでした。思ったことをズバリと書き、皆を驚かせていました。私もよく座談会に招かれましたが、その記事を見るのにいつもドキドキ感と妙な期待感を持ったのも今では懐かしく思い出されます。私が見出しについて注文をつけると、にやにやといたずら顔で笑っていましたね。真っ赤な顔で怒って議論したり、飲みに行った時は私の冗談に笑い転げたり、昭和の頑固な、そして人間臭い編集長でした。
私は阿由葉さんの意思を継ぎもう少しこちらで頑張ります。いずれ報告しにそちらに伺いますので、また議論しましょう。それまで、もう少しごゆっくりお休みください。

そのあと、弔電紹介、葬儀委員長と喪主の挨拶後、参列者全員が焼香して故人の冥福を祈った。

【阿由葉孝夫氏略歴】▽昭和10年11月23日生まれ。栃木県出身。▽同33年3月 明治大学法学部卒業▽同35年 日本粧業会出版部編集長▽同40年 衛材新報社主幹兼編集長▽同45年 潟hラッグマガジン編集部長▽同57年10月1日 竃粧流通タイムズ社創立。代表取締役編集局長。

なお、故・阿由葉孝夫告別式に際しましては多くの方々にご参列賜りましたほか、多数のご献花、弔電をいただきましたこと、ここに厚く御礼申し上げます。どうも有り難うございました。

平成28年度薬価制度改革で製薬業界が最大の課題とした「新薬創出加算」の「現行要件のままでの継続」が中医協で了承された。業界要望がまさにそのまま何の修正もなしに受け入れられたのである。現行要件で業界が最も重要とするのは「加重平均かい離率以内のすべての新薬」を対象とする点で、これが受け入れられたことの意味は大きい。これがあるからこそ、現在、各企業は幅広い分野で新薬開発を積極的に進めている。

平成22年度改革での試行的導入以来、今回を含めて4回の議論が中医協で重ねられてきたが、導入から3回目まではこの対象の絞り込みが行なわれ、その結果決定された薬価算定基準の中で次回改定では「加算の対象品目のあり方等現行方式の見直しについても検討する」と規定された。前回の議論では、「小児やオーファン領域薬」「既存薬では充分な効果が得られない疾患への医薬品(難病、アンメットニーズへの対応)」に限定する考え方まで出されていた。それではあまりに対象領域が狭くなり、加算の適用を受けられる医薬品はごく一部に限定されて現在の新薬開発への活発な取組みがしぼむことにもなりかねない。

今回業界が要望した「現行要件のままでの継続」が受け入れられたことにより、薬価算定基準の規定から「加算の対象品目のあり方等現行方式の見直し」についての検討という記載は消えることとなった。

新たに記載されるのは「新薬創出のための研究開発についても確認し、制度の在り方について検討する」というもの。これは平成30年度の薬価制度改革へ向けた記載だが、そこで新薬創出を目指す姿勢を明確にし、その上で「制度の在り方」を検討するというのだ。制度の在り方とはまさに「制度化」そのものを意味する。

次回の制度改革時には、新薬創出の観点から「制度化」を検討することが薬価算定基準に記載される。今回の議論を通じて、業界側はそこまで勝ち取ったと言える。新薬創出加算の制度化実現が見えてきた。政府の新成長戦略に沿うイノベーション促進策の確立へ向け、業界としては改めて気を引き締めた取組みが必要になる。一方、次回は費用対効果評価の試行を踏まえた制度化議論が並行することになる。新薬創出のための体制整備と国民皆保険維持のための財政的要請への対応となるが、国民の有用な新薬へのアクセスを確保していくことが業界の大義であり、かつ最大の武器でもある。

現自民党安倍政権は生命科学立国を政策の柱に掲げ創薬イノベーション推進を謳っている。革新的新薬開発促進のために新薬創出加算制度は存在するものであり、その分長期収載品薬価引下げと後発品普及促進策を強力に推進しているのだから、新薬創出加算の制度化は当然のことだ。ましてや、市場拡大再算定、特例拡大再算定はイノベーション推進に急ブレーキを掛けかねない政策であり、成長戦略との整合性や外資製薬企業の日本市場からの撤退につながらないような対応が必要だ。

製薬業界および医療関係者にはイノベーションを促進し、我が国を科学技術立国、先進医療大国にして国民に世界最高の医療を提供できるよう一丸となって政策提案に努力してほしい。イノベーションを否定する政策はドラッグラグを再び拡大して我が国を後発品大国にし、その結果、国民にとっては先端医療へのアクセスが妨げられ、ひいては世界最長寿国の名誉も他国に譲り渡すことになりかねない。かつて外資製薬企業が次々と研究所を日本から撤退、国内メーカーも新薬開発を海外先行せざるを得なかった状況がある。時計の針を逆戻りさせてしまったら熾烈な新薬開発の国家間競争で後塵を拝すばかりか、我が国ライフサイエンスの研究発展にとって取り返しがつかないことになるだろう。

昨年6月、安倍内閣は「骨太方針二〇一五」を閣議決定、我が国の経済成長戦略の柱として創薬イノベーション推進がうたわれた。これを受けて9月厚生労働省は「医薬品産業強化総合戦略」を公表。政府は@革新的新薬創出の推進A長期収載品市場シェア縮小とジェネリック薬普及促進B地域医療体制の拡充など、のメッセージを打ち出している。

これを受けて医薬品業界各社は敏感に反応、その結果、様々な動きが出てきた。新薬メーカーは長期収載品依存度の軽減、選択と集中による得意領域強化、新たな収益源創出など。ジェネリックメーカーは政府新目標(平成29年央70%、その後早期に80%)達成のための製造力増強、価格競争に対応する低コスト化推進など。調剤薬局はジェネリック薬対応強化、かかりつけ薬局機能強化、脱門前薬局化推進など。

ところが、政府内には矛盾も見られ、特にイノベーション推進に関しては首をかしげざるを得ない政策も多い。創薬イノベーションを高く評価する薬価制度「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」(新薬創出加算)も今年度は製薬業界が要望した現行方式のままの継続が認められたが、制度化(恒久化)されない「試行的導入」状態のまま七年目を迎える。新薬創出加算導入に伴い、長期収載品とジェネリック薬の価格が低く誘導されているが、政府は新薬メーカーに対して長期収載品薬価を下げる代わりに新薬価格維持を決めたのだから、業界にとってのマイナス措置のみ先行しプラス措置が継続される保証のない「仮の姿」のままでは不平等だ。

しかし、最大の矛盾点は「市場拡大再算定」にある。医療上評価が高い優れた新薬が「想定よりも売れすぎた」結果を理由として薬価を大幅に(最大25%)引き下げる訳のわからない制度が医療財源確保の名目で堂々と行なわれている。さらに、昨年12月の中医協薬価専門部会では年間売上高が一千億円を超えるいわゆる「巨額品目」に対して最大50%薬価を引き下げる「特例再算定」の導入方針まで固めた。

このような薬価措置はイノベーション促進政策の趣旨に合致しないばかりか、イノベーションを阻害する懸念が大きい。既存薬に較べて優れた効果や安全性、利便性など製品価値が高いため非常に良く売れた製品に対して、ペナルティを加える事はイノベーション促進を否定するものだ。その結果、日本の医薬品市場の相対的評価が下がれば、再びドラッグラグ拡大につながりかねない。

本号掲載新春インタビューの中で永山治中外製薬会長(元製薬協会長)は、日本に産業の国際競技場を作ることが重要であると述べているが、正にその通りだろう。世界のトッププレイヤーが集う国際競技場に最高の技術と英知が結集し凌ぎを削ることでイノベーションは生まれる。多少の予算帳尻合わせでライフサイエンス立国の看板に傷をつけてはならず、長期を見据えた大所高所からの政治的判断が必要だろう。政府はライフサイエンス立国実現に向け、揺るぎない決意を示す時だ。

一般財団法人化学及血清療法研究所(化血研。宮本誠二理事長・所長=12月2日付で辞任)は、今年5月28日と29日に行われた独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)による立入検査の結果、国内献血由来の血液製剤全てにおいて承認書と異なる方法で製造していたことが判明。その後の第三者委員会による調査結果が12月2日報告され、化血研は昭和49年(1974年)から実に40年以上にわたって国が承認していない方法で血液製剤を製造していた。今年9月にはワクチンも承認内容と異なる製造方法が用いられていたことも発覚し厚生労働省が出荷停止としたため、需要期にインフルエンザワクチンが不足する事態も発生し国民及び医療関係者に多大な迷惑をかけた。さらに、12月8日には農林水産省の調査で動物用ワクチンも同様の不正が行なわれていたことが判った。これら一連の不正が発覚したきっかけは従業員による内部告発だった。腐敗した組織の中に正義感と良心を持つ従業員がいたことが唯一の救いだが、内部告発がなければ不正が発覚せず、今後も不正製品の流通が続いていたと思うと心底ぞっとする。

第三者調査報告書によると、化血研は製品の多くを承認要件とは異なる方法で製造し、製造記録を2通作成して記録を古く見せるために紫外線を照射して紙を劣化させるなど「常軌を逸した隠蔽工作」を組織ぐるみで行なっていたと指摘、生命関連産業としてあり得ない体たらくで倫理観が微塵も感じられない組織実態が浮き彫りとなった。

化血研は昭和20年(1945年)12月26日に大田原豊一熊本医科大学教授の指導により同大学にあった実験医学研究所を母体に設立された。戦後混乱期の中で、ワクチン、抗血清、診断抗原等の開発、製造、提供により日本人の健康増進に資するという崇高な理念が原点だった。しかし、化血研は昭和41年(1966)年から血液製剤(血漿分画製剤)製造を開始、平成元年(1989年)5月に非加熱製剤使用により起きた薬害エイズ事件では当該製剤の製造販売において潟~ドリ十字と共に提訴された。その後、ミドリ十字は解体され吉富製薬に吸収された(さらに三菱ウェルファーマ梶A田辺三菱製薬鰍ヨ引き継がれた)が化血研はその後も財団法人(平成22年からは一般財団法人)のまま現在まで存続し事業活動も継続してきた。

化血研は第三者委員会調査報告書が提出された12月2日付けで宮本理事長はじめ全役員が辞任するとともに再発防止策を発表。厚労省は医薬品医療機器等法に基づき業務改善命令を下す方針だが、このような一般財団法人としての組織を今後も存続させる必要があるのか、甚だ疑問だ。倫理観が欠如し信頼失墜した組織は即刻解体して意識の高い有力企業に事業譲渡すべきではないか? 化血研が発足した当時とは異なり、現在はワクチンも血液製剤も動物薬も先駆的研究開発型製薬企業が高付加価値収益事業として積極的に取組んでいるのだからもはや財団法人が手掛ける必要性はない。化血研は既に信頼を失い、存在意義もなく、市場から即刻撤退のレッドカードが突きつけられている。政府が主導して一刻も早く各事業の継承企業を探すべきだろう。

政府が推進する国民の健康寿命延伸実現のため、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)中心に民間の健康関連企業が大同団結して「一般社団法人日本ヘルスケア協会」を11月2日付けで設立、初代代表理事に松本南海雄マツモトキヨシホールディングス渇長が就任した。同協会は我が国のヘルスケア業界各分野の垣根を越えて発足した新組織として今後どのような活動を展開していくのか、政財官各方面から異常なほど熱い注目を集めている。

政府は平成25年6月に発表した日本再興戦略の中でヘルスケア関連産業を我が国の成長産業と位置づけてその育成を国策として推進する方針を表明。一方、少子超高齢社会進展により増え続ける社会保障費対策として薬剤費を含む医療費削減が急務であり健康寿命延伸が求められている。その一環として安倍内閣は新「三本の矢」政策の中にこれまで以上に高齢者や女性を活用する「一億総活躍社会の実現」を掲げた。

しかし、安倍政権の真の狙いは半世紀近くも官民一体となり啓蒙活動に取組んだにも関わらず、一向に進展しないセルメディケーションを何が何でも国民に普及徹底させる事だ。日本ヘルスケア協会は、安倍政権の強い要望に応える唯一の民間団体として発足した。今後安倍政権と二人三脚でセルフメディケーションの普及徹底に国策として取組む事を強く期待する。

同協会を発案し設立したのは宗像守日本チェーンドラッグストア協会事務総長と言われている。ドラッグストア業界はこれまで急速に成長してきたが、現在成熟産業化に伴い勢いも止まった。危機感を抱いた戦略家・宗像氏は錦の御旗「セルフメディケーション」を掲げ、受け皿のヘルスケア団体設立に動いた。さすが「ドラッグストア業界唯一の切れ者」と評価されるだけの才能を見せた。

日本ヘルスケア協会は推薦議員による国会議員連盟を立ち上げたが、半端な推薦議員を応援するよりも協会自前の国会議員を擁立した方がよい。その場合の適任者は宗像氏以外に考えられない。宗像氏はヘルスケア業界製配販をはじめ政財界や厚労省、経産省など各方面に交友が広い有力者であり、ドラッグストア業界発展の陰の功労者でもある。さらには東日本大震災発生時には宗像氏が陣頭指揮を執り医薬品、医療品メーカーに働きかけいち早く被災地に支援物資を届けるなど、卓越した判断力と行動力を発揮してヘルスケア業界全体の社会的評価向上につなげた。したがって、4年後の参議院選に向けて宗像氏を業界代表として国政の場に送り出すために全力を尽くすべきだ。

次期薬価制度改革では後発品の薬価算定方式見直しが焦点の一つとなる。政府の新数量シェア目標「平成29年(2017年)に70%以上、同30年(2018年)から同32年(2020年)までの早い時期に80%以上」の達成という大きな目標に向かわなければならない。中央社会保険医療協議会(中医協)としても、前回改定から引き続き課題とされているのが、後発品の初収載時薬価0.6掛け(10品目超は0.5掛け)の0.5掛けへの引き下げ、既収載品の3価格帯方式のさらなる縮小だ。その方向で見直しとなれば、新目標達成にも大きく作用する。

その中で、日本ジェネリック製薬協会(GE薬協)は中医協薬価専門部会のヒアリングで、初収載時薬価は現行を維持、一方既収載品の3価格帯方式は現行の先発品を基準としたものから、新たに「後発品のみの加重平均値に基づく3価格帯方式」とするよう要望した。

中医協では後発品目標60%達成に向けた問題意識のなかでも0.6掛けの引き下げや三価格帯縮小の考え方が提起された。今後もそうした方向で議論は展開されるだろう。

しかし、GE薬協の要望にはよく吟味すべき内容が含まれている。後発品の薬価の先発品に対する割合は、かつては80%程度と高い水準のものもあり、患者が後発品を選ぶ際に安価というインセンティブが働きにくい面があった。しかし、前回の薬価制度改革で導入された3価格帯方式が先発品に対して「50%以上」「50%未満30%以上」「30%未満」のそれぞれ加重平均値で算定するとされたことから、最高価格帯の「50%以上」で算定された薬価はほぼ60%以下となっている。80%程度の高い水準の製品があっても市場の大勢が50%以上60%までの水準にあるため加重平均で統一されると、高くても60%程度にとどまっているのが実態。

現行算定方式により、後発品薬価は、初の後発品が60%または50%、既収載の後発品もほぼ60%以下となっているのである。

初の後発品薬価を0.5掛けを基本とする必要があるのかという問題もそうした実態を踏まえた検討が必要になる。GE薬協は、そうなった場合、採算が合わず後発品が出ないケースも考えられるとする。

既収載後発品の3価格帯方式も、現行方式を続けた場合、市場競争により実勢価格は低下する流れのため、「50%以上」の価格帯がなくなり、「50%未満30%以上」さらには「30%未満」の価格帯が大勢を占めるようになる。30%未満でもさらに低下が続くようになると後発医薬品と言えども安定供給上の問題が出てくるだろう。

GE薬協が要望した後発品のみの加重平均値を基本にその上下に価格帯を設定するという3価格帯方式は、実勢価の水準が低下し続けるという状態に歯止めがかかる方式と考えられる。その過程で価格帯も1価格帯に収斂していく可能性が高い。後発品の安定供給の観点からも重要な提案であると考える。

後発医薬品数量シェアの拡大は、診療報酬や調剤報酬面からの対策も高い効果を発揮しており、その強化も課題である。薬価算定方式の見直しは、そうした全体の流れも見ながら考えていく必要があるだろう。

今世紀に入ってから日本の製薬市場で外資(グローバル)製薬企業が急速に業績を伸ばし市場存在感を拡大してきた。本紙平成12年(2000年)9月15日付(第231号)「日本の優良外資企業特集」を見ると、現在も社名が変わっていない主な外資製薬企業はファイザー、ノバルティスファーマ、アストラゼネカ、日本イーライリリー、バイエル薬品、日本ベーリンガーインゲルハイムくらい。この6社の現在(昨年度)売上高を当時(15年前)と比べると平均3.2倍に規模を拡大し、この15年間で目覚ましい急成長を遂げた事がわかる。業績急成長要因は、当時の日本は欧米より約10年遅れで新薬が発売されるドラッグラグが存在したこと。つまり、当時の外資製薬企業は日本未承認の大型新薬を多数保有し、その後日本政府による新薬承認審査早期化などが行なわれた結果、外資製薬企業による新薬発売ラッシュと売上高急拡大につながった。

しかし、近年は外資製薬企業の勢いにも陰りが見える。昨年度の国内市場売上高上位20社中で外資企業は9社あるが、増収4社、減収5社と業績は各社まちまち。外資製薬企業の成長ドライバーだった新薬発売ラッシュ一段落と特許切れを迎える製品が増えていることに加えて、世界的に当局の新薬承認審査厳格化(効能と安全性評価)、低分子シーズとニーズの減少(生活習慣病関連薬などほぼ出尽くし感)、抗体・ゲノム創薬拡大による新薬開発難易度アップなどにより新製品が従来に比べ格段に出にくくなっている背景もある。

このように世界的に医薬品市場の停滞感が蔓延する中で、その打開策として近年グローバルレベルの製薬企業再編機運が再び高まっている。大型合併やM&Aは製薬企業規模自体が大きくなり巨額資金が必要なため合意に至らない例も目立つが、事業譲渡、事業交換、提携、オープンイノベーションなど自社の強みを更に強化し、同時に非効率的事業を切り離す「選択と集中」戦略は益々活発化している。

一方、国内製薬企業は平成14年(2002年)に厚生労働省が示した「医薬品産業ビジョン」により「メガファーマ」「スペシャリティファーマ」「ジェネリックファーマ」「OTCファーマ」の4分類から各社が希望する企業像を「選択」して得意分野に「集中」し、競争力向上と生き残りを図ってきた。その過程でアステラス製薬、第一三共、大日本住友製薬(以上平成17年誕生)、田辺三菱製薬(平成19年誕生)などの企業合併により業界再編が進んだ。しかし、その後国内製薬企業は大きな伸びを期待できない日本市場よりも大きな可能性がある海外市場に軸足をシフトするための海外中小製薬企業買収や、主力品の特許切れ対策などに追われ、近年国内市場は企業再編など大きな動きが見られない状況。その中で国内企業より格段規模が大きい外資企業で再編の動きが加速している。

今後の外資製薬企業動向が国内の新薬、一般薬、後発薬、ワクチンなど各市場に大きな影響を与えることは必至だが、国内製薬企業も受け身になっていては後塵を拝するだけとなる。国内製薬企業はホームマーケットの日本市場でも現状に満足せず機先を制する大胆な行動が必要だろう。医療用薬は長期収載品維持や過剰投薬による需要押し上げ、ジェネリック薬は政府の推進策、一般薬は税額控除採用やインバウンド特需など、「ぬるま湯状況」に甘んじていては「緩やかな死」を待つだけであり、今こそ「勝負に出る時」ではないだろうか?

安倍首相は「経済財政運営と改革の基本方針2015」を6月30日に閣議決定した。同方針は骨太方針2015として、平成32年度(2020年度)の財政健全化を目指し、税収増のための経済成長戦略と歳出抑制両面から対策を進める。歳出抑制の最大課題が予算全体の33%を占める社会保障費である。平成27年度予算で見ると、一般歳出総額96.3兆円のうち社会保障費は31.5兆円で最大。国債費を除いた72.8兆円を国債以外、税収などで賄うことを目指すが、現状では55.4兆円にとどまり、17.4兆円不足する。

社会保障費は国債費を除いた一般歳出に対して43.3%も占めており、社会保障費の伸びを抑制することが最大課題。一方、税収面で不足している17兆円余の増収対策として成長戦略も進めなければならない。このため骨太方針2015は「経済再生なくして財政健全化なし」としている。

社会保障改革項目は盛り沢山だ。その中で「薬価・調剤等の診療報酬及び医薬品等に係る改革」が位置づけられ、ジェネリック薬の数量シェア目標値を「平成29年(2017年)内に70%以上とするとともに、平成30年度から平成32年度末までの早い時期に80%以上とする」と記載。しかし、ジェネリック薬大手企業や医薬品大手卸企業からも「時期尚早!」の声が出るほど実現困難。かかりつけ薬局の推進を基本とする薬局改革も位置づけ、患者本位の医薬分業実現を図る考え。

医療全体についても、都道府県別の医療提供体制や医療費の差をデータ分析して「見える化」を行ない、入院受療率の地域差縮小、外来医療費は重複受診・重複投与・重複検査の適正化などにより地域差是を図る。また、セルフメディケーション推進などの観点も含め市販品類似薬の保険給付も検討し見直す。

こうした多数の項目の改革実現を図るため、骨太方針をまとめた経済財政諮問会議の下に「経済財政一体改革推進委員会(専門調査会)」を設置、8月10日に第1回会議を開催、改革工程表を12月にまとめることに決めた。

社会保障費の伸び抑制は、財政健全化に向けて避けて通れないが、財政制度審議会や経済財政諮問会議の直近議論は「抑制」自体が目的であるかのような印象を受ける。

「社会保障制度の持続可能性の確保」「次世代に社会保障制度を引き継ぐ改革」と言うが、どのような姿、形で持続させ、次世代に引き継ごうとするのか、肝心なのはその内容だ。日本のGDPに占める医療費割合は先進7か国中で最も低いレベルにある一方、世界一の平均寿命を維持し続けるなど良好なパフォーマンスを示している。

現行制度の下でより良いパフォーマンスを得ている優良事例の全国展開は積極的に進めるべきだ。しかし、外来受診率が諸外国に比べて高いからとする受診時負担拡大や、市販品類似薬の保険除外で医療費削減を図る考え方は、早期受診・早期治療並びにセルフメディケーションで重症化を防ぎ、結果的に医療費抑制につながる好循環を断ち切ることになりかねない。医療制度改革検討の中で医療費抑制を急ぐ余り、国民の健康保持という本題から外れることは絶対許されない。

(公財)日本健康・栄養食品協会(日健栄協。下田智久理事長)発表によると、平成26年の特定保健用食品(特保)市場規模は6135億円で前年比2.2%減とわずかに前年を下回った。特定保健用食品制度は平成3年に発足してから既に23年が経過し国民生活にも定着している。商品品目数は現在も年々増加中で、今年2月末現在1144品目が承認済み。

特保市場は平成9年(日健栄協第1回調査時)の1315億円から17年間で約5倍に拡大した。同市場規模は平成19年にピーク(6798億円)を記録後、一旦ブームの陰りとともに平成23年には5175億円まで減少。しかし、その後「からだすこやか茶W」(日本コカ・コーラ)、「食事と一緒に十六茶W」(アサヒ飲料)、「賢者の食卓ダブルサポート」(大塚製薬)など複数の効能効果を表示するダブル特保製品がヒット、また安倍政権経済成長戦略アベノミクス中核政策「日本再興戦略」における健康寿命延伸政策による国民の健康への関心の高まりを受けた事、更には景気回復効果も追い風となり同市場は平成25年に6275億円とX字回復を果たした。翌平成26年に同市場規模が微減となった要因は消費税率アップに伴う消費冷え込みの影響が大きいとみられる。

特保市場の今後の動向予測は不透明である。今年4月から機能性表示食品制度が施行され、6月中旬以降新ジャンル製品が各社から発売されている。この機能性表示食品で使用されている有効成分(機能性関与成分)には「難消化性デキストリン」(脂肪、糖質吸収を抑制)、「ビフィズス菌」(おなかの調子を整える)、「イワシペプチド」(血圧が高めの人に)など特保で汎用されている成分が多い。こうした商品が機能性表示食品として多数市場に出ると店頭での販売競争が激化して価格競争に陥る可能性が高い。特保は商品化までに多額のコストを投入しており上市後に回収する必要性があるため、これまでほとんど値崩れを起こさず販売価格を維持してきた。一方、機能性表示食品開発は基本的に臨床試験不要で特保と比較すると格段に低コストで商品化できる。そのため、特保と同一成分で同様な機能性を表示する機能性表示食品商品が特保より格安に販売されると、高価格の特保商品売上げが一気に落ち込むことは避けられない。そうなると、特保市場規模は今後急速に萎んでしまうことが危惧される。

問題は医薬品に準じるレベルで臨床試験を行なう特保が機能性表示食品と同等レベルの効能効果表示しかできない点にあるだろう。今後も特保を国民の健康維持に役立てながら制度存続を目指すのであれば、特保について医薬品と機能性表示食品の中間的役割としての位置づけを明確化することが急務となる。

そのためには、特保の効能効果表示を現在より一歩踏み込み、疾病名表記の許可や、慢性病で比較的軽度な患者が薬物治療に移行するのを防ぐ手段(検査値グレーゾーンの人が生活習慣改善や食事療法に追加して摂取する)を認めるなどの対策が必要だろう。

一般用医療品の総本山である日本OTC医薬品協会が設立30周年記念を迎えた事は大変喜ばしい。国民皆保険の中で冷遇された一般用医薬品市場は10数年にわたり縮小を続けている。医療用医薬品が90%余を占める日本の医薬品業界における一般用医薬品は取るに足りない存在であり、医薬品業界の付け足しに過ぎなかった。

例えば大手製薬企業に採用された新社員は、成績のよい者が医療用医薬品事業部に配属され、残った者は当時「薬粧」とか「薬専」の名称が付いた一般用医薬品事業部担当に回された。当時から医療用医薬品事業部の業績が一般用医薬品事業部より遥に多いから仕方なかった。

また、大手製薬企業の決算報告会見で一般用医薬品事業に関する質問をすると、担当役員が「そんなものどうでもいいだろう」といわんばかりの不機嫌な表情を露骨に示した。この傾向は今も続き、一般用医薬品事業部を持つ大手製薬企業の決算報告会見では一般用医薬品事業の内容説明や質問もほとんどない。

要するに医療用医薬品主体の医薬品産業では、一般用医薬品は「その他」の扱いに過ぎなかった。どんなに国民の需要に応え売上高が大きくても一般用医薬品専門メーカーの評価は業界内で極端に低く、「あれは医薬品メーカーではない」と否定されたほど。

当時、肩身の狭い一般用医薬品企業を勇気付けてくれたのが現協会の前身である日本大衆薬工業協会だった。事務所には新井誠専務理事と熊谷弘事務局長と会員メーカー各社からの出向社員数人が常勤していた。新井専務は産経新聞社政治部次長、熊谷事務局長も英語に強い近畿ツーリスト社員で2人とも医薬品とは何の関係もない世界から一般用医薬品の総本山である日本大衆薬工業協会事務局に飛び込み、素人ながらもセルフメディケーション推進活動に努力し、会員企業発展にも寄与した実績は立派だった。両氏共通の趣味は麻雀で、会員企業社員や業界専門紙記者相手に真剣勝負を楽しみながら情報収集に務めていた。

その後、同会初の天下り理事長・新田進治氏(厚生大臣官房審議官)が就任、本格的な業界団体に整備された。日陰の存在だった一般用医薬品業界がセルフメディケーション提唱を通じ社会的認知度も高まり、業界内での評価も一段と向上した。

そして日本OTC医薬品協会に名称変更して設立30周年記念を迎えた現在、待望のエース杉本雅史氏(武田薬品)が会長に就任、平成37年(2025年)に向け一般用医薬品産業グランドデザイン実現を掲げ見通し明るい活性化ビジョンを表明した。

しかし、10年後に一般用医薬品売上高約2兆円余の夢を達成するためには業界団結が急務である。また、日本薬剤師会、日本チェーンドラッグストア協会との密接な提携も不可欠と思う。

銀座の雀の間で今一番の話題は「銀座6丁目に夜な夜な熟年熊が出没する」との事。場所は「クラブ由美」で伊藤由美ママがお目当て。

そのスポット「クラブ由美」に週刊誌や一般紙のマスコミ記者の張り込みが始まり同店に出入りする政官界実力者や大手製薬企業トップ、薬品業界団体や医師会有力者、医療機関団体トップなどをチェックしている。

熟年熊の正体は年商約3兆円の医薬品卸トップ企業潟<fィパルホールディングス代表取締役会長・熊倉貞武氏(71歳)。想定外M&Aで企業規模拡大を図り短期間に医薬品卸業界頂点に君臨した熊倉天皇≠セった。

一方、熊倉氏は2年前に辞任するまで10数年間にわたり日本薬業政治連盟会長を務め、薬業界と自民党の政治資金パイプを握る金庫番として政界に強いコネを築いた。熊倉氏が率いる日本医薬品卸売業連合会と日本薬業政治連盟主催の懇親会には安倍首相ほか伊吹文明前衆院議長、丹羽雄哉、塩崎恭久厚労相、田村憲久前厚労相、石原伸晃など有力国会議員が約百人も集まる。

「クラブ由美」に、これほど各界有力者が勢揃いすればマスコミ記者も当然注目する。製薬企業と医療機関や大学の癒着が表面化して連日マスコミに報道され国民の信頼を失ったばかり。医薬品業界の透明性やコンプライアンス順守が求められている時に、医薬品卸トップと各界有力者が集まり、薬価改定や医療制度改革で談合や癒着の疑惑が生じるような行動は絶対に慎しむべきだ。他の医薬品業界関係者も銀座六丁目のクラブで飛んで火にいる夏の熊≠ノならないよう御用心!!

また、熊倉氏は銀座・三越裏手のライブハウス「MR・OLDIES」で、おやじバンド「テネシーベアーズ(熊)」のマスター兼ヴォーカルを楽しんでいる。野球帽を斜めにかぶりジーンズスタイルでカントリーを気持ちよさそうに歌う姿は医薬品卸業界の天皇≠ニ誰も気付かないだろう。同店での演奏が終わると「クラブ由美」に黒のマイカーで移動するが、マスコミ記者の標的になっている。責任ある立場を考え、もう少し脇を固めて欲しいものだ。

消費者庁が4月8日、一般用医薬品の副作用報告件数を発表した。それによると平成21年度から同25年度までの5年間に独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に報告された一般用医薬品副作用報告数は合計1225件。そのうち死亡症例15件、後遺症が残った症例15件と衝撃的内容だった。

従来、一般用医薬品は医療用医薬品に比べ薬理作用が緩和で効果も弱いが、副作用も少なく安全と思い込まれており、説明書も読まず乱暴な服用をする消費者が多い。

しかし、今回の消費者庁発表により一般用医薬品でも死亡などの重篤な副作用が発生する事を多くの消費者や一般用医薬品製造・販売業者が認識して一般用医薬品への対応に慎重な変化が見られる事を期待したい。

特に重篤な副作用発症例の多い一般用医薬品薬効群は

  1. 総合感冒薬(風邪薬)=症例数400件
  2. 解熱鎮痛消炎剤=同279件
  3. 漢方製剤=同134件

など。

ドラッグストア、薬局薬店の薬剤師や登録販売者は、これらの一般用医薬品薬効群製品を販売する時、購入者に正しい服用法や副作用説明を充分に行ない、さらに消費者の体調などについても相談して慎重に販売する事が肝要である。

さらに、これら薬効群製品の多くは第2類、第3類の医薬品だから登録販売者の取扱い商品となり、登録販売者の資質が改めて問われる事になる。医薬品購入者が来店すると逃げ回るような自信のない登録販売者では消費者が迷惑する。場合によっては死亡など重篤な副作用が発症する医薬品を販売している専門家として消費者と向き合い、副作用の説明・相談に対応し、副作用が発症しないための適正使用を指導する知識修得が不可欠である。

また、登録販売者は試験で資格を取得しただけで満足しているが、生命関連品を取り扱っている責任と使命感も身に付けて欲しい。その志があれば消費者も登録販売者を信頼し尊敬するから必然的に登録販売者の存在感は高まり、社会的地位向上にもつながるだろう。その結果、薬剤師は調剤、登録販売者が一般用医薬品販売との役割分担を確立できれば、全国十万人余の登録販売者の明るい未来が保障される。

一方、一般用医薬品メーカー各社も副作用報告を真摯な姿勢で受け止め消費者に対し副作用情報や、その対応について広く伝達すると共に、説明書などをよく読み医薬品適正使用の思想啓発活動に本格的に取組む必要がある。

しかし、個々の一般用医薬品メーカー企業の啓発活動は消費者から我田引水≠フ宣伝活動と誤解される可能性もあるから、「日本OTC医薬品協会」の看板で国民向け啓発キャンペーンを展開すれば効果的と思う。

また、「医薬品業界の良識団体」と評価されている「くすりの適正使用協議会」(黒川達夫理事長)と提携して一般用医薬品のリスクとベネフィットを国民に啓蒙し、医薬品の適正使用推進に努力すべきだ。出来る事なら一般用医薬品メーカー企業も同団体に加盟する事を勧めたい。「一般用医薬品連合会」などという幽霊団体≠ノ高い会費を払うよりも遙かに有意義だと確信する。

医薬分業で薬局から薬をもらうとサービス料金が1000円円高い。それは薬局で薬剤師が処方せん内容をチェックし、患者に薬剤の内容や服用方法について説明することに対する報酬が上乗せされるためだ。しかし、国民の約60%はこれを「高すぎる」と感じている。また、医薬分業のメリットについて質問すると「特にない、わからない」の答えが最も多く35%。「待ち時間が短くて便利」の28%に続いて三番目に「薬局で薬について説明してくれる、相談に乗ってくれる」24%の答えがある。これは医薬分業規制見直しをテーマとした政府諮問機関規制改革会議の公開討論にあたり内閣府が行なったアンケート調査結果だ。

厚生労働省の長年にわたる医薬分業推進策により、分業率は今や70%を超えると推測される。その医薬分業の内容と質が、今問われている。だが、問題は医薬分業そのものの適否ではない。公開討論会でも医薬分業を否定的にとらえる発言は全くなかった。要は国民、患者が薬局で受けているサービスが、その料金、コストと照らし合わせて適切と思えるかどうかの問題である。

これらの観点から医薬分業のあり方が議論されたことは従来なかった。当時は分業率10%にも満たない状況だけに当然のことかもしれない。政府は医師に薬離れを促し、薬剤師には調剤への取組み意欲を高めるようにすすめた。

現在、分業率70%時代となり、国民の間にも病医院から院外処方せんをもらい街の薬局で調剤する事が普通になった。

医師の診療に関するインフォームドコンセントも今や普通のことである。患者は医師から病状と治療方針の説明を詳しく受け、それに対して患者自身の考えを述べながら治療方法を医師と共に決める。しかし、かつての患者は医師に意見を言える立場でなかった。現在のインフォームドコンセント時代に至るまでには医師自身の取組み、行政の対策、患者の活動などが行なわれ何年もの時間が必要だった。医薬分業も同じで長い時間をかけ国民の理解を得なければ制度として定着しない。

そのためには調剤の現場で患者の治療、症状の改善につながるようなアドバイスや副作用の説明を患者の立場からわかりやすく行ない理解を求める事である。添付文書の内容を画一的に説明するのでなく、「あなたの場合はこうですよ」と患者の状況に応じたアドバイスが必要である。医師は患者の病気を治すのが使命であり必然的に患者個人と向き合うが、薬剤師は処方せんにとらわれ、患者個人と向き合う意識が薄い。医薬分業のメリットを理解出来ない国民は患者と向き合おうとしない薬剤師を見て医薬分業に不満を示したのかもしれない。ドラッグストア調剤の薬歴不記載事件などで、なおさら薬剤師への不信感が高まり、「調剤技術料が高過ぎる」など医薬分業への疑惑も生じてくる。

薬剤師はもっと患者と向き合う必要がある。同時にコンプライアンス意識の徹底を図り国民の信頼を得る事が急務だ。

大手チェーンドラッグストア企業各社の調剤併設店出店が全国的に急増している。セルフメディケーション普及進展が大幅に遅れ主力の一般用医薬品需要は伸び悩み日用品雑貨や食品も大手スーパー、コンビニとの競争で低迷を続け、かつて「小売業界一人勝ち」と言われた大手チェーンドラッグストアの勢いに陰りが見えてきた事から、安定した診療報酬収入が見込める保険調剤事業強化に一斉に踏み出した。その結果、出店数は激増し極度の薬剤師不足が生じて調剤併設店出店計画を変更または中止する大手チェーンドラッグストア企業も多い。

そんな矢先に2月、ツルハホールディングス子会社「くすりの福太郎」(小川久哉社長)経営48店舗で処方箋の薬剤服用歴(薬歴)未記載が発覚、マスコミに大々的に報道されて業界内外に衝撃を与えた。

続いて同月22日には潟Cオンホールディングス子会社「CFSコーポレーション」(宮下雄二社長)経営「ハックドラッグ」20店舗で78,140件の処方箋薬歴未記載が明らかになった。

相次ぐ大手チェーンドラッグストア企業の薬歴未記載事件に対し業界内外から厳しい批判が起こった。日本薬剤師会(日薬)は「薬剤師並びに保険調剤の信頼を貶める行為で許せない。調剤報酬改定議論前で悪影響を危惧する。医薬分業批判に油を注ぐ事になりかねない」と、不快感を露骨に示した。医薬分業推進に長年取組んできた日薬としては当然の事だろう。

また、日本保険薬局協会も「国民皆保険制度に携わる一員としての認識不足。薬歴は患者に医療提供した記録であり、未記載で薬剤服用歴管理指導料(1件41点410円)を請求するなど考えられない行為」と非難の嵐。

確かに薬歴未記載で薬剤服用歴管理指導料の診療報酬請求は不適切請求で不正行為に当たる。厚生労働省も実態を調査し不適切請求の場合は両社が受取った薬歴管理指導料の返還を求め厳重に処分する意向を表明している。だが、当該ドラッグストア両社が不正に受取った薬歴管理指導料を返せば済む問題とは思えない底の深さを感じる。

今回問題が発覚した時、当該ドラッグストア責任者は薬剤師不足を理由に上げた。確かに僅かな薬剤師数で1人当たり1日40枚の適正処方箋枚数を超える処方箋処理作業に追われて薬歴記載が後回しとなった状況は理解出来ても、薬歴未記載を正当化する理由にはならない。薬剤師が1日40枚以内の処方箋処理で職能を充分に発揮できる人数を確保し体制整備を図る事が営業的出店計画よりも重要なはず。

また、今回の事件は企業だけでなく現場の薬剤師にも責任がある。両者の倫理観とコンプライアンス意識欠如から発生した事件だからお互いに深く反省し、医療の一端を担う者として高い志を持つ事が肝要だろう。

一方、日本チェーンドラッグストア協会は加盟社の違反行為を厳しく処分して「同じ穴の狢」と国民から思われないようにすべきだ。

全国主要ドラッグスストア業界団体の日本チェーンドラッグストア協会(JACDS。関口信行会長)は来たる月3月13日〜15日の3日間、千葉・中瀬の幕張メッセで恒例の第15回JAPANドラッグストアショーを開催する。前回はメーカー・卸340社が出展、開催期間中の来場者数は延べ13万815人とアジア最大のドラッグストア祭典に発展した。その経緯は本年で発足16年目(平成11年6月16日設立)を迎えるJACDSの歴史と重なる。

特に今回はドラッグストア業界育ての親である松本南海雄氏(潟}ツモトキヨシホールディングス会長)の長男・松本清雄同社長が同ショー実行委員長に就任、どんな異才ぶりを発揮するか各方面から注目されている。

ドラッグストア業界は一般用医薬品中心に化粧品、日用雑貨、医療衛生用品、健康食品・サプリメントなど地域住民の健康・衛生・美容に関連する商品を販売し全国津々浦々に存在、その利便性が国民から高く評価されている。さらに近年は調剤併設店の大幅増加に伴い勤務薬剤師を多数雇用して地域医療の一端を担う大手企業も多く重要な医療機関に定着しつつある。

昨年度の全国ドラッグストア企業数は501社(17,563店舗)総売上高約6兆97億円。この実績から安倍政権の日本再興戦略に掲げられたセルフメディケーション・セルフケア推進策の先陣を担う最適な業界として最も期待されている。

しかし、期待に応えるドラッグストア業界の代表団体であるJACDSには大きな問題点がある。それは一部大手企業加盟社トップのJACDSに対する帰属意識が希薄で団結心と協調性に欠ける事だ。JACDSのために何も働かず、活動資金提供も渋り、極安会費で同協会が得た果実のみ貧る寄生虫のような加盟社が多い。

発足以来約16年間でJACDS組織は正会員157社(小売業)、賛助会員(メーカー・卸)約226社。正会員中には上場企業16社。そのうち潟}ツモトキヨシHD、潟EエルシアHDなど年商約5千億円企業ほか年商1千億円以上企業が10社余も存在。さらに年商300億円〜500億円企業多数の有力小売企業集団に成長した。

それにもかかわらず、JACDSは自前ビルどころか事務局組織も持てない火の車″熕ュに悩んでいる。原因は年商500億円以上の有力正会員企業が目白押しなのに年会費一律12万円の極安会費で甘んじている事。しかも賛助会員年会費が正会員より2倍の24万円とは本末転倒も甚だしい。こんな団体は他に例がない。JACDSは他団体同様に正会員年会費徴収に売上高比例制を導入すべきだ。例えば基本年会費120万円の他に売上高ランク別会費(年商100億円以下、100億円余〜500億円、500億円余〜1,000億円、1,000億円余〜3,000億円、3,000千億円余以上)を定め加算する方式で、多くの業界団体が採用し順調な運営を行なっている。

日本再興戦略で地域医療チームの一員に指名されたJACDS加盟社が国民や政府の期待に応えるためにもJACDSの財政強化を早急に図る事が不可欠である。

医薬品産業界は新年早々、来年の薬価改定問題の話題で持ちきりとなった。平成28年度から消費税率引き上げ対応分の改定も含め3年連続で行なわれる薬価改定への大きな懸念である。一方では医薬品産業界として「言うべきことは言わなければならない」と緊張感が漂う年明けであった。

ところが、1月29日、日本医薬品卸業連合会の政治団体「薬業政治連盟」の新年賀詞交歓会に訪れた衆議院議員の伊吹文明氏が挨拶で「薬価毎年改定は卸が価格交渉に追われることになり対応できない事情を財務省もよく理解した。みなさん、安心してください」と語ったのである。旧大蔵省出身で財務大臣や衆議院議長を務めた有力議員の伊吹氏が「薬価毎年改定は消えた」と明言したのだから会場内はどよめき拍手の嵐。その直後に登壇した野木森雅郁・日本製薬団体連合会(日薬連)会長(アステラス製薬会長)も「思いがけないお年玉をもらった」と驚きと喜びの複雑な表情を見せた。製薬業界の薬価問題対応機関である保険薬価研究委員会(薬価研)を擁する日薬連会長が初めて知ったという極秘情報であった。

しかし、伊吹議員の発言に対し、財務省主計局の担当官は本紙の確認取材に対し「そんな事実はない」と答えた。

「薬価調査・薬価改定の在り方について、その頻度を含めて検討する事は、政府の骨太方針2014に明示し閣議決定されたものであり、それに対して何らかの能動的な動きがない限り並行移動するものであって、引き続き検討事項として時期がくれば議論されることになる」と言うのだ。

だが、その口ぶりからは、財務省として2年越しで取組み閣議決定にまで持ち込んだこの問題に今後も積極的に取組むという意気込みは感じられなかった。

財務省は1月23日に開いた財政制度分科会に、昨年末に財政制度審議会から提出された「平成27年度予算編成に関する建議」で指摘された事項が27年度予算にどのように反映されたかを表にまとめて示している。そこでも、昨年の建議には「診療報酬・薬価」との項目が立てられ、「骨太方針2014」を踏まえ薬価調査・改定の在り方の見直しを具体的に進めていく必要があると記載されていながら、この項目自体が取り上げられていない。

「27年度予算に直接かかわることではないから」というのだが、一方で後発医薬品の目標再設定については予算に盛り込まれなかったにも関わらず「引き続き検討課題」として「予算への反映状況」の中に記載している。これは「内閣府の行政レビューで提言され議論もあったから」というが、薬価改定の在り方の見直しとは扱い方が全く違う。

また、骨太方針そのものを議論する場であり安倍首相を議長とする経済財政諮問会議でも、「骨太方針2015」のとりまとめに向けた議論が1月30日にスタートし、その議論をリードする民間有識者議員がたたき台となる課題を提示したが、地方行政サービス改革とともに2大テーマとされた「社会保障サービス改革」の課題の中に「薬価改定の頻度」は入らなかった。少なくとも諮問会議の四月までの議題には乗らない。

諮問会議事務局は本紙取材に対し、「この問題の取り扱いは明確になっていない」と応えた。諮問会議は昨年、民間議員が「取引の実態を2015年の年央までに調査し適切な市場価格形成を阻む要因の特定化と除外を図るべき」と提案、安倍首相が塩崎厚労相に調査への取り組みを指示した。その後、議論のきっかけとなった消費税率引き上げ先送りを決定したが首相の指示は残っている。

今後について諮問会議事務局は、「実態の把握を厚労省がどのように行なうかを含め厚労省と相談しながら対応していく」と、あいまいな姿勢だ。厚労省と相談した結果、実態把握調査を行なうのか、行なわないのかも見えない状況である。

薬価毎年改定の議論はこのまま立ち消えになるのか? そうなれば、薬業界関係者は胸をなでおろせるが、まだ手放しで喜ぶのは早い状況である。

今年も昨年正月と同様に第三次安倍政権の経済政策「アベノミクス」論議で幕を開けた。年初から円安・株高で大手企業中心に景気回復ムードが強くデフレ脱却への軌道に乗った感もある。大手企業トップの多くは「景気回復」と見ており、「アベノミクス」第三の矢である成長戦略強化に期待している。

一方、中小企業は「アベノミクス」効果の恩恵に浴さず、むしろ消費税率アップ後の消費低迷に悩み、更に円安影響で原材料高騰の追い打ちを受け「アベノミクス」に強い不信感を抱いている。

しかし、「アベノミクス」継続の是非を問う昨年末の衆議院選で自公連立政権が326議席を獲得して圧勝、「アベノミクス」成果が信任された。今後第三の矢(成長戦略)でデフレ脱却に成功するか注目されている。

国民の圧倒的支持を得た安倍首相は、いよいよ岩盤規制打破に乗り出す事だろう。成長戦略の中核として医療費削減に照準を合わせた社会保障制度改革に取組む方針。その先鋒は留任した塩崎恭久厚労大臣で、毎年薬価改定実施、医療用漢方薬の見直し、調剤報酬・技術料引き下げ、更なるジェネリック使用推進など年々膨張する医療費削減に色々な手段で攻略する計画。製薬業界側も主要団体が一丸となって立ち向かわないと厳しい状況に追い込まれる。

だが、製薬業界側には一昨年から継続中のノバルティスファーマ降圧薬「ディオバン」臨床研究データ改ざん・ねつ造事件ほか有力製薬企業の不祥事連発による後遺症があり、国民の製薬業界に対する不信感も強く厚労省と戦う意思も喪失気味で盛り上がらない。

そこで頼りにしているのが医薬品産業の用心棒″痩議員諸氏。だが人気絶頂の安倍政権に楯突く議員は見当たらない。最後の手段は日本製薬工業協会や日本製薬団体連合会など業界主要団体に理事長として天下っている元高級官僚の皆さんに一肌脱いでもらうしかないと天の声@鰍ン。塩崎厚労大臣と製薬業界のバトルは目を離せない真剣勝負になりそうだ。

今年は戦後70年。「団塊の世代」と言われた人達が全て65歳以上の高齢者になった。その中で5人に1人は認知症の可能性がある。本格的な少子高齢化社会が到来して色々な問題も発生している。元気な男女高齢者が労働資源となり、現役並の医療保険料を負担して医療費抑制に寄与する例もある。一方では介護退職、介護離婚、老々介護などによる家庭崩壊が続出して介護難民増大により介護保険制度も破綻しかねない。超高齢社会の医療・介護問題は一層深刻化して国民生活を脅かす事になろう。

医薬品業界や医療衛生用品業界関係者は、超高齢社会の医療・介護問題への取組みを真剣に考えて欲しい。

今年の歳末は12月24日に実施された第47回衆議院議員選挙で自民党が291議席を獲得、公明党35議席と合わせた自公連立政権は衆議院議員定数の3分の2(317議席)を上回る安定政権に躍進し明るいニュースで幕を下した。勝因は安倍首相の経済政策アベノミクスによる円安・株高で輸出産業中心に大手企業が活況を取り戻している景気回復ムードの実績評価と、長期安定政権を待望する国民の期待感に他ならない。

だが、一方では4月の消費税率引き上げ後の消費低迷による不況でアベノミクス効果を実感していない中小企業も多く、第3次安倍内閣の新年度経済施策が注目される。また、留任予想の塩崎恭久厚生労働大臣が持論の社会保障制度改革実現を目指して毎年約1兆円増え続ける医療費削減に取り組み、薬価毎年改定や診療報酬・調剤技術料引き下げを図るのではないかと業界側の警戒心も強まっている。

確かに医薬分業率が上昇して一般薬局、調剤専門薬局、ドラッグストアなどが調剤ビジネスに殺到、調剤医療費も約7兆円に膨張して「調剤バブル」と呼ばれるほど発展。そんな中で「チェーン調剤薬局鞄本調剤の社長報酬年間6億円」とマスコミに報道された事も調剤ビジネスへの国民の不信感を高めた。日本薬剤師会や日本保険薬局協会などの対応が注目されている。

その日本薬剤師会(日薬)新会長には不評だった児玉孝前会長の4選を阻止して待望の山本信夫氏が就任。山本会長は児玉前会長の3期6年間に失墜した日薬の権威と良識を回復し本来の日薬に改革する事が支持者の期待に応える使命。特に日薬がオール薬剤師の総本山となる夢を実現して欲しい。

今年は昨年に引き続き年頭から大手製薬企業の不祥事がマスコミ報道をにぎわせ、それらの社長が深々と頭を下げている屈辱的な映像を多数見せつけられた。特にノバルティスファーマは社長が交代するたびに謝罪会見で頭をさげていたけど、その後も不正行為が次々と露見しており、本当に謝罪や反省の気持ちがあるのか疑問に感じた。厚生労働省はノバルティスファーマの高血圧薬「ディオバン」に関する5大学臨床研究データ改ざん・ねつ造不正論文を使用した同剤販促活動は薬事法違反(虚偽・誇大広告)に該当する容疑で1月に東京地検に告訴、同社本社など立ち入り捜査を行ない、臨床研究に参加していた元同社社員・白橋伸雄を逮捕した。だが、外部調査機関から「企業ぐるみの犯罪」と指摘された今回の事件を元社員一人の尻尾切り≠ナ終わらせる事なく真相の徹底究明を行ない、万一有罪なら厳しく処罰して再発防止に努めるべきだろう。

折しも武田薬品工業、協和発酵キリン両社の臨床研究でも不適切な違反行為が発覚、両社長も頭を下げ陳謝した。相次ぐ日本製薬工業協会(製薬協)加盟企業の不祥事に国民の不信感が高まる事を危惧した新任の多田正世会長(大日本住友製薬且ミ長)は両社に厳重処分を科した。多田会長は就任当時、「トン単位で商売している化学会社出身者に、ミリグラム単位の医薬品業界が判るはずない」と酷評されていたが、トップ企業の武田薬品工業処分を執行した勇気と行動力から「業界コンプライアンス確立の今、最適な会長」と評価も変わった。来年は製薬協加盟各社が医師や医療機関に今年支払った数百億円を自社の広報組織強化に使い、「社内の常識、社会の非常識」の企業体質改善を図り不祥事再発防止に取組んで欲しい。

なお、一般用医薬品市場で1類薬を担当する薬剤師と共に2類、3類薬担当の登録販売者が活躍し、その数も15万人余に増大している。その登録販売者の研修や地位向上などを図る組織が旧薬種商系とチェーンドラッグストア系に2分している現状を改善し、登録販売者の権益を守る職能団体として全国的統一組織が結成されるのも来年の課題である。

○…今年は年明け早々に厚労省がノバルティスファーマを薬事法違反容疑で東京地検に告訴。初めて製薬企業と大学病院医師主導臨床研究との関係に司法のメスが入り逮捕者も出た。この事件は同社高血圧薬「ディオバン」販促活動資料とするために京都府立医科大学、東京慈恵会医科大学、名古屋大学医学部などの各付属病院で他社製品との差別化を図る臨床研究が行なわれ、同社は5大学に総額11億円余の奨学寄付金を支払った。

○…更に同社が販促活動として開催した医師や報道関係者向けセミナー、シンポジウム費用、講師謝金、原稿執筆料、接遇費などは10億8千万円で製薬業界最多。

○…数10億円の資金が投入された「ディオバン」事件は一社員では不可能で、厚労省諮問機関「有識者検討委員会」も「企業ぐるみ犯罪」と厳しく認定したが、その真相解明に東京地検のメスがどこまで切り込めるか、各方面の注目を集めている。

○…一方、武田薬品工業、協和発酵キリン両社の医師主導臨床研究でも不適切な不祥事が発覚、製薬企業に対する国民の不信感は高まった。日本製薬工業協会(製薬協、多田正世会長)が実施した第8回くすりと製薬産業に関する生活者意識調査結果(平成26年7月発表)によると、「製薬産業が信頼できない」との回答理由中で「臨床試験のデータ改ざん事件があったから」(94.7%)が圧倒的多数を占め、生活者の関心の高さが示された。2位以下は「利益優先だから」(42.7%)「情報が非公開だから」(29.3%)「癒着事件が多いから」(28.7%)「なんとなく」(18.0%)「薬害事故を起こしている」(11.3%)「マスコミ報道を見聞きして」(6.7%)の順。製薬業界に対する生活者の信頼を回復するために、製薬協加盟各企業はコンプライアンス順守と透明性確立に取組む事が来年の大きな課題だろう。

○…最後に明るいニュースを。西アフリカで猛威をふるうエボラ出血熱治療薬として富士フイルムグループ企業・富山化学工業開発の抗インフルエンザ薬「アビガン錠」が世界の注目を浴び快挙!!

日本発の画期的医薬品創製を促すイノベーション促進策、それに対応した新薬の薬価算定上の評価充実が求められる一方で、イノベーションを支え続ける仕組みとして、増大する社会保障費抑制にジェネリック医薬品使用促進、薬価毎年改定議論など医薬品の市場構造、流通構造の大きな転換につながる政策が次々に打ち出されている。

医薬品産業側では、薬価毎年改定に対し5月に日本製薬団体連合会(日薬連)と日本製薬工業協会(製薬協)が両会長連名で反対声明文を発表、更に日本医薬品卸売業連合会(医薬品卸連)も6月に「断固反対」の会長見解を表明した。だが、各団体会長の反対声明文の内容は、それぞれの業界の目先の損得から「反対」である事を訴えているに過ぎず、医薬品産業の将来ビジョンや国民生活への影響などを考慮した上での反対である事が全く表明されていなかった。これでは社会のコンセンサスを得ることは難しい。

幸いな事に、年内に方向性が固まると見られた薬価毎年改定策は、消費税率引き上げの1年半先送りを国民に問う衆議院解散総選挙の動きの中で、議論自体が先送りとなった。

しかし、医薬品業界は一難去ったと安堵していないで、この際イノベーション促進の意義、そして変貌が避けられない医薬品市場と流通の全体像、将来像の中で薬価改定のあり方をどう捉えるのか、薬価改定は今後どうあるべきか、などの視点から薬価毎年改定議論を逆にリードしていく姿勢を打ち出すべきではないか。

安倍首相が議長をつとめる経済財政諮問会議で提案された薬価毎年改定実現への議論を短期間で方向転換させる事は難しいが、その議論が年末解散総選挙で来年以降に飛ばされ仕切り直しになった今こそ、医薬品業界が先手必勝の構えで薬価議論の主導権を握ることが必要である。

厚生労働省医政局の城克文経済課長は11月13日の医薬品卸連セミナーでの講演で、次回、平成28年改定に続いて29年に消費税率引き上げに伴う薬価改定、さらに30年に診療報酬と介護報酬の同時改定の中での薬価改定が続くことを示し、この中で「何が起こるかを考えなければならない」と問題意識を喚起した。つまり何等かの具体策が実施されるのではないか、との推測である。

経済財政諮問会議は、780兆円に膨張した国債(国の借金)を減らすための第一歩として、財政収支均衡を当面の実現目標に、社会保障も聖域としないで自然増の中身にまで踏み込んで精査、削減できるものは何でも削減する方針。したがって30兆5000億円と国家予算の約32%を占め年々増大を続ける社会保障費を抑制するために必死で取組むことは間違いない。その橋頭保としてジェネリック薬使用促進や薬価毎年改定が議論されている。

一方、画期的新薬創製を促すイノベーション促進策も、今後の日本経済成長をリードするための産業として重要政策に位置づけられている。城経済課長は、R幅2%の下で続けられてきた2年に1回の薬価改定により卸の営業利益率は0%台で推移し生き残りのための再編を進めてきたが、毎年薬価改定となったら卸業各社に吸収余力はなく、利益圧縮はメーカーを直撃する。その結果として研究開発費縮小、イノベーション阻害につながりかねず、「そこを心配すべき」だと提言している。

製薬企業各社は新薬シフトを進めているが、薬価改定実施の今年度上半期決算で国内売上高マイナス企業が多い。この中で毎年薬価改定実施の場合どれほど深刻な影響を受けるか、具体的データを現場を知らない経済財政諮問会議メンバーに提示し議論する事が肝要だろう。

○…法定「一般用医薬品」の呼称は昔から「大衆薬」「家庭薬」「市販薬」「売薬」「常備薬」など色々あるが、最近の薬業界では「OTC薬」との呼称をことさら使用している。

○…「OTC」とは今更説明するまでもなく「Over The Counter」の略。つまり、薬局のカウンター越しに薬剤師が医薬品を販売する事だが、現在の薬局やドラッグストアでカウンター越しに販売されている一般用医薬品はスイッチ医薬品など僅少な第一類医薬品だけ。その他大多数の第2類・第3類医薬品は店内陳列売場から需要者が直接レジに運び購買している。

○…極く僅少な第一類医薬品の「OTC」呼称を圧倒的多数を占める第2類・第3類医薬品にまで使用するのは不適当で無理がある。だから「OTC」に対する国民の理解や認知度は極度に低く、新聞・テレビのマスコミも使用していない。多くのマスコミは一般用医薬品に関する報道で「OTC」を使わず「市販薬」を使用している。「OTC」では何の事か国民に理解されないと思うから一目瞭然の「市販薬」が主流になったのだろう。かつて日本大衆薬工業協会が「日本OTC医薬品協会」に改称する記者会見でも、多くの記者から「OTCは国民に意味がわからない。なぜ大衆薬が駄目なのか?」との質問が出た。今は薬業界の中だけで業界専門用語か隠語のように「OTC」が使用されている。

○…だが、薬業界内でも「大衆薬卸協議会」「日本家庭薬協会」などの名称を今も堂々と使用している団体が存在し、「OTC」一辺倒には至っていない。第2類・第3類医薬品を主に取扱う業者団体が「OTC」の看板は似合わないからだろう。

○…では、同様に第一類医薬品を製造していない企業が過半数を占める一般用医薬品メーカー団体の日本大衆薬工業協会は何故「日本OTC医薬品協会」に改称したのか? 当時、同会内部でも反対論が強かったのに改称したのは、幽霊団体「日本一般用医薬品連合会」設立を企てる一派の布石だった、との謀略説も浮上。さて、真相はいかに?

医薬品小売業界に画期的な変革が起こったのは平成18年の改正薬事法成立だった。一般用医薬品をリスク別に3分類化し、第1類薬販売は薬剤師のみ、第2類薬・第3類薬販売は薬剤師以外に新設された「登録販売者」も可能になった。初めて薬局・薬店、ドラッグストアなどの一般用医薬品取扱い店で薬剤師以外の新しい資格者「登録販売者」が一般用医薬品を販売できる制度になった。

そして平成21年6月から改正薬事法が施行され、画期的な一般用医薬品販売制度や登録販売者制度も具体的に実施段階に進み、登録販売者試験合格者の登録販売者が主に大手チェーンドラッグストア中心に多数出現した。折しも大手チェーンドラッグストアの覇権をかけた激しい出店競争が展開されている渦中で登録販売者は猫の手&タに必要だった。

それに加えスーパー、コンビニエンスストア、バラエティショップなど様々な小売業者が超高齢社会で成長する分野として医薬品、健康食品、介護用品に着目、一斉に登録販売者獲得を目指した。

その結果、現在の登録販売者総数は約15万人に達し、さらに今後も年々増え続ける見込み。やがて薬剤師総数を上回り、一般用医薬品販売は登録販売者、調剤と第1類薬新製品販売が薬剤師とのすみ分けも予想される。だが、第1類薬は短期間で第2類薬へ、第2類薬は第3類へと移行しており、医薬用薬から第1類薬にスイッチされた医薬品も登録販売者が取扱う事になり、登録販売者の資質を問題にする社会の声も大きくなっている。

その理由は

  1. 登録販売者試験を実施する地方自治体によって試験問題の難解度や容易度の差にばらつきがある。試験実施日や試験内容を全国統一化し、国家試験制度にすべきだ
  2. 受験資格が甘く、実務経験なども短期間過ぎる
  3. 登録販売者資格に一定期間の更新制度を設置すべきだ。終身資格では合格後の研修を怠る
  4. 登録販売者試験合格者は玉石混淆だから合格者研修制度が必要
など、登録販売者への不信感を強めている。

登録販売者への社会の目が厳しくなってきた事を最も危惧しているのは旧薬種商で薬種商の個人資格化を願い半世紀近く運動してきた薬種商に与えられた資格が不本意な登録販売者だった。

一方、長い事薬剤師不足に悩まされ計画通りの出店が出来ず困惑していた大手チェーンドラッグストア各社は登録販売者制度発足で大変救われた。

しかし、薬種商資格化の代替や大手チェーンドラッグストアの薬剤師不足解消などの思惑や便宣で生み出された登録販売者が今後も生き残れる条件は、地域住民の生命と健康を預けられる資質と信頼感が国民から得られるか否かにかかっている。

そのためには、現在全国約15万人の登録販売者の受け皿として存在する旧薬種商系の全日本医薬品登録販売者協会(畑忠夫会長)と大手チェーンドラッグストア企業系の日本医薬品登録販売者協会(樋口俊一会長)両団体は各自の思惑や権益を捨て、登録販売者の資質向上と登録販売者制度の維持確立に真剣に取組んで欲しい。

○…本紙平成26年8月15日付第430号18面「社説」記事で近藤誠医師(がん研究所セカンドオピニオン外来所長、元慶應義塾大学医学部放射線治療科講師)の持論を紹介し、大きな反響があった。近藤医師の主張は

  1. 抗がん剤は治療効果も延命効果もなく無意味。逆に毒薬の副作用で命を縮めるだけ。特に胃がん、肺がん、乳がん、子宮頸がん、前立腺がんなど固形がんには効果なし
  2. がん手術は、ほとんど役に立たない
  3. がんは本物のがんと、がんもどきに分れる
  4. がんは何もしない放置療法が一番

など、従来の常識では理解しづらい仰天発言の連発。

○…この近藤医師が10月3日午後9時から放送されたTBSテレビの人気番組「中居正広の金スマ」に出演、持説の「抗がん剤無効有害論」「がん放置療法」などを展開し全国の茶の間≠ノ強い衝撃を与えた。しかも、平成5年にスキルス胃がん再手術後わずか3か月で死去したニュースキャスター逸見政孝氏の長男も出演。近藤医師から「手術しないで放置療法を行なっていたら、まだ生きていたかも」と言われ複雑な表情。

○…近藤医師は本年9月20日に「近藤先生がんは放置≠ナ本当にいいんですか?」(光文社刊)を出版、その中で「前立腺がんで死去した作家・渡辺淳一氏、棋士・米長邦雄氏、さらに肺がんで死去した芸能リポーター・梨元勝氏らは、いずれも抗がん剤使用で死去した。いわば抗がん剤に殺されたも同然。私の放置療法を受けていたら現在も間違いなく生きていた」と自信を持って断言している。

○…近藤医師が抗がん剤無効有害論を堂々と主張しているのに対し、製薬企業や医学関係者は何故反論しないのだろうか? 特に抗がん剤の製造販売を承認している厚労省は何故沈黙しているのか? 患者は抗がん剤使用にとまどい悩むばかりだ。

2014年9月29日

安倍内閣は経済成長戦略「アベノミクス」の中で一貫して医療・健康、ライフサイエンス分野を21世紀における日本経済成長牽引の中心産業と位置づけて規制緩和政策を実施している。一般用医薬品インターネット販売解禁、健康食品機能性表示規制緩和、混合診療推進、難病新薬審査期間短縮、一般用検査薬範囲拡大、薬局店頭での血液検査解禁、西洋ハーブのダイレクトOTC薬化など歴代内閣が日本医師会や薬業会などの猛反発に屈し断念した岩盤規制改革を推進中。その結果が国民に評価され高い内閣支持率を維持している。

9月3日、第二次安倍改造内閣が発足して厚生労働大臣に就任した塩崎恭久氏は財務・金融の政策通で社会保障改革が期待できる反面、その財源を医療費削減に求める可能性は強い。医薬品業界関係者からも「社会保障費の財源確保のために公定薬価や診療報酬引下げ要求がさらに厳しくなる」との懸念も出ているが、安倍内閣がライフサイエンス産業振興にアクセルを踏む限り、同時にブレーキをかける政策は好ましくない。

そのライフサイエンス産業振興策の象徴ともいえる日本版NIH・(独)日本医療研究開発機構関連法案が今年5月23日の参議院本会議で可決成立した。長年、日本製薬工業協会(製薬協)はじめ医薬品業界が政府に要望しているイノベーション促進のための研究開発司令塔設立が遂に実現する運びとなった。同機構は平成27年4月1日法人設立、当初300人体制でスタート予定だが、問題点も多い。

同機構への期待は、これまで厚生労働省、文部科学省、経済産業省が各省ごとに行なってきた医療医薬分野予算の一元化と市場化を視野に入れた優先順位に基づく効果的予算執行であり、中期的にはイノベーション創出に向けた充分な予算確保である。同機構の平成26年度予算額は1,390億円だが、米国NIH(国立衛生研究所、予算額約3兆円)の20分の1、英国OSCHR(ヘルスリサーチ戦略的調整オフィス、予算額約4,000億円)と比較しても3分の1と少ない。従来は、少ない予算を各省がばらばらに使っていたから成果も期待薄だった。今後は同機構の旗振りによりイノベーションを創出、その成果を革新的医薬品・医療機器・医療技術などの開発・実用化に結び付け、アンメットメディカルニーズ充足、患者の身体的負担軽減、医療費軽減など具体的に社会還元していくことが求められる。その実績を積み重ねることで同機構予算増額のコンセンサスを得て、欧米諸国との差も縮小される。

「(独)日本医療研究開発機構法」と同時に「健康・医療戦略推進法」も成立。同法趣旨は医療分野の研究開発と環境整備ならびに健康長寿社会の形成に資する新たな産業創出とその振興を図ること。この二つの法律が相互に作用しながら、日本をライフサイエンス立国、健康長寿幸福立国へと導く。(独)日本医療研究開発機構を新設しても役人の天下り先を増やすだけでは意味がない。安倍首相は「画竜点睛を欠く」ことにならないように機構に対するPDCA(計画、実施、検証、修正)サイクル徹底を図ると同時に、近年相次ぐ臨床研究の不祥事防止に最善を尽くすべきだ。

○…日本チェーンドラッグストア協会(JACDS・関口信行会長)の設立15周年記念セレモニーが9月12日午後3時から東京・紀尾井町のホテルニューオータニで盛大に開催された。第一部記念式典は安倍首相から祝辞メッセージも届き、林芳正前農林水産大臣(JACDS議員連盟会長)ほか多数の国会議員や神田裕二厚生労働省医薬食品局局長ら経済産業省、農林水産省などの幹部が祝辞を述べ隔世の感がある。

○…今から15年前、ドラッグストアは医薬品小売業界の異端者として主流の薬局や薬種商から「乱売屋」「量販店」「薬ブローカー」などと蔑視されていた。確かに当時のドラッグストアは一国一城の主<^イプ業者が群雄割拠する無秩序・無統制の野放し状態で行儀の悪い業者も多かった。それが一つの団体にまとまるとは誰も思わなかった。

○…ところが現在、JACDSは医薬品小売業界の代表的団体に成長し、国民のセルフメディケーションに貢献している。僅か15年間で産業界に認知されるドラッグストア業界を築き上げた初代会長の松本南海雄氏(マツモトキヨシ)らJACDS設立当時の功労者達は実に偉大な人物であり感動に価する。

○…ところが、その感動をぶち壊したKY(空気が読めない)者が第2部記念パーティーに出現し会場をしらけさせた。そのKY者は来賓祝辞で登壇した上原明氏(大正製薬)で、JACDS設立15周年記念の祝辞を述べるのかと思ったら、なんと幽霊団体「日本一般用医薬品連合会」のPR説明を延々と始めた。事情を知らない人達は祝賀会と無関係な話に飽きてしらけ気味。また、本紙を読んで事情を理解している人達は「そんな団体いらないよ!!」「挨拶が長過ぎるぞ!!」「そんなに勲章がほしいのか!?」など勝手な野次を飛ばしてブーイング。

○…だが本人には聞こえないようで会場を無視した熱弁が続いた。その中に「ドラッグストア」の単語は一言もなく「薬局」「薬局」を連発、日本薬剤師会式典と勘違いしているのではないか? そして最後にJACDS(ジェイ・エー・シー・ディー・エス)を「ジャクダス」と昔の呼称で締めたが、会場内は余りのKYぶりに失笑の渦。

2014年8月21日

日本は超高齢社会と相まって「がん」罹患者も急激に増加し、4人に1人が65歳以上の社会で2人に1人はがん罹患者との事。安倍政権の「健康長寿」政策が根本的に崩壊しそうな雲行きになってきた。

それなら最新の医療技術力と画期的な医薬品開発力によりがんを治療し制圧すればよい、と考えるわけだが、最近の患者は医師の治療計画や抗がん剤投与に対し素直に応じないため、臨床現場も混乱している模様だ。

例えば、近年日本の高齢男性間で急速に増大している前立腺がん治療でも医師が推奨する標準的治療を受けようとしない。その理由は

  1. 摘出手術は危険
  2. 放射線療法は放射線病になる
  3. 内分泌療法は性機能障害で勃起不全になる
  4. 抗がん剤は毒薬で副作用のみ強く延命効果はない ―など。

患者側の対応根拠は独自にマスコミ情報や医師・患者の著書、インターネットで収集した情報によるものだが、今最も患者間に影響を与えているのは近藤誠医師(がん研究所セカンドオピニオン外来所長、元慶応義塾大学医学部放射線治療科講師)の著書やマスコミによる標準的がん治療や抗がん剤への批判コメントだろう。発売100万部を超え第60回菊池寛賞を受賞した「医者に殺されない47の心得」(アスコム刊)「抗がん剤は効かない」(文芸春秋刊)「がん治療で殺されない7つの秘訣」(同)「がん放置療法のすすめ」(同)など多数の著書が100万人以上の国民を啓蒙しているのだから医療現場に異変や影響をもたらすのは当然。

これらの近藤医師発言に対する反論は多少見られるが弱い。そこで本紙は具体例を上げ医療関係者の反論を取材した。本年5月20日付「日刊ゲンダイ」掲載記事の近藤医師発言「効がん剤には治す効果も延命効果もなく寿命を縮めるだけ。前立腺がんに使われる抗がん剤ドセタキセル(サノフィ梶jは正真正銘の毒薬。将棋名人の米長邦雄氏が亡くなったのもドセタキセルが原因だろう」に対する各泌尿器科医師の反論は次の通り。

  1. 「近藤医師理論には反対。ドセタキセルを臨床で使用して1年の延命効果が出ているから抗がん剤治療は有効と考えている」(上村博司横浜市立大学泌尿器病態学準教授)。
  2. 「ドセタキセルは患者の体質で効果が著しくある場合と効果の出ない場合に分れる。使用して見ないと効く効かないはわからない」(赤倉功一郎東京厚生年金病院泌尿器科主任部長)
  3. 「近藤医師は医学界の異端児で大変迷惑を受けている。ドセタキセル延命効果については世界的エビデンスが確立されている。彼の著書は半分本当で半分嘘だから信用できないが、素人には面白いので売れているだけだ」(藤井靖久東京医科歯科大学泌尿器科準教授)

など反対意見が多かった。しかし、国民に向け近藤医師の発言を本気で否定するほどの積極性が見られず、説得力に欠けており、逆に国民の医療に対する不信感を増幅させた。

この異常事態を解決するためには厚労省が乗り出して近藤医師発言内容の是非を科学的に検証し、国民も納得する説明義務を果たす事だ。

○…「永山治会長(当時・中外製薬且ミ長)以来、久々に気骨ある日本製薬工業協会(製薬協)会長の出現!!」と、製薬業界内で今一番期待されている多田正世会長(大日本住友製薬且ミ長)。8月7日の同社懇談会で記者から「ノバルティスファーマ、武田薬品工業など製薬協加盟大手企業が相次いで不祥事を起こし、両社社長が陳謝会見で深々と頭を下げている姿はもう見たくない。こんな最悪状況になったのは永山会長以降の歴代会長にコンプライアンス意識が欠けており適切なリーダーシップを発揮しなかったからだ。そこで、自らコンプライアンス順守に厳しく対応し、製薬協加盟企業にも遠慮なく注意できる気骨を持った多田会長なら製薬協の自浄機能を喚起してくれるものと業界内の期待が高まっているけど、応える自信はあるか?」と質問された。

○…多田会長は「私は相手が誰であろうと言うべき事は遠慮しないで言う主義だ。コンプライアンス意識の徹底は上部で提唱しているだけでは駄目だ。現場まで行って本当に大丈夫か自分の目で確認する事が重要と思う。製薬協加盟社にもう一度コンプライアンス意識の徹底を図り、製薬業界に対する国民の信頼を取戻したい」と、予想通り直球勝負の頼もしい回答に記者も安心!!

○…ところで、去る5月21日の多田会長就任会見の時に製薬協会長名刺が事務局のミスで作成されてなかったため、多田会長は記者の名刺を受けながら大日本住友製薬且ミ長の名刺を渡す事も出来ず困惑していたが、その後、会長名刺を事務局から受取り一件落着とか。それにしても、会長就任会見当日まで会長名刺を作成しない製薬協事務局もお粗末。記者に注意されると、「えっ? 会長名刺って必要なの?」。あきれて二の句がつげないほどたが≠フゆるみ過ぎだ。

日本薬剤師会(日薬)の山本信夫会長が正式に就任、同時に山本会長をサポートする新執行部も発足した。山本会長と石井甲一副会長中心の強力な執行部が、中西敏夫元会長から児玉孝前会長へと続いた12年間の不透明な流れを断ち切り、国民の信頼回復に努め権威ある日本薬剤師会構築へ向けた変革が山本会長の公約通り実行される事に期待している。

元前両日薬会長の失なわれた12年間≠ノ先送りや積み残された宿題が山積み状態と思うが、山本会長と新執行部が最優先的に取組む課題は、不透明な12年間に失墜した日薬のステータスを回復させ、若い薬剤師たちが日薬会員である事に誇りを持ち夢と希望に燃えて活躍できる環境作りだろう。それによって若い薬剤師の日薬離れを抑止、さらに会員数拡大も期待できる。

次は日薬を過去の石館守三会長や佐谷圭一会長時代のように学術的にも政治的にも強い全国的薬剤師組織に改革する事である。現状の日薬は12年の空白≠ノより組織としての権威や影響力が極度に低下している。例えば日本薬学会、日本病院薬剤師会、日本薬剤師会の三団体トップが薬剤師教育や医薬品関連問題について定期的に話し合い情報交換を行なう会合「薬薬薬連携」でも、柴崎正勝日本薬学会会頭から「日薬会長はレベルが低くて話しが合わない」と仲間外れにされる始末。山本会長に変わった今後は、そんな事を言われる事もなくなるだろうが、日薬軽視傾向は「薬薬薬連携」のみならず、医薬品メーカー・卸業・小売業などの各団体や官庁まで蔓延している。

これほど堕落した日薬のステータスを回復し強い団体に改革するのは一筋縄ではいかない難しさがある。とても日薬会員の主力を占める開局薬剤師の力だけでは無理な事だ。

そこで考えられる方法は只一つ、日薬を文字通りオール薬剤師組織に変革する事だ。「薬剤師」資格者は、公務員、医療機関、大学、小中高校、学術研究機関、製薬企業、卸業、薬局、チェーンドラッグストア、調剤専門薬局など社会の広範囲な分野で活躍し、それぞれの業態別に日本病院薬剤師会、日本チェーンドラッグストア薬剤師会、日本医薬品卸勤務薬剤師会など全国的な各種薬剤師会を結成している。

これらの薬剤師会を全て日薬傘下に収めて大同団結しオール薬剤師会組織に改革すれば、日薬は日本医師会(日医)に勝る強大な団体に躍進できる。当然、各種薬剤師会が持つ政治連盟も日薬政治連盟のもとに一本化する事で強力な政治力を発揮できる。その結果、日薬の政治的影響力は大幅に強化され、薬剤師共通の要望である職能改善や社会的地位向上などの実現も可能性が高まる事は間違いない。オール薬剤師会の統合形態は、日本学校薬剤師会のように部会組織でも、各団体連合会方式でも大同団結が可能な方向性を選択すればよい。

山本会長は、全国のオール薬剤師が加盟する日薬の頂点に立ったときこそ信念の「薬剤師団体でオール薬剤師のために働く」との公約を果たし、併せて日薬会長選で山本氏の背中を押し出馬を促してくれた多数の支持者の期待にも応える事が出来るだろう。

政府は三本の矢≠ノよる経済成長戦略「アベノミクス」を推進するものとして骨太方針「経済財政運営と改革の基本方針2014」を去る6月24日に閣議決定、その中で薬価改定のあり方について「その頻度を含めて検討する」事を表明した。現行の2年に1回実施の薬価改定を毎年1回実施に変更する意向があったことから、医薬品産業界ではメーカー・卸各団体から一斉に「断固反対!!」の声が上がった。その結果、当初提案された「毎年改定」の表現は避けられたが、「頻度を含めて検討」の閣議決定は今後も政府の重要課題として引き続き議論される。

一方、財務省は5月30日に財政制度等審議会財政制度分科会で「財政健全化に向けた基本的考え方」をまとめ「薬価毎年改定」実施を強く打ち出していた。この報告書が経済財政諮問会議に提出され、その考え方が骨太方針で取入れられた。

来年度予算編成に向けては7月下旬に財務省が「平成27年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針」をまとめ経済財政諮問会議に提出、了承を得てから「概算要求基準」として閣議了解となる。各省が財務省に提出する概算要求締め切りは8月末。

概算要求基準は、骨太方針に新たに書き込まれた「薬価改定のあり方について、その頻度を含めて検討」に関わる記載の有無が注目点となるが、来年度から薬価毎年改定を実施する事は難しいと見る向きが多い。

財政制度審議会・財政制度分科会が来年の予算編成に関する建議に向けた検討を開始するのは10月からで、「薬価毎年改定」議論の第二ラウンドとなる。そして、「薬価毎年改定実施」の議論が建議に反映されるものと予想されている。

また、薬価改定は厚労省管轄だから中医協でも議論される模様。その時支払側は、医療費抑制、保険財政面から「薬価毎年改定」に賛成すると見られる。診療側はすでに反対を表明している。

中医協での意見一致は難航して両論併記となる可能性も強い。

経済財政諮問会議は、財政審建議や中医協議論を踏まえて、12月中旬に「予算編成基本方針」をまとめるが、医薬品産業各団体や医療関係者の強い反対意見と、その要請を受けた自民党国会議員団の反対活動により「現行改定維持」の政治決着が図られる見通しが強そうだ。

今、製薬企業や製薬業界に対する国民的な批判、糾弾の嵐が吹き荒れている。この社会的風潮を察知したテレビや新聞・雑誌など一般マスコミは、こぞって製薬業界に向け牙をむき始めた。

事の発端は数年前からくすぶり続けていたノバルティスファーマ(ダーク・コッシャ社長)の高血圧症治療薬「ディオバン」(一般名バルサルタン)医師主導臨床研究をめぐる黒い噂の真相が明白にあぶり出されてきた事だ。

同社は「ディオバン」が血圧を下げるだけでなく脳卒中防止などの効果もある、との適用拡大を目指し、数多い他社の高血圧症治療薬との差別化を図るために医師主導臨床研究を京都府立医科大学、東京慈恵会医科大学、滋賀医科大学、名古屋大学医学部、千葉大学医学部の各附属病院で実施、今回逮捕された同社元社員の白橋伸雄容疑者が身分を隠して同臨床試験に参加した。その報酬として5大学に対しノバルティスファーマ側から総額11億円余の奨学寄付金が支払われた事も明らかになった。

その後、同臨床試験を実施した5大学中、京都府立医科大学、東京慈恵会医科大学、滋賀医科大学でデータ改ざんが発覚し、改ざんデータに基づく「ディオバン」優位の不正論文も撤回される不祥事に発展した。

しかし、その間にノバルティスファーマは不正論文を「ディオバン」の宣伝販促活動に利用して同品年間売上高を約1,000億円に大幅伸長させた。いわゆる「やり得」の結果に終わるかに見えたが、同事件を調査した厚労省諮問機関「有識者検討委員会」(委員長・森嶌昭夫名古屋大学名誉教授)は昨年9月30日に中間報告書を発表、「ノバルティスファーマのディオバン臨床試験データ改ざんと、それに基づく不正論文の同品販促活動利用行為は企業ぐるみ疑惑が強く、特に不正論文利用のディオバン販促宣伝活動は薬事法違反容疑もある」と厳しく認定した。

それを受けた厚労省は本年1月9日付でノバルティスファーマを薬事法違反(虚偽・誇大広告)容疑で東京地検特捜部に告訴した。同地検は強制捜査を開始、関係先の立入り捜査で証拠資料を押収し、データ改ざん実行者と見られる白橋伸雄容疑者を逮捕した。今後、同容疑者の取調べ次第で、11億円を支払ったノバルティスファーマ社長・役員と、それを受取った5大学関係者の間に隠された真相が解明される見通しだ。

そんな状況の中で、同様の疑惑により武田薬品、エーザイ、協和発酵キリンなど大手企業名がマスコミに浮上しているのは残念だ。

製薬業界は過去にもキノホルム事件、エイズ薬害事件、ソリブジン事件など大きな薬害事件や臨床試験データ改ざん・ねつ造、贈収賄事件など数多くの不祥事を起こして世論に叩かれ、猿でも出来る反省を繰り返している。

そのため「倫理観が薄く利益追及本位の業界」と国民の製薬業界に対するイメージは悪い。信頼を回復するためには、日本製薬工業協会(製薬協)が不祥事を起こした会員企業に対し厳しい罰則を科す事も一策と思うので、気骨のありそうな多田正世新会長の英断に期待したい。

東京地検特捜部は厚生労働省の1月9日付告訴を受けノバルティスファーマ(ダーク・コッシャ社長)が製造販売中の高血圧治療薬「ディオバン」(一般名バルサルタン)に関する薬事法違反(虚偽・誇大広告)事件容疑で同本社および京都府立医科大学など関係先の立入り捜査や関係者の事情聴取などを行なっていたが、遂に6月11日、一連の事件で当初から疑惑の中心人物と見られている白橋伸雄同社元社員を薬事法違反容疑で逮捕した。

白橋容疑者は、同社に自社開発の高血圧治療薬「ディオバン」医師主導臨床研究を京都府立医科大学、東京慈恵会医科大学、滋賀医科大学、名古屋大学医学部、千葉大学医学部の各附属病院で実施した際に身分を隠して同臨床試験に参加しデータ解析を担当。

白橋容疑者は「ディオバン」が他社製造販売の高血圧治療薬と比べて本来の高血圧治療効果以外に脳卒中や狭心症の予防効果も高い事を裏付けるようなデータに不正操作を加え改ざんし、平成22年から同23年頃に各大学の臨床研究責任者および論文執筆医師達に提供。

各大学は白橋容疑者が不正操作で故意に作成した改ざんデータから「ディオバン」が他の高血圧治療薬より優れた効果を持ち、更に脳卒中や狭心症の予防効果もあると結論付けた論文を作成、世界的権威の医学専門誌に掲載させた。

ノバルティスファーマは白橋容疑者改ざんデータを根拠に執筆された不正論文を「ディオバン」販促広告活動に利用して年間売上高1,000億円超の業績を達成。

しかし、同社の真の狙いは平成25年特許切れになる主力品「ディオバン」代替品として平成22年から国内販売を開始したディオバンとカルシウム拮抗薬配合の新しい高血圧治療配合薬「エックスフォージ」売上高伸長を図る販促策と考え不正論文作成に取組んだ模様。

ところが、京都府立医科大学を皮切りに東京慈恵会医科大学、滋賀医科大学で次々とデータ改ざんが発覚し3大学首脳陣の陳謝会見と論文撤回不祥事に発展、各大学の臨床研究に「大阪市立大学非常勤講師」の肩書で参加、データ解析を担当していた白橋容疑者の存在がクローズアップされ、逮捕に至った。

白橋容疑者はデータ不正操作による改ざん容疑を否認しているが、同氏参加の「ディオバン」臨床研究を実施した5大学には総額11億3,000万円もの奨学寄付金がノバルティスファーマから提供されており、その実態解明も今後の捜査対象となる事は確実。特に最多の奨学寄付金3億8,170万円を受取り「ディオバン」PRに積極的だった京都府立医科大学・松原弘明元教授の責任は重く、捜査の核心人物と見られている。

一方、厚労省諮問機関「有識者検討委員会」(森嶌昭夫委員長)から「データ改ざんと不正論文のディオバン販促活動利用行為は企業ぐるみ疑惑が強い」と厳しく認定された通り、今後はノバルティスファーマの社長はじめ各担当役員、営業・MR責任者、広告宣伝企画・広報責任者および実行者らが厳しく責任を追及される事になろう。

白元(間瀬和秀社長代行)は、このほど業績悪化により経営破たんに陥り、5月29日付で東京地方裁判所に民事再生手続き開始を申請し受理された。負債総額は255億円で、同日付同地裁の弁済禁止保全処分および監督命令により、腰塚和男弁護士(東京まどか法律事務所)が監督委員に選任された。

一方、白元は5月29日開催の取締役会で6月1日付の鎌田真社長辞任、並びに間瀬和秀取締役の社長代行就任など新経営首脳体制を議決した。同社は6月3日午後2時から東京・芝のメルパルクホールで債権者説明会を開催、平成26年3月期決算で赤字62億円、負債総額255億円による事実上倒産状況を説明、民事再生手続申請を発表した。今後は腰塚監督委員と間瀬社長代行が協力しながら事業再建に向け全力で取組む計画。だが、信用失墜した同社が再建を果たすためのハードルは極めて高く前途多難。

白元は大正12年1月にナフタリン系衣類防虫消臭剤の製造販売を目的に創業者・鎌田泉氏が「鎌田商会」を設立。その後、昭和25年1月に法人化し「株柱ウ」に社名変更。

パラジクロルベンゼン系衣服用防虫剤「パラゾール」、ピレスロイド系衣服用防虫剤「ミセスロイド」、カイロ「ホッカイロ」、保冷枕「アイスノン」、家庭用マスク「サニーク」などを販売して各事業部門とも順調に発展した。特に創業者・鎌田泉社長が自らテレビCMに出演、自社の主力商品PRに務め知名度を高めたことは当時マスコミで話題になった。だが、同社は平成18年3月期決算で赤字68億円を計上、初めて経営危機が表面化した。原因は主力商品のカイロや防虫剤、保冷剤などを主力販路の大型チェーンドラッグストアに押し込み販売を行ない、安売りされて大幅減益になったこと。さらに、多数の新規参入企業と販売競争激化でカイロや保冷剤など主力商品売上げが大幅減収した影響により、平成25年度3月期売上高は約304億円と大幅に低下した。このため、新製品開発目的で提携した原材料仕入先企業の住友化学に資金援助を求めて第3者割当増資を実施。その頃から経営内容は一層厳しくなった。

上場失敗でカイロ事業売却

資金繰りに行き詰まった白元は、安売り競争で収益減のカイロ事業を本年1月に興和(三輪芳弘社長)に売却し、その譲渡資金により経常改善に努めたが、時既に遅く破たんへの道を歩んだ。

苦しい経営状況の中で同社は本年3月13日に取引金融機関を集めて本年三月期決算の最終赤字と自己資本ゼロの見通しを示し、今後に向けた経営打開策を金融機関と協議したが不透明会計処理が発覚して協力を得られず、自力再建も断念して民事再生法申請を選択したもの。

民事再生法の今後の予定は、@債権届出期限(本年7月3日)A財産評定書・報告書の提出期限(同7月28日)B認否書の提出期限(同7月31日)C再生債権の一般調査期間(同8月7日〜14日)D再生計画案の提出期限(同8月27日)。

 鎌田社長は創業者・鎌田泉氏の孫で慶応義塾大学卒、米国ハーバード大学留学の4代目エリート社長として就任。当初は米国仕込みの経営法で新規事業や新商品開発で事業発展に貢献したが、一方で自民党参院議員の丸川珠代氏とのロマンスなど派手な私生活がマスコミをにぎわせていた。

同社の経営悪化が表面化した平成18年頃から株式上場を考え、大規模な宣伝広告資金や新製品開発資金の獲得を目指し、ファンドから上場資金調達に乗り出したが更に経営悪化を招き計画倒れに終わった。そのため、債権者の中には、老舗企業「白元」を潰した4代目エリート社長の甘い経営姿勢に憤りを示す者もいる。

薬業界の幽霊団体「日本一般用医薬品連合会」(一般薬連。上原明会長)は、このところ真夏並の暑い日が続き幽霊出番と勘違いして活発に動き始めた。「上原明会長の名前しか見えない実体なき幽霊団体」と言われないように幽霊の脚″りに取組み、無理やり幽霊団体の実体を形成しようと悪あがきしている。なんとか形骸が出来たら日本OTC医薬品協会の屋上屋団体に化けてとり付き、やがてOTC薬協を乗っ取り、一般薬業界に君臨する恐ろしい謀略がその裏に秘められている。

日本OTC医薬品協会の有力会員企業各社トップは幽霊団体を操り一般薬業界君臨の野望を剥き出しにした上原明氏(大正製薬会長)と対決、その化けの皮を剥ぎ取る勇気と行動力が何故持てないのだろうか? 負け犬のように陰で不平不満をぼやいている間に、日本OTC医薬品協会はもとより日本医薬品直販メーカー協議会、全国家庭薬協議会、日本漢方生薬製剤協会、全国配置薬協会の5団体が幽霊団体傘下にとり込まれ、将来的には団体名のみを残し形骸化される事だろう。

この幽霊団体の暴挙に最初に気付き、無意味な屋上屋団体設立を咎めたのは日本製薬団体連合会(日薬連。内藤晴夫会長=当時、木村政之理事長)だった。ところが、上原明氏、鶴田康則氏(日本OTC医薬品協会理事長=元厚生労働省審議官)らが強引に幽霊団体設立への協力を要請、「反対するなら日薬連加盟5団体の脱会も辞さない」と恫喝した。

日薬連は加盟団体数減で運営資金不足の状況だから、加盟5団体脱退により年会費賦課金など合計2302万円の減収は痛手で避けたいところ。日薬連は幽霊団体首謀者の兵糧攻めに屈服して幽霊団体設立を不本意ながら黙認せざるを得なかった。

しかし、そこまで幽霊団体設立に執着する目的は何か? 多くの業界関係者が指摘する意見を要約すると

  1. 幽霊団体会長に長期就任して叙勲を受ける事
  2. 天下りポスト創設
  3. 政治的ロビー活動資金集め

などの見方が最も多く、設立の大義は全く感じられなかった。

だが、個人的な勲章ねらいや天下りポスト新設に利用される5団体会員会社は堪らない。特に中小企業会員が大半を占める5団体だけに、屋上屋の無意味な幽霊団体傘下に組込まれ、新たな会費や出資金を負担させられる事態は決して望まないはずだ。

5団体のリーダー達は、これ以上中小企業会員に経済的負担を掛けないように、余り関係ない幽霊団体から即刻脱会して本来の家庭薬、漢方薬など一般薬業界秩序確立に立ち戻るべきだろう。

本紙平成25年10月15日付第418号掲載の社説で「日本一般用医薬品連合会」(上原明会長)と自称する迷惑な幽霊団体の不当な正体を暴露して即時退散を要求したが、まだ未練がましく薬業界内で無気味に出没している。

その幽霊団体は今も「上原明会長」の姿しか見えず、団体活動に不可欠な会則、会費、職員など具体的内容が全て不明で、所在地だけ明記。その住所は、あわよくば取り付いて乗っ取る計画の日本OTC医薬品協会(吉野利昭会長)所在地と同じだから驚く。

OTC薬協会の有力加盟社トップ達は薄気味悪い幽霊団体の動きに固唾を飲んで見守っているが、「このままではOTC薬協を乗っ取られてしまうのではないか」と危機感を抱き、幽霊団体除去策に乗り出した。

OTC薬協の主な加盟社トップが幽霊団体に強い拒絶反応を示している理由は、同団体が屋上屋の無意味な重複団体であり、新たに設立する必要性が全く認められないからだ。

また、幽霊団体が案内パンフレットに掲げている同団体設立趣旨@一般薬業界の大同団結Aセルフメディケーションの普及促進などは現OTC薬協会の母体「日本大衆薬工業協会」(大衆薬協)結成の大義名分である。

当時の大衆薬協は前身団体「大衆薬懇談会」(津村重舎会長。昭和46年発足)「大衆薬協会」(森下泰会長。同55年発足)を経て昭和60年(1985年)3月19日に再編成し結成された。設立目的は「大衆薬に関するあらゆる業界機能を有し、行政当局や関係団体とも積極的な対応を行なう。その目的のために大衆薬業界が大同団結し、一枚岩の大衆薬業界組織基盤作りに取組む」との命題実現のため。加盟企業96社で同年4月1日に発足、初代会長は上原昭二氏(当時の大正製薬渇長)が就任。その後の会長は主力構成業態の新薬企業グループ、直販薬企業グループ、家庭薬企業グループの代表会社が1期(2年)〜2期間のペースで順次交代し就任する事になった。また、同団体初の天下り*員として昭和60年10月2日、厚生省大臣官房審議官の新田進治氏(故人)を理事長に迎え、サンケイ新聞社政治局次長出身の新井誠専務理事(故人)と異色の名物コンビ執行部が協会使命実現に活躍、現在のOTC薬協の組織基盤を築き上げた。

また、幽霊団体は日本製薬団体連合会(日薬連)との連携強化を主張しているが、幽霊団体加盟団体に上げられている日本OTC医薬品協会、日本医薬品直販メーカー協議会、全国家庭薬協議会、日本漢方生薬製剤協会、全国配置薬協会の5団体は既に日薬連加盟団体であり今更幽霊団体のお世話になる必要もない。

どうしても一般薬関係5団体を一本化する必要性があるならば幽霊団体の下ではなく、本来の基幹団体「日本OTC医薬品協会」組織内に連合体として加盟させる事が正当である。そうすれば5団体が日薬連に支払っている会費賦課金(合計年間2302万円)の節約にも役立つ。

ともかく、OTC薬協を幽霊団体に乗っ取られないように、一般薬業界団体は大同団結して欲しい。

吉野敏昭ロート製薬椛纒\取締役社長兼COO

吉野敏昭ロート製薬椛纒\取締役社長兼COO

現在、一般用医薬品業界で最も注目されているビッグな人物はロート製薬椛纒\取締役社長兼COO吉野俊昭氏(日本OTC医薬品協会会長)に他ならない。万年不況の一般用薬業界で何故かロート製薬業績は右肩上がりの好調で卸・小売企業からの信頼も厚い。次々と発売する新商品もヒット商品に成長して信じられない程の成功を収めている。その新商品も得意分野の一般用薬だけではなく、医薬品メーカーが最も不得手とする化粧品分野にまで幅を拡げ見事に成功させるのだから驚きだ。一見柔和な表情から誰もが親近感を持つ人物だが、営業一筋で叩き上げロート製薬トップに君臨している才能は計り知れない。新商品開発に取組む若い社員のやる気や能力を最大限に発揮させるためにフラット組織化を図り社内環境整備に努力するなど非凡な実力が垣間見える。そこで阿由葉孝本紙編集局長が直撃インタビューを試み、吉野俊昭社長の経営術極意に迫った。

発想転換で新商品開発

――ロート製薬は新製品の数が多い事で卸・小売企業に好評ですが、次々とヒット商品を生み出す秘けつは何ですか?

吉野社長 当社の製品開発が活発になったのは近年です。それまでは缶入りの胃腸薬から始まって、その10年後に目薬を発売し、しばらくは胃腸薬と目薬の2商品を販売するワンブランド本舗に近い家庭薬メーカーの歴史が長く続きました。昭和50年(1975年)にメンソレータム社(米国)から日本でも知名度の高い皮膚用軟膏剤「メンソレータム」ブランドを取得し、商品展開も胃腸薬、目薬に続き、皮膚用軟膏と拡大しました。そして、このメンソレータム製造技術を何か生かせないかと考え、最初はハンドクリームを製造しました。

それから化粧品を開発してみたいと考えました。そして化粧品訪問販売会社と化粧品製造メーカーを買収しました。その当時の大手化粧品メーカー関係者から「ロート製薬が化粧品を発売するのですか?お手なみ拝見しましょう」と言われましたが、案の定、見事に失敗しました。

――なるほど、初めから順調に成功したわけではないのですね。でも、「失敗は成功の元」と言われるように成功させた努力は見事ですね。ところで、ロート製薬のスキンケアなど化粧品シリーズは、他社品と違う特長があるのですか?

吉野社長 当社の化粧品は訪販会社が販売しているような、いかにも高価そうなパッケージデザインの化粧品開発は考えていません。化粧品はリーズナブルプライスでエビデンスの確立した中味が大事だと考えました。製薬会社の医薬品を服用すると頭痛が直り、熱が下がる。それと同じようにロート製薬の化粧品を使用すると、肌の調子がよくなり、改善されるなどの効果がある化粧品を開発しようと決めて出発しました。

当初は商品開発面で知恵を絞るのが大変でしたが、社内の若い女性社員からユニークなアイディアや意見が続々出て、ロート製薬にふさわしい化粧品が次々と生まれるようになりました。

また、市場売上高が限界点に達した成熟市場のカテゴリーがありますね。例えば、風邪薬や水虫薬など今さら参入しても既存商品で満杯だから入り込む余地がない。効果が高い新成分でないと需要者も増えません。現状以上の市場拡大が難しいカテゴリーでも、新しいアイディアで切り口を変えると伸長する事もあります。社内女性社員の話では水虫に悩んでいる女性が意外に多いそうです。

水虫薬の購買実態調査によると、女性は自分が水虫患者である事を恥ずかしがり隠します。例えばドラッグストアに自分のための水虫薬を買いに来ても、「お父さんに頼まれたんだけど・・・」と言い訳をしますね(笑い)。水虫薬は、そのぐらい「不潔なおじさんの薬」イメージが強いのですよ。そこで当社は水虫薬の「不潔なおじさん」イメージ除去作戦に徹底的に取組みました。商品イメージを変えるためにパッケージデザインも明るいパステルカラーにして女性好みの配色でイメチェンを図りました。

また、水虫薬のテレビCMも女性の声で「私も水虫になっちゃった」とナレーションを入れ、水虫患者になった事は別に恥ずかしくないと思い込ませるように試み、水虫薬への誤った認識を払拭しました。その結果、若い女性も堂々とドラッグストアで水虫薬を購入するようになりました。

この様に、一般薬販売は新しい有効成分がなくても、発想を多少変え新しい切り口で消費者にアピールすれば販売高向上も期待できます。

フラットな組織作りを目指す

――ロート製薬がアイディアにより新製品を次々と開発し新市場を開拓して業績拡大に成功している要因がわかりました。ところで、新商品を生み出すヒントは何処から出るのですか?

吉野社長 新商品のアイデアは生活実感の中からヒントを得て検討します。机上で安易に考える商品アイディアではありませんよ。商品は家族全員で使用するもの、個人的に使用するものに分かれます。例えばハンドソープやティッシュペーパーなどは家族全員で同一商品を使用できますが、歯磨きや化粧品などは個人ごとに使用する商品も異なります。それぞれの商品に対する生活者のニーズを感知し新しいアイディアが生まれます。

また、消費者の潜在的ニーズを引き出す商品開発のほか、商品の中味についても最大限の努力をしなくてはいけません。その積み重ねにより結果的に当社の新製品品目数が増大しているのではないでしょうか。

――よくわかりました。でも、製薬会社が化粧品や衛生雑貨品分野に進出しても成功例は少ないが、ロート製薬の場合はどうして成功したと考えていますか?

吉野社長 社内組織の仕組みが他社と違うからでしょうね。当社は山田邦雄会長が社長当時からフラットな組織作りを目指して努力しています。普通の会社組織はピラミッド型が多いですが、ピラミッド型組織では、アイディアを提案しても課長、部長、担当役員、常務、専務と下から順に提案説明をしなければなりません。そのために途中色々と反対や批判が出て最終決裁の場までなかなかたどり着けないのですよ。

途中で潰される理由は、若い社員の提案を理解できない上層部の人達が、自分の価値観で判断して潰してしまうわけです。

「製薬企業として、こんな商品は無理だよ」と、昔からの伝統的価値観で否定したら、若い社員の新商品開発意欲は消えてしまいます。逆に「なかなか面白いね」と評価された場合は、上層部から背中を押された気分で更にモチベーションが高まり、自信を持って新商品開発に取組むでしょう。

再生医療分野に挑戦

――吉野社長は新製品開発で自分の感覚、判断に疑問を持ったことがありますか?

吉野社長 はい、あります。私は30歳代の頃に、若い社員の開発した新製品目薬「ロートG」のデザインを見て、「こんな医薬品らしくないデザインの目薬は絶対売れないよ」と言ったら、その商品が大ヒットして売れたんですよ(笑い)。

30歳代の私が若い社員の発想やセンスを理解する能力に欠けていたわけですね。私はその時に今までの自分の成功経験や常識的感覚から物事を判断したらいけない。間違って失敗する恐れもあると深く反省し、肝に銘じました。

――今後力を入れたいと考えている新商品分野はどんな領域ですか?

吉野社長 胃腸薬、目薬を主力商品に定着させて、今後はスキンケアなど化粧品分野に本格参入したいですね。化粧品売上高はまだ規模が小さいですが倍増ペースで伸びています。そこで化粧品事業に本格的に取組んでみようかと考えています。

当然、当社商品に対してライバル各社も新製品やブランド品を対抗販売してくるので今までのように倍増ペースの売上高伸長は望めないと思いますが、当社の若い社員を中心に新感覚のスキンケアや化粧品類を開発し、若いユーザー向けに展開していきたいと思います。

既存の大手化粧品メーカー製品とは切り口の異なる新製品を開発して勝負できればと考えています。「世の中はそんなに甘くないよ」と言われるのは覚悟の上で挑戦するつもりです。

――その他の新しい取組みは?

吉野社長 昨年からオープンにしていますが、新しい事業を計画しています。一つは非常にレベルの高い再生医療の分野ですね。iPS細胞を山中伸弥京都大学再生医科学研究所教授が発見して大きな話題になりましたが、この分野は我々が手を出したいと思っても難しいですよ。特に当社は医療用医薬品事業を行なっていないから更に大変です。もちろん、医療用薬事業に参入するほどの資金力もありませんよ。でも、再生医療の中で例えば腎細胞を増殖させるための培養技術で特許を取得できるのではないかと考えて、そういう関連技術を持ったベンチャー企業とパートナーシップを組んでいきます。

また、当社は点眼薬中心にアイケア商品を展開し、目の健康維持に力を入れております。そこで自分の脂肪から取れる肝細胞を培養して細胞再生により角膜移植を行なう研究に取組みたいと計画しています。従来は他人に不幸があった時に、その人の角膜を移植させてもらうしか方法がなかったのです。しかし、自分の細胞から作った細胞角膜を自分の目に移植できれば抵抗もなく大変よいと思います。世界中で角膜移植の機会を待っている多数の患者に福音をもたらす、画期的な事業ですから、ぜひ取組みたいと考えています。

高度医療提供施設の開設を検討

――もう一つは総合医療として高度な医療レベルの部分から非常に身近な部分まで幅広い形で、生活者に健康を提供したり、支えていく事業があるのではないかと考え再生医療に取組んでいきたいと思います。

ビジネスとしては、関西空港近くの広大な土地を使用して、パートナーの医療機関と共同で展開する高度な医療です。例えば末期がん患者医療で痛みの緩和処置、治療や入院生活の精神的ストレス解消など患者のために必要な医療を行なう施設を設立したいですね。また、病気で食欲が低下している患者により美味しい食べ物を提供するなど、余り制限にしばられないで患者が自由に楽しく入院生活が過せるような医療施設を考えています。

――末期がん患者施設のホスピスとは違うのですか?

吉野社長 そういう一面も含めた多面的な医療施設ですね。人工透析患者はカリウムを含む生野菜が食べられませんね。そこでカリウムが少ない生野菜を栽培して人工透析患者に提供すれば喜ばれますよね。そういう事も行なう医療施設です。後略

日本薬剤師会(日薬)代議員の良識が久々に立ち戻り正常な判断を示した事に医薬品業界関係者の多くが満足している。2月23日開催の日薬臨時総会で行われた次期会長(候補)選挙は不正行為の”黒い疑惑”に包まれたまま非常識にも4選目を狙う現職日薬会長の児玉孝氏(大阪・66歳)と、「児玉氏の傍若無人な暴挙を阻止する者はいないのか?」という業界世論に背中を押され大義のために出馬した東京都薬剤師会(都薬)会長の山本信夫氏(東京・63歳)の一騎打ちになり、日薬代議員の良識が事前の「児玉氏優勢」下馬評を覆し山本氏勝利に導いた。

会長選当初の下馬評は児玉氏が現職3期(6年間)の強味を発揮して80票対70票で優勢との票読みだった。ところが、投票日直前になり情勢は急変、首都圏から東北・九州へと全国的に山本支持層が拡大して、投票結果は山本氏89票、児玉氏60票と、山本氏が29票の大差で逆転勝利を収め次期日薬会長に当選した。

今回の日薬会長選結果は、まさに日薬代議員の蘇った良識による自浄作用に他ならない。”黒い疑惑”に包まれた児玉会長のもとで失われた開局薬剤師の信頼と権威を一刻も早く回復しなければと思う日薬会員の危機感が、「児玉会長四選阻止! 日薬の権威回復と執行部体制改善」の大義名分に基づくマニフェストを掲げ出馬した山本氏支持へ大きく傾いた。

山本新会長(候補)はオール薬業界期待の逸材であり、かつては中央社会保険医療協議会(中医協)委員として活躍。海外活動も評価されているグローバル開局薬剤師。今年6月に日薬会長として正式就任後は大義のマニフェストを実行して日薬の権威回復と日薬執行部刷新による運営改革の大作業に取組んで欲しい。

特に児玉会長時代の6年間に失われた開局薬剤師の信頼を取戻すため児玉派執行部体制を刷新、日薬体質改革に取組む山本会長派執行部体制を早急に構築する事が肝要。

さらに、平成23年8月に元日薬副会長の秋葉保次(東京)、石川達郎(静岡)、工藤義房(長野)3氏が児玉孝日薬会長に提出した「児玉氏の不正行為にかかわる”黒い疑惑”」への公開質問書に対する回答が不明瞭のまま放置されているので、改めて児玉氏に説明を求める必要がある。もし児玉氏が義務を果たさない場合は日薬から追放するぐらいの強い決意を持って改革に臨まなければ、山本新会長のマニフェスト実現も難しくなるだろう。

日薬会員のみならずオール薬業人が期待している山本日薬会長の運営手腕に注目したい。

山本信夫日薬次期会長候補

山本信夫日薬次期会長候補

日本薬剤師会(日薬。児玉孝会長)は1月22日〜23日の両日、東京・東陽町のホテルイースト21東京で第82回臨時総会を開催した。22日は日薬新会館建設問題や日薬運営方針など当面の会務につき協議、翌23日午後1時50分から全国の薬剤師および医薬品関係者が注目している日薬会長選挙を行なった。立候補者は4選を狙う現会長の児玉孝氏(66歳)と東京都薬剤師会(都薬)現会長の山本信夫氏(63歳)両人による激しい一騎打ち。その結果、「児玉孝会長4選阻止と日薬運営方針改革」の大義名分を”錦の御旗”に掲げ出馬した新人・山本氏が見事初当選。山本氏は本年6月開催の日薬総会で承認を得てから次期日薬会長に正式就任する。先の児玉会長3選立候補当時、同会顧問の秋葉保次(東京)、工藤義房(長野)、石川達郎(静岡)3氏(元副会長)が児玉会長の旧悪(平成15年に社会保険金80万円不正請求行為)を告発したにもかかわらず、日薬代議員は”黒い疑惑”に包まれた児玉会長3選を無投票で許し、日薬の良識と自浄機能低下が世論の厳しい批判にさらされた。それから2年後、日薬代議員の良識はやっと戻り正常に機能した。

日薬会長選挙は児玉・山本両候補者の出馬所信表明後、同会代議員149人(1人欠席)による投票が行なわれ、直ちに開票の結果、委任状を含む有効投票数で山本氏が89票獲得、児玉氏の60票を大差で上回り次期会長候補に選任された。

山本氏は6月29日開催予定の日薬定時総会で承認を受け正式に日薬会長に就任する。それまでは引き続き都薬会長職を務める。

なお、日薬会長選挙直前に行なった山本氏の所信表明要旨は次の通り。

  1. 最近の薬剤師を取り巻く環境は非常に厳しい。地域の「かかりつけ薬局」として一生懸命働いている薬剤師が、いわれなき非難を社会から受けている事に腹が立つ。今後は薬剤師の信頼回復を図り一般社会から認められる環境を築き上げたい。薬剤師の仕事は、薬局を通じて医薬品を地域住民に安全な情報と共に供給すること。この使命を確実に果たせば、薬剤師に対する国民の信頼を取戻す事が出来ると思う。
  2. 私が当選し日薬会長に就任できた場合は、まず、薬剤師のために働きたい。それは日薬が薬剤師のための団体だから当然の事。また、日薬の役割は地域医療提供体制の一翼を担う薬剤師が胸を張って働ける環境整備を行なう事と認識している。そのため共にチーム医療を組む医師会・歯科医師会はじめ厚労省など諸官庁当局、さらに医薬品メーカー・卸などと良好な関係を構築しないと、日薬は国民の信頼を得られないと考える。
  3. 日薬会館建設は私の夢であり、恐らく日薬会員全体の夢でもあると思う。しかし、日薬会館建設に当たっては、後世に過大な負担を残さないで、自慢できるような会館建設方法を考え、迅速かつ慎重に取組んでいきたい。
  4. 私が今回、日薬会長選挙に立候補を決意したのは多くの方々に背中を強く押された結果だから、その人達の期待に応えたい。また、私が日薬会長に就任した場合は、都道府県薬剤師会の支援や意見を幅広く取入れて日薬運営に取組んでいきたい。

なお、会長(候補)選挙で当選した山本氏は「皆様の温かい支援で日薬会長選挙に当選できた。一方の児玉会長に投票した60人の方々は”山本に任せて大丈夫か?”と不安を感じていると思うので、今後、会長任期2年間しっかり仕事をして実績を築き、満点はともかく、合格点を戴けるように努力したい」と抱負を述べた。

日本薬剤師会(日薬)会長選挙は“黒い疑惑”に包まれた児玉孝現職会長の非常識な四選出馬表明で、日薬会員のみならず製配販オール薬業界から「児玉会長四選反対」の大合唱が沸き上がった。この“天の声”に背中を押され大義のために立候補した山本信夫氏(東京都薬剤師会会長)は2月22日〜23日両日、東京・東陽町のホテルイースト21で開催される日薬臨時総会の会長選挙に向け激しい一騎打ちを展開している。現状は「児玉会長四選阻止!! 日薬の権威回復と体制改革」の大義名分を“錦の御旗”に掲げ決起した山本氏が東京都中心に首都圏から東日本、さらに九州地区拠点に西日本へと全国的に支持層を拡大して若干優勢。今、山本候補を支持する輪が全国的に大きく広がっている原因は何か? 阿由葉孝夫本紙編集局長が山本氏を直撃インタビューして、その秘密に迫った。

もし、当選したら何を行なう計画か?

山本氏 もし、皆様の支持で私が当選出来たら、薬剤師のために粉骨砕身働きたい。日本薬剤師会は全国薬剤師の集う職能組織である存在感を示したい。同時に薬剤師が働いている薬局、ドラッグストア、医療機関などにも強い関心を示さなければいけないと思う。薬剤師は医師と異なり施設がなければ働けない。だからこそ薬剤師の在り様と働く施設の両方を考えた施策が必要。そうしないと、我が国の働く薬剤師の総元締めである日本薬剤師会の存在感を示せない。

日薬が「オール薬剤師の会」として存在感を示すためには、どうすればよいのか?

山本氏 薬剤師個々の努力は当然の事、薬剤師とチームを組む医師会など医療関係団体、医療制度を設け施行する政治家や行政当局などとの関係を馴れ合いでなく一定の緊張感を保ちながらも相互信頼が確立されて良好な関係を構築する。

現在の状況は?

山本氏 少し綻びを感じる医療関係団体との関係修復が急務である。

日薬執行部体制改革については?

山本氏  地域の問題を的確に把握できる執行部体制作りが緊急課題。広く国内の意見を聞き、都道府県薬剤師会の協力を得ながら将来の人材育成が出来る執行部体制を築く事。つまり、「人作り、基礎固め、組織再生」を目的とした組織運営が肝要。

懸案の日薬会館建設問題については?

山本氏 過大な負担や負債が残らないように日薬会員の英知を結集して、将来自慢できる夢の日薬会館建設に慎重かつ迅速に対応すべきと思う。

平成24年に行なわれた前回の日本薬剤師会(日薬)会長選挙は世にも不思議な結果で世間を驚かせた。全国約10数万人余の薬剤師会員を有し伝統と権威を誇る日本薬剤師会現職会長・児玉孝氏が平成15年に違法調剤報酬で社会保険金80万円不正請求行為を犯していた事実が、当時「正義の三銃士」と話題になった同会顧問(元副会長)の秋葉保次(東京)石川達郎(静岡)工藤義房(長野)三氏により告発された。

一般社会の常識では、不運にも公職者の旧悪が露見した場合、謝罪して引責辞職する事に決まっているが、「日本薬剤師会」という特殊社会の常識は一般社会と全く異なり、過去の不正行為を告発された児玉会長が同23年8月開催の通常総会で自ら不正行為を認め一言陳謝しただけで全て不問となり一件落着、児玉会長の辞意表明もなかった。

これには医薬品業界関係者のみならず一般社会も唖然とさせられた。当然、当時のマスコミ(本紙平成23年9月15日第389号1面記事掲載)や世論から「日薬総会に出席した代議員約150人はじめ約10万人余の同会会員は自浄機能も良識も失い、事の善悪さえ判断能力がない無気力集団と化したのか!?」と、厳しい批判を受けたが、誰も反論せず不気味なほど沈黙を続けた。

その間に"黒い霧"に包まれた児玉氏は、秋葉氏ら元副会長三氏の公開質問状にも回答せず、無投票で日薬会長に就任、筋書通り3選を果たした。

しかし、世論は厳しかった。"前科"のある児玉氏を無条件で会長に再々選した「日本薬剤師会」と称する薬剤師職能団体の権威と良識に疑問を抱く声が徐々に高まり、日薬への社会的評価は日増しに下落して「医師と看護師がいれば薬剤師は不要」とさえ陰で言われるぐらいに医療現場での存在価値も低下しつつある。また、日薬の不人気は日薬組織票を基盤とする藤井基之参院議員選挙にも少なからず悪影響を及ぼした。

だが、その責任者である児玉日薬会長は自らの立場を反省するどころか、1月9日の日薬会長会見で、なんと4選出馬を表明、薬業界中が仰天し耳を疑った。しかも4選出馬理由は「自分が中途半端な状態で会長職を投げ出したら日薬会員や全薬剤師に対して申し訳ない」と、空気が読めないどころか見当違いも甚だしい。三期6年間も会長職に居坐り、これ以上何をやろうという積りなのか。約10万人余の日薬会員中で会長職が務まる人材は自分しかいないと思い込む感覚の異常さには呆果てる。

しかし、前回の日薬会長選で児玉氏を無投票当選させた無気力な日薬会員は今回も児玉会長4選を黙認するのか、と思っていたら、1月30日に東京都薬剤師会会長の山本信夫氏が「多くの人達に背中を押されて」と大義のために立候補を表明した。山本氏は早くから日薬会長の器と評価されていたが健康上の理由で待機し今日に至った。日薬副会長当時は中央社会保険医療協議会(中医協)委員を務め、また、アジア薬学連合(FAPA)副会長に就任、英語の得意なグローバル薬剤師として国際的にも評価されている逸材。佐谷敬一元会長以後"12年間の空白"を埋め、日薬改革に取組む新会長に最適任者だ。

山本信夫東京都薬剤師会(都薬)会長は1月30日午後6時から都薬会館で記者会見を行ない、任期満了となる児玉孝日本薬剤師会(日薬)会長の後任会長選挙への出馬を宣言した。思えば平成24年実施の日薬会長選挙で現職会長の児玉孝氏は3選目指して出馬した。だが、その頃児玉氏は社会保険費80万円不正受領事件を元副会長三氏(秋葉保次、工藤義房、石川達郎)から告発され、当時の中西敏夫元会長が児玉氏に会長職を継続させるために同事件の隠蔽工作を図った事実も中西氏本人の告白で明らかになった。"黒い霧"に包まれた児玉氏は日薬総会で一言謝罪しただけで三選へ出馬し当選。これには誰もが驚き、児玉氏以上に日薬会員の非常識と無気力に対し厳しい批判が集中した。今、児玉孝会長4選出馬の暴挙に対し、山本都薬会長出馬を促し背中を押す世論が高まっているのは、出馬の「大義」が山本氏にある確証といえよう。

山本都薬会長の発言要旨は次の通り。


  1. 私は本日開催の都薬理事会で日薬会長選立候補を承認された。明朝、日薬に立候補届けを提出する。都薬会長の立場で日薬会長に立候補することになるが、都薬理事会で「よし、行ってこい」と満場一致の支援をいただいた。私がもし日薬会長に当選した場合は都薬会長を期満了となる来年6月まで兼務するが、その後は日薬に専念して活動する。日薬会長選への立候補は、私自身が以前から日薬運営体制について色々な事を考えていたが、昨年夏頃から色々な人達に日薬会長選出馬へ向け背中を押されるうちに日薬会長選への出馬意識が高まってきた。そしてこの1週間考え悩んだ結果、昨日多くの人達の期待に応え出馬する事を決意した。

  2. 現行の日薬執行部運営体制に不満や批判があるから立候補するのかというと、同じ薬剤師として役割や目標は同じだから必ずしもそうではない。立候補の決心に至ったのは、多くの人から出馬を促され背中を押された背景に大義を感じたこと、将来を担う若い薬剤師が働きがいのある環境を今から整備したいと考えたこと、そのために私なりに考えた新しい日薬の組織運営体制作りを行ないたいと思ったから。

  3. 私が目指すのは「透明で、わかりやすく、納得のいく日薬運営」。医療のインフォームドコンセントのように年齢、性別、地域を問わず全国薬剤師の声を出来るだけ吸い上げて、お互いが納得できるまで話し合い、そのうえで日薬が前進できる体制を築きたい。少しスピード感は落ちるかもしれないが、多くの声を聴きじっくり策を練ってから優先順位を付け、今必要な項目から集中的に推進すれば政策は効率的に実施出来る──など。

SKYN

新コンドーム"SKYN"

不二ラテックス(伊藤研二社長)は1月15日午後2時から東京・中央区日本橋の新光ビルで新素材コンドーム新製品発表会を行なった。

冒頭、伊藤社長が「オーストラリア・アンセル社開発の新素材ポリイソプレンを使用した新コンドーム"SKYN"を日本国内で発売する事になった。この新素材は@柔らかいA薄いB丈夫 ──三大特徴を持ち、人肌感触の心地よい理想的コンドームに仕上げて日本のユーザーに提供したい」と述べた。

続いて岡本昌大同社代表取締役専務は新製品内客や販促活動について説明、その要旨は次の通り。

  1. ポリイソプレンコンドームは世界ナンバーワンのシェアを占めている。その人気の秘密は従来品に比べ約1.5倍柔らかく人肌感触に近い
  2. かつて「コンドーム王国」と言われるほどコンドーム使用率が高かった日本人は今、世界的にも低い使用率。その最大理由は「コンドーム使用感が自然な性感を損ねる」とのこと。しかし、新素材コンドームは柔らかい人肌感触なので使用している事も忘れるほど全く使用感がない
  3. したがってコンドーム使用率が上昇してHIV・エイズなど性感染症患者数の増大傾向を抑制、さらに望まない妊娠による悲劇も減少される
  4. 同品パッケージデザインがおしゃれで、女性の購買意欲を刺激する
  5. 新素材ポリイソプレンは医療用具にも広く使用され安全性の高い優れた品質が証明されている──など。

不二ラテックスは世界30ヵ国で発売され、各国でトップシェアを獲得している新素材ポリイソプレンコンドーム「SKYN」の本格的な日本導入により、初年度販売目標6億円(シェア約3%)、3年後に10億円(シェア約5%)獲得を目指し、総合コンドーム専門メーカーの地位固めに取組む計画。

そのために同社は、新製品「SKYN」発売と同時に大規模な販促活動を展開する。内容は@大量のウエブ広告展開A首都圏対象に30万人への「SKYN」(1個入り)サンプル配布B販売店の店頭ディスプレイコンクール、POP広告C「極上のひととき」(高級レストラン食事券、高級ホテル宿泊券など)プレゼント消費者キャンペーン──などを実施。

同品発売日は3月19日全国一斉。主な販売店は全国のドラッグストア、コンビニおよびインターネット通信販売。

▽「SKYN」=同品は新素材イソプレンラバー採用の装着感、ぬくもり、安心感を高レベルで実現した高機能のラグジュアリーコンドーム。

▽包装・価格(税込み)=10個入りA価1,800円、5個入りA価900円。

主な特長は

  1. 肌の柔らかさとほとんど同じで、装着していることを忘れる気持ちよい自然な肌触りを実現

  2. ブラックとゴールド基調のデザイン性高いパッケージ

  3. 従来コンドーム素材と異なる「インプレンラバー」という医療用機器にも使用される天然ゴムアレルギーフリー素材採用

  4. 標準的厚さのラテックス製コンドームと同等強度を確保──など。

今年は安倍政権の経済政策「アベノミクス」効果が期待出来る見込みで、久々に明るいムードの新年幕開けを迎えた。確かに昨年末の平均株価は16,291円31銭(終値)、1ドル105円15銭と記録的な株高・円安に沸き「アベノミクス」効果が大企業から中小企業まで全国的に波及して、やっと景気回復の春が訪れそうだ。

昨年末の日本銀行発表による全国企業短期経済観測調査でも景気判断目安の大企業製造業景況感が4四半期(1年)連続で改善。中小企業も非製造業が約22年ぶりにプラスに転じ、大企業中心だった景気回復の波が中小企業にも広がっている。

また、日本の主要企業トップ30人へのアンケート結果でも「景気回復」の先行き見通し回答が圧倒的多数を占めた。更に4月の消費税率3%引き上げ影響についても「ほとんどない」との回答が大半を占め、景気回復に冷水の不安もないようだ。2020年の五輪・パラリンピック東京開催まで好況景気が続き、念願のデフレ脱却も実現する見通し。

今年は医薬品業界の景気を左右する薬価改定・診療報酬改定の年だが、「アベノミクス」と五輪景気でカバーされる事を見込み、例年ほど深刻なムードが感じられない。

しかし明るい話題ばかりではない。昨年マスコミを賑わせたノバルティスファーマの降圧薬「ディオバン」臨床研究データ改ざん事件が厚生労働省の東京地検告発方針で刑事事件に発展、今年は同地検の本格的捜査活動が予想される事から、早くもノバルティスファーマ社の関連責任者や臨床試験に参加してデータ改ざん疑惑の元社員2人に対する逮捕Xデーなど無責任な話題が業界関係者に衝撃を与えている。

厚労省の告発内容はノバルティスファーマが不正な改ざんデータに基づく虚偽論文を同社発売降圧剤「ディオバン」の販促活動に利用した行為が薬事法違反(虚偽・誇大広告)に該当する疑い。だが、地検捜査の進展状況によっては「ディオバン」臨床研究を実施した5大学(京都府立医科大、東京慈恵会医科大、滋賀医科大、千葉大医学部、名古屋大医学部)の責任者、「ディオバン」販促宣伝活動を実施した医学・医療専門誌・紙の出版社責任者などにも波及する可能性が強く予断を許さない状況と見られている。

更に大学や出版社の地検による強制捜査過程で他の大手製薬企業の同種違反行為が発覚する事もあり得ると危惧されている。

国民から「倫理観の薄い薬九層倍業界」と今も見られている医薬品業界は、この機会に衿を正し「同じ穴のむじな」と批判されないように各社がコンプライアンスを厳守して国民の信頼回復に努力すべきだろう。

一方、一般薬のネット販売も今年活発になるだろうが、都道府県当局の監視体制も不充分な状況で、どんな副作用事故が発生するかも計り知れない。何事もない事を祈念するばかりだが、一般薬でも国民の信頼を裏切る事に至らないよう各企業の慎重な対応を期待したい。

根津会長

根津ぱぱす(株)会長

時流に乗った薬店経営

——今回は根津会長の履歴書調べから始め、ドラッグストア業界ナンバーワンのダンディボーイを丸裸にする企画ですから覚悟してくださいよ(笑い)。それではドラッグストアを志した動機と、「下町の生活便利店ぱぱす」のキャッチフレーズで都内下町地域中心に店舗展開を行なった理由は何ですか?

根津会長 そんなに改まられると困りますね(笑い)。ドラッグストアを始めたのは特別立派な志があったわけでもなく、単なる生活の知恵ですよ。子供の頃に東京・根岸の下町で育った私は、家庭環境が複雑で経済的にも貧しかった。

都内高校を卒業後すぐに東京・銀座の松屋百貨店に就職した。毎日平凡な売場に立ちながら何か儲かる仕事はないかと考えていた時にドラッグストア開業を思いつきました。そこで27歳の時に松屋を退職、東京医薬専門学校を卒業して薬局勤務の父と一緒に昭和47年、東京・足立区梅田で小さな薬店を開業、当時の(株)クリエイトエス・ディー(創業者・山本久雄氏)などの店作りを参考に見様見真似で経営しました。都内下町を中心に店舗展開したのも、自分が生まれ育った馴染みの街だから、土地勘もあり仕事がしやすいと思っただけですよ。

それでもなんとか薬店営業が軌道に乗り、平成元年に念願の本格的ドラッグストア「ぱぱす」第1号店「谷中店」を東京・台東区谷中銀座に開設しました。その後は「お花茶屋店」(葛飾区)「石島店」(江東区)「一之江店」(江戸川区)「西新井大師店」(足立区)「緑三丁目店」(墨田区)「ときわ台店」(板橋区)「上野店」(台東区)「西尾久店」(荒川区)など都内下町地域重点に次々とドラッグストア「ぱぱす」を出店しました。それに伴い売上高も順調に伸びて、平成7年50億円から同10年100億円、同12年150億円、同20年370億円、同25年462億円と倍増ペースで右肩上り急成長を続けています。

——第1号店開設から驚異的なハイペース伸長ぶりで、不況知らずの快進撃ですが、何か経営の奥義でもあるのですか?

根津会長 そんなもの、あるわけないでしょう(笑い)。要するに時流に乗って成長したわけだから、運が良かっただけですよ。ラッキーだったね。それに加えるとしたら、社内の人材に恵まれた事ですよ。私の経営スタイルは部下に経営を任せる事ですから、私が採用した人材の能力に応じ頑張ってもらいました。また、業界環境も最高に良かったですね。売上高300億円ぐらいまでは、出店した店が全て目標以上の売上高を上げました。

もちろん、その間に何もしなかったわけではないですよ。POSレジやEOS発注を導入したり、平成10年には調剤部として般堀薬局を開設、さらに本格的な調剤薬局「ぱぱす薬局」を西麻布店、蒲田店、三鷹店、浦安店、高輪店、青山店、月島店など本拠地の都内下町以外の地域に次々と開設して、新たな調剤事業にも挑戦しました。

経営能力限界の500億円で引退へ

——でも、これほど順調な経営を続けている「ぱぱす」を手離しマツモトキヨシグループに譲渡したのは何故ですか?

根津会長 私は自分の能力で経営出来る限界の企業規模を年間売上高400億円から500億円位までと常に考えており、その限界に達したら引退しようと思っていました。マツモトキヨシグループに株式を譲渡したのは、「ぱぱす」の企業規模が私の経営能力限界に達したからです。また、私には事業後継者となる実子がいないので、自分の企業を継続させる必要もなかったのですよ。ただ、従業員と会社を守る責任はあるので、将来的に生き残れる企業との合併を選択しました。当時、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)会長の松本南海雄(株)マツモトキヨシ社長に出会い、その人柄や経営理念に敬服して平成18年(2006年)7月に「(株)ぱぱす」株式を譲渡し(株)マツモトキヨシグループ傘下に入りました。

——マツモトキヨシグループ盟主の松本南海雄氏に口説かれて根津会長は「(株)ぱぱす」合併を決意したそうだが、松本氏の魅力とは?

根津会長 1番大きな魅力は信頼感ですね。肝が太く腹もすわっていて、決断力や強い勝負根性もあり実に男らしい魅力的な人物ですね。それでいて反面は優しくナイーブな性格。だがシャイで人見知りするタイプだから初対面の人には誤解されやすいですね。当時は水面下で数社から合併交渉を持ちかけられていたが、私は迷わずマツモトキヨシグループに決め、JACDSの中国市場視察途上で松本氏に回答を伝えました。この決断に誤りはなかったと、今も確信しております。

新社長はマツキヨから

——根津会長は「(株)ぱぱす」経営者としての役割を卒業して、新たな「ぱぱす」の取組みが出来る人材をマツモトキヨシグループから迎えて新社長に就任させる考えですか?

根津会長 はい。「(株)ぱぱす」トップ人事の流れは今後そうなります。

——根津会長らしい鮮やかな引き際ですね。今後は(株)マツモトキヨシホールディングスの松本南海雄会長兼社長や松本清雄副社長の補佐役として活躍されるのですか?

根津会長 私の出番があれば働きますよ。でも、好きなゴルフ三昧の生活をしたいですね(笑い)。

——まだ隠居の歳ではないでしょう(笑い)。JACDSでも執行委員長としての活躍が高く評価されていますけど、どんな役割ですか?

根津会長 端的に言うと私は宗像守JACDS事務総長のサポート役ですよ。JACDSは発足当初から松本南海雄JACDS元会長と宗像事務総長と私の3人で相談しながら運営してきました。その名残りが今も続いているわけですよ。この役割も早く後進に譲りたいと考えています。

——JACDSの今後については、どのように見ていますか?

根津会長 これからはJACDS役員の世代交代を進めて、若い会員の執行部参加を呼びかけないといけませんね。ただ、宗像事務総長だけは当面、変えない方がよいと思っています。将来的には事務総長交代の時機が到来するかもしれませんが、現在は宗像事務総長に変われる人材はいませんからね。彼の実務能力は役人よりも高いですよ。JACDSのためには不可欠の人物ですね。 JACDSは創立以来14年経過したが、これまで様々な業界問題に対応、解決してきました。JACDSが存在しなかったら様々な難問にも対応出来ず、現在のドラッグストア業界の繁栄もなかったかもしれません。先の薬事法改正時にもJACDSが色々な業界側の要望や提案を行ない、登録販売者や一般薬リスク別3分類などの画期的制度が導入されました。

——確かに改正薬事法制定から施行までのJACDS活動は見事でしたね。もし、JACDSが存在しなかったら現行薬事法の内容に改正されなかったかもしれませんね。この立役者は誰ですか?

根津会長 やはり、宗像事務総長の功績が大きいと思いますよ。宗像事務総長は改正薬事法内容が決定するまで、色々な草案を当局に提出しました。「宗像レポート」なるものが何回提出されたことか。その結果、宗像レポート提案通りに改正薬事法が制定されました。一般用医薬品の第1類医薬品、第2類医薬品、第3類医薬品のリスク別3分類は宗像事務総長発案によるものです。

——宗像事務総長のハイレベルな能力は厚労省担当官からも評価されていますが、JACDS内部ではどうですか?

根津会長 宗像事務総長の能力は誰もが認めています。だからJACDSは彼の力を借りる必要があると私は強調しているのです。JACDS活動の代表的役割は松本南海雄元会長を中心に行なってきました。私は執行委員長として宗像事務総長をサポートしながら調整役を務めてきました。

——JACDS会員の中で上場大手チェーンドラッグストア企業トップが運営に参加し活躍すれば、もっと活性化して対外的にも存在感や発言力を高められると思うが、どうですか?

根津会長 その通りだと思いますね。現在、上場大手チェーンドラッグストア企業の「トップ会」を定期的に開催していますが、全社のトップが出席する事は希れですね。しかし、JACDS活動には協力的ですよ。

森信氏(ナチュラル(株))の常任理事昇格へ

——かつて「NIDの暴れん坊」と言われた森信JACDS理事(ナチュラル(株)社長)は、昨年の一般用医薬品ネット販売ルール化問題でネット販売業界団体代表者と激しい論戦を展開し大活躍されました。その功績を評価して常任理事登用の声もあったが、その後どうなりましたか?

根津会長 将来的には森理事の常任理事昇格は必ずあると思いますね。今回彼に協力してもらいとても感謝しています。非常に真面目に問題を捉えて対応しました。彼の熱血漢ぶりは”買い”ですね。JACDS内部で活躍してもらうと大変強い味方になります。しかし、外部の立場では意見が激しいから誤解を受ける場合もありますね。

——一般用医薬品ネット販売問題は新販売ルール決定で、ネット販売出来ない要指導医薬品制度が創設され28品を選定して一件落着となりました。JACDSとしては今後の対応策をどのように考えていますか?

根津会長 一般用医薬品ネット販売問題は誰もが納得するところに納まったのではないですか。想定外の内容は何もなかったです。ネット販売出来ない商品が28品目残ったが、この商品はスイッチ直後の23品目と劇薬指定品目5品目だから想定内です。三木谷浩史楽天会長兼社長は、スイッチ直後品目の「3年間ネット販売禁止」に猛反対したが、「国民の安全性無視」と社会的に批判され逆効果を招き沈黙しましたね。しかし今後は医薬品ネット販売会社がドラッグストアと営業的に競合することは間違いないです。そこでJACDSも医薬品ネット販売対策を検討していく計画です。

——医薬品ネット販売会社の影響度については、どのように見ていますか?

根津会長 アマゾンなどは低価格販売を行なうため、ドラッグストア価格への影響はありますね。高額医薬品販売はネット販売会社が有利になるような気もします。アマゾンは即日配送で、品揃えも医薬品だけではないですからね。医薬品はドラッグストア店頭以上のアイテムをそろえ展開するから相当の脅威を感じますね。今後、医薬品のネット販売動向を注目したいと思います。

——医薬品ネット販売では、薬の副作用など安全性問題や大量購入による不正使用問題など様々な課題も多いですが、どのように対応する考えですか?

根津会長 そのために一般用医薬品ネット販売新ルールを設定しましたが、それでも怪しげなインターネット業者や医薬品メーカーが出てきます。行政当局は、しっかり取締まらないといけませんね。アメリカの場合は偽薬が横行して困っていますよ。日本でも同様の問題が必ず出ると思いますね。チェーンドラッグストアが薬のネット販売を行なう場合は、慎重に対応するつもりです。

——「ぱぱす」とマツモトキヨシグループは、医薬品のインターネット販売を行なっているのですか?

根津会長 「ぱぱす」は薬を除いた商品で行なっていますが、今のところネット販売は全く売れていませんね。マツモトキヨシは薬を一部行なっていますが、まだ売上げは少ないようですね。

——本年4月からの消費税率3%引き上げの影響については、どのように予想していますか?

根津会長 マツモトキヨシグループは、消費税率アップ対策の駆け込み需要を見込み準備を行なっています。品目ごとに駆込み需要が起きる商品と起きない商品を把握し、駆込み需要のある商品は在庫を備えて欠品を起こさないようにしています。

粋で格好良く生きたい

——消費税率3%アップ前後の混乱についてはどう思いますか?

根津会長 消費税率アップ前の駆け込み需要と実施後の買い控えは当然起きると思いますが大きな混乱はないと考えています。売上高も3月の駆け込み需要と4月の買い控えで差し引き平均化すると見ています。

——今、生活の中で一番大事にしている事は何ですか?

根津会長 健康維持ですね。健康なら色々な事が出来ます。これからもゴルフをしたい、夜の銀座に遊びに行きたい。更に仕事もしたいですからね(笑い)。自分がいつまで必要とされるかはわかりませんが、それまでは健康を維持して頑張りたいと考えています。

——根津会長の生き方は?

根津会長 特別な能力がないから、自然体で業界の流れに乗り生きてきました。ドラッグストア業界に入ってからも経営面で大変幸運に恵まれましたね。

——ドラッグストア業界で尊敬している人物はいますか?

根津会長 沢山いますよ。松本南海雄マツモトキヨシホールディングス会長兼社長、山本久雄クリエイトエス・ディー会長、鶴羽樹ツルハホールディングス社長、才津達郎サンドラッグ会長など、企業を大きくして成功させた人達を尊敬しています。これらの人達は非常に光るものを持っていますね。

——根津会長も「ぱぱす」を創立して年間売上高500億円企業に発展させたが、成功の秘訣は?

根津会長 一言断わっておきますが、私は「ぱぱす」で成功したとは思っていません。現に今「ぱぱす」経営スタイルが転換期を迎えています。ここまで来られたのは、変化対応の経営方法がうまくいったと思います。要するに時流に乗って発展しただけですよ。

——根津会長の生き方に周囲から満足度の高い幸せな人生だと思われていますが、自分ではどのように思いますか?

根津会長 人生の満足度は上を見ても下を見てもきりがないが自分ではそれなりに幸せな人生だと思っています。70%満足だが、残り30%は優れた能力を欲しかったね。でも、余り高望みしないで自然体に生きました。子供の頃から貧乏が嫌いで、常に粋で格好よく生きたいと考えていました。

本年は自民党が3年3か月ぶりに民主党から政権を奪回して強力な安倍晋三内閣によるデフレ・円高脱却政策推進で久々に明るいムードの1年だった。安倍内閣の経済政策「アベノミクス」効果で100円台円安・株高が実現、景気回復兆候も見えている。しかし、来年4月には消費税率アップが実施され、せっかく盛り上がった「アベノミクス」ブームに水を差さないかと気になる。

本年は1月に始まり年末まで継続した出来事が2件もあった。1件は1月11日の最高裁による「一般用医薬品のネット販売を禁止した改正薬事法省令は違法で無効」との判決で幕を開けた一般薬ネット販売騒動。即座にネット販売業者は第1類・第2類一般用医薬品のネット販売に踏み切り野放し状態となった。厚生労働省は「一般用医薬品ネット販売新ルール検討会」を設立、2月14日に第1回会合が開催された。

しかし、ネット販売賛成派と反対派が互いの意見を主張するだけで何も決まらず、安倍内閣の政治的決裁により28品目(スイッチ後3年未満で安全性が確立していない23品目と劇薬5品目)を除く全ての一般用医薬品がネット販売可能となった。ベネフィット(有効性)とリスク(副作用)両面を持つ医薬品を闇サイトなど反社会的人間がインターネットで顔の見えない使用者に販売する危険性は計り知れないほど大きい。国民の生命や健康を守る安全性よりも利便性や経済成長を優先させた安倍内閣の規制緩和政策が、来年どのような結果を示すか注目したい。

もう1件は、今年の本紙新年号で巻頭を飾った「新春ビッグインタビュー」企画に登場したノバルティスファーマ(株)社長・三谷宏幸氏が「ノバルティスファーマを日本で最も尊敬される企業にしたい」と強調したが、年末の今、同社は真逆状況にあり苦難の道を歩んでいる。

同社は降圧薬「ディオバン」(一般名バルサルタン)医師主導臨床研究を京都府立医科大、東京慈恵会医科大、滋賀医科大、千葉大医学部、名古屋大医学部など5大学で実施、降圧効果以外の効能もあるようにデータを改ざんし、その論文を「ディオバン」販促宣伝活動に利用した、との疑惑を持たれている。同社から「ディオバン」臨床試験を実施した5大学には総額11億3290万円の奨学寄附金が提供され、同社元社員2人も参加している事から一層疑惑を深めた。厚労省は同社を薬事法違反容疑で東京地検に刑事告発する方針を固めた。

だが、今回のノバルティスファーマ事件は一般社会から“氷山の一角”と見られており、失った国民の信頼回復に日本製薬工業会が中心となり取組むべきだろう。

武田薬品工業(長谷川閑史社長)は11月30日、次期社長にクリストフ・ウエバーGSKワクチン社社長兼ゼネラルマネジャーならびにGSKバイオロジカルズ社CEOを招へいすると発表。国内大手製薬企業としては初の外国人社長就任で注目されている。また同発表会見の各報道機関案内も同日未明(深夜零時過ぎ)で午前9時から会見など対応も異例。なお、ウエバー氏は来年4月までにCOO(代表執行責任者)として武田薬品に入社し、6月開催予定の定時株主総会および取締役会で承認後に代表取締役社長COO就任予定。同時に長谷川社長は代表取締役会長CEO就任予定。

長谷川社長は「ウエバー氏の幅広い事業経験と高い実績は今後の当社グローバル戦略のさらなる強化と展開加速化に大きく貢献することを期待している」とコメント。

同社は今回の目的について、ナイコメッド社買収を通じて獲得した世界70か国における自販組織をフルに活用してグローバル製薬企業として持続的成長を実現するために事業のあらゆる面で競争力を持つ企業へ変革する取組みを進めるためと説明。

今年1月に最高裁が第1類・第2類一般用医薬品のインターネット販売禁止を定めた厚生労働省省令は「違法で無効」と判決して以来、安全性と利便性のバランスで国論を二分する議論が展開された医薬品ネット販売是非論争に、やっとピリオドが打たれた。

政府が11月13日に閣議決定後、国会に上程した薬事法改正案は第1類一般用医薬品の中で医療用医薬品からスイッチされて3年以内の安全性が確認されていない23品目と劇薬5品目を除く全品目のネット販売解禁だった。

安倍首相は本年6月に日本再興戦略の中で経済成長戦略推進の一環として規制改革に積極的に取組む方針を打ち出し、その“目玉”に何故か一般用医薬品ネット販売全面解禁策を強調した。その裏には政府の産業競争力会議で民間議員を務める三木谷浩史楽天会長兼社長の影響力があると推測されていた。

したがって「一般薬ネット販売全面解禁ありき」の安倍政権による経済成長戦略推進で押し切られた結果になったが、最も副作用リスクの高い28品目だけでもネット販売を禁止できた事は現在の野放し状態に最低限の歯止めを掛けたわけで、不幸中の幸いと考えるしかない。

また、医薬品専門家検討会で「そもそも医薬品の安全性問題を経済成長政策の規制改革の場で議論する事がおかしい。医薬品はネット販売になじまない製品だ」と全面解禁に反対した良識ある薬学者達や、自民党内で「経済的な利便性より人命に関連する安全性を優先すべきだ」と医薬品ネット販売全面解禁に反対を主張して安倍首相に抵抗した勇気ある議員達に敬意を込めて拍手を送りたい。

一方、医薬品ネット販売全面解禁により楽天のネット販売ビジネス発展を目論んでいた三木谷同社会長兼社長は想定外な政府決定に野望を阻止されて怒り狂い、マスコミに向け「安倍首相の判断は納得できない。もし薬事法改正案が国会で成立したら産業競争力会議の民間議員を辞任、訴訟を提起して一般用医薬品ネット販売全面解禁を求める」とわめき立て、安倍首相を厳しく批判した。

だが、自分の意見通りにならないから産業競争力会議の民間議員を辞任すると息巻く三木谷氏に対する社会の目は冷たかった。「まるで駄々子みたいな男で、産業競争力会議のような公の仕事には不適格」「自社のネット販売業界に利益誘導を考えて産業競争力会議の民間"族"議員になっているのか兵利便性やビジネス優先の姿勢は民間"族"議員だ」「何様のつもりだ。辞めたいならさっさと辞めろ歩」など自民党内やマスコミ評論家から一斉に三木谷氏批判の声が上がった。同じ頃にプロ野球・楽天チームの日本シリーズ優勝セールで、楽天運営ネット販売サイト「楽天市場」の割引率偽装販売が発覚、三木谷氏は重ねて社会の批判を浴び、ネット販売ビジネスに対する国民の不信感も高めた。

今後はドラッグストアや薬局が改正薬事法を順守し正しい販売を行なうことだ。

ノバルティスファーマ(二之宮義泰社長)製造販売高血圧症治療薬「ディオバン」(一般名バルサルタン)医師主導臨床研究におけるデータ改ざん疑惑事件は、厚生労働省諮問機関「有識者検討委員会」(委員長‖森嶌昭夫名古屋大学名誉教授)が9月30日に調査結果中間報告書を発表した事で真相不明のまま一段落を迎えた。

しかし、同報告書内容はノバルティス社から総額11億3290万円の奨学寄附金提供を受け同社「ディオバン」臨床試験を実施した京都府立医科大、東京滋恵会医科大、滋賀医科大、千葉大医学部、名古屋大医学部の五大学中で京都府立医科大、東京滋恵会医科大両校が研究論文結論はデータ改ざんによるものと指摘し論文を撤回した事から、ノバルティス社に不正論文を利用した「ディオバン」販促宣伝活動の薬事法違反疑惑もあると認定、厚労省の強制調査を要請している。

その後、滋賀医科大も柏木厚典教授(同大副学長、同大病院長)を研究責任者として平成15年から同18年まで約150人の糖尿病を伴う高血圧症患者対象に臨床試験を実施、「ディオバン」が他社製剤に比べ腎臓保護効果の高い事を結論付けた。その論文は平成19年に米国の糖尿病専門誌に掲載されたが、同大の研究行動規範委員会調査結果によると、高血圧症患者90人分について同論文と照合したところ血圧などのデータ約15%がカルテ記載数値と異なっていた。滋賀医科大の馬場忠雄学長、服部隆則副学長らは10月31日に記者会見を行ない、データ改ざんの疑いを認め同論文の撤回も示唆して謝罪、頭を下げた。

同大はノバルティス社から奨学寄附金6550万円の提供を受けており、また「ディオバン」臨床試験には例の同社元社員2人組(一部マスコミ報道によると白橋伸雄氏と部下)も参加。

ノバルティス社「ディオバン」臨床試験を実施した5大学中で3校がデータ不正操作を認め不正論文撤回に踏み切った事態を重視した厚労省は、有識者検討委員会の中間報告を受けノバルティスファーマの徹底調査実施と共に、再発防止策として臨床研究対象の不正行為に対する罰則を含む新法規制定を検討する方針。

一方、薬害オンブズパースン会議(代表・鈴木利広弁護士)は11月1日、ノバルティスファーマを薬事法違反(誇大広告)と不正競争防止法違反(誤認させるような虚偽表示)の容疑で東京地検に刑事告発した。これまで厚労省や各大学の調査で明らかに出来なかったデータ改ざん実行者と目的解明、およびノバルティス社元社員2人組の関与事実などについて真相究明が検察当局に委ねられた。

医薬品業界団体は長い年月の間に数多く乱立し屋上屋を重ねる複雑な構成で増殖してきた。しかし、その大半は医薬品産業が行政管轄官庁の過保護産業だった時代に行政主導により設立された癒着の産物。団体の必要性や機能性よりも行政官庁幹部の天下りポストや民間企業側の叙勲申請窓口としての機能が優先目的だった。

その結果、地域別団体、業態別団体、団体調整団体などが次々と設立され、それに伴う団体活動も重複し、人、時間、資金投入も重なって混乱や非効率面が多々表面化した。

その後、時代は変わり医薬品産業も行政の保護産業から脱却して民間主導時代に移り、業界のあり方や業界団体の枠組が議論されるようになった。

数ある業界団体に重複加盟している企業各社は人・時間・金の非効率な無駄遣いを改革するため、平成14年10月に業界団体合理化プロジェクトを設立、検討結果を同15年1月28日付で日本製薬団体連合会(日薬連)に提出した。

この答申を受けて当時の藤山朗日薬連会長、竹中登一東京医薬品工業協会(東薬工)会長、田中登志於大阪医薬品協会(大薬協)会長らが同15年2月14日午後3時から東京・日本橋本町の本町記者会で記者会見を行ない、「日薬連、東薬工、大薬協三団体を対象に具体的合理化に取組み、順次各団体の取捨選択を行ない新たな業界団体の枠組を構築する」と宣言した。

主旨は調整団体と業態別団体の機能を見直し、不必要な団体はリストラ解散させて人・時間・金の無駄遣いを省き合理化に取組む事である。その意向は若干色褪せてきたが今も業界内で生きている。

ところが、2年前の平成23年7月22日に「日本一般用医薬品連合会(上原明会長)」と称する幽霊団体が突然表われ業界関係者を驚かせた。この団体は事務局も運営資金も何も持たず、日本OTC医薬品協会(OTC薬協)に寄生して団体活動を行なう計画で、まさに”人のふんどしで相撲を取る”魂胆。OTC薬協の人や金を遣い、その成果だけを一人占めしようとする設立意図にOTC協会員からも強い批判が噴出している。

この幽霊団体「一般薬連合会」は活動方針もOTC協と全く同じであり、屋上屋どころか砂上の楼閣に等しい無意味な重複団体だから早急に解散して医薬品業界から姿を消すべきだ。

ノバルティスファーマ(二之宮義泰社長)は、10月3日午後7時から東京・八重洲のベルサール八重洲で記者会見開催。 来日したスイス本社のデビッド・エプスタイン社長は同社高血圧治療薬「ディオバン」臨床研究のデータ改ざんを含む利益相反事件として製薬業界や一般社会から厳しく糾弾された事に対して深く陳謝するとともに「ディオバン」問題の認識ならびに追加対応策など次のように述べた。

  1. 日本で行なわれた医師主導臨床研究において患者様とご家族、医療関係者の皆様はじめ多くの方々に大変ご心配とご迷惑をおかけしたこと、臨床研究の信頼性を著しく損なうとともに、日本社会の不利益につながる事態を引き起こしたことについて、ノバルティスグループ本社代表として今回の事案を大変重く受け止め、心よりお詫び申し上げる。
  2. 我々は、スイス本社の社内調査により日本において潜在的利益相反状態が発生している可能性があるとの報告を受け第三者の専門家に調査を依頼。その結果、利益相反状態があったこと、関与した社員と社内体制のどこに不備があったのかが判明した。ノバルティスファーマは真摯に再発防止策に取組んでおり、既に様々な再発防止策を実施している。プロモーション資材の審査プロセス厳格化、コンプライアンスガイドラインや医師主導臨床研究に関する手順、その他法令や社内ガイドラインに関する社内教育の徹底など。
  3. 三谷宏幸前社長は9月30日付で退職した。同社長からは3月に退職願が提出されたが、本件調査が終わるまで留任させた。
  4. 追加的処分は、
    1. 日本における最高経営責任者である二之宮義泰社長と石川裕子ノバルティスホールディングジャパン社長について、利益相反状態を見過ごしてきたことを反省する意味で今回事案の帰趨が明らかになるまで30%減俸処分とする
    2. 日本のノバルティスのガバナンス強化のためグローバル本社チーフコマーシャルオフィサーであるエリック・コルヌート氏を日本のノバルティス会長に任命
    3. ノバルティスファーマに役員と社外専門家からなる再発防止委員会(委員長は社外専門家に要請)を設置する。今後は、二之宮社長とコルヌート会長が協力し、再発防止委員会の助言を得ながらコンプライアンス向上に向け全力を挙げる。
  5. ノバルティスが今回の事案に関わったことについて重ねてお詫びするとともに、新経営チームが会社全体のコンプライアンスと企業倫理向上に全力で取組む

──など。

現在、厚生労働省のもとで一般用医薬品をインターネット販売する場合に、需要者の安全を守るために必要な新しいルール作りが各界代表者グループによって協議されている。特にスイッチOTC薬の場合、インターネット販売による利便性よりも、需要者の生命や健康を薬害から保護する安全性確立の方が重要であり、優先事項であることは誰もが認識しているはずだから、正当適切な新ルール制定を期待している。

しかし、スイッチOTC薬の安全性問題はネット販売だけでなく店舗販売にも存在する。スイッチOTC薬が第一類の時は薬剤師管理で安全性も確保されるけど、一定期間を経過して第二類に移行すると登録販売者も取扱えるようになり、ネット販売と同様の安全性ルール確立が登録販売者にも求められる。

それは登録販売者の資質であり、需要者が信頼して相談できる職能を有する登録販売者育成の教育制度確立だと思う。国が統一した登録販売者の継続教育を実施、講習者認定制度設立により登録販売者資格のステイタスを高め国民の信頼に応える登録販売者を育成する事が急務だろう。

そして継続教育認定制度と共に、登録販売者資格を自動車運転免許と同様に数年間で更新する事を義務付ける制度化も絶対必要だと思う。

生涯資格では教育講習を受けないで、医薬品取扱い者として資質に欠ける登録販売者が横行する事にもなりかねない。

現在、全国の登録販売者数は約13万人と推定されているが、資格取得後の教育状況も充分ではない。早急に全国統一の教育講習制度を設立すべきだ。できれば営利目的の民間企業ではなく国公立機関の教育施設による教育講習が望ましい。

全国の登録販売者が所属する団体は日本チェーンドラッグストア協会(JACDS。関口信行会長)傘下の日本医薬品登録販売者協会(日登協。樋口俊一会長)と、旧全日本薬種商協会系の全日本医薬品登録販売者協会(全薬協。岩元龍治会長)に二分され、互に対抗意識をぶつけあっている。

だが、登録販売者の資格向上や統一教育講習制度確立を本気で考えているなら両団体は早急に統合を図り、約13万人の巨大な統一組織作成に取組むべきだろう。全薬協から怨念の標的とされていた鎌田伊佐緒日登協会長が引退し、樋口俊一会長に代った今こそ両団体統合のチャンスかもしれない。

AJDチェーンは創立以来、「一社で出来ない事をオールジャパンドラッグ(AJD)組織の力で実行しよう」を合言葉に加盟社の団結を呼びかけ、地域密着型ドラッグストアとして生き残る事に取り組んできた。ところが、近年、「一社で出来ない事は何もない」と思い込み、マイペースで協調性に欠ける大規模加盟社の出現により内部に変化が生じ、AJDの盛衰など無関心で、地域密着型経営よりも全国制覇に野心を燃やす自己中心型経営を展開している。もはやAJDは、企業規模格差や経営方針のみならず、将来目標の方向性も大きく異なる加盟社の寄り合い組織に変わった。創立当初からAJDは規律の緩和な“仲良しクラブ”的運営方針がセールスポイントで、“なんでも許される親睦団体”との定評通り内部に別グループ組織も活動している変則的団体だったが、その“つけ”は巡って今、生き残りを賭ける大きな転換期を迎えたAJDに重くのしかかっている。AJDより一足先に崩壊の危機に直面しながら必死で踏みとどまった日本ドラッグチェーン会(NID。佐野訓久会長)の例を見るまでもなく、これまで順風満帆に発展してきたドラッグストアボランタリーチェーングループの前途に、にわかに暗雲が立ち込めている。

オールジャパンドラッグ(AJD。杉山貞之社長)は8月23日午前10時から午後4時まで東京・台場のホテルグランパシフィックで「2013年AJD秋季商品フェア」を開催。(中略)

また、加盟社の調剤業務導入が進展している事に対応、主要調剤機器メーカーを参加させ調剤関係機器展示。平成23年度のAJD加盟社調剤実績は取扱い処方せん枚数2200万枚、約2000億円だが、その後も調剤事業を導入する加盟社は増加しており、当然実績も大幅伸長が期待される。

調剤事業導入加盟社数増大に伴ってジェネリック医薬品利用度も高まっているが、取引メーカーは沢井製薬、テバ製薬両社のみ。理由は沢井製薬の品ぞろいが豊富で比較的高薬価品目が多い事。したがって、薬価差益のメリットも見込めるのが魅力的。

今回フェアの加盟社総売上高は169億4710万7944円(前年同期比7.35%減)で同24年秋季フェア総売上高より13億5010万円も減少。さらに同24年秋季フェア総売上高は182億9220万1116円(前年同期比8.53%減)で同23年秋季フェア総売上高199億9795万9416円(前年同期比5.7%増)より17億5075万円減少と、2年連続で合計30億5085万円も総売上高ダウンが発生している。

しかし、AJDチェーン執行部は、この非常事態を予期していたように冷静に受け止めている。昨年以来のAJDフェア総売上高減少の理由は明白だが、効果的対応策も浮かばず傍観するしかない状況にある。

フェア総売上高減少の最大原因は、従来同フェア加盟社買上高トップを毎回圧倒的数字で独占していたサンドラッグ(才津達郎社長。現会長)が、平成23年8月14日開催のAJD秋季フェアで37億4309万円買上げ断然トップの実績を示して以後、突然同フェアでの買上高4000万円に激減、従来に比べるとゼロに近い買上金額となった。

AJDフェア買上高トップに君臨していたサンドラッグが突然買上高を極端に減少させた理由について「同社の営業方針変更など社内的変革によるもの」「独自のPB商品開発ルートを整備したので、AJDフェアのPB商品買上げが不要になった」など色々な憶測が流れている。しかし、最も信頼できる筋の情報によると、平成24年8月から岸本一男AJDチェーン副本部長主導で実施されたAJDPB商品物流システム効率化プランによりAJD商品物流を医薬品中堅卸・大木(松井秀夫社長兼会長)に委託し、大木の物流センター配送に一本化した過程で、AJD執行部と才津サンドラッグ社長との間で何等かの思惑違いが生じ、AJD執行部に対する才津社長の不満や不信感が急激に高まり、AJDフェア買上げ意欲も著しく減少した結果と見ている。

だが、サンドラッグの才津社長は変人・奇人の評判通り、人付き合いが悪く、AJD役員に就任して団体運営に寄与した事もないため、高額のフェア買上高貢献度ぐらいしか評価されず、AJD内の存在価値は低い。そのフェア買上高もゼロ近くになった今、サンドラッグの居場所は極めて狭くなりつつある。

いずれにせよ、サンドラッグとAJD執行部との確執は意外に根深く、両者の関係修復も困難と予想する向きが多い。今後、サンドラッグが住商ドラッグストアーズ、ダルマ薬局などに続いてAJD退会へ踏み切るのかその去就が、注目されている。

会見会場

会見会場

ノバルティス ファーマ(二之宮義泰社長)は、7月29日午後4時から東京・丸の内の新丸ビルカンファレンススクエアで記者会見を行ない、同社製造販売の高血圧治療薬「ディオバン」(一般名:バルサルタン)医師主導臨床研究における利益相反問題の第三者調査結果について報告した。

冒頭、二之宮社長と三谷宏幸前社長らが記者団に頭を下げ陳謝したあと二之宮社長が次のように述べた。

患者様とご家族、医療従事者の皆様、国民の皆様に大変ご心配とご迷惑をおかけしたこと、日本で平成13年から同16年の間に開始された「ディオバン」の5つの医師主導臨床研究において当社元社員が関わり研究論文への開示が適切に行なわれなかったこと、これにより日本の医師主導臨床研究の信頼性を揺るがしたこと、当該論文を引用して「ディオバン」のプロモーション活動を行なったことについて深くお詫び申し上げる。
当社は今回の事態を深刻に受け止め社内調査ならびに第三者調査を行ない、このほど第三者調査が終了したので報告する。しかし、残念ながら調査結果は真相完全解明に至っていない。当社はこの件についてうやむやにすることなく判明した事実を誠実に開示したいと考える。今後、あらゆる調査に協力して真相解明に当たるとともに再発防止を徹底し、信頼回復に向けて不退転の決意で取り組んでいく。

−など。

第三者調査は、スイス・ノバルティス ファーマAG社から委託されたモリソン・フォースター外国法事務弁護士事務所伊藤見富法律事務所(外国法共同事業事務所)が4月から実施し7月5日終了。「ディオバン」に関する5大学の医師主導臨床研究(東京慈恵会医科大学、千葉大学、京都府立医科大学、滋賀医科大学、名古屋大学各大学で実施)について

  1. ノバルティスの業務内容
  2. ノバルティス元社員の関与
  3. 奨学寄附金など資金提供
  4. ノバルティス経営陣の認識などについて調査。

調査結果概要は

  1. 元社員は5大学の医師主導臨床研究に関与
  2. 元社員の関与を上司は認識し支援していた
  3. 元社員がデータの意図的操作、ねつ造、改ざんを行なった事実は認められなかった
  4. 上司が会社に有利な結果を出すためにデータ操作を指示した事実も認められなかった
−など。

その後、質疑応答に移り、会見終了予定時刻の午後6時を大幅に超過する午後7時30分まで質疑に応じたが、研究データが大学側にあり調査できないこと、元社員や当時の関係者の多くが退職していること、元社員の個人所有パソコンを調査できなかったことなど民間調査の限界で事件の真相に迫れなかった釈明会見と二之宮社長、三谷前社長の陳謝パフォーマンスで終了した。

京都府立医科大学と東京慈恵会医科大学で研究データの意図的改ざんが発覚、同社への疑惑は深まるばかりだ。

ノバルティス ファーマ(二之宮義泰社長)の高血圧治療薬「ディオバン」(一般名バルサルタン)に関する大規模臨床研究を行なった東京慈恵会医大調査委員会(委員長・橋本和弘同大医学科長)は7月30日に記者会見を行ない、同大研究論文に関する中間報告書内容を発表した。
それによると、

  • 論文責任者・望月正武同大循環器内科教授主導で研究を行ない、高血圧患者3,081人を対象に「ディオバン」を使用して血圧を下げる効果以外に、脳卒中や狭心症などへの効果を検証するため平成14年から同17年まで4年間、臨床試験に取組んだ。その比較データから「ディオバンは他の降圧剤に比べ脳卒中を40%、狭心症を65%減少させる効果があった」と結論、平成19年に権威ある英医学誌「ランセット」で発表した。
  • しかし、同大調査委によると、論文に使用された解析用データの血圧値と実際のカルテ記載値が異なるケースが多かった。また、約3,000人分のデータを再解析したところ患者群の血圧変化が論文と異なり、「論文は人為的に操作された」と認定。
  • そのため、同論文が脳卒中や狭心症などの予防に効果がある、との結論も「論文に欠陥があり、正しいかどうか判断できない」と指摘。
  • 研究に参加した医師たちは、「ノバルティス ファーマ元社員が単独でデータ解析したので自分たちは関係ない」と証言、元社員の不正行為を推測している。
一方、元社員は同大調査委に対し関与を否定しているが、調査委は「データの統計解析を行なった元社員によるデータ操作が強く疑われる」と指摘、同論文の撤回(取り消し)を決定。
橋本和弘調査委員長は「患者や研究者に多大な迷惑をかけ申し訳けない」と陳謝した。

第一幕の「一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会」は5月31日開催の第11回目で閉会した。一般薬ネット販売のあり方をめぐり賛成・推進派のネット販売企業団体代表者と、反対・慎重派の一般薬小売企業団体並びに薬剤師・医師・薬害被害者など医療関係団体代表者などが、それぞれの立場から意見を徹頭徹尾主張し合っただけで時間切れ終了となった。「同検討会は単なる“ガス抜きの場”に過ぎない」と見る向きも多かったが、その通りと思われても仕方ない幕引きだった。

何一つ決められなかった同検討会は各派代表意見を併記しただけの結論を第二幕の安倍内閣による政治決着の場に持ち込み関係閣僚が協議した。そして6月14日、「アベノミクス」経済成長政策である「日本再興戦略」を閣議決定し、その中で規制緩和の“目玉”として国民の関心が高い一般薬ネット販売原則解禁が発表された。これら一連の安倍内閣動向は東京都議会議員選挙向けパフォーマンスで、ネット販売業界の黒幕・三木谷浩史氏(新経済連盟代表理事)と安倍首相のシナリオ通りと推測され、第二幕も結果的には一般薬ネット販売賛成・推進派の戦略勝ち。

しかし、ネット販売業界側が望む一般薬全面解禁にはならず、医療用医薬品から一般薬へスイッチ直後の21品目、劇薬4品目、合計25品目については医学・薬学専門家による検討会を設置し医療用薬に準じた販売・使用方法のルール作りに取組む事が決定した。

舞台は第三幕に移り、いよいよ医薬品専門家の登場となるわけだが、常日頃「我々は薬の専門家集団」と自負しているマンモス学会の日本薬学会(柴崎正勝会頭)は、これまで一般薬ネット販売問題について公式見解を一切表明していない。

個人的見解としては、「医薬品は薬剤師の手を通じて患者さんと対話しながら販売すべきであり、ネット販売には反対だ」(柴崎正勝日本薬学会会頭、(財)微生物化学研究所長)と対面販売を強調。また、「現在、一般薬ネット販売を規制緩和政策の“目玉”にしたり、消費者の利便性ばかり議論されているのは誤りだ。その裏にはネット販売業者の利益追求意図が見え隠れしている。医薬品は家電製品と違い誰が使用しても同じ効果が得られる商品ではない。適正使用とセットで始めて安全性・有効性が保たれる商品だから単品では欠陥品になり得る。一般薬にもスティーブンス・ジョンソン症候群のように未だ発症機序が不明の生命に関わる重篤な副作用がある。万一の場合の副作用被害者救済制度も必要だ。規制緩和の目的は市場競争促進による経済活性化と思うが、一般薬売上高を伸長させる事は国民の“薬漬け”につながり、国民の健康福祉に好ましくない。もっと根源的な議論を深めて欲しい」(松木則夫東京大学大学院薬学研究科教授)と、一般薬ネット販売解禁を規制緩和の“目玉”にする安倍内閣政策を厳しく批判している。

「日本薬学会が賛否を表明すると政治活動になるから沈黙している」との説もあるが、国民の生命・健康を守るために薬専門家集団「日本薬学会」の決起を促したい。

「薬粧流通タイムズ社」ご案内

    編集方針

  1. 社会正義に基づく厳正中立な報道姿勢を堅持し、医薬品(一般用・医療用)を中心とするヘルスケア製品関連業界の健全な発展・育成に尽力することで、社会的貢献を果たす。
  2. 薬局薬店およびドラッグストアの“経営”に役立つ情報を正確に、かつ客観的に報道する編集を行う。
  3. 価値観の変動で多様化した生活者ニーズに対応する医薬品およびH&B(ヘルス&ビューティ)商品メーカー、薬局薬店・ドラッグストア、卸各企業の活動指針として先取りホンネ情報を提供する。
  4. 「健康・衛生・美容」の生活提案をメインテーマとするドラッグストアおよび薬局薬店・コンビニエンスストアに対し、医薬品、医療衛生雑貨、健康食品、健康機器、化粧品など幅広い取り扱い商品群の市場情報と、それに関連する各業界のメーカー、卸、団体および官公庁の最新重要ニュースを“横割り広角編集”で総合的に提供する。
  5. 医薬品およびH&B商品メーカー、卸、小売などの各企業、団体、学会、官公庁などの広報活動に協力、その目的達成に寄与する。
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全国有力ドラッグストア企業トップ座談会 第2部

2014年6月9日

全国有力ドラッグストア企業トップを招き4月9日午後6時から東京・大手町のKKRホテル東京で恒例の座談会を開催。第1部は4月1日からの消費税率アップに伴う駆け込み需要と、その後の買い控え予想、アベノミクス効果による景気回復、登録販売者団体一本化問題と樋口俊一日本医薬品登録販売者協会会長の政界出馬動向などについて熱心に議論、その内容を本紙平成26年4月15日付第425号に掲載し大きな反響を呼んだ。今回の第部は調剤併設事業と深刻な薬剤師不足、ドラッグストア勤務薬剤師会の日本薬剤師会併合問題と山本信夫次期日薬会長対応、オール薬剤師会結集で政治力強化構想、ボランタリーグループの今後、全国展開型大規模小売企業と地域密着型中小小売企業の生き残り策、ドラッグストアの返品改善問題について白熱の激論を展開。

日薬に全薬剤師会結集(根津氏)

根津氏

根津氏

──  JACDSのドラッグストア勤務薬剤師会は最近影が薄くなってしまったけど、現在どうなっているのですか?

根津氏  やはりドラッグストア勤務薬剤師会の自立は難しいですね。むしろ、日本薬剤師会(日薬)の中にドラッグストア勤務薬剤師会を作ってほしいと思いますね。日本薬剤師会新会長に就任する山本信夫氏(現東京都薬剤師会長)とは面識がないので、山本会長と親しい阿由葉さんに調整役をお願いしたいですね(笑い)。開局薬剤師とドラッグストア勤務薬剤師が別々の団体で対立してもお互い何もプラスになる事はないですからね。また、ドラッグストア勤務薬剤師会の会費はほとんど会社が負担していますから、個々の薬剤師はドラッグストア勤務薬剤師会への所属意識も低いですよ。一方、日本薬剤師会会員はほとんどが個人加入だから所属意識も高く組織的に団結できるのですよ。だから、私は日本薬剤師会組織中にドラッグストア勤務薬剤師会を設置する方が賢明だと思いますよ。登録販売者組織化も個人会員から会費を徴収し、その中から政治資金を捻出すると言っても、今は誰も賛成しないでしょう。同様に自前でドラッグストア勤務薬剤師会を設立しても、会員薬剤師が勤務する会社が会費を納入しているようではドラッグストア勤務薬剤師会の組織化や政治資金徴収など出来るわけないと思いますよ。

──  確かにドラッグストア勤務薬剤師の団結意識が低い現状では自立も難しそうですね。杉山社長はどう考えますか?

杉山氏  当社の薬剤師はノンポリが多いから、政治活動に関わっている社員はいないと思います。しかし、ドラッグストア勤務薬剤師会には加入しています。ドラッグストア勤務薬剤師会は個人ではなく店舗単位で入会するので、会費も余り高くないから会社が全額負担しています。最近よく当社の薬剤師が学校薬剤師の仕事を依頼されます。学校薬剤師は会社でなく薬剤師個人に依頼がくるので、会社側は業務に支障が出ない範囲で引き受ける事を条件に就業規則を見直すなど協力的に対応しています。その背景には個人営業薬局が少なくなり、依頼先がなくなってしまった訳ですね。地域によっては当社薬剤師が引受けないと学校薬剤師不在になってしまうこともあります。

根津氏  日本薬剤師会も同様な悩みを抱えていると思いますよ。だから、JACDSと一緒に日本薬剤師会組織をオール薬剤師組織に組み直すのが一番ですよ。

杉山氏  そうですよ。日本薬剤師会組織を合理的に整理してベクトルを一つの方向に集中した方が良いと思いますよ。

──  日本薬剤師会の実態は開局薬剤師集団ですから、その他の病院薬剤師会、卸勤務薬剤師会、学校薬剤師会、ドラッグストア勤務薬剤師会などを加えて職能別薬剤師団体の連合体に再編成すれば日本医師会以上の強力な政治的圧力団体になりますね。オール薬剤師の業権拡大、資質向上にも役立つと思うので実現を目指してください。

石田氏

石田氏

石田氏  JACDS勤務薬剤師と日本保険薬局協会(NPhA)薬剤師を合計すると相当な数になり、それだけでも大きな薬剤師団体になり政治力も発揮できますよ。

根津氏  そういう薬剤師団体にならないといけませんよ。日本薬剤師会執行部も社会の趨勢が変わっているのだから「チェーンドラッグストアは嫌い」なんて言っている場合ではありませんよ。開局薬剤師の意見をオール薬剤師全体の意見と錯覚されては困る場合もあるからね。JACDSは日薬と対決を望んでいるわけではないし、ドラッグストア側の意見も日薬の中に取り入れて欲しいと要望しているだけですよ。だから阿由葉さんにひと肌脱いでもらい、山本新日薬会長との間に友好的なパイプを設けて相互理解を深めたいと考えております。頼みますよ(笑い)。

──  私で役に立つことなら両団体のために協力しますよ。でもJACDSの関口会長が東京薬科大学で山本日薬新会長の先輩に当たり親交が厚いから、今後の両団体関係は良好になると思いますね。特に、山本新会長は前任者と異なりグローバル薬剤師だから見識も広く、理解度も高いので期待できそうです。ところで、石田副社長の会社の薬剤師社員は日本薬剤師会に加入していますか?

石田氏  それは会社として管理していないからわかりませんね。個人的事項は報告義務もないし、会社も特に報告を求めていません。

根津氏  要するに薬剤師会などの団体に対する意識が薄いのですよ。

江黒氏  意識の高い薬剤師は休日に自分で実費を払って講習会やセミナーに出席していますよ。しかし、全体的に見るとノンポリ派が多いですね。意識の高い薬剤師社員が日薬に参加すると役員になることが多いです。日薬はオーナー開局者が多いから会社勤務薬剤師を使いやすいようですね。学校薬剤師も個人経営者は平日昼間から店を出られないのでスギヤマ薬品のように薬剤師が充実しているチェーンドラッグストアの勤務薬剤師が頼られるのですよ(笑い)。

──  なるほど、ドラッグストア勤務薬剤師が日薬会員の開局薬剤師に協力している訳ですね。

研修は調剤実務を優先(杉山氏)

杉山氏

杉山氏

杉山氏  当社の地元地域は最近薬科大学が2校増えたので大分助かっています。6年制薬剤師不足はドラッグストアだけでなく、病医院も公務員も皆同様ですよ。私は調剤が当社の生命線と思っているので薬剤師採用には直接係わっています。愛知県の麻薬取締官も薬剤師6年制教育移行前に採用しなかったため薬剤師不足状態です。そのため薬剤師資格者は公務員試験が免除され面接だけと便宜を図っていますよ。薬学教育6年制になって良かったと思うのは実務実習に一般薬が取り入れられたことです。薬学生の実務実習は薬剤師会が主導していますが、薬剤師会会員薬局は調剤専門薬局で一般薬を取扱わない店舖が増えているため、一般薬の実務実習は当社が依頼されて学生を受け入れており一般薬に興味を持つ学生も増えていますよ。また、当社も新人研修として約3か月間実務研修を実施しています。当社は調剤過誤の未然防止を最大目的として一般薬販売より調剤実務を優先的に研修しています。

──  一般薬の店頭研修は行なわないのですか?

杉山氏  一般薬教育は大学の実務実習で行なわれているから助かりますよ。当社は調剤併設店勤務を希望する新入社員も多く、併設店勤務薬剤師の半分位は店頭に立って一般薬販売も行ないます。調剤併設店増加のデメリットは、薬剤師が少ない状況で併設調剤を行なうと調剤作業中に第一類薬購入のお客様が来た時に待たせてしまうので、薬剤師2人以上の常駐が必要です。そのため当社は、ある程度処方箋枚数がまとまる店舗でなければ調剤併設にしない方針です。薬剤師を3人位常駐させるためには1日当たり最低100枚の処方箋取扱いを見込めることが条件で、それをクリアしないと調剤併設店にはしません。逆に1日当たり処方箋取扱い枚数が100枚を割り込む店舗は、今後処方箋取扱い枚数が100枚以上に増える見込みがないと判断すれば調剤併設店舗でも調剤室を撤去します。

──  調剤室を撤去した店舗は登録販売者だけ配置するのですか?

杉山氏  そうなりますね。最近社内で少し困った事がありました。当社は社内恋愛カップルが多いのですが、社内結婚して離婚したら薬剤師の方が先に会社を辞めてしまうのですよ。薬剤師は転職しやすいですからね(笑い)。この問題は対策の講じようがなく大変困っていますよ(笑い)。

──  離婚を阻止することも出来ないし困りますね(笑い)。根津会長の会社はどうですか?

根津氏  当社も薬剤師は足りないですね。薬剤師数に合わせて出店計画や調剤併設店にするか決めている状況です。

──  薬剤師確保対策はどうしていますか?

根津氏  採用担当者が薬科大学の就職課回りなど当たり前の事を地道に行なっています。マツモトキヨシも同じですよ。

──  ドラッグストアは今後、調剤併設店が基本モデルになりますか?

根津氏  そうなるでしょうね。アメリカの例を見てもそうなりますよ。調剤事業が儲かるかどうかは別にして、ドラッグストアの役割は調剤業務とセルフメディケーションの一般薬販売事業の両方を担うことが社会的使命と思います。今後、更に面分業が進む事が前提条件になりますがね。でも、薬剤師不足を解消しないと調剤事業は難しいですね。

製配販で返品削減に努力を(根津氏)

根津氏  返品を減らさないといけないですよ。メーカーや卸各企業が困るだけでなく国家的にも資源の無駄遣いですからね。返品問題については製配販で検討して、返品をなくす仕組みを早急に作る必要がありますよ。

──  小売業として返品削減に協力する考え方は珍しくないですか?

根津氏  もちろん本気ですよ。小売業がその気にならなければ解決しない問題ですからね。

江黒氏

江黒氏

江黒氏  返品は製配販の全てが得しない問題ですからね。医薬品業界が一番ひどいようだから早急に改善が必要ですね。

──  これは驚きですね。小売業は季節商品など欠品防止のために大量に仕入れて売れ残れば全て返品する考えではないのですか?

根津氏  そういう考え方が無駄の元凶なのですよ。大量返品は廃棄ロスになるから原価も高くなるのですよ。

──  メーカーや卸の団体から根津会長に感謝状が出ますよ(笑い)。JACDSも返品問題に取組む考えですか?

根津氏  返品は企業個別の問題だと思いますが、JACDSも返品問題について研究を行なっていますよ。

石田氏  AJDのPB商品も返品なしですよ。

──  返品問題は卸やメーカーが非常に悩んでいる問題なので小売企業が全面的に協力すれば解決策を見出だすのも難しくないと思います。本日は貴重なご意見を有難うございました。(おわり)

全国有力ドラッグストア企業トップ座談会

2014年05月8日

左から阿由葉と石田、江黒、根津、杉山各氏

出席者

いまドラッグストア業界は大きな転換期を迎え今後の進路選択に迷い悩んでいる。かつて右肩上がりの急伸長を続けた勢いは陰り、食品、日用品雑貨のほか新たに医薬品を加えた三本の矢≠ナ攻勢なコンビニやスーパーの圧力を受け業績も停滞傾向。流通業界で「ドラッグストア一人勝ち」と言われた時代は終わった。更に消費税率引き上げ、一般用薬ネット販売解禁など市場環境も著しく悪化し、ドラッグストアは厳しい試練に直面した。その中でドラッグストアが生き残るためにはどうすべきか?本紙恒例の「全国有力ドラッグストア企業トップ座談会」を4月9日午後6時から東京・大手町のKKRホテル東京で開催、杉山貞之潟Xギヤマ薬品社長、石田岳彦鰍bFSコーポレーション副社長、江黒純一潟Nスリのマルエ会長、根津孝一鰍マぱす会長など辛口論客がドラッグストア業界の生き残り策について激論を展開した。行司役は阿由葉孝夫本紙編集局長。

――4月1日から消費税率が8%にアップしました。3月は駆け込み需要で大きな仮需があったようですが、4月以降はその反動が出るのではないかと心配されています。皆様の会社では実際にどんな影響があったか順番に伺いたいと思います。最初に鰍マぱすの根津会長からお願いします。どんな状況ですか?

根津氏 確かに駆け込み需要はかなりありました。トイレットペーパーなども買い溜めされて棚が空になりましたね。予想より早く3週間位前から買い溜めが始まりました。東京の下町は特にそういう傾向が強いのかもしれませんね。群集心理的なムードですよ。店に行き棚の商品が少なくなっているのを見ると不安になるんでしょう。その反動で4月に入ってからの売上高は昨年より30%位落ち込んでいるんじゃないですかね。

──3月の売上高伸長率は大きかったですか?

根津氏 売上高数字を確認していないですが、特にマツモトキヨシは単価の高い化粧品がよく売れたようだから売上高の伸びも大きいですよ。

──4月以降の買い控え期間が終わり販売が通常に回復するのはいつ頃になると思いますか?

根津氏 前回の消費税率アップの時は6月頃に回復したから、今回も数か月かかるでしょうね。何しろ生活必需品を買い溜めしちゃっているわけですから(笑い)それを使い切るまでは買わないと思いますよ。

――確かにそうですね。杉山社長の会社はいかがですか?

杉山氏 私も新幹線の回数券を買い溜めしましたよ(笑い)。当社店舗は単価の安いトイレットペーパー、洗剤などは意外に早く3月中旬頃から、化粧品、サプリメントなど比較的高額商品は4月1日の1週間前頃から買い溜めが増加しました。しかし、OTC医薬品の売上高は普段と変わらなかったですね。消費税率アップの影響とは関係ありませんが、花粉症防止商品は今年あまり売れなかったですね。

4月に入ってからは、やはり買い控えで売上げは落ちました。3月31日と4月1日だけを比べると、4月1日売上高は前日の6分の1位に落ち込みましたよ(笑い)。後略

有力医療品メーカー卸トップ座談会

「欠品ペナルティがあるのだから返品ペナルティも設定せよ!!」

2013年08月23日

後列左から  五嶋、今川、天田、岡本
前列左から  玉川、小川、阿由葉、大越

出席者

  • 天田泰正 氏(白十字代表取締役副社長)
  • 今川拓一 氏(イチジク製薬代表取締役社長)
  • 大越昭夫 氏(ピジョン代表取締役会長)
  • 岡本昌大 氏(不二ラテックス代表取締役専務執行役員経営統括本部医療機器事業部事業部長)
  • 小川 實 氏(中央物産常務理事営業本部広域一部管掌)
  • 五嶋啓伸 氏(コンビ取締役常務執行役員ベビー事業本部長)
  • 玉川幸彦 氏(玉川衛材代表取締役社長)

  • 阿由葉孝夫(司会 社長兼編集局長)

本紙恒例企画の「第19回有力医療品メーカー・卸トップ座談会」は8月1日午後5時30分から東京・大手町のKKRホテル東京で開催。

  1. 先月の参院選で圧勝した自民党安倍内閣の景気回復政策「アベノミクス」評価
  2. 古くて新しい返品問題の解消策
  3. 「第93回東京医療衛生用品フェア」の改良点
  4. 消費税率アップの影響
など
タイムリーな話題について医療品業界の論客各氏が率直な意見を述べ白熱の論戦を展開した。
「欠品ペナルティがあるのに返品ペナルティなしはおかしいよ」
「東京医療衛生用品フェアは業界のお祭りだから、展示販売を止め提案型にした方が良いとか悪いとか言わないで、景品を楽しめばよい」
などユニークな意見が続出。

──本日は本紙主催の人気企画である有力医療品メーカー・卸企業トップ座談会にご出席いただきまして有難うございます。当座談会は皆様のご協力を得て第19回目を迎えることができました。その間、当座談会のレギュラーメンバーとして毎回ご出席いただき、有意義なご発言で座談会を盛り上げた岡本良彦不二ラテックス会長が平成23年12月にご逝去、さらに今年5月2日には天田忠正白十字会長も亡くなられ、僅か一年半の短期間に医療品業界の功労者2人が相次いでご逝去されました。そこで故岡本良彦様、故天田忠正様ご両人への感謝と哀悼の意を込めて本日ご出席の皆様と共に黙とうを捧げたいと思います。一同黙とう。ご協力有難うございました。今回は岡本、天田両故人の長男である岡本昌大氏と天田泰正氏が出席しておりますので、立派な成長ぶりを亡き父親達に見せて欲しいと思います。

それでは本題に入ります。最初のテーマは、7月21日の参議院議員選挙で自公与党が圧勝、念願の衆参ねじれ国会が解消、自民党安倍政権は最短でも3年間の長期政権となりそうです。安倍政権の人気は経済成長戦略「アベノミクス」効果で円安、株高となり大企業中心に景気回復の兆しが見えています。しかし、まだ医療品業界には影響が出ていないようですが白十字の天田副社長はどう思いますか?

天田氏 当社はまだ現実的にアベノミクス効果を感じておりませんね。ただ、企業としては財務部が資金運用上デリバティブを行なっているため、現在の円安が当社財務にプラス効果となっているメリットは感じています。また、「アベノミクス」とは関係ありませんが、東日本大震災以降、全国自治体などが防災用品として医療衛生用品備蓄を強化していることは当社の衛材事業にプラスになっています。一方、最近の原材料価格高騰は業績のマイナス要因なのでいかに吸収するかが課題となっています。

──「アベノミクス」による景気回復の実感はないが、円安効果のメリットはあると評価しているわけですね。イチジク製薬の今川社長はどのように感じていますか?

今川氏 当社は本日出席者の中で唯一医薬品専門メーカーだから、医療品メーカーの皆さんとは若干立場が違うかもしれません。アベノミクスということで安倍内閣が経済成長政策を次々に打ち出している事には期待しています。その結果、経済環境が円安株高に変わりましたから、ムード的には大手企業中心に良い雰囲気になっていると思います。実際に輸出企業は円安効果で業績が大幅に伸長しています。しかし、医療品や医薬品業界は景気が良くなったという実感が全くありません。例えばOTC薬はドラッグストア中心に販売していますが、ドラッグストア企業の業績は好調でも、OTC薬売上高は低迷を続けて前年割れ状況です。当社の主力商品である浣腸も同様で市場は低迷続きです。日本経済の景気動向は良い方向へ進んでいると思いますが、一般消費財市場は国民所得が増えて可処分所得も増加する状況にならないと景気回復を実感できないと思いますね。したがって、「アベノミクス」経済成長戦略施策実施が進行して、日本全体の景気が底上げされないと、医療品や医薬品など消費財市場まで「アベノミクス」効果の恩恵が回って来ないのではないかと思っています。

──業界側の努力で「アベノミクス」効果による上げ潮ムードを取り込む方法はないですか?

今川氏 それは余程の大型商品か画期的新機能を持つ商品を開発するしかないと思いますね。

──簡単に開発出来ませんね。ピジョンの大越会長は「アベノミクス」効果よりも中国の経済状況が気になりますか?

大越氏 そうですね。当社は現在中国ありきの経営状況ですからね(笑い)。でも、そんな事はありませんよ。国内事業と海外事業のバランスは半々くらいですからね。しかし、お陰様で中国の経済成長率が多少鈍っても、中国では毎年2700万人以上の赤ちゃんが生まれていますから非常に大きい市場です。経済成長率がダウンしても日本と比べたら3倍も4倍も高いですから、将来の見通しは非常に明るいですね。ところでアベノミクスの恩恵を受けている点は、為替が円安になったことです。当社売上高の海外比率が年々上がっているから連結決算で円安になると利益が増大します。株価についても、安倍政権になってから当社株価が大幅に上がったので、その点は大変恩恵を受けていると思います。あとは、金融緩和効果で銀行から資金を借りやすくなったこともメリットですね。しかし、日本市場は毎年新生児数が約2万人ずつ減少しているので、当社にとってはマイナス現象です。少子化問題は民間で何とか解決しようと考えても難しいです。企業が赤ちゃん手当てを支給するぐらいでは出生数は増えませんね。赤ちゃんを作らないと損する位の制度を作って欲しいです(笑い)。日本政府は少子化問題対策をもっと真剣に考えないと、日本経済の先行きは不安ですよ。そこで女性を活用する考え方が出てきて、女性管理職を増やせとか啓蒙していますね。専業主婦が社会に出ると6兆円位の経済効果が生まれるそうですから期待しましょう。

会社沿革    
1982年10月 1日医薬品業界専門新聞出版社「薬粧流通タイムズ社」創立
1982年10月15日新聞「薬粧流通タイムズ」創刊号発行
1983年12月 9日「株式会社 薬粧流通タイムズ社」に改組。資本金1,000万円
            代表取締役編集局長 阿由葉孝夫
1984年 4月13日第三種郵便物認可 発行人 阿由葉孝夫
1985年 4月 1日大阪支局開設(現在閉鎖中)

◇本町記者会(医薬品業界専門紙記者クラブ)会員
◇日本医学ジャーナリスト協会会員
◇流通記者会(日本チェーンドラッグストア協会主催)会員


株式会社 薬粧流通タイムズ社

〒103-0023 東京都中央区日本橋本町4-14-7 石金日本橋ビル8F
TEL. (03)6674-5532 FAX. (03)6679-5952
info@yakusho-times.co.jp
代表取締役編集局長 相川 和彦